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開発 2024.04.15

【GDC2024】30秒でユーザーを惹きつけよ、チュートリアルを廃止せよ——「Roblox」大手スタジオが語る、次世代ゲーマーに向けた必須の開発ノウハウ

X、Instagram、YouTube、Tiktok……ユーザー自身がコンテンツを投稿するタイプのプラットフォームには、ユーザーが集まるにつれてプラットフォームごとにコンテンツの傾向が現れる。そして生き物のように日々その傾向はダイナミックに変化していく。

そして、あなたがこうしたプラットフォームに今から参加するのであれば、すでにプラットフォームで人気を集めている先行コンテンツの研究は不可欠だ。毎日7,000万人以上のユニークユーザーがプレイする、世界最大規模の“メタバース”である「Roblox(ロブロックス)」の開発チームでさえ、「まずは既存の人気コンテンツを実際に体験して、分析するところから始めてほしい」と語っている。

折しも2023年3月にサンフランシスコで開催された「GDC 2024」では、Robloxでユーザーを惹きつけるためのノウハウを語る講演が、複数行われていた。本記事では講演「次世代のゲーマーを引き付けるための『Robloxの30秒ルール』」をご紹介しよう。

登壇したのはGamefamのリードプロデューサー、テイラー・フィールド・ドレイパー氏。同社がRoblox開発に取り組む上で重要視している「4つの柱」についての講演を行った。

ドレイパー氏は、アクティブなプレイヤーベースを獲得・維持・拡大するための戦略や、ゲーム体験を取り巻く熱心なコミュニティの成長を促す方法などについて語った。また、Robloxで成功体験を構築することによって、高いコンバージョン率とプレイヤーのリテンションにつながる重要な違いや、従来のゲームデザイン方法論とは異なる、Robloxユーザーの独特の好みと期待についても比較検討している。

では、具体的な内容を見ていこう。

企業コラボの雄・Gamefamが語る「Robloxの30秒ルール」


(登壇したドレイパー氏のプロフィール。26歳ながら、15年以上にわたりRobloxコンテンツ開発に携わってきたという。Robloxとの出会いは「無料で何でも作れるという機能に惹かれたから」。「親に無断で アカウントを作って、たくさん遊び、ゲームの作り方を独学で学んできた」と語った)

ドレイパー氏がリードプロデューサーを務める企業・Gamefamは、Robloxプラットフォームで活動するスタジオとしては最大級。累計訪問回数20億超の「Twilight Daycare」等のオリジナルなRobloxエクスペリエンスに加え、セガの「ソニック」とコラボした「Sonic Speed Simulator」など、数千万回に渡ってユーザーが訪問する企業コンテンツの開発・運営を行っていることで知られる。

さらにGamefamはゲームコンテンツだけでなく、バーチャルコンサートの開発も手がけている。既にRobloxで開催されたバーチャルコンサートのうち、訪問者数上位5つ中の3つを開発するなど、総合的な「Robloxエクスペリエンス開発に長けた企業」だ。

まずは「Robloxを理解する」ことから

講演はRobloxのプラットフォーム的な性質のおさらいからスタートした。Robloxユーザーの男女比はほぼ半々で、17歳以上のユーザーが34%を占めている。1日あたりのアクティブユーザー数(DAU)は7,200万人、月間アクティブユーザー数(MAU)は3億5,000万人。この数値はXboxやPlayStation、Nintendo Switch等のMAUを合計してもさらに上回ると予想されている。これまで作成されたアカウント数は46億以上と、名実とも超巨大なプラットフォームだ。

ソーシャルプラットフォームとしてのRoblox

ドレイパー氏いわく、「Robloxが際立っている理由を理解するには、その文化を知る必要がある」。しばしば「ゲームプラットフォーム」と呼ばれるRobloxだが、ユーザーの行動は他のプラットフォームとは大きく異なる。むしろXやFacebook、SnapchatやBeRealのような「ソーシャルプラットフォーム」に近い。

例えば、Robloxユーザーは一日の間でプレイしているゲームをたびたび切り替えたり、また同じゲームに戻ってきたりする。個別のソフトやアプリをダウンロードするのではなく、同じプラットフォームの中で「違う動画や写真を見に行く」、あるいは「友達が教えてくれた動画を見てから、もともと見ていた投稿者の動画シリーズを見る」ような感覚だ。

