6月8日、VTuberかしこまりのファーストライブが、MELODIA Tokyoで行われました。
VTuberのリアルライブは、キズナアイや響木アオなど、徐々に増えつつあります。かしこまりもかなり速いスピードでリアルライブを行った1人。見ての通り、ライブ慣れ感が半端じゃない。すぐに観客を煽り、コールアンドレスポンスを求め、軽快にMCを飛ばしています。
(現地会場のライブハウスはファンで満員に。非常に盛り上がっていた)
数多くの歌唱系VTuberの中でも、彼女は等身大の大人の女子キャラクターとしての魅力を振りまき続けています。
キュートでフラットなビジュアル
「みなさんこんにちは、バーチャルYouTuberのかしこまりでーす、そしてマネージャーの」「パンディーでーす」「パンディーでーす!」
この掛け合いは最初からのもの。まだ一回目は抑え気味。以降どんどん掛け合いはパワーアップしていき、どこで終わるのかわからなくなるほどに。
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初登場が2月13日。かしこまりのイメージは当時のVTuberの間ではちょっと変わっていました。なんと言ってもかしこまりの見た目が、非常にフラット。キズナアイをはじめとしたVTuber四天王のようなインパクトはありません、あえて「普通」を狙っているのが伝わる、髪型と表情。
服装はちょっとレトロポップ調の、歌のおねえさんスタイル。明るさとキュートさを強調し、女性を強調するようなフェティシズムは薄め。メインロゴも、NHKの教育番組的です。
タンバリンのマネージャー・パンディが、人格を持ったキャラクターとして常時一緒にいるのも特徴的でした。当時は既に、富士葵の「キクノジョー」やときのそらの「あん肝」などがサブキャラクターとして存在していました。ただ完全な相方として目立っているのは珍しいことでした。
続々とアップされる歌動画で、彼女の歌唱力は一気に評価されました。アルトボイスの彼女はJ-POPを得意とし、ミドルテンポやハイテンポな曲をパワフルに歌いあげ、多くの人の心をつかみました。
彼女の人気は、数々の歌唱動画、相方パンディとのかけあい、そして生放送「ヨルタマリ」で、一気にブレイクします。「普通」っぽいコンセプトが、全ていい方向に作用していきます。
大人の時間「ヨルタマリ」
3月9日から配信されるようになった「ヨルタマリ」は、VTuberファンに衝撃を与えるものでした。この配信、お酒飲みながらやっている。結構有名になってきているのに、飲酒配信なんて大丈夫なのか、事故が起こるのではないか?
豪快なスタイルの配信は成功。かしこまりに一緒にお酒飲みたい女の子属性が付きました。普段から明るい彼女がベロンベロンになると、さらにアッパーになっていく様子のインパクトったらない。
動画の序盤を見るとわかりますが、かしこまりが何も始まってないのにお酒らしいものを手にとっているのがトラッキングされており、会話を無視してグイグイ飲み始めています。パンディの進行の合間にめっちゃ飲んでいます。そして色んな回でゲップしています。
時々厄介な酔っ払い方をして、かしこまり・パンディ共に面倒くさくなることもあります。なおメタな話として、ガチで飲んでガチで酔っています、とは6月29日の配信で発言済み。
「お酒を一緒に飲む」VTuberというのは、大人の視聴者には刺さるものがある。
女子高生くらいの年代の少女をアイドル的に愛でて応援するのと、ジャンルが異なります。大学生や社会人同士で、飲みながらお互いにあーだこーだ言ってもOKそうな、身近にいるかのような感覚、生身のような存在感がものすごく強い。
酔っ払ったかしこまりが、パンディに対して笑いながら、散々な物言いをするのがおもしろい。「つまんないパンディ!」「パンディきらい!」「お前まじでなんなの!」普段以上に扱いが雑。これって、男子が飲み会の席で、酔った女子に絡まれたいなって妄想するノリ、そのものじゃないですかね。加えてバーチャルなのが功を奏して、酔っぱらいが苦手という人でも、眺めるように楽しめる。
撮影場所が「居酒屋」なのがまた素晴らしい。全編に渡って気取らない空気に覆われています。
笑い上戸で底抜けに明るい。視聴者含め誰とでも気さくに話せる。パンディとのトークのコンビネーションが鮮やか。締めで歌う時はかっこいい。かしこまりの主成分が、ほぼ全て詰まっているのが、「ヨルタマリ」です。たまにどうしようもなく世知辛い話が、2人から飛び出してくるのも魅力。飲み屋のノリで悲しい話を一緒に笑えると、親しみは強くなるものです。
なお、ファーストライブではビールを使ったオリジナルの「ちゃんまりカクテル」も販売されていました。ヨルタマリ見ている人なら、そりゃ買っちゃいますよ(ノンアルもありました)。
ちゃんまりの庶民感
かしこまりの庶民感はどんどん肉付けされていきました。
