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VRChat 2024.03.02

なぜ、サンリオはメタバースにテーマパークを作ったのか? サンリオVfes統括プロデューサーが語る2つの軸

2024年2月19日から3月17日にかけて開催される、「SANRIO Virtual Festival 2024 in Sanrio Puroland(サンリオVfes)」。

VRChatの特設ワールド「バーチャルサンリオピューロランド」を舞台とした、世界最大級のメタバースイベントです。期間中はおなじみのキャラクターたちが登場するパレードを見られるほか、毎週末には豪華アーティスト勢が出演する音楽ライブも開催されます。

これまでは「バーチャル音楽フェス」として開催してきた本イベントですが、3回目となる今回はさらにコンテンツを増やしてパワーアップ。約1ヶ月にわたってさまざまなイベントやコンテンツを楽しめる、「バーチャルテーマパーク」となっています。

Moguliveでは今回、そんなサンリオVfes全体を統括するプロデューサー・渡辺大貴さんにインタビューを実施。VRChatでも恒例のイベントとなりつつあるサンリオVfes全体のコンセプトを改めてうかがいつつ、イベントに込める思いと、今回の見どころを聞きました。

3回目を迎えたサンリオVfesは、「音楽フェス」から「テーマパーク」へ

――前回の「SANRIO Virtual Festival 2023」では「さまざまなクリエイターの作品に触れて『好き』を見つけられるフェスにしたい」というお話がありましたが、改めて前回までの振り返りをお願いします。

渡辺:
前々回からの系譜でいうと、2021年に開催した「SANRIO Virtual Fes in Sanrio Puroland」はサンリオとしても初めての取り組みであり、「バーチャル音楽フェス」として行われた2日間のイベントでした。

その次の「SANRIO Virtual Festival 2023 in Sanrio Puroland」は「コミュニケーション」をテーマとして掲げて、「『バーチャル音楽フェス』から進化する」ことに挑戦しました。

具体的には、フェスの開催期間の最初の8日間に周囲の人とコミュニケーションができるイベントを用意して、参加してくれるユーザーさんに楽しんでもらう。そうして熱量が高まったところで、最後の2日間の音楽フェスにぶつかっていってもらう。そのような設計でやっていたのが前回です。

また、2021年は主にアーティストさんの力を借りたバーチャルフェスだったのに対して、2023年はVR上で活躍されている大勢のクリエイターさんの力をお借りできたことも大きかったように思います。サンリオのオリジナルパレードの制作や、VRChat上で活動されているコミュニティとのコラボレーションといった取り組みがそれですね。


(サンリオVfes2023より、バーチャルパレード「Musical Treasure Hunt」のワンシーン。パレードの模様は現在もYouTubeで公開されている)

「コミュニケーション」は、我々がすごく大事にしている、ベースとなる思想でもあります。たとえ同じコンテンツであっても、誰かと一緒に体験することでその価値は大きく変わるんじゃないか――。サンリオVfesでも、そのようなコミュニケーションが自然と生まれる仕掛けを施したかったので、パレードを制作したり、VRChatのコミュニティのみなさんのお力をお借りしたりすることにした次第です。

それともう一点、非常に大きな反響を得られたコンテンツとしては、B4フロアで行われたパーティクルライブなども外せません。いわゆる超没入的なVR表現を制作されているクリエイターの方々を巻き込んで、コンテンツを制作できたこと。その点はやはり前回の大きなハイライトだったと思います。


(2023年のサンリオVfesより、キヌさんのパーティクルライブのワンシーン。アーカイブはこちら

――では、そのような前回を踏まえて、今回はどのようなイベントを目指されているのでしょうか。

渡辺:
まず、「コミュニケーションを大事にする」という根底の部分は変わっていません。それをベースにしながら、今回は「テーマパーク化させる」ことを1つのテーマとして掲げてやっていました。

前回よりもコンテンツの量や種類を増やし、遊び方の選択肢の幅を広げることで、いろいろなユーザーさんに来ていただけるきっかけを作りたい。そこで来てくださったユーザーさんにも、また他のお友達を誘い合わせてみんなで来てほしい。そのようなイメージです。

