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トレーニング・研修 2018.11.09

VRトレーニングを100万人の従業員へ ウォルマート、VRデバイス大量導入の理由

新しいスキルを習得するには、実際に体験してみるのが一番です。また同時に仕事においては、新製品や新サービスについて詳しくなることが不可欠となります。
しかしこれらを全て実現するのは、特に規模の大きな企業にとっては難しいことです。

小売大手のウォルマートは、米国内だけで100万人以上の従業員を雇用しています。この膨大な従業員らに対して、新たなサービスや製品、顧客対応に関するトレーニングを施すのは、なかなかチャレンジングなこととなります。そのため同社は効果的で、市場の変化にも対応し得るトレーニング方法を常に追求しています。

そしてウォルマートが導入したのが、VRです。

VR教育を受けた7割が高いパフォーマンス示す

ウォルマートU.S.アカデミーのAndy Trainor氏は「これこそ、VRが活用できるシーンです。VRを使えば、(自然災害のような)殆ど発生しないケースを作り出したりすることも可能です。また実店舗の業務を、トレーニングによって妨げることもなくなります」とVR導入の意義を説明しています。

同社のVR教育に協力するのは、スポーツトレーニングでのVR活用を提案しているSTRIVR LabsとOculusです。2018年9月、ウォルマートは17,000台の一体型VRヘッドセットOculus Goを店舗に配布し、VRトレーニングを進めるプランを発表しました。

すでに実施したVRトレーニングからも、その効果は現れています。Oculus RiftとSTRIVRのコンテンツを利用した研修では、通常のトレーニングと比較して満足度が30%向上したと報告されています。

さらにOculus Riftを使ってトレーニングを行った従業員のうち70%は、他のトレーニング方法を用いた従業員と比較して高いパフォーマンスを示したとのこと。「この教育は非常にうまくいったため、我々はVRをさらに多くの従業員教育へ導入しようと考えました」とTrainor氏は話します。

不測の事態に備えるフレキシブルな教育

この経緯から導入を決めたのが、より手軽に利用できる一体型ヘッドセットOculus Goです。Trainor氏は「Oculus Goを使えば、全米の4,500の店舗にデバイスを配布し、100万人以上の従業員にVRトレーニングを体験させることができます」「我々は最も顧客と接する機会の多い従業員らにVRを使ってもらえることを嬉しく思います」と述べています。

また同社デジタルオペレーション部門のBrock McKeel氏は、「VRトレーニングは体験的な内容で、記憶に残り、迅速に行えます」と言い、VRの意義を不測の事態に備えられる点だとしています。

「店員としてBlack Friday (小売店などで大規模なセールが実施される11月のイベント)を体験していなければ、イメージをもたせることは難しいです」とMcKeel氏は語ります。「しかしVRを使えばこれを経験でき、未知への不安も取り除けます」

新たなスキルを身につけるためには、フレキシブルなトレーニングプログラムが必要です。ウォルマートとSTRIVRの開発チームは緊密に連携し、プログラム開発を行いました。コンテンツは45以上用意されており、内容の調整や追加も可能です。

”顧客”の立場に近づく

ウォルマートの実験的なVR教育の試みは、今や全従業員に対して、店舗で起こりうる全てに備えられるトレーニングプログラムへと成長しています。何よりも重要な点は、VRによって”顧客”の立場に近づくことができる点です。

Trainor氏はVRの価値を次のように語ります。「当社の従業員は、可能な限り素早く、愛想よく接客できるようトレーニングされています。(中略)VRトレーニングを使えば、従業員は、一人ひとりの来店客にはストーリーがあり、接客の際はそのストーリーを尊重するべきだ、という点をより理解できるのです」

顧客満足を第一に掲げたウォルマートの創業者。その精神を具体的な教育として膨大な従業員に伝えていくために、同社のVR活用は進みます。

(参考)Oculus Blog


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