2012年に最初のプロトタイプが登場し、VRブームの火付け役となったVRヘッドセット「Oculus Rift」。2016年の発売から3年が過ぎ、その改良版となる新型デバイス「Oculus Rift S」が発表されました。現行モデルから様々な点が変更され、総合的には使いやすさが向上しています。
本記事では「Oculus Rift」と「Oculus Rift S」の性能や価格などを比較し、どういった点が改良点なのかなどまとめて紹介します。
目次
Oculus RiftとRift Sとは
トラッキング方式が大きく変化
機能・性能面の変更点
PC要求スペック比較
価格比較
コンテンツの違いは?
今後買うならどっちが良い?
Oculus RiftとOculus Rift Sとは
(左:Oculus Rift 右:Oculus Rift S)
「Oculus Rift(以下Rift)」は、Oculusから発売されたPC接続型のVRヘッドセットです。2012年に最初のプロトタイプがお披露目されて以降、2種類の開発版を経て2016年には製品版が発売。同年12月には専用ハンドコントローラー「Oculus Touch」が登場しました。
「Oculus Rift S(以下Rift S)」は、2019年3月にサンフランシスコで開催された「GDC2019」にて発表された、Riftの改良版です。完全互換が謳われています。OculusはRift Sを「Riftの次のステップ」と称しており、トラッキング方式の変更をはじめ、解像度の改善、光学系の改良、そして装着感の向上などの変更が行われています。
トラッキング方式が大きく変化
Rift SはRiftから、頭の位置や手の位置を認識するためのトラッキング方式が変更され、「インサイドアウト方式」を採用しています。インサイドアウト方式は、Riftで位置トラッキングを担っていた外部センサーはなくなり、変わりにヘッドセットの内蔵カメラを使用するようになりました。画像認識で位置トラッキングを、LEDの認識でコントローラーの位置のトラッキングを行います。
トラッキング用の内蔵カメラは、ヘッドセット下部の左右2隅に2基ずつ、上部に1基、計5基のカメラが搭載されています。Mogura VR Newsの筆者が体験したデモ体験では、通常にプレイしている限りは全く気になることのないトラッキング範囲で、これまでのRiftと遜色ない高い精度で体験ができました。手を頭の後ろに回すなど、背面はトラッキングされないことがあります。
プレイエリアのセットアップは、前面の2基のカメラを使った「パススルー+機能(Passthrough+)」を使用します。ヘッドセットを通して現実を見ながら、コントローラーでエリアを指定します。ユーザーはヘッドセットを外すことなくセットアップが可能です。
(ヘッドセットを装着した状態で現実を見ながらプレイエリアを指定する様子)
機能・性能面の変更点
2019年3月末時点で判明している、RiftからRift Sへの機能・性能面の変更点を紹介します。
解像度が向上
Rift Sの解像度は片目1,280×1,440に向上(Riftは1,080×1,200)。パネルはOLEDパネルからLCDパネルに変更されました。レンズには一体型VRヘッドセット「Oculus Go」などで使われている新型レンズが採用されています。リフレッシュレートは90Hzから80Hzへと低下していますがMogura VRの記者が体験した限りは違いを感じなかったと話しています。
装着が簡単に。メガネユーザーも問題なく体験可能
Rift SではRiftと比べて装着の機構が大幅に変更されています。Riftでは左右の側面と頭頂部をマジックテープで固定しましたが、Rift Sではレノボとのパートナーシップにより、PlayStation VR(PSVR)やMirage Soloと近い固定方法に変更。前面は額を覆って固定し、後方はトグルを回転させて締めるタイプとなります。
そして、Riftのメガネをかけたままヘッドセットを装着するのが難しいという問題を改善。Rift Sでは、顔が触れる部分はある程度広くなり、メガネユーザーでも問題なく体験できるようになりました。また、ヘッドセットの底部のボタンでヘッドセットの前後を調節することが可能で、安心して使用できる設計へと変更されています。
IPD調整機構が消失
IPD(※)調整機構はダイヤルが姿を消し、ソフトウェアでの調整のみに変更されました。
(※IPD……瞳孔間距離/Interpupillary distance。詳細はこちらのページを参照)
ヘッドホン内蔵に
