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VTuber 2018.04.15

これで分かる!「月ノ美兎」徹底紹介 その魅力と信念とは?

人気バーチャルYouTuber(バーチャルユーチューバー / VTuber)の月ノ美兎が行った、ニコニコ公式生放送の「月ノ美兎の放課後ニコ生放送局」が、ファンから非常に好評でした。

「美少女委員長が放送してみた」という生易しい言葉でくくれない。バーチャルムカデ人間ごっこという奇想天外な企画をしたり(発案は本人とのこと)、ホットケーキAV女優森永(健全)を喜々として話したり、どうにもベクトルがおかしい。

それでもまだ彼女、ニコニコ生放送ではおさえていた方でした。普段のYouTubeライブでは、大阪の遊郭である飛田新地の話をしれっとするほどの、濃いキャラクターです。
 
バーチャルYouTuber「月ノ美兎」サブカル女子高生委員長が人気急上昇中(MoguraVR

月ノ美兎はコアなサブカル・オタク層の心をがっしり掴んで、人気うなぎのぼりのVTuber。破天荒に見える彼女には、しっかりとした信念がありました。

月ノ美兎伝説のはじまり

彼女が活動を開始した2月7日。「にじさんじ」(iPhoneXの顔認識を使ったアプリ)の公式ライバーとして、当初は性格はツンデレだが根は真面目な学級委員」公式サイトより)という当たり障りのない設定のキャラクターでした。

ところが箱を開けてみたら、パンチのあるトークの連続。小学生の時に校庭の雑草を食べて種類をコンプリートしようとしていた。好きな映画に「フリークス」「テレクラキャノンボール」が入っており、カルト映画「ムカデ人間」も視聴済み。好きな食べ物は鍋に入っている「赤子の拳」のようなモツ。

ほかのVTuberがメジャーゲーム実況をする中、彼女は劇団「ヨーロッパ企画」のシュールなブラウザゲームをプレイ。洗濯機の上からノーパソで配信し、スマホの待受画面はLINEニュースのどうでもいい記事のスクショ」(集めるのが趣味とのこと)。

ギャルゲーをやるときは現実に近づけるため、BGMをオフにして、メッセージボックスを手で隠しながらプレイ。一人で食事する動画をアップするパンツマンや、「感じてみた」シリーズのラミ子のファン。

彼女はコアな話題を呼吸をするように話します。おっと、これはガチガチの個性派サブカル女子だぞ。



リアクションもユニーク。有名なのは、放送したらマズいゲーム画面になった時に自分のアバターで画面をとっさに隠した「私で隠さなきゃ」と、スマホのケーブルを抜いて自分のアバターが消滅したままゲームをプレイした「これがバーチャルYouTuberなんだよなあ」発言。

VTuberはキャラクターをロールプレイするためガワが重視されるもの、という認識をあっさり壊してしまいました。
 

インターネットサブカルチャーの観測者

サブカルと言ってもジャンルは数多くあります。委員長はアングラ系やエログロ系ではなく、どうやらインターネット系に特化している模様。幼い頃からめちゃくちゃネット見ている、と発言をしています。

ネットの有名どころの話題はしっかりおさえており、視聴者が挑戦状的に投げかけてくるディープな話もことごとく反応。特にFlash文化全盛期は、今のように簡単に情報を集められなかったことを考えると、彼女のネット没入度がわかります。
 
自分と同じジャンルのものが好きで、しかも濃い、となるとサブカル層の心はぐいっともっていかれざるをえない。かつて好きだったものの話をする女子高生、好きにもならずにいられようか。
マシンガンのようにマニアックな話を撃ち出す彼女。ただし暴走列車ではなく、かなり常識を持った上でトークの調節をしています。
 

卓越したネットリテラシーの持ち主

ニコニコ公式生放送の際、彼女はひとつ事件を起こしました。普段ニコニコ動画では「クソ」がNGワード設定されていることがあります。ところが委員長の動画において、彼女の愛称としても使われているので「クソ」の語は必要不可欠。

そこで自分の放送のときだけ自由に仕えるよう、NGワードを解除するという事態に。公式ルールの方を動かしてしまいました。

サブカルジャンルは知識量が物を言うため、マウント取り合いになりがち。視聴者がそのモードに入ると、ギスギスしてトラブルが発生しやすくなります。

しかし、委員長は視聴者が付けたあだ名である「クソ雑魚委員長」「サブカルクソムカデ」などの語を自分に集中させることで、空気を緩和。失礼な言葉ではあるけれども、うまく使うことでエンタテイメントとして成立する、絶妙な立ち回りをしています。罵倒に近い単語も飲み込んでネタにしていく姿勢、とても器が大きい。

もちろんファンの「クソ」は、芸人気質な委員長へのツンデレ気味な愛情表現(ですよね?)。自分の放送外では、委員長トークをしないなど節度を守るよう、本人が注意をきちんと促しているのも立派。

時折イキリ芸を見せたり、好き勝手な行動をとることで、視聴者を困惑させる委員長。けれども必ず最後は自分をネタに回し、みなのツッコミを一身に浴びながら、明るい笑いで生放送をまとめていく。

彼女の人気の理由は、トーク技術と知識量だけではなく、相手を不快にさせない精神性にもありそうです。

交流がキャラクター像を育てる

委員長の魅力は、クリエイティブな技術を持った人間を次々引き寄せています。

今までの放送では、Unityを利用したオリジナルゲームが視聴者により何本も投稿され、本人が実際にプレイしています。視聴者も一斉にプレイしたことで、ゲーム結果ツイートの「ムカデ人間」がTwitterトレンド入りしてしまったほど。

