VR/AR投資ファンドであるVenture Reality Fundは、年次で公開しているVR市場の動向を示す業界マップの2019年版を発表しました。ゲームからエンタープライズ、ヘルスケアに至る幅広い市場で普及が拡大。VRが大きな転換点に到達した兆しが見えるといいます。
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この図はVR業界を大きく3つの分類で分けています。下の段がハードウェア(Infrastracture)、中段がミドルウェア/プラットフォーム(Tools/Platform)、上段がソフトウェア/サービス(Application/Content)です。合計550社以上が掲載されており、2017年の掲載時からは約20%増加しています。
各成長分野のトピックス
Venture Reality FundのゼネラルマネージャーTipatat Chennavasin氏によると、成長が顕著なのはゲーム、施設型(ロケーションベース)VR、次世代リアリティキャプチャー、エンタープライズ、ヘルスケアの分野です。
施設型VRでは、2019年始めに香港のスタートアップSandbox VRが、シリーズAで6800万ドル(約74億円)を資金調達しました。またCinemarkやSpacesらも施設展開を進めています。その一方で、IMAXが全てのVR体験施設を閉鎖し市場から撤退するなど、淘汰の動きも見られます。
ヘルスケアの分野では、主にトレーニングへのVR導入が続いています。VR手術シミュレーションを手掛けるFundamental VR、 Precision OSといったスタートアップは、100万ドル単位の資金調達を行いました。
リアリティキャプチャーは360度動画、3Dスキャンなど、現実の物体を捉えビジュアル化するツールを指します。世界最大級の空間ライブラリを提供しているMatterportは、2019年に入り4,800万ドル(約53億円)の資金調達を行いました。マルチプレイでVR空間内の構造物を確認できるオートデスクのツールなど、従来の360度コンテンツの枠組を超えたサービスも出てきています。
そして忘れてはならないのが、ゲームを代表とするコンシューマー向けVRの盛り上がりです。2019年5月だけでも、Oculus Quest、Oculus Rift S、Valve社のIndexと3機種ものデバイスが続々と発売、先行予約開始されています。
また。株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントのPlayStation 4用VRヘッドセットPlayStation VR(PSVR)の世界販売台数は、2019年3月3日時点で420万台を突破。翌4月には任天堂株式会社が「Nintendo Labo: VR Kit(ニンテンドー ラボ VRキット)」でVRへの参入を遂げるなど、目が離せない状況です。
この分野では、インディーデベロッパーの活躍もトピックスの1つです。2018年世界的な大ヒットとなったVRリズムゲーム「Beat Saber」は、累計100万本以上の売上を記録しました。また「SUPERHOT VR」の制作チームは、同コンテンツの販売本数が80万本を突破し、原作であるPC向けゲームの販売本数を超えたと明らかにしています。
最後にエンタープライズ分野の動向です。企業向けVRは成長が継続しており、”人の眼”レベルの解像度を目指すVarjo、HPの「Reverb」、HTCの「VIVE Pro Eye」といったハイスペックなヘッドセットもそれを後押しします。またフェイスブックも、開発者会議F8にて法人向けサービスの刷新を発表しています。
採用側にも、従業員の研修にVRを導入するウォルマート、新車のデザイン設計にVRモデリングツール「Gravity Sketch」導入を目指すフォードなど、大手企業が名を連ねています。
VRは転換点に
Chennavasin氏は2019年初旬現在、VRがいかに普及してきたかが示されていると総括。数年にわたるゆっくりとした、しかし確実な拡大の時を経て、VRが大きな転換点に到達した兆しが見えていると言います。今後はさらにペースを加速し、VR採用が進んでいくと同氏は期待を寄せています。