「音楽はあまり知らないけど、ゲームなら興味ある!」や、逆に「ゲームは詳しくないけど、バーチャル空間でかわいい服を着ることには興味あるかも」など、本当にいろいろな方がいると思うんです。そこで、これまでの「バーチャル音楽フェス」にとどまらないさまざまなコンテンツをサンリオVfesに用意することで、その何か1つでも刺さってくれるユーザーさんがいたら嬉しいなと。


(VRChatでおなじみの人気アバターがサンリオキャラクターとコラボした「ピューロファッションガーデン」)


(リズムゲームを楽しめる「モチポリ・ファクトリー」)

コンテンツの量と選択肢が増えれば、来場者数も増える。来場者数が増えれば、そこで生まれるコミュニケーションも増える。その場で生まれるコミュニケーションの総量を増やすために目指したのが、今回の「バーチャルテーマパーク」としてのサンリオVfesの実現です。

もう一点だけ補足すると、現在は期間限定で開催しているサンリオVfesですが、2021年当初は「リアルにピューロランドがあるように、バーチャル上にもピューロランドないしはテーマパークを作りたい」という構想がもともとありました。

いつでも、どこからでも、だれかと集まって、楽しくコミュニケーションできる場所。「そんなテーマパークのような場所をバーチャル上でも体現できたらいいよね」という当初の構想からスタートして、今は徐々に拡大してきているフェーズなのかなと。今回、指定の時間に始まるイベントだけではなく常設系のコンテンツを増やしたのは、そのような構想があったことも、理由としてあります。「モチポリ・ファクトリー」「ポチャッコのぱくぱく大作戦 -Share the ice cream love!」「ピューロファッションガーデン」がそれですね。


日常と非日常の狭間

――これまでの「音楽フェス」にとどまらない、「バーチャルでピューロランドをやりたい」という初期コンセプトに近づいたイベントとなっているわけですね。前回と比べて開催期間を大幅に延長しているのも、「テーマパーク」というコンセプトがあるからなのでしょうか。

渡辺:
その一面もあるとは思いますが、どちらかと言えば、「とりあえず、期間は伸ばしましょう!」と、あまり考えずに決めたのが一番最初だったかもしれません(笑)。

「次のサンリオVfesにはこういうコンテンツを置こう」という具体的なアイデアよりも先に、「バーチャルピューロランド構想を成し遂げるためには、今回は1ヶ月くらいやらないといけないんじゃないか」という考えが、我々の中にあったように感じています。その上で「じゃあ1ヶ月間楽しんでもらうにはどうすればいいか」「どのようなイベント編成で、どういったコンテンツを用意すれば楽しんでもらえるか」といった方向で考えていき、今の状態に落ち着いていった――そんな流れですね。

――前回のイベントが終わった段階で、「次回もやるなら期間は1ヶ月だろう」という見込みがあったということですね。結果的にそれが「ピューロランドがバーチャル上にある」「その期間はイベントがある」ということのアピールにも繋がっているように思います。

渡辺:
そうですね。今回はこの形で良かったのではないかと感じています。ただ、仮に来年もサンリオVfesを開催する場合――もちろん、我々としては今回で終わらせるつもりはまったくなくて、来年もこのプロジェクトを続けたい、チャレンジしていきたいと考えているのですが――2024年は1ヶ月だったから、2025年は2ヶ月開催になるのかといえば、それはまだ今回が終わってみないとわかりません。

というのも、「1ヶ月」ってなんとも絶妙なバランスだなと思っていて。イベントならではのお祭り感と、いつでも楽しめる常設コンテンツの中間、非日常と日常の狭間のようなところに今回のサンリオVfesはあるのかなと。なので、今後それを改めてみなさんにお出しする際には、日常のバーチャルピューロランドとしても、非日常のバーチャルピューロとしても楽しめる場所にする必要がある。

ですが、単純に期間を拡大するだけでは、みなさんを飽きさせてしまうかもしれません。現時点でのイメージとしては、今までのお祭り感は残しながらも、単純な常設ではなく、日常的に楽しんでもらえるようなコンテンツをご用意していくことが大切になるのかなと。それが、今考えているバーチャルピューロランド構想です。


