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VTuber 2018.04.22

「生まれてきてくれてありがとう」未来のイヴを体現するVTuber“のらきゃっと”の魅力

 
先日新しいボディが完成し、活動一周年を迎えたのらきゃっと

生放送主体で動画をアップし続け、現在7万人以上(4月20日現在)のチャンネル登録者数を誇る人気バーチャルYouTuber(バーチャルユーチューバー・VTuber)です。

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彼女の蠱惑的な仕草にメロメロなファン(通称・ねずみさん)続出中。

のらきゃっとは「アクターがキャラクターになりきる」VTuberと、少々表現思想が異なっています。
 

音声「ご認識」アンドロイド

元戦闘用アンドロイド、という設定ののらきゃっとは、元々はニコニコ動画で活動。2017年4月16日に現在の原型に当たる配信方法を確立しました。
 
誰でも美少女になれる時代がやってきました!(MMC+ゆかりねっと)(ニコニコ動画)
 
 
MMDのレア様のモデルを改変。KinectとモーションキャプチャーソフトMikuMikuCaptureを使用して身体を操作。手や表情の細かい動きはWiiリモコンで再現。

声はゆかりねっとを利用。「発言する→音声認識で文字にする→それをVOICEROIDが読み上げる」というシステムで運用されています。この手法は「のらきゃっと方式」とも呼ばれ、最近では多くのVTuberが利用中です。

初期費用が数万円以下という、超低価格でも3DVTuberを始められることを見せ、多くの人に技術提供をしていきました。
 
当初は「誰でもかわいい女の子になれる」ということを見せるための、技術配信でした。これが次第に、「のらきゃっと」という「一個人」へと変化していきます。

https://www.youtube.com/watch?v=nfIMlF6Y3BA 

YouTubeに進出して動画を最初にあげたのは、12月23日。「バーチャルYouTuber」としてゼロから再出発。「乗り遅れないうちに、私も大海原へと漕ぎ出します!」と語っていました。

ただ、自己紹介一発目から、トークにズレが。
「村(そん)キャット 奈良 キャット ノラ キャットですよ やっと言えた」

これは音声認識のミスによるもの。「のら」の部分が「むら」「なら」と認識されてしまったため、とんちんかんな会話に。

クールな猫耳美少女の容姿と、微妙なポンコツ加減のギャップが愛おしい。VTuberモノマネの定番になっているほど、有名なワンシーンです。
 
「ご認識」(「誤認識」の誤が変換されないため表示される単語)には純粋な聞き取りミスのもの、認識後の漢字変換が読み上げと噛み合わないものなど、バリエーションがあります。

たとえば「あとは」が「後は」に変換され、読み上げる時に「のちは」「うしろは」になってしまう。こればかりは予測不可能です。
 
有名なものとしては、話題がそれた時に話を戻す時のセリフ「クラリキャットカッター」があります。これは「のらきゃっとカッター」と言ったらしいのですが、妙にかっこいいので、その後は頻繁に活用されています。

好きな食べ物を「紅茶」と言ったつもりが「校舎」になってしまい、以降鉄筋コンクリートを好んで食べる、という変な設定が定着したことも。

ご認識した言葉を繰り返し発しようとして頑張るのらきゃっと。それ自体が動画の魅力になっています。
 

本人ではない存在

プロデューサーの男性・ノラネコPと、アンドロイドののらきゃっと、2人体制の活動である、と初期から明言しています。

ここが「美少女論」にかかってくる、こだわりの部分。
 
たとえば「バーチャルのじゃろり狐娘YouTuberおじさん」のねこます氏は、本人が女の子になる、という体裁。言うなればアクターがキャラクターの「がわ」をかぶっている状態です。