「ゲーム」ではなく「体験」

また、Roblox上にあるコンテンツはすべて「エクスペリエンス(Experience)」、日本語では「体験」と名前がつけられている。Roblox上にはゲーム要素の強いコンテンツもあれば、ただ友達と集まって話す場所が用意されているだけのコンテンツ、アーティストのバーチャルコンサートを視聴するためのコンテンツ等も存在する。

さらに、ユーザーはそれらのコンテンツを好きなようにプレイするので、「普通にプレイするとゲーム要素が強いが、特にこだわってプレイせず、友達と延々チャットを続けている」「とりあえずRobloxを立ち上げて、友達に合流して一緒に何本もゲームを遊ぶ」といった状況も生まれうる……となると、「ゲーム」というカテゴリだけで括るのは難しい、というのが実態のようだ。

すべてはUGCでできている

そして、Robloxのコンテンツはすべてプレイヤーによって構築されている。衣装からゲーム、音楽まで、Robloxの基盤となるものはすべてUGC(User Generated Contents)だ。ユーザー自身がいつでも参加でき、Robloxプラットフォームや特定のコミュニティでの流行をテーマにしたコンテンツはあっという間に流通する。

ほとんどのRobloxコンテンツは無料である

最後に、Robloxのゲームは無料でプレイできるものが多く、同時にそれゆえの課題もあるとドレイパー氏は語った。同時接続ユーザー数や訪問回数といった指標の達成には最適な方法だが、時間以外でのサンクコストがほぼ生じないため、工夫しなければユーザーはすぐに離脱してしまう。こうした状況を踏まえ、「ユーザーを楽しませ、何度も遊びたくなるような体験をどう作るか」は、Robloxコンテンツの開発者やブランドにとって課題となっている。

Robloxの「30秒ルール」と、それを構成する「4つの柱」

さて、近年はTikTokにInstagramのリール、Snapchat、YouTubeのShortsなど、短い時間で消費できる「ショートフォームコンテンツ」が大きく増加している。日々膨大なコンテンツが生まれる昨今の状況においては、それらを効率よく体験し、消費し、満足感を得たいというニーズがあることも頷ける。

ドレイパー氏も、こうした傾向をもとに「Roblox上の体験そのものはショートフォームコンテンツではないが、開発者はショートフォームコンテンツの原則に基づいて体験を構築する傾向がある」と語る。

Gamefamが講演タイトルにも掲げた「Robloxの30秒ルール」とは、同社が採用している基本的なデザインルールだ。ドレイパー氏はRobloxにおけるコンテンツの目的として「素晴らしい第一印象を与えること」「プレイヤーの興味を維持すること、「将来のプレイヤーとして定着させること」を挙げ、「30秒ルール」はこれら3つの目標を最初の30秒以内に達成することを指すと語った。

続けて、ドレイパー氏は「30秒ルール」を達成するための4つの柱について説明した。「プレイヤーの注意を惹きつける」、「ファーストタイムユーザーエクスペリエンス(FTUE))」、「プレイヤーへの報酬」、そして「ソーシャルエンゲージメント」だ。

プレイヤーの注意を惹きつける方法: “新鮮な”アップデートを繰り返す

Robloxには、実に4,000万以上もの体験が存在する。その中からプレイヤーの注意を惹きつけ、ゲームをプレイしてもらうにはどうすればよいのだろうか?

これは、まず「ディスカバリー」ページから工夫を始める。Robloxのディスカバリーは、モバイルアプリストアに似た見た目で、各種体験のアイコンとタイトルが並んでいる。ただしアルゴリズムによって制御されている点を考慮すると、YouTubeのトップページに近い。同時接続者ー数、リテンション率、セッション数等の数値指標が多ければ多いほど、ディスカバリーに表示される可能性は高くなる。

したがって、ディスカバリー上位に表示される体験は、コンテンツ開発者が従うべき「模範例」とでも呼ぶべきものが並ぶ。Roblox上にも「サムネイルのお作法」があり、ユーザーはタイトルや説明を読まなくても、サムネイルだけで「どんな体験なのか」を関連付けることができる。

