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業界動向 2024.04.01

日本のメタバース企業4社が連携、強みを活かした法人向け展開を行う「Open Metaverse Network」発表会レポ

「メタバースプラットフォーム」とひとくちに言っても、その内実は大きく異なります。ユーザー同士のコミュニケーションを重視するものから、ゲーム要素を前面に押し出したもの、それらの両取りを意識したもの……。

昨今、メタバースプラットフォームを通して企業や自治体が情報発信を行う事例は増加し続けていますが、上記のような「プラットフォームごとの得手不得手」や、「複数プラットフォームに違うコンテンツを出すための煩雑さ」などが存在し、“メタバース活用”と言っても一筋縄では行かないのが現状です。

こうした状況を受け、2024年3月中旬、KDDI株式会社株式会社STYLYmonoAI technology株式会社REALITY XR cloud株式会社の4社は、メタバースアライアンスOpen Metaverse Networkを発足させました。

これは、顧客の要望に合わせて最適なメタバースプラットフォームの選定企画・コンサルティングを行うほか、複数のメタバースを連携させたときの価値向上を目指すためのものです。


(KDDIは「αU」、STYLYは「STYLY」、monoAI technologyは「XR CLOUD」、REALITY XR cloudはREALITY株式会社の「REALITY」を通して、それぞれメタバースコンテンツや施策を展開している)

今回、Mogura VR Newsはこの「Open Metaverse Network」の発表会において、各社の代表や担当者に取材しました。本記事ではその模様をレポートします。

メタバースは「新しいオウンドメディア」


(KDDI 事業創造本部 WEB3推進部長 館林 俊平氏)

Open Metaverse Network発表会において、最初に登壇したKDDI事業創造本部WEB3推進部長の館林 俊平氏は次のように語りました。

「KDDIは2020年5月から『バーチャル渋谷』をオープンしています。このときの経験を活かし、今後の“都市連動型メタバース”を推進すべく、『バーチャルシティコンソーシアム』を発足、ガイドラインの策定や財務、法務面での提言を進めてまいりました。これを発展させる形で、昨年3月に自社サービスとしてtoC向けのメタバースプラットフォーム『αU』をリリース。加えて、企業・自治体様向けのメタバース事業参入のサポートも続けてきました」(館林氏)

初期の頃は「メタバースが流行っているようだから、我々もやってみたい」という、ふわっとした印象の依頼が多かったそうですが、最近は顧客接点として運営していくオウンドメディアとしての利用が増えてきたとのこと。

また自治体が文化発信のためにコミュニティーをメタバース内に構築していくケースや、企業が管理していたアートギャラリーをメタバースに置き換えるといった事例も出てきており、2023年度の受注額は、2022年度と比較して約5倍となったそうです。

しかし多くの企業・団体のコンサルティングを続けていくうちに、課題が顕在化してきました。プラットフォームの得意分野を見極めた上での選択のほか、複数のプラットフォームを連携することで幅広い層のユーザーにアピールしたい複数プラットフォーム連携時にワールドやアバターのデータを共有することで制作コストを下げたいといった要望が多かったそうです。

そこでOpen Metaverse Networkは、KDDIが総合窓口・事務局となり、企業・団体からの依頼に応じてスマートフォンメタバースの「αU」、現実空間と連携させたXRコンテンツの開発・展示が可能な「STYLY」、WEBブラウザでアクセスできるメタバースの「XR CLOUD」、ライバーによるライブ配信機能が充実しておりイベント展開もしやすい「REALITY」といった、4つのプラットフォームを提案。複数プラットフォームを使う場合でも、制作物を流用することでコストを最適化できるような施策を行います。

館林氏は「人間が中心となるメタバースが、 上手に社会実装されていくという事例を、日本発で生み出していきたいと考えております」と語り、4社の代表に交代しました。

4社の技術・運営的ノウハウも集結させて提供していく

当初は4社でスタートするOpen Metaverse Network。各社はどのような期待感をもって参画しているのでしょうか。


(REALITY XR cloud株式会社 代表取締役社長 春山一也氏)

REALITY XR cloud株式会社 代表取締役社長 春山一也氏は、REALITYにアクセスしているライバー・ユーザーが共に多く、SNSとしてエンゲージメントが高いことから、「Open Metaverse Networkへの期待感を持っていただきたい」「REALITYのユーザーさんを他のプラットフォームに送客する、といった連携を実施したいと考えております」とコメント。


(株式会社STYLY 代表取締役 山口征浩氏)

株式会社STYLY 代表取締役 山口征浩氏は、業界が一丸となって日本の魅力を世界に対して発信することに期待を寄せています。

インバウンド需要が高まっているなか、リアルとバーチャルの融合は非常に大事になってくるんじゃないかと思っています。メタバースでの情報発信を通じてリアルな場所に人が来るっていうこともありますし、そもそも体験する層も大きく違うのかなと考えています。多くの方々にリーチをする上でそれぞれのプラットフォームの特徴を活かした形でメタバースを盛り上げていけたら、と思っています」(山口氏)


(monoAI technology株式会社 代表取締役社長 本城嘉太郎氏)

monoAI technology株式会社 代表取締役社長 本城嘉太郎氏は、他プラットフォームとの連携によるユーザーの回遊に期待しているそうです。

「弊社はビジネス向けのイベントを多く手掛けていますが、商品発表会などのときは『REALITY』のユーザーさんに来ていただいたり、バーチャルだけではなくリアルでも開催するときに、現実の会場との連動というところで『STYLY』のAR技術が魅力的だと感じています」(本城氏)


(「技術だけでなく、運用や展開のノウハウも提供できるようにしたい」と語るKDDIの館林氏)

そしてKDDIの館林氏は、各社が持っている技術だけではなく運営的なノウハウも提供していく団体にしたいと語ります。

我々のノウハウを企業の方々とか自治体の方々に提供して、メタバースを有効活用いただける方々が増えてくると、まさに業界の発展にも繋がるんじゃないかと思っております。Open Metaverse Networkは、まずはこの4社で進めていければと」とコメントし、発表会を締めくくりました。


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