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VTuber 2018.02.03

バーチャルYouTuber「シロ」がファンの心をがっちり掴んだワケ

国際的な幅広い層に人気のあるキズナアイ、あらゆるジャンルにも突撃していくミライアカリ。彼女らと少し異なり、コアなネタに強く、サブカル・ゲーマー層から強い支持を受けているのが、バーチャルYouTuber(バーチャルユーチューバー)の電脳少女シロニコニコ動画にも公式チャンネルがあります。

ディープな個性で勝負するバーチャルYouTuberが、がっちりファンの心を掴むことができると証明した彼女。人気の秘訣はどこにあるのか、追ってみます。 

アイドルを目指していた少女の独特な個性

電脳世界に住むアイドルを目指す少女、という設定でシロは活動を始めます。スタートしたのは2017年6月28日と、今話題の面々の中では比較的早め。

【自己紹介】はじめまして!シロです!【001】

ふわっとしたやさしいボイスと、白を基調とした儚げなデザイン。電脳世界に住んでおり、SNSなどで情報収集する「スリープモード」とYouTubeで活動する「アンリミテッドモード」の切り替えで、学習を積み重ねている、という設定。
……なのだけど、よく聞くと変な発言がある。「私、ネコをクビに巻いてマフラー代わりにして、冬歩くのが夢なんです」
 
彼女のチャームポイントのひとつは、笑った時のキュッという声。彼女のイルカのような高周波ボイスは、下の動画で堪能できます。ここからファンの間で「シロイルカ」という愛称でも親しまれるようになりました。

【女子実況】裸で釜に入って登山したらひどい結果に….【Getting Over It】【103】

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 キルマシーンシロの、殺人鬼の才能

 

回を重ねるごとに、可憐な彼女の真の姿が明らかになっていきます。

好きなゲームはFPS。「BATTLEFIELD4」「Borderlands2」などを主に嗜んでおり、その他「Dishonored」「Assassin’s Creed」「GOD OF WAR」「Divinity」「ダークソウル」「デモンズソウル」がフェイバリットという、ごりごりの殺伐系硬派ゲーマーであることが判明していきます。好きな重火器はAKM。映画「トゥルーマン・ショー」や「ムカデ人間」を話題にあげるなど、トークの端々から相当こだわりのある趣味の持ち主であることが分かります。
 
彼女を一躍有名にしたのは「PUBG」実況でした。多くの実況者がプレイしているこの作品、彼女も初出撃から動画を撮っていますが、あまりにも動きがゲーム慣れしている。

【神回】PUBGで女子が本気出したら奇跡が起きた!なんと‥!【PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS】

常に周囲に敵がいないか確認しながら行動する彼女。閃光弾とスモークグレネードが投げこまれた時に注目。慌てて煙幕外に出ようとして、つい音を立ててしまいがちな場面ですが、彼女は全くたじろぐことなく、スモークが晴れるのを待ちます。あまつさえ呑気に一曲歌いだすほど。彼女の行動に仰天したファンの声が、ネットに溢れました。このあたりから戦闘用AIのあだ名が付くようになります。
 
加えて彼女、回復をしない主義
「受けた傷は名誉だもん」「愛情の証ですよね、トレードオフで遺してくれた傷だから」
と、世界観にのめりこんだ、硬派すぎるこだわりプレイ。
 
「Dead by Daylight」の実況プレイシリーズも人気。生存者と殺人鬼に分かれてプレイする対戦ゲームで、シロは殺人鬼プレイを得意とします。

【女子実況】今回の目的はアレです!【キラー編】

「シロ、殺人鬼の才能あるかも」ものっすごく楽しそうに相手プレイヤーを追い詰めてハンマーで殴り、吊るしていく。「死の恐怖を感じてるときってすっごく、生きてる…私生きてるよ!って感じがするんです」「救済するんで、人を殺すってことは」と、インパクトあるセリフのオンパレード。