とはいえタイトルは大事で、「タイトルを曖昧なものにせず、ゲームの内容を明確に示すことが重要」。そして「ユーザーに混乱を与えたり、期待を裏切るようなタイトルはつけないように」とドレイパー氏は語る。

また、この“惹きつける”フェーズでは、ゲームの内容自体よりもマーケティングの方が重要だということに注意する必要がある。Robloxでは続編を出すよりも継続的なアップデートが求められており、多数の体験が5年や10年、ものによっては15年以上にわたってアップデートが繰り返されている。開発者は「毎週、何らかのコンテンツアップデートを提供することでプレイヤーを惹きつけている」とドレイパー氏。

また、アップデートについては「ハロウィンやイースター、クリスマスといった季節性のマップの更新や、対戦ゲームであれば新しい武器、育成ゲームであれば新しいアイテムなど、プレイヤーにとって“新鮮だ”と感じられるコンテンツの追加が大切」だという。Roblox内外のトレンドをアップデートに取り入れ、アイコンとサムネイルにもきちんと反映させることが、新旧のプレイヤーを引き付ける秘訣だ。

チュートリアルを省略せよ: 進行を見せ、ジャンルのパターンを利用する

ドレイパー氏は続いて、先ほど挙げた「FTUE」は非常に重要だという。これは「First Time User Experience」の略で、つまるところ「ユーザーがそのRoblox上の体験にアクセスした時、最初に何をさせるのか?」、言うならば「第一印象」のようなものだ。

この「FTUE」をよりよくするために、やるべきでは“ない”ことを挙げてみよう。まず現代のようなショートフォームコンテンツ隆盛の時代には、ハイクオリティで映画的な、長いイントロダクションムービーはあまり好まれない。さらに、Robloxユーザーの多くを占めるスマートフォンユーザーは、テキストを避ける傾向があり、チュートリアルのダイアログボックスを使うこともやめたほうがよい。すぐに、シームレスに体験の本質にたどり着けることが大切だ。

しかし、チュートリアルやムービを廃したのであれば、どうやってプレイヤーはその体験のやり方を学ぶのだろうか?

ドレイパー氏の見解は意外なものだった。実は、ほとんどのRobloxの体験にはチュートリアルがない。先述の通りRobloxは「ソーシャルプラットフォーム」なので、ユーザーは友達、あるいは同じサーバー内の他のプレイヤーにゲームの遊び方を気軽に聞き、教えてもらい、ゲームやコンテンツを進めていくのだという。

さらに「仮にチュートリアルがある場合でも、なるべくそれがゲームプレイの一部のように感じられるようにすべきだし、ゲームから独立したものにするべきではない」。プレイヤーのやりたいことを邪魔しない(かつ、楽しい)方法でオンボーディングする必要があるのだ。

また、ドレイパー氏いわく、「チュートリアルなしで新規ユーザーに学んでもらうための良い方法は、プログレッション(進行)を見せること。」RPGやアクションを含む多くのジャンルでは、レベルやアイテム等の制約があるポータル、あるいはステータスが一定以上でなければ進めない関門などを作ることで「進行度」を作る。この制約の存在により、プレイヤーはゲーム内に多数のコンテンツがまだ隠されていることを学べるし、さらにその先にあるものを探しに行きたくなる、というわけだ。

さらにRobloxの体験は、同じジャンルであればUIやゲームメカニクス、ゲームサイクルが非常によく似ている。例えば「タイクーン」と呼ばれるジャンルのリソースマネジメントゲームは、バンドルのレイアウトがほぼ同じだ。Robloxユーザーは1日に何度も(人によっては何十回も)異なる体験に出入りするため、「体験ごとに用意された、特別かつ複雑な操作方法を学ぶ時間や忍耐を期待しないほうがよい」とドレイパー氏は語る。

また、ドレイパー氏は「Robloxでは、シンプルさと洗練されたメカニクスの組み合わせにより、イノベーションの余地が限られている」と語る。しかしこれは問題ではなく、先ほど述べたような「タイクーン」ジャンルは2007年にリリースされて以来ずっと人気があるし、ごく単純な設計であっても問題ない——むしろ、単純で直線的な設計であるほうが好ましいのだという。