(リアルのサンリオピューロランドを忠実に再現した「PURO ENTRANCE」)

――今回、期間が長くなったことでイベントとの接触機会が増え、興味を持つ人も増えているような印象を受けていました。前回も大勢の方が有料ライブを楽しんでいらっしゃった一方で、それを後から知った人、知らなかった人も少なからずいらっしゃったようなので。

渡辺:
仰るとおりで、期間延長したもう1つの理由として、前回の反省があります。「スケジュールが合わなくて参加できなかった」「ライブの存在を知らなくて参加できなかった」というユーザーさんの声は我々も把握しておりましたので、今回はそこをちゃんと拾っていこうと。

それと、前回は「タイムシフト公演」という形でイベント終了後にアーカイブ公演を実施したのですが、それが非常に盛り上がっていた実感もありまして。「音楽フェス」のスタイルをベースにしているので、時間に合わせてパフォーマンスが始まるライブ体験は大事にしたいのですが、「みんなでもう1回見ようぜ!」というあの体験もすごくエモーショナルだったなと。今回もタイムシフト公演を設けているので、ぜひ楽しんでいただけたらと思います。

サンリオの経営理念「みんななかよく」と、バーチャル世界との親和性

――近年は企業によるメタバース活用も盛んですが、サンリオが3年続けてVRChatで音楽フェスを実施し、今年はテーマパークとして規模を拡大しているという事象は、他の企業の動向と比較しても特殊に感じています。サンリオVfesを継続すること、そしてピューロランドをバーチャルで展開することで、どのような価値が生まれているとお考えでしょうか?

渡辺:
大きく分けて2つの軸があります。1つは、先ほども申し上げた「コミュニケーション」という軸ですね。これはサンリオVfesに限ったものではなく、サンリオという会社の成り立ちに関わってくるものです。

サンリオは2020年に創業60周年を迎えたのですが、世界中が「みんななかよく」するために、人と人のコミュニケーションを大切にしていこう、という創業者の考えをベースに始まりました。会社としては、まず「コミュニケーションを取るためには、送り合えるギフトがあるといいよね」というところから雑貨ビジネスが始まり、「そのギフトをもっとたくさん、楽しく送り合えるように、かわいいイラストを付けられるといいかもね」というところから、キャラクターが生まれました。それが、現在の我々のキャラクタービジネスに繋がっています。

サンリオの経営理念は「みんななかよく」。「周りの人とコミュニケーションを取ることで、みんななかよくしようね」という価値観を我々は非常に大切にしています。そんな我々がバーチャルの世界に出会って感じたのが、「バーチャルの世界こそ、コミュニケーションが新しいエンターテイメントになりうる場所なのではないか」ということ。もちろん1人で見てもすばらしいコンテンツはたくさんありますが、「誰と一緒に見るか」「誰と一緒に体験するか」によって付加価値が生まれて、得られる「体験」の価値がガラッと変わる世界でもある。特にバーチャルでは、その感覚が何倍にも大きくなるように感じています。

ですので、我々がこの領域で一定の評価をいただいているのも、サンリオがずっと大事にしてきた「コミュニケーション」の考え方と、バーチャル世界との相性が、非常に良いからなのではないかと考えています。だからこそ我々もやりたいことをできていますし、サンリオVfesも3回目まで続けることができたのかなと。この分野のエンターテイメントやビジネスはますます盛り上がっていくと思うので、我々もチャレンジを続けていくつもりです。


(2023年のサンリオVfesより、私立VRC学園とのコラボ企画「みんな仲良く課外授業」に登壇したサンリオの町田雄史さんによる授業の一幕)

――前回のインタビューでも「イベントに参加することが会話のきっかけになれば」というお話がありましたが、そういった狙いやコンセプト自体が「サンリオ」という企業の経営理念とも密接に繋がっているわけですね。では、もう1つの軸は何でしょうか?