オーディオ関連では、ヘッドセットそのものにヘッドホンが内蔵されています。Oculus Goと同じシステムです。
コントローラーは新デザインに変更
ハンドコントローラー「Oculus Touch」は初代Riftからデザインが変更されました。手で棒を握るような設計となり、手の上部には大きな円形の構造が来るデザインとなっています。このデザイン変更はトラッキング方式の変更によるものです。
初代Riftのコントローラーは手の様々なポーズに対応しており、指を開く動作も行うことが可能で「コントローラーを持っているはずがその存在が気にならない」ほど手にフィットしていました。Rift Sのコントローラーでは、どうしても「握っている」感覚があり、体験した記者は、より自然な操作が可能なのは初代Riftのコントローラーである、という印象を受けました。
新デザインのコントローラーは、2019年春に発売予定の一体型VRヘッドセット「Oculus Quest」のものと同じモデルです。Oculusによれば、両方の機種を持っているユーザーは使い回すことが可能とのことです。
RiftとRift Sのスペックの比較表は以下の通りです。
Rift |
Rift S |
|
解像度 |
1,080×1,200×2、OLEDパネル(ペンタイル配列) |
1,280×1,440×2、LCDパネル |
レンズ |
フレネルレンズ |
新型フレネルレンズ |
リフレッシュレート |
90Hz |
80Hz |
視野角 |
110度 |
不明、Oculusによれば“Riftと同程度” |
ヘッドホン |
ヘッドホン一体型(着脱可) |
ヘッドホン内蔵 |
トラッキング |
赤外線カメラ付属(アウトサイドイン方式) |
内蔵カメラ(インサイドアウト方式) |
IPD調整 |
搭載 |
ソフトウェア側で調整 |
重量 |
約470g |
不明、Oculusによれば“Riftよりわずかに重い(A little more than Rift)” |
PC要求スペック比較
Oculusによる発表によれば、Rift Sの推奨PCスペックはRiftと同様です。また、PCへの接続はDisplayPortとUSB端子で行います。ヘッドセットには両方のケーブルをまとめた1本のケーブルで接続され、Mini DisplayPortへの変換端子も付属します。
推奨スペック
OS |
Windows 10以上 |
CPU |
Intel i5-4590以上、AMD Ryzen 5 1500X以上 |
グラフィックボード |
NVIDIA GTX 1060以上、AMD Radeon RX 480以上 |
メモリ |
8GB以上 |
映像出力 |
DisplayPort 1.2 |
USBポート等 |
USB 3.0×1 |
最小スペック
OS |
Windows 10以上 |
CPU |
Intel i3-6100以上、AMD Ryzen 1200, FX4350以上 |
グラフィックボード |
NVIDIA GeForce GTX 1050 Ti以上、AMD Radeon RX 470以上 |
メモリ |
8GB以上 |
映像出力 |
DisplayPort 1.2 |
USBポート等 |
USB 3.0×1 |
価格比較
2019年春に発売されるRift Sの価格は399ドル(国内価格:49,800円)です。Riftの国内価格は45,000円(2019年3月末時点)なので、約5,000円の価格差となります。
コンテンツの違いは?
Rift SはRiftと完全互換のヘッドセットです。そのため、Rift対応タイトルをRift Sでそのまま遊ぶことができます。また、Questとのクロスプレイ(※1)やクロスバイ(※2)にも対応しています。
(※1 クロスプレイ……複数プラットフォーム間でのマルチプレイ)
(※2 クロスバイ……複数のプラットフォームで同一のゲームが配信されている場合、1つのプラットフォームでゲームを購入すれば、他のプラットフォームでも同じゲームを購入することなく遊べる方式)
今後買うならどっちが良い?
Riftは販売終了となる可能性が高い状況ですが、今後RiftとRift S両方の選択肢があるとしたら、Rift Sがオススメです。Rift Sは性能面で大きな革新を感じられるものではないものの、各種の改良による使いやすさの向上が感じられます。トラッキングシステムや固定方法の変更によって、「VRをやろう」と思ってから実際にプレイするまでの準備時間が短縮されているのは大きいでしょう。
また、すでにRiftを所持しているユーザーは、Rift Sさえ購入すれば、PCを新調することなく、そのままRiftで遊んでいたコンテンツを楽しむことができます。