1.8億回訪問されている人気タイクーンゲーム、「Barbie Dreamhouse Tycoon」を例に挙げてみよう。プレイヤーは体験に参加すると、事前に設定されたボタンの前にスポーンする。ボタンをクリックすると「ドロッパー」が作成され、お金を稼ぐことができる。そこからさらにボタンを置いてお金を稼ぐ……というサイクルで、単純といえば単純なつくりをしている。ゲーマーであれば物足りないと感じるかもしれないくらいに。

しかし、Robloxではこのシンプルさと、「ユーザーがタイクーンゲームに期待するパターン」に沿ったフレーミングによって、チュートリアルがなくてもすぐに楽しめるようになる。このユーザーフレンドリーなフォーマットをもとに、ミニゲームやアバターの変更など、プレイヤーの興味を惹くような要素を取り入れていくことが望ましい。

そして、「FTUE」指標を高める理由はプレイヤーにその体験の本質を教え、できるだけ早く楽しんでもらい、報酬を与え、意欲を高め、再び同じ体験に戻ってきてもらうことだ。これが繰り返し訪問されるコンテンツを作る秘訣のようだ。

プレイヤーへの報酬: AFKメカニクスを実装せよ

「プレイヤーに報酬を与える」ことは非常に重要であり、ドレイパー氏は「ゲームに参加した最初の30秒以内に報酬を与える必要がある」と語る。実際にRobloxのトップ体験を見ると、ゲームに参加した時だけでなく、セッション全体を通して常にプレイヤーに報酬を与えている。

Roblox上の体験のプレイサイクルでは、通常は15分または5分ごとに明確な報酬を与えるような設計が多い。これに関連して、一部のジャンル、特にグラインド系(何らかの方法でリソースを増やし、リソースを使ってプレイヤーの能力を強化し、さらに多くのリソースを獲得するサイクルを持つゲーム)では、AFKメカニクスと呼ばれるものを活用しているという。

AFKとは、オンラインゲームで使われる略語で「Away From Keyboard」、つまり「離席中でゲームを今プレイしていない」状態を指す。そしてこの「AFKメカニクス」とは、概ね「ゲームに参加しているだけで、報酬が少しずつもらえる仕組みにする」ということだ。

例えば、プレイヤーが「お気に入りのタイクーンゲームをプレイしたいけれど、お腹が空いたから朝食を作らないといけない」となった場合、とりあえずタイクーンゲームに参加して「AFKゾーン」に入る。そのまま放置し、朝食を作りに行く。戻ってくればレベルが上がったりお金が増えたりしている。当然ゲームを実際にプレイするより効率は悪いものの、それでもリソースは手に入る。「ずっとプレイしていられる」状態とでも言えばいいだろうか。ドレイパー氏は、このようなシステムを「AFKメカニクス」と呼称している。

プレイヤーがAFKメカニクスを利用する理由は、ゲームプレイに常に縛られ続けたくないからだ。学生プレイヤーには、Robloxをバックグラウンドで開いておき、体験に出入りしながら宿題をする、友達を待つあいだYouTubeを見る、といったケースも多い。こうしたプレイヤーが何らかのレベル報酬や進行を受け取りながら休憩を取れるようにすることで、カジュアルなプレイヤーでもリソースが手に入り、ハイレベルなプレイヤーになりやすくなる。そして体験への滞在率も再訪問率も高まる。

また、Robloxのエクスペリエンスには常に新しいプレイヤーが訪れる一方、数年以上にわたってプレイしているプレイヤーもいる。そんな、新旧のプレイヤーの溝をさらに埋める手法として、プレイヤー間のトレーディングが導入されているゲームが散見される。トレードを用いることで、プレイヤーは、より良いギフト、様々な帽子、レアアイテムを交換し合うことができる。

ドレイパー氏は「Robloxのトレード市場は非常に大きく、多くのランキング上位にある体験の原動力となっている」と語る。このとき、プレイヤーが受け取るトレード用アイテムは、社会的価値や希少性など、何らかユーザーが魅力的に思う価値を持たせておくと良い。進行報酬システムやアップデートに期間限定のトレード可能なアイテムを提供することで、ゲーム体験内の「取引コミュニティ」が育っていくわけだ。