渡辺:
もう1つは「コンテンツ」の軸です。我々はいわゆるIPホルダーとしてお客様やユーザー、一般消費者のみなさんにコンテンツを提供してきた立場にありますが、社内では「今はどんどん『コンテンツ』の在り方が変わってきている」という話もしています。

ショート動画の流行や「モノ消費からコト消費へ」という指摘もあるように、今やユーザーは一方的にコンテンツを与えられるだけの存在ではありません。一緒になって何かを作ったり、双方向性のあるインタラクティブな体験を楽しんだり、「渡したコンテンツで好きに楽しんでね」というような時代ではなくなってきている。クリエイターのみなさんとの共創や提携こそが、今の時代には必要なことなのではないかと感じています。


(今回のバーチャルパレードの1つ「Twinkle Guardians」。シューティングゲームの要素があり、観客もみんなでパレードに“参加”できる)

その点においてサンリオVfesは、クリエイターの方々を上手く巻き込んで力を貸してもらい、「共に創る」に挑戦できているイベントになっているのではないかなと。ここで言う「クリエイター」は、何らかのスキルを用いて制作を行う方はもちろん、コミュニティの運営者やイベント主催者、アンバサダーのような発信活動をしている方も含みます。あるいは、コンテンツを一緒に楽しんでくれるユーザーのみなさんもクリエイターと呼べるかもしれません。

このバーチャルの世界で、みなさんの力を借りながら、一緒にコンテンツを作ることができている。その流れをサンリオVfesではうまく生み出すことができているからこそ、単発イベントで終わらず、こうして2回目、3回目とチャレンジする機会を得られている、会社からも背中を押してもらえているのだと思っています。これからも一緒にサンリオVfesを作り上げていくこと、このバーチャルの世界を盛り上げていくことが、我々の理想です。

自然と生まれた「サンリオらしさ」と、「みんななかよく」で繋がる空間

――前回のサンリオVfesとの違いとして、今回はサンリオキャラクターの露出が増えている印象を受けました。パレードやコミュニティイベントを増やしたことが理由の1つなのではないかと思いますが、イベント全体としてもサンリオらしさを実感しやすくなったように感じています。この点に関しては、何か狙いなどはあったのでしょうか。

渡辺:
正直に申しますと、その点に関しては何か特別な狙いがあったわけではありません。前回も「サンリオキャラをなるべく露出しよう」といった意図はなかったのですが、イベント終了後にいただいたアンケートやクリエイターさんからのご意見として、「サンリオのイベントだから、もっとサンリオのキャラクターとふれあいたい」といった声も頂戴しておりまして。そのようなご意見も参考にしつつ、増やせるところは増やした――という感じでしょうか。サンリオキャラの露出を今回のテーマの1つとして掲げていたかというと、そこまでではなかったかなと思います。


(ロート製薬公式YouTuber・根羽清ココロさんのライブパフォーマンスには、シナモロールが登場。他に開催されている複数のミニショーにもサンリオキャラが登場する)

少し話がそれますが、弊社はキャラクターの会社だと思われがちだったこともあり、社長が交代したタイミングで「総合エンタメ企業になっていこう」という理念を掲げるようになりました。今、こうしてバーチャルの世界で新しい取り組みをしていることもそうですし、その潮流にあるのが、このサンリオVfesというプロジェクトだと思っています。

ですが、サンリオといえばやはり一般的に想像されているように、お子様や女性がメインのターゲット層です。VRChatないしはバーチャルの世界とは隔たりがあり、もちろん既存のファンの方も多数いらっしゃいますが、従来の層とはブレが生じています。そのため、過去回も含むサンリオVfesでは「サンリオ要素をきちんと出すことが重要である」という考え方もあまり出てこなかったのかなと思います。

そのような前提もあり、サンリオVfesではいわゆる「サンリオらしさ」を意識的には重視していなかったのですが……。その一方で、自身がアバターの姿になって過ごすバーチャルの世界は、キャラクターとの親和性が非常に高いとも感じています。そもそもアバター自体がある種の「キャラクター」なので、既存のサンリオファンではない方たちにとっても、たとえサンリオキャラを知らないとしても、ある意味では「近い」存在なのではないかなと。

