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業界動向 2019.05.10

期待高まるVRのビジネス活用 フェイスブックもQuestで本腰

世界的にVRのビジネスにおける活用に期待が高まっています。フェイスブックは4月末に開催した開発者会議F8にて、ビジネス分野における活用を促進するため、同社のデバイスの法人向けサービスの刷新を発表しました。

本記事は同社の法人向けの取組についてF8での講演の内容を紹介します。

ウォルマートを始めとする導入事例

2018年はVRのビジネス活用が大きく進んだ年でした。フェイスブックは同社のVRヘッドセットを使った導入事例を3つ紹介しました。

ウォルマート

1つ目は、これまでMogura VR Newsでも何度か紹介してきた米最大の小売店ウォルマートの導入事例です。VRスタートアップのSTRIVRと共同で取り組みました。当初200店舗で12種類のトレーニングプログラムをパイロットとして実施するところからスタート。

通常のトレーニングと比較して満足度が30%向上し、70%は、他のトレーニング方法を用いた従業員と比較して高いパフォーマンスを示しました。

2018年9月には17,000台の一体型VRヘッドセットOculus Goを購入し全米の約4,700店舗に配布し、従業員教育として本格導入しています。50種類のプログラムを100万人の従業員の教育に使用するとしています。

https://www.moguravr.com/walmart-vr-training/

OSSO

医療用のVRシミュレーションを開発しているOSSO VRは、医療器具の使用方法を学ぶトレーニングを提供しています。同社のVRトレーニングでは、従来のトレーニングの230%の効果が出ているとのこと。アメリカの医療大手ジョンソンエンドジョンソンとOculus Questを使ったVRトレーニングのプロジェクトをスタートさせています。

フォード

最後に紹介されたのは、インダストリアルデザイン向けのVRツールを開発しているGravity Sketch社の事例です。2Dデザインと3Dデザインを組み合わせ、VRを使って飛躍的にデザインプロセスを改善させることを目指しています。
社名と同名のツール「Gravity Sketch」では、1ヶ月かかっていたいた自動車のインテリアやエクステリアのデザイン検証プロセスが20時間で終わるとしています。

自動車大手のフォードと、Oculus Questを使ったパイロットプロジェクトが始まっているとのこと。


(他にも多くの導入企業があることを強調)


(VRツールを作るベンダーの数も増加している)

ビジネス向けサービスの刷新

フェイスブックが事例の紹介で強調したのは、新発売される一体型VRヘッドセットOculus Questを使ったプロジェクトがスタートしているという点です。

フェイスブックはこれまで、同社が展開する2つのデバイスOculus RiftとOculus Goでそれぞれビジネス・エディションを展開していました。今回、ラインナップも含めて内容を刷新。一体型のVRヘッドセットに集中し、より法人のニーズにかなう内容に変更となりました。

Oculus Go:599ドル(64GBモデル)
Oculus Quest:999ドル(128GBモデル)

ビジネス版の特徴は拡張性、プロフェッショナル、信頼性の3点となります。

拡張性:デバイスのセットアップと管理

スマートフォンを使っての1対1対応のセットアップを行いますが、ビジネス版では1台のスマートフォンで複数台のヘッドセットを管理できるほか、ブラウザ上で複数台のヘッドセットのそれぞれの状況をモニターし、管理できるポータルを整備します。また「VRWare」などの管理ソフトとの統合が可能です。

プロフェッショナル

法人での利用に合わせて、ホーム画面から法人向けアプリ以外を表示しない、またホームボタンをOFFにしてホーム画面に戻らないようにするモードなどが設定可能になります。また、クラウドサインオンツールoktaや人材管理ツールcornerstone、Bluejeansやciscoなどのクラウド会議ツールといった各種法人向けツールとの連携が可能になり。

信頼性

自社サーバーでのデータ管理や24ヶ月のサポート(即時交換を含む)が付与されます。

出遅れたフェイスブックは巻き返しなるか

2019年5月時点はパイロットプロジェクトを展開し、刷新されるビジネス版のローンチは2019年秋を予定しています。

これまでフェイスブックは法人向けサービスが弱く、使いづらい状況が続いていました。日本国内でも、HTCやPicoなど他社製品を使い、フェイスブックのデバイスは選択肢に入れないという事例もしばしば発生しています。

Questの発売とともに、法人向けの展開を強めたいというフェイスブックの方向性が強く感じられました。


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