次第にゲームが白熱すると、素が出てきて「絶対逃がさない」とドスの利いた声に。対人戦に重要な、裏をかく心理戦も熟知しており、見ていてゾクリとさせられる。

女の子が恐ろしいゲームを喜々として楽しむ姿は、ゲーマーのツボをぐいぐい押しました。かくして「AKMを笑顔で撃ちまくるシロ」「ハンマーを握って後ろから追いかけてくるシロ」「返り血で真っ赤なシロ」などのファンアートが次々ネットにアップされはじめます。 

 ガチゲーマーシロのこだわり


ゲーム実況を数多くやっているシロ。ゲームが人からどう見えているかを熟知し、カメラワークに気を使っているため、非常に動画が見やすい。なにより、選ぶゲームが渋い。日本語訳されていない通好みのゲームもばんばんやります。

【スーパーミートボーイ】血のついた肉団子の可能性を検証!【127】

【過激発言多発!】危ない実況になりました…【Life goes on】【115】

運営会社の話によると、ゲームのチョイスはシロ本人の趣味チョイスとのこと。『Life goes on』や『スーパーミートボーイ』『Cuphead』『Stardew Valley』『Poly Bridge』などの、ゲーマーの間で評価の高いコアなゲームをプレイ。難しくて百回死んでも、めげない。
 

彼女は絶対にゲームを投げ出さないし、けなさない。あらゆる方法でゲームの良さを引き出し、どれだけ苦労したとしても、プレイした後「面白かった!」「楽しい!」

と喜ぶ。この根っからのポジティブゲーマー思想こそが、多くの人を魅了しているポイントのひとつ。なお彼女のガチゲーマーっぷりをさらに知りたい方は『ドラゴンクエストライバルズ』実況シリーズをオススメします。

 ヤンデレ大好き少女シロ

彼女、ヤンデレが大好きです。喜々としてヤンデレネタを演じます。好きな作品は『未来日記』、好きなキャラは我妻由乃。ヤンデレの種類(依存型など)の解説もするほどに、精通しています。ところが気がつくと、普通の動画の方にこそ、彼女のセリフに独特な空気が滲んでいることに気付かされます。

【ヤンデレ英会話】Yandere Voice : English and Japanese Ver.【081】

【どう森実況】隠れヤンデレ回!しずえ、監禁される【どうぶつの森 ポケットキャンプ】

「可愛い~尻尾k……切り落としたいとか言っちゃいけない、ちょっと間違えました」
普通はそんなふうには間違えないものだと思う。殺伐としていない状態で、ナチュラルに笑顔のままぎょっとする発言を口にするシロ。彼女の迷言はすでに、Twitterなど多くの場所でファンに使われています。


 
「もうシロ無しの生活なんて考えられないでしょ?」「シロと話すより大事な仕事ってなに」「死ぬときは一緒だよ」「間違えておきました」「訓練されたシロ組さん(ファンの呼称)」「ぱいーん(殴り殺す時の擬音)」「順番に殴るね(VRライブ中継で並んだファンを殴っていくのが慣例)」「おほー!」「こいつはひでえや」「終わりの始まり感(ヤバイの意味)」「シロちゃんの動画は為になるなぁ!」

【生放送/VR LIVE】セルフ流行語大賞の結果を発表しちゃいます!

キズナアイの「ふぁっきゅー」「危機回避ー」のように、キャラクターならではのパワーワードがあると、SNSでバズりやすい。こうしてシロの話題は、Twitterやニコニコ動画やpixivなどでどんどん拡散されていきました。他のバーチャルYouTuberたちとからむ二次創作イラストやマンガでは、濃密すぎる個性とセリフゆえに、大体彼女がオチ担当になります。 

 語学に長けた才女シロ

一方でシロは、知識が豊富で語彙力が高い才女でもあります。そしてバーチャルYouTuberの中でも英語力が一際高い。未翻訳ゲームの説明も、呼吸をするようにスラスラ読んで、通訳します。