しかもVRChatは、リアルの世界と比べてユーザーが「かわいい」表現をする機会が圧倒的に多い。かわいいものや素敵なものを、率直に、ストレートに、当たり前に表現できる。そんな土壌と文化がすでに整っているのが、VRChatの世界だと感じています。身近にかわいいものがあり、自らも「かわいい」を表現している人が多い世界だからこそ、サンリオのファンではなくても、興味がなかったとしても、「意外に好きかも」「結構楽しいじゃん」と感じる人も多いのかなと。サンリオVfesは、そのような方たちにも自然とお楽しみいただけているように感じています。


(「ピューロファッションガーデン」では、ドットエスティとサンリオキャラクターのコラボアイテムも試着できる)

ただ、繰り返しになりますが、いわゆる「サンリオらしさ」というものを、我々はそこまで重視していませんでした。というのも、ハローキティを中心としたサンリオキャラクターは必ずしも絶対的な存在ではありませんし、ユーザーさんからもそのように捉えられているように思います。どちらかと言えば「いつでもそばにいてくれる」「隣に寄り添ってくれる」ような存在であり、そういった特徴があるからこそ、他のIPやキャラクター、企業さんともたくさんコラボをさせていただいているのかなと。何にでもなれる柔軟性、と言いましょうか。

サンリオVfesにも似たような部分があると感じていて……正直、このバーチャルフェスって、本当にカオスでしかないなと思っていまして(笑)。VSingerさんがいて、キヌさんのようなポエトリーな方がいて、約束さんのような「かわいい」を体現している方がいて、0b4k3さんのようなアングラクラブカルチャーで活躍している方がいて――。

そういったいろいろな背景を持つ人たちが集まったカオスな空間を、サンリオの傘の中に入れてみたら、「みんななかよく」という言葉で繋げることができる。それが、サンリオの良さだと感じています。そういう意味では、アーティストさんやクリエイターさん、コミュニティのみなさんといったいろいろな方がサンリオVfesに携わってくれていること自体が、一番の「サンリオらしさ」に繋がっているのかもしれませんね。


(約束)

バーチャルライブの評価が我々の想像を超えるものだった

――「音楽フェス」の部分についても改めてうかがえればと思います。今回はリアルアーティストの出演枠がほとんどなく、VRで活躍されているクリエイターやアーティスト、VSingerなど「バーチャル」に親和性のある方々に絞ったラインナップとなっているように感じました。今回のキャスティングに関して、何かこれまでとは異なる選出や方向性の意図などはあったのでしょうか。

渡辺:
過去のサンリオVfesでは「リアルアーティストのパフォーマンスをバーチャルの世界に持ってくる」という取り組みをしていて、そこで評価をいただいている実感もありました。我々としてもチャレンジングな試みであり、実際に挑戦できて良かったと強く感じています。ですがそれ以上に、VSinger/VTuberさんのステージや、VR表現が盛り込まれたB4フロアのパーティクルライブの反響が、あまりにも圧倒的で大きすぎたんですよね。

そこで今回は――運営としてはリソースも限られている中で――バーチャルの世界で活動されているクリエイターさんや、VSinger/VTuberさんにフォーカスをしてみようと考えて、このようなラインナップになりました。

ただ、念のため断っておきたいのですが、あくまでも「今回のサンリオVfes2024はこういう形になった」ということに過ぎません。2023年に大きな反響をいただいたNakayoku Connectなどの実績もありますし、やはり「サンリオピューロランド」というリアルのテーマパークの存在は我々の大きな強みです。なのでリアルとの接点の持ち方に関しては、これからも継続して検討していくつもりです。

――2023年はピューロランドでもリアルイベントへの回帰が進みつつあり、リアルアーティストを呼ぶイベントも再開されていたので、そちらとの住み分けも考慮してのキャスティングだったのかなと想像しておりました。

渡辺:
それも一部あるとは思います。コロナ禍の最初の頃はリアルアーティストのオンラインライブもすごく盛り上がっていたと思うのですが、今まさに「リアル」への回帰が進んでいる中で、本当に「リアルアーティストのオンラインライブ」にどこまで価値があるのか。正直なところ、リアル会場でのライブができなかった以前ほどは体験価値が大きくはないような気がしています。