ソーシャルエンゲージメント: コミュニティを軸に構築する

ここでドレイパー氏は、「Robloxはゲームプラットフォームというよりもソーシャルプラットフォームだということを忘れてはならない」と改めて強調した。Robloxの体験は、先ほど述べたトレーディングコミュニティ、ひたすらゲームでレベルを上げるコミュニティ……などなど、様々なサブコミュニティの上に構築されている。そしてこのコミュニティは、プレイヤーがRobloxをプレイし続ける強い動機になりえるのだ。

例えば「Trade Hangout」は、2012年からRobloxプラットフォーム上のトレーダーのためのコミュニティハブとなっており、レアアイテムについて議論する場所として定着している。このようなコミュニティが、Robloxのエンゲージメントを生み出す大きなポイントとなっている。

「ソーシャルエンゲージメントが無限のゲームプレイを生み出す。Robloxのゲームは毎週のコンテンツアップデートを提供しているが、ソーシャル要素があれば、高頻度なアップデートがなくてもプレイヤーが長くプレイし続けることができる。ゲーム内に深いコミュニティを構築できれば、たとえアップデートを停止したとしても、プレイヤーは戻ってきてくれる」とドレイパー氏は語る。

ゲーム内に「カスタマイズ」要素を組み込むことも手だ。Robloxの最大の特徴の1つは、アバターを含め、何でもカスタマイズできることだ。例えばFTUEにアバターエディターを組み込むことで、プレイヤーは最初から自由に自己表現できるようになる。

ドレイパー氏は「Robloxでは、プレイヤーには基本的には自分のアバターを使わせることを推奨している」「総じてRobloxのプレイヤーは、特定のボディタイプやルックス、特定のアバターを強要されることを好まない。彼らは長年かけてクールなアバターを作り、限定アイテムを集め、自己表現を行ってきた」と語った。こうした「Robloxカルチャー」を理解しないことには、良いエクスペリエンス、良いコミュニティを作り出すことは難しいだろう。

また、プレイヤーにはゲーム内でのステータスを向上させることによる社会的なモチベーションを与えるのも手だ。リーダーボード(スコアのランキングなど、プレイヤーの順位を掲示する仕組み)を設置すれば、プレイヤーには「リーダーボードの上位にユーザー名とアバターを載せたい」というモチベーションが生まれる。

「グループ」システムで広がるコミュニティ発の活動

また、ドレイパー氏はRobloxのもう1つのソーシャルな側面である「グループ」という存在についても言及した。グループは、オンラインゲームにおける「クラン」や「ギルド」のようなもので、プレイヤーが独自のコミュニティを作成し、他のプレイヤーと議論したり、グループ内で役割を獲得したりできる。

そして、この「グループ」システムがゲームプレイに活かされる例もあるのだという。例えば「Venti Cafe」というエクスペリエンスでは、バリスタや従業員、顧客など、様々な役割(ロール)を元に演技(プレイ)する。「どの役割を担うか」を「グループ」システムで割り振り、大規模な「店舗経営ごっこ」「接客ごっこ」ができる仕組みになっているのだ。

グループメンバーは「アルバイト」や「スタッフ」の役割で接客をし、マネージャーへの昇進を目指す(グループメンバーの「研修」用の体験さえある)。なお、Venti Cafeのグループには70万人以上が参加している。

「グループ」システムを前提に体験を構築し、開発者がこのグループにアプローチし、意見を交換することで、より強力なコミュニティとして繋がりを構築することができる。Discordサーバーを作ってもいいし、Roblox内でコミュニケーションを取ってもいい。この時、プレイヤーには「何らかの方法でコミュニティとのつながりを感じられること」、そして「コミュニティの中で出世できること」が重要だという。最初はチャットの視聴者として参加し、いつかはそのチャットのモデレーターになるかもしれない、といったふうに。

ドレイパー氏は講演の最後に、「Robloxは非常に多様なプラットフォームであり、コミュニティと期待を日々育んでいる。講演で覚えておくべき3つのことは、1つ目は、プレイヤーがゲームに期待するようになった共通のパターンに従うこと。2つ目は、チュートリアルは不要で、プレイヤーがゲームを楽しむのを妨げるだけだということ。そして最後に、ゲームではなく、ソーシャルな体験を作ることだ」と語り、講演を締めくくった。


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