またかなり早い時期に、月ノ美兎のオリジナルイメージソングMoon!!がニコニコ動画に投稿されました。委員長はすぐそれを拾い、自身のラジオ番組で実際に歌唱。ニコニコ公式生放送でも披露され、月ノ美兎テーマソング状態になっています。

ファンの中から、委員長のMMD3Dモデルを作る猛者が複数人現れました。そのうちの一作品がニコニコ公式生放送で正式採用。作者は月ノ美兎の「お父さん」になりました。

『だがしかし』のコトヤマなど、マンガ家のファンも多く、二次創作イラストが次々に上がる度に、ネット上で拡散されつづけています。
 

委員長は、同じくにじさんじ所属のJK組の静凛(しずりん)、樋口楓(でろーん)と何度か一緒に放送しています。特に同期のでろーんとは大の仲良し。双方が自分の番組のゲストとして、気軽に呼んでトークする関係です。

でろーんはピュアな元気っ子で、委員長はマニアックな文系。趣味は全然違うのに、2人だとお互い普段よりリラックスしており、キャラ付けの敬語を忘れて話すことも。

これがファンの心を直撃。委員長とでろーんが一緒に過ごすファンアートが、もりもり生まれ続けています。VTuber同士の関係性から、ファンの中でキャラクターが補完されていく好例です。
 

情熱のプロデューサー

月ノ美兎のニコニコ生放送後に行われた、「月ノ美兎の公式ニコ生反省会【雑談】」は彼女が本領を遺憾なく発揮した放送になりました。

一応は公式ニコ生を振り返るという体でしたが、放送の大半は彼女がどっぷりハマり続けている「アイドルマスター」の話で終止するというもの。

「アイマス」ファンなら誰もが知っている「団結」を全員のモノマネで歌うなど、器用な技術を披露しています。

彼女は「アイドルマスターシンデレラガールズ」の喜多見柚というキャラクターを強く推しています。その理由を語る言葉は、途中から本人のVTuberとしての情熱の告白へとつながっていきました。
 
「(喜多見柚は)意外と自己評価が低い子なんですよ。自分は普通の子だって自称してるんですよ」

「喜多見柚も、自分は平凡であるということに、特に引け目はとってないんですよ。彼女はそれを理解した上で、自分が楽しむってことを一番に考えているような子なんですよ」

「私も同じだ! 私も彼女の柚イズムを取り入れるために、自分が楽しめりゃそれでいいと。数字は関係ねえ、そういう心持ちでやってますよ! それが私が喜多見柚から学んだ哲学だ。今の私があるのは、喜多見柚のおかげなんですよ」
 
登録者数がわずかな期間で急激に伸びた彼女。大人数に見られるプレッシャーがゼロなわけはなく、ニコニコ公式生放送では何度も「吐く」と連呼していました。

「自分が楽しめりゃそれでいい」という、喜多見柚イズムから学んだ信念を訴える彼女。この発言こそが、公式ニコ生を経ての「反省」そのものであり、彼女自身の信念の再確認だったようです。
 

3D化と彼女の夢

好奇心旺盛な彼女は、あらゆることに挑戦し続けています。最近ではかつてから委員長がファンだったマンガ家の小林銅蟲とクリオネを食べています
 
にじさんじ組は企画に関しては、比較的自由に個人が行えます。そこで委員長が計画しているのは、定期的なラジオ番組の制作です。現在一回だけテスト配信していますが、さすがに1人で音響から進行から全部やるのはキャパシティオーバーだったらしく、現在調整中。

ノリはオールナイトニッポンに近い。視聴者からの声はSNSやコメントでは拾わず、メールでのおたより募集。ネタを精査し、一旦寝かせることができる手段を取ることで、視聴者からのネタと自分のトークのテンポをコントロール、エンタテイメント性を高めようとしています。

月ノ美兎の放課後ラジオ メール募集内容



インターネット大好きサブカル委員長は、Flash文化やテキストサイト、MAD動画などへのリスペクトを毎回話題にします。
 
10年前とかの懐かしいサイトの話たまにするじゃないですか。着々と私もその一部になれているなと思うと、すごく嬉しいんですよ」

「もし私がネットに姿を現さなくなったとしても、月ノ美兎ってそういえばいたよねとか、そういう話を誰かがするとするじゃないですか。多分1人くらいはしてくれると思ってるんですよ」

「私は、ネットの歴史のちっちゃな一部になれたことが、とっても嬉しいです」
 
彼女の夢は、自分が愛したインターネットサブカルチャーの一要素として、誰かの記憶に残ること。いうなれば示準化石的存在になることが目標なのでしょう。数字や順位はそれほど視野に入れていないようです。

「一流のバーチャルアイドル」と彼女はしばしば口にしますが、インタビューによるとそれは、「古今東西ほとんどのバーチャルYouTuberさんがわたくしのラジオに出たことがあるみたいな状況を目標」という変わった視点です。アイドルと言うか、黒柳徹子と言うか。

彼女は、きっと今後も「好き」「面白い」を追いかけて、時には人には理解できないような企画もガンガンやっていくでしょう。たとえそれが非効率的だとしても、真剣に「面白い」をやっているVTuberには、ちゃんと人が集まってくる。

一時的ではありますが3D化できた彼女。やれることは一気に増えました。どこまでも自分の趣味をばらまいて突っ走って欲しい。本人が楽しそうだったら、多少ネタがわからなくても、視聴者はついていきたくなるものなのです。

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