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VTuber 2018.05.27

元気新人ナースVTuber「名取さな」友達感覚のインターネットミームの申し子

かつてから人気のあったVTuber名取さな。ここしばらくで急激に人気が伸びています。
チャンネル開設は2018年3月16日。5月に入って連日の急上昇。登録者数3万人を突破し、いまだ勢いは衰えていません。

(5月25日の急上昇ランキング UserLocalより)

親しみやすいノリのよさがなによりも魅力。同時にバーチャルの存在としての、しっかりした信念を持ったVTuberです。
 

元気いっぱい新人ナース

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超元気スタイル、バーチャルサナトリウムの新人ナースとしてデビューしました。当時からのファンは、かわいらしいピンク基調の見た目と、クセになる力いっぱいの声にメロメロだったはずです。一番最初の動画だけで、チャンネル登録者数が4千人を超える人気っぷり。

ちなみに彼女が誕生したリアルのきっかけは5月12日の配信で話しています。これが通ってたら今の名取さながなかった、と思うとかなり意外。

初期には、声でキャラクターを動かす「休むな!8分音符ちゃん」(VTuberの登竜門的に有名なゲーム)で、マシュマロ(匿名で相手に投稿するサービス)解答をする動画をアップ。
その後、人気RPGの『UNDERTALE』のプレイ動画を投稿。

ゲーム世界にどっぷりとのめり込むプレイスタイルは、見ていてとても気持ちがいい。手付けで動かしているであろう表情が豊かなのもかわいらしい。

5月から彼女は生放送配信をスタート。以降、彼女の個性が炸裂し、人気が急上昇します。

幼馴染のような親しさとネットスラング

視聴者を「せんせえ」と呼ぶ名取さなの配信。「視聴者」に向けてというよりも「友人」に話しているようなノリ。いい意味でなれなれしい。距離感がめちゃくちゃ近いです。

トークにおけるネットスラング使用率が、VTuberとしてはかなり高い。通称「インターネットミームの申し子」「ネットサーファーさな」。特にニコニコ動画文化圏で使われる語録が、バンバン出てくる。

配信を聞いていると、スラングの元ネタになっている作品類への興味ではなく、スラングをみんなで話せるような環境そのものを好んでいるのが分かります。

視聴者としては、一緒にどろんこになって騒いでくれる楽しさがある。

本人も自認していますが、彼女は時折語調が荒い。
「うっせ!」「きったね!」「やべっ!」「いい加減にしろよお前ら!」「あったりめーだろうが!」「おぼえとけよ」「しょうがねーな」などなど。
普通に使ったら反感を買いそうな喋り方。なのに、イヤミが全くない。

彼女はこれらを、意図的に言っていることを明かしています。聞いてくれている人は、もう既に「仲良し」だと思いたい。だからかしこまらずに話せるようになりたい。気取りたくない。でも嫌われたくもない。

「仲良いつもりだから口悪くなるわ。ごめん、嫌いにならないで」

彼女は煽りやイキリセリフのあとには、だいたい「ってね」を付けます。そして「ごめんね」の使用頻度もめちゃくちゃ高い。

視聴者と煽り合戦をした分、気を回すことも自然にできている。どんなに口が悪くなっても、名取さなというナースは、人を傷つけません。空気を重くすることもなく、ネタで楽しくまわします。
 
「なるべくみんなと仲良くなれたらって思ってるんだよね。ごめんねなんか。最近ちょっと、遠く行っちゃった?みたいな…まーかわいいからーみんなが遠く行っちゃったって心配するのわかるけど~、名取は近くにいるぞい!…ってね」

視聴者も彼女が「仲良し」だとわかっているもので、煽りに対して「うるせえよ!」「やーい!」「まだ負けてない」などのコメントが増えます。なお視聴者が負けた(本人基準)と感じた場合は、名前にナスの絵文字を入れるのが定番になりました。

視聴者は彼女の配信にいくと、小中学生男子的なロールプレイをはじめます。好きな幼馴染の女の子を、ついついバカにしていじめてしまう感覚。「こいつのこと好きになるのちょっと悔しい」みたいな煽り方。

一方名取さなは、バーチャル幼馴染小中学生女子(17歳ですが)のような立ち回り。変なことをしてきたら「は?なにいってんの」的に冷淡に返す。いやなものはイヤだとはねつけ、好きなものは素直にはしゃぐ
結局、とても仲よし。

名取さなは直球に弱いらしく、視聴者が「好き」と好意を伝えると、ヘニャヘニャになりがち。失敗を突っ込まれると「くぅーっ!」が口癖で、照れながら凹んでしまう。視聴者はそれを見て「勝った!」なんてこれまた男子っぽい反応をする。

名取さなが照れているかわいさを見たい、と最初から好意を抱いている時点で、視聴者の負けなのだ。配信の和気あいあい感は必見。言葉はきつくても、相互に思いやっている、あったかい空間ができている。

この距離感は近年だと月ノ美兎や剣持刀也の、視点を視聴者に合わせ、自分を時々下げるスタイルと似ています。煽り煽られのトークは、会話技術と人柄あってこそ。失敗すると大惨事になりかねないのですが、名取さなはざっくりした話し方と、時折負けちゃう様子(通称・クソザコ化)、雑な言葉の反面所々で見せる真摯な優しい思いやりの言葉で、ファンの心を掴んでいます。

