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VTuber 2018.02.25

世の中案外世知辛くない! 「バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさん」が証明した、美少女になれる可能性

2017年に活躍していたバーチャルYouTuberは、複数人体制で運営されているものがほとんどでした。そんな中、たった一人で制作し人気を博したバーチャルYouTuberが、「バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさん」のねこます氏。美少女のガワをかぶった男性として活動を始めた彼は、以降のバーチャルYouTuberに絶大な影響を与えました。

「女の子の形をした男性」!?


ねこます氏がバーチャルYouTuberとして活動をはじめたのは2017年11月8日。画面に映るのはつぶらな瞳がかわいらしいみここという狐娘キャラクター。しかし口を開くと、「はいどーもー」と男性の声。キズナアイをはじめとしたバーチャルYouTuberは、女性キャラは女性が演じるのが当たり前だった当時。ねこます氏の動画は極めてイレギュラーでした。

バーチャル狐娘Youtuberおじさん。はじまります。【001】

その頃はバーチャルYouTuber自体がメジャーではなかったこともあり、ねこます氏の存在はあまり知られていませんでした。活動開始してから1ヶ月経った12月1日。第6回目の動画ではチャンネル登録者数が200人突破と発言しています。

けもみみVRちゃんねるへの要望などはここへ【006】

ところがその後、個人ブログで取り上げられたことで、ねこます氏は一気に有名人になりました。登録者数は2017年中に10万人、この記事の執筆時(2月16日)には、24万人登録に膨れ上がります。

「男声の女の子」像に対して、次第に「むしろこれがいい」「中身が男性の方が安心して見られる」と言うファンが続出。低姿勢で穏やかなねこます氏の語り口調も相まって人気が高まり、ファンアートも続々とネットにあがるようになりました。

世知辛いのじゃー!

第2回目の動画では、自分がコンビニでバイトしていることを告白。日々の生活を「世の中、世知辛いのじゃー」と発言。中の人の本音がダダ漏れなスタイルは、今まで例がありませんでした。

それはとっても世知辛いなって【002】

ねこます氏の動画は、全体的に現実社会の生活の話題が多めです。コンビニバイトで、コーヒーメーカーが洗いづらい話、ベテランのおばさんに挨拶を無視された哀しみ、ゴミ箱に入っていたスプレー缶を空にしなきゃいけない苦労、などなど。

ねこます氏の日常生活に対しての観察眼と切り口は、非常に鋭い。回が進むにつれて、ただ愚痴をこぼしているのではなく、自分の身を削って視聴者を楽しませている、いうなれば「世知辛芸」として昇華しているのがわかります。

返信するだけのつまらない長い動画【008】

東京に行った際に、コンビニの唐揚げ棒がさみしいと感じたねこます氏。立地ゆえにフライヤーがなくてレンジでチンしているらしいと知り、都会より田舎にも豊かなところがあるのを発見した……という話は、あまりにも等身大。日々の小さな出来事を、エンタメネタとして仕上げています。
 
会社や世間を責めるネタや、怒りを向けるネガティブな話、何かへの陰口は一切しません。あくまでも「世知辛いよねー」というあるあるを、笑い飛ばせるよう語っていく。ねこます氏には、確固とした思想があります。

「1番うれしかったのが、元気出たとか、頑張ろうと思ったと言って頂いてる方で、こんなくだらない動画を見て、そういう風に思っていただけるんでしたら、見下してもなんでもいいので。『思う存分、元気だしてくれ』みたいな風に思うのじゃ」
「(ヘイト話をするより)こういうくだらない動画で、元気だしてくれる方が生産性高いと思うので」

ゲーム実況動画としてねこます氏が選んだのは「就活の時にポートフォリオとして使用していたLive2Dのでもとして作ったオリジナルのノベルゲーム」。この自分の過去の、地獄の釜のフタを開けるかのような所業に、視聴者悶絶。冒頭から妹に「頼むっ!! おっぱいを揉ませてくれ!!」で始まります。加えて就活で書類審査で落ちた話も出てきて、さらに世知辛い。