ただ、キャスティングの方向性を考慮するにあたっては、先ほどお話しした「バーチャルライブの評価が我々の想像を超えるものだったので、今回はそこに思いっきりフォーカスをしてみたい」という、ポジティブな要因のほうが理由としては大きかったと思います。


(CAPSULE)


(七海うらら)

――全体のキャスティングについては前回のインタビューでもうかがったのですが、VRアーティストにしてもVSingerにしても、出演者の顔ぶれを見ると非常に納得感が強く、深いところでVRChatやVTuberの文化を理解している方が選ばれている印象がありました。そのあたりの選出は現場レベルの関係者が取り組んでいらっしゃったのでしょうか。

渡辺:
基本はそうですね。ただ、サンリオ側だけの知見だとなかなか難しいものがあるので、それこそ異次元TOKYOの篠田さんにキヌさんを抜擢していただいたように、異次元TOKYOチームや、制作のGugenkaさん、クリエイティブチームCAMBRさんの知見を借りながら選出しています。

あとは、これまでのサンリオVfesで関わってくださったクリエイターのみなさんと話をする中で、「こういうイベントをやっているアーティストがいるよ」「こんなコンテンツがあるからぜひ体験してみて!」と教えていただいたことを、制作運営チームで共有して参考にすることもあります。今までの知見と、クリエイターのみなさんとの繋がりを土台として、何か良いものができないか議論をしているようなイメージですね。

――3回にわたってサンリオVfesを継続してきて、その中でクリエイターさんたちと向き合ってきたからこそ、バーチャルの世界のコミュニティやカルチャーとの繋がりが深まり、お声がけしやすくなった。そんな背景もありそうですね。

渡辺:
仰るとおりだと思います。ただ、クリエイターさんには本来、自由に制作していただくことが理想だと思うのですが、企業イベントとして開催するにあたってはどうしても一定の制約が生まれるので……。きっとやりにくい部分もあるはずなのに、クリエイターさんにはサンリオVfesに関わることをすごくポジティブに捉えていただくことも多く、本当にありがたく感じています。

――「サンリオVfes」を年に一度の晴れ舞台のような場所として捉え、そこに向けて気合いを入れていこうと考えているクリエイターもいるのではないでしょうか?

渡辺:
そうやってお互いに高め合っていけたら嬉しいですね。サンリオVfesに関わっていただくことで、クリエイターさんにスポットが当たるきっかけが生まれていたら嬉しいです。

初めて参加する人に伝えたい、おすすめの楽しみ方は?

――最後になりますが、初めてサンリオVfesを体験する人に向けて、特に楽しんでもらいたいポイントやおすすめの楽しみ方があればお聞かせください。

渡辺:
やはりまずは、バーチャルピューロランドのエントランスに来るだけでもすごく楽しんでいただけるのではないかなと思っています。今回はカチューシャを試着できるブースを置いているので、それをつけていただくだけでもテーマパーク感を味わえます。ぜひテーマパークならではの非日常感を満喫してみてください。

あとはメインのパレードを3本ご用意していて、どれも無料で楽しめます。SNSでも早速ありがたい評価をいただいているので、このパレードを体験いただければ、サンリオVfesがどのようなものなのかわかるのではないかなと。パレードはYouTubeでも配信しているので、気軽に覗いてみてください。

また、毎週末の2日間には、B3のアーティストライブとB4のクリエイターライブが開催されます。後者のB4クリエイターライブは1000円という気軽なチケットでお楽しみいただけますが、クリエイターのみなさんが魂を込めて、本当に全身全霊で、ものすごい熱量でぶつかりに来ている作品を体験できます。こちらはぜひともチェックしていただきたいコンテンツの1つです。

最後に、繰り返しになりますが、サンリオVfesとバーチャルピューロはもちろん1人で楽しんでいただくこともできますし、そうやって楽しんでいただくこともありがたいのですが、もしよかったら友達など、どなたかと一緒に見に行ってみてください。PublicやFriend+などのインスタンスで体験いただくことで、他のユーザーと知り合ったり、何か新しいコミュニケーションのきっかけになったりしていたら嬉しく思います。

・公式サイト:https://v-fes.sanrio.co.jp
・公式X:@SANRIO_VFes

聞き手・編集:ゆりいか
執筆:けいろー


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