なかでも5月18日から始まった生放送「ちゃんまりゲームナイト」のスタイルは、大人の女性の寝る前、といった様子でこれまた多くの男子のハートを掴みます。
前髪をちょこんと縛って、ラフなTシャツ1枚。普段から飾らない彼女ではありますが、飾らないどころかラフの極み。それでいてやっぱり、エロティシズムはあえて排除されている絶妙なデザイン。近所の明るいお姉ちゃん、あるいは大学のサークルの友達、といった趣です。
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かしこまりは、Twitterや動画で色んな人にガンガン絡んでいくコミュ力モンスターでもあります。視聴者であろうとVTuberであろうと、みんな友達、と言ったノリでバンバン話しかけます。緊張しやすい一面もありますが、良い意味で人懐っこい。
かしこまりとパンディのコミュニケーション能力の高さがよく分かるイベントの1つが、「パンディのクイズVS」シリーズ。ゲストだろうとなんだろうと、自分たちのペースで引っかきまわしつつ盛り上げていくのが面白い。
だからこそ、歌を歌う時の彼女のかっこよさは、ギャップとなって何倍にも膨れ上がります。特徴的なのは、歌動画ではかしこまり本人はタブレット端末の中にいて、表に出ないというところ。
しっかりした歌声は心地良いし、動画の作りもセンスがいい。しかしそこにいるのは普段ふざけている「すぐそばにいるお姉ちゃん」ではなく、電子の向こうにいるバーチャルな歌姫。ヨルタマリであんなにも近くに感じられたのに、歌動画では次元が違うことを感じさせられます。
歌動画の色味が全体的にちょっとセンチメンタル風味にくすんでいるのは、かなり計算されている映像だからのはず。
仲良しの飲み友達が、気づいたら遠いところで歌い、輝いている。ちょっと遠いようで少しだけ寂しくて、でも力いっぱい応援したくなる。歌い終わったらまた、飲み屋で一杯交わしたくなるから「ヨルタマリ」へ。心地いい、大人の付き合い。
燃えろパンディ!
かしこまりを語る際に重要なのが、パンディの存在。かしこまりを引き立てるためのキャラクターとして、ネタの方向を整理する役目として、大活躍。
今では単体で高い人気を誇り、(元はエイプリルフール企画スタートではありますが)自分のチャンネルを持ち、「パンディーズ」と呼ばれるファンがつくほどになっています。
パンディの存在の強みの1つが、せこいネタも彼なら言える、というところ。角が立つ発言やメタ発言は基本的に好まれないものですが、パンディであれば、視聴者もかしこまりもゲストも、一斉に彼を叩くことができる。叩かれるのがタンバリンの仕事だもんなあ。
かしこまりや視聴者から「燃やすぞパンディ!」と言われることもあります。そこまで含めてワンセットの道化です。彼の裏側には「長いものには巻かれろ」と書かれているのもユニーク。
割とじゃじゃ馬娘なかしこまりのわがまま・やんちゃを一身に引き受けられるのもパンディの強い所。かしこまりの、いうなれば「大人の甘えん坊」なところが、パンディがいることで安心して見られるっていう寸法です。人間の男性じゃなくて、よくわからないタンバリン生命体だから、2人のやり取りを気楽に見られるという設計もうまい。
苦行と言われる「プーさんのホームランダービー」を、放送終了後も黙々と1人でやっている様子がファンの間で評判になり、好感度アップしたことがありました。耐えることが魅力的に見えるあたり、支える男のかっこよさが、パンディには反映しやすいのかもしれない。
2人の関係がよく見られるのが、ドッキリ企画。引っ掛けのためとはいいかしこまりが「大好き!」「ありがとう」と言ったり、2人で今までの歩みを思い出したりと、いい雰囲気を作った後からの種明かし、そして騙されたかしこまりの、本気の「むかつく!」。
かしこまりの貴重なデレを、素で遮って気づかないパンディのしゃべりも、この2人ならでは。まるで夫婦漫才です。
色々な企画や話題を持ち出して楽しませつつも、最終的には「かしこまりとパンディのやりとり」が最大の見せ場になっている動画の構造。この2人の対等なかけあいの見せ方は、既に多くのVTuberにも影響を及ぼしています。
ファーストライブでは、パンディがかしこまりと一緒に「ライオン」をデュエットしていて、びっくり。確かにパンディはネタ的に動画で歌ったりもしているけれども、これかしこまりのライブなのに!
でもこれこそが、かしこまりのチャンネルが追求する歩み方、楽しませ方。普段仲の悪い2
人が声をあわせ、いっぱいいっぱいなパンディにかしこまりが「頑張って!」と声をかける様子を、ファンは見たいのだもの。
バーチャルシンガーの姿と、マネージャーとワイワイ揉める姿。両方があってこその、かしこまりは、パンディと二人三脚で次のステップに向かいます。あ、パンディに足はあります。
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