胃もたれ起こしそうなゲーム実況が爆誕した【009】

視聴者と同じ目線で、人生のしょっぱい部分を自虐に変えて、笑い飛ばす。ねこます氏のブルース精神は、多くの人の心を動かしました。

ねこます氏のVR思想


彼が「夢見るオタク」として自分をさらけ出したのも、人気の一つ。ねこます氏がバーチャルYouTuberになった目的の一つが、けもみみ好きを増やす啓蒙活動でした。モフモフ狐耳、ワキ出し、和装、おへそ、スカートめくると前貼り、という属性てんこもりのキャラクターみここ。自分がバーチャル世界で、性癖詰め合わせの理想のキャラとの一体化する。オタクが究極に求める変身願望を、VRが満たしてくれることを証明しました。

ねこます氏は多くの人に、VRの楽しさを知ってもらいたい、としばしば述べています。

https://www.youtube.com/watch?v=o6zKk-zTb1Q

【VRChat】VRの力で狐娘になった

上の動画は、バーチャルYouTuberになる前に、みここモデルを使ったばかりの時のもの。10万くらいで理想の姿になれる、未来が手に入ってしまう。
 
ねこます氏は、仮想空間において最も重視されるのは見た目だと語ります。VR技術がもっと当たり前になっていったら、「インスタ映え」のように、現実の世間の人の価値観は、アバター中心に変わっていく可能性もある、と説いています(参考記事)。

かわいいは正義

今後、男声の女性キャラバーチャルYouTuberが増える、と言っていたねこます氏の予想は的中。現在ものすごい数の性転換バーチャルYouTuberが登場し、活躍しています。自分のような「女の子なのにおじさん声」が先にいれば、参入のハードルは低くなるのではないか、と考えて始めたねこます氏の考え方は、しっかりと受け継がれました。
 
確かにバーチャルYouTuberとしては異質でしたが、ネットゲームやVRチャットでは「女の子アバターの男子」は当たり前の光景だったりします。なによりVR空間において、かわいい女性であることは、コミュニケーションの心のハードルを下げます。それがわかってはいても、アクセルを踏んで、バーチャルYouTuberを始めるとなると、勇気がいる。

http://live.nicovideo.jp/watch/lv310636122
けもみみおーこく国営公式生放送

ニコニコ動画公式の生放送では10万人以上の人が視聴し、34万のコメントが集まり、アンケートでは「とても良かった」「まあまあ良かった」あわせて99%という驚異的な人気を叩き出しました。

生放送内で、ねこます氏がグラビア的に撮影していた時、おじさんがくねくねしているのを、おじさんのカメラマンが撮影しているという珍妙な状態だったそうです。しかし見ている側からあがった大多数の声は「かわいい!」。
 

「世の中世知辛くない。おじさんの動きが見世物になったりするような時代なので、バーチャルの力というか、時代の進歩や技術の進歩を感じるのじゃ」「新しい技術の魅力を少しでも伝えられていたら、うれしいのじゃ」
 
LINEスタンプも発売されました。バーチャルYouTuberのLINEスタンプを出しているのはキズナアイとねこます氏のみです。もちろん本人(男性)の声付き。

やらなければ、はじまらない

今人気なのは、決してインパクトがあったからだけではない。クリエイターとして真摯に取り組む姿勢に、心打たれた人が多いからです。コメントやTwitterでは、ねこます氏の活動を応援したいという声が、数多くあがっています。

カメラに向かってありがとう【010】

「ムリそう、と思って諦めるよりかは『はっ、こんなの簡単そうじゃねぇかよー』『しょぼいモデルしやがってー』みたいな感じで見下しから入って挑戦したら、その人の人生にとってちょっと良いことが起こるっていうか。新しいことを始めるってことは、何かプラスしたり成長になる要素があるので。やらずに諦めるよりは、見下しから入って挑戦したほうがいいと思う」

ねこます氏のVRの思想と、バーチャルYouTuberは個人でもできるという実証は、他のクリエイターに多大な影響を与えました。今人気のバーチャル美少年・届木ウカなど、ねこます氏のフォロワーは増え続け、日々新しい表現を模索し、さらに自由なバーチャルの世界を見せてくれています。
 
次回は、荒廃した世界に住む少女を描く物理演算芸バーチャルYouTuber・カフェ野ゾンビ子を紹介します。


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