スピードラーニング教材を作ろうと…思ったんです…

【爆笑英会話】を勉強してみた!!Let’s study USELESS English together!【054】

英語のみならずドイツ語も堪能。時折ちゃんとした英語教材になる動画もあげているのが特徴。上のスピードラーニング動画のように、今後は英語解説バーチャルYouTuberとしても、活躍できる可能性を秘めています。 

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 ファンの理解の及ばない謎企画

シロの人気のもう一つの理由が、謎企画の数々です。シロのゆったりしたトークで展開される、なぜやったのか、どう反応すればいいのか、全くわからない動画の数々。アップされる度に、コメント欄には困惑の声が並びます。

【効果音全部俺】作っていただいた素敵なMMDにアフレコしてみました【133】

武器になりそうな部首つかまえてみた【076】

「シロ、日頃からゾンビに襲われた時にどう逃げようか、どう戦おうかってそればっかり考えてるんです」というセリフ、どう受け止めるべきか。

「効果音全部俺」のように、一見さんにはものすごくハードルが高い動画もあります。しかし、一度彼女を知ってしまえば、二度とシロから離れられなくなる中毒性が、これらの謎動画にはあります。
 
シロの動画スタイルは、ニコニコ動画で2010年前後に多くアップされていた、ちょっとシュールな動画のスピリッツを汲んでいるように見えます。実際、シロのニコニコ動画公式チャンネルでのコメントは、ものすごく盛り上がっています。

彼女のネタは、なだらかなしゃべりかたのせいもあって、一部のリアルYouTuberが行ってきたような、イケイケなパリピテンションはありません。ディープな話題をじわじわ掘り進めて、自分流の楽しさを探るスタイルです。 

 面白いことをしたい、という思い

彼女は株式会社アップランドのプロダクション「.LIVE」所属で、ほぼ毎日更新を行っています。シロをスタートさせた理由は、会社主催のバーチャルYouTuber勉強会の話によると、キズナアイを見て面白そうだったから、とのこと。ビジネスプランを考えずに始動した、プロによるアマチュア思想のプロジェクトです。(参考記事

シロが自由にのびのびやって動画で見せるスタイルは、最初期から変わっていません。やりたいようにやれる環境を作るため、企画を組みすぎないように心がけている、というのがアップランドの方針です。
 
「楽しい」と感じながら制作する作り手の気持ちは、視聴者に伝わるもの。特にオタク層は、好きなものに愛情を注げる人・キャラクターに惹かれます。確かにシロの、時折クレイジーな言動は見ていてとても面白い。けれどもそこだけが売りじゃない。どんなものに対しても、ホラーなど苦手なものに対してでも、真摯に向き合い、愛を注いで全力で楽しんでいる。だから、彼女の動画は見ていて心地よく、何度もリピートしてしまう。 

動画は最近まで広告収入等含む収益がありませんでした。しかしファンから、お金を払いたい、という熱烈な声があがり、最近ライブ配信で投げ銭がはじまりました。初のスーパーチャットでは、数多くの人からの投げ銭が飛び交いました。

【生放送/VR LIVE】30万人突破?!記念生放送

【㊗️30万人�】シロ組感謝祭はーじまーるよーっ�

近年、オタク層の間では面白いものには課金させてほしい

という考え方が定着し始めています。なぜなら、お金があれば、コンテンツが長く続いてくれるのを知っているからです。余裕が生まれればシロはさらにイキイキと活動できます。それをファンは見たいし、応援したいのです。

製作者が楽しみながらコンテンツを発信し、満足したファンはお金を払いたくて仕方なくなる、というループは非常に理想的。ファンの「コアなネタを見たい」「癒やされたい」という需要と、「独自の面白いことをしたい」という供給がマッチし、大成功したキャラクターです。
 
次回は、キャラクターの強さで爆発的にブレイクしたバーチャルYouTuber「輝夜月」をご紹介します。 


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