ただし、あくまでもロールプレイ。SM配信ではありません。たまに度が過ぎたりセクハラする人も、やっぱりいます。それらはゴリッと切り捨てます。やりすぎはダメ絶対。
「みんな最近、当たりが強いの、きらいじゃないけど好きじゃないぞ!」の言葉は、バランス感のある名言。
 

生きてるだけでえらいよ。

彼女を知った人が急増した理由の一つは、5月14日配信時に生まれたカウントダウン雑魚でしょう。

これは数字をカウントダウンしていって、最後「0」の代わりに「ざ~こ」と煽りを入れるもの。これを聞いて動画を見に行ったらハマった、という声がTwitterでは多いです(カウントダウンはいわゆる同人催眠系音声で使われる、これまたネットミーム)。このヒットを受けて、リスペクトで真似をして動画をアップするVTuberも現れました。
 
びっくりするようなスピードでファンアートが増えました。彼女のイラストはTwitterで#ヌォンタート」で検索すると見つかります。一見謎の単語ですが、これは「ファンアート」とスマホでフリック入力しようしたらミスって出てしまった文字。語感がいいのでそのままにしたそうな。こういう言語センスも面白い。彼女はヌォンタートを飾る美術館を、後に背景として制作しています。


「ざ~こ」がバズったため、ヌォンタートは「ちょっかいかけてくるギャル」みたいなイラストが多め。

もっとも彼女はソフトSキャラを演じられるものの、人を本気でバカにしたり、マウントを取ったりすることはほとんどありません。Sキャラだと思いこんでいる人は、配信を聞いてね! あくまでも、じゃれあうバーチャル友達になるのが上手いのです。

彼女の元に「とにかく罵って」というマシュマロが来たことがあります。しかし名取さなは、答えます。

「名取は純粋に気になるのですが、罵ってって言われてはいそうですかわかりましたって罵られて嬉しいんですか?それは本物ではないのでは?」

ここが、彼女がVTuberとして、バーチャルの意味をしっかり捉えている、線引しているのがわかる部分。名取さなワールドはどんなに楽しくても、都合のよい夢は与えない。要所要所で、名取さなは都合のよいキャラクターではなく、バーチャルナースとして「本当に生きている」存在なのだということを、諭してきます。

視聴者からの真剣な内容の質問には、彼女の哲学にのっとって、きちんと解答していきます。
「別に何にも出来なくてもいいじゃん。生きてるだけでえらいよ。」
やっぱり彼女は生粋のバーチャルナースだ。

一方で「ガチ恋(キャラクターに本気で恋に落ちること)」勢には、しばしばきっちり線を引きます。どうしても観客側に視線が近いので、惚れちゃいそうになる。
「先生たちちょろすぎて心配になるでよ」

彼女はエンタテインメントに対して、ストイックなこだわりの持ち主でもあります。
たとえば5月14日配信回では、放送内で地獄に落ちる演出が入っています。アクアリウム回では、自分の後ろ姿が背景に映り込むという小ネタを挟んだりもしています。

このスタイルは、平均4つのブラウザウィンドウを開いて配信を同時に聞くというほどVTuber大好きなギルザレンIII(「にじさんじ」所属の配信者)も大いに感服しており、リスペクトした動画を作るほどです。

名取さなの謎

明るく楽しい彼女。しかし不思議な部分がいくつかあります。
まず気になるのは、彼女の腕に巻かれた包帯。なぜかこれを「包帯じゃない」と執拗に否定しています。一度や二度じゃない。しかも途中から「わかんない!」とごまかすことも。

次に、名取さなの部屋。バーチャルサナトリウムがなんなのかは明かされてないのは置いておくとして、あまりにも殺風景。ぐしゃぐしゃに包丁で刺されたうさぎのぬいぐるみ、上にある監視カメラ。少なくとも普段のハッピーな彼女から連想できるような部屋ではない。VTuberになる前の彼女がここに1人で暮らしていたと思うと、ちょっと恐ろしい。

この世界、0歳からナースになれるらしい。じゃあなぜわざわざ17歳で彼女はナースになったんだろう。
 

第一回目も含め、口癖のように「生きててよかった」とよく言うのは、ちょっとドキッとさせられる。名取さな、生を噛みしめ過ぎている。そんなに大層なことなんだろうか。なにかあったのか……?

このあたりの、ある意味で伏線ばらまきにも思える部分が、今後どう作用してくるか、気になります。

メディカルテット

名取さなは、医療系のVTuber4人が集まったVメディカルテットの一員です。

ダウナーゴシック系ナース、薬袋カルテ。名取さなとはお互い憧れながら声掛けできなかった仲でした。
バーチャルお薬YouTuberおじさん、たかじんちゃん。優しいキャラなのもあって、名取さなが最もいじってネタにしている対象。
地獄の獄卒、六道冥。かなり前から名取さなとは仲がよく、頻繁に会話を飛ばし合っています。

4人は勢いで4月26日にコラボ。5月に入ってからさらに仲良し度があがっているので、今後のコラボ活動に期待したいところです。

興味深いのが、4人のスタンスがVTuberとして少しずつ違うところ。
創作・クリエイター型(薬袋カルテ)、知識系(たかじんちゃん)、エンタテイメント(名取さな、六道冥)。今のVTuber界の大きな3つのジャンルが、4人に詰まっている。

4人ともわりと、なれ合いではなくストイックに自分の動画を作る関係。協力関係が更に深まっていったら、すごい作品が生まれる可能性、ありそうです。
 

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