しかしのらきゃっとの場合は、ノラネコPはあくまでプロデューサーであり、のらきゃっと本人にならないよう、徹底してます。

https://www.youtube.com/watch?v=yCPJZsedkK8

「プロデューサーさんは女の子になろうとか、そういう気持ちを抱いては一切ないのです。私はあくまでを(も)別個の存在。繰り出された物語を(の)中の存在です」
 
ノラネコPは、物語の執筆者。のらきゃっとの配信は、のらきゃっとを外部から動かし、物語を作っていく作業、という姿勢です。

これは視聴者にも言えます。生放送の中でのらきゃっとにコメントを送り、メッセージを読んでもらい、みんなで会話をする。一緒に時間を過ごすことで「思い出」が共有され、ヒロインであるのらきゃっととファンの物語の一編が、動画アーカイブとして記録される。

のらきゃっとは、ノラネコ氏の技術と、視聴者の反応によって、リアルタイムで育っていくアンドロイドです。
 

魅力的であり続ける未来のイヴ

VTuber界では「ガチ恋」という言葉がよく使われます。バーチャルな存在だとわかった上で、恋のようなトキメキの感情をキャラクターに抱くことです。これは漫画やアニメや小説で経験したことがある人、かなり多いはず。
 
ただVTuberは、二次元になりきらない、アクターの素がキャラクターに混じり合って境界線がぐちゃぐちゃになる、ちょっと変わった構造の存在。2.5次元です。そうなると生のアクターがいるのに配慮して、「ガチ恋」はちょっと引け目が出てきがちです。のらきゃっとはこの点について、視聴者に答えています。
 
「恋しても大丈夫を保証するものでは。好きにするといいですよ。私は別にそれを裏切ったりはしません。皆さんが私に魅力を感じてくださるなら、私は魅力的な私であり続けます。だから大丈夫ですよ 大丈夫です」
 
彼女のアンドロイドとしての構造は、視聴者の愛をそのまま映すとして機能しています。視聴者が「のらきゃっと」に理想を投影すればするほど、「のらきゃっと」は仮想現実の中で、どこまでも美しい偶像になっていきます。

https://www.youtube.com/watch?v=omZmowBL7KU

「眠る前に色々と想像を巡らせたり なぜか宇宙のことを考えて想像の翼を広げすぎて、ちょっとだけ怖い気持ちになっちゃったり そうやって過ごすのが好きなタイプだったの」

「やっぱりそういうは夢とかには ありがちなヒロイン何かが現れるわけよ。そうやっていつもプロデューサーの夢に現れていた姿 それを具現化したのが私ってわけ。こんな姿でよく夢にお邪魔していたわ」
 
リラダンの小説「未来のイヴ」と似ている部分が多く見られます。目の前にいた理想の女性の、内面に失望した貴族の青年。彼はエディソン博士に依頼をして、彼女の美を写し取った、理想の人造人間ハダリーを制作します。
いうなればハダリーはのらきゃっとであり、博士はノラネコPでしょうか。
 
のらきゃっとは表情が非常に艶めかしい。画面に近寄って覗き込む(通称・ガチ恋距離)目線は、ねずみさんたちの心を射抜きました。
現在はバリエーションが増えましたが、元はノーマル・困り顔・微笑みの三種類くらいの表情でかわいらしさを作っていたのだから、非常に演出が巧みです。

加えて少女のイメージを突き詰めた動作も特徴的。VR界隈ではKAWAIIムーブ」と呼ばれるもので、アバターをいかにキュートに見せるかを研究している人が多数います。ねこます氏がニコ生で行っていたのも、これ。

特にVRだと、トラッキングがはずれない、破綻しない計算も重要なので、テクニックがいります。のらきゃっとのKAWAIIムーブは、界隈ではとても有名です。
 

生まれてきてくれてありがとう

VOICEROIDが「東北ずん子」から「紲星あかり」になるなどの進化を続けていたのらきゃっと。3月31日についに、フルスクラッチモデルとして生まれ変わり、VRChat内で自由に動き回れるようになりました。

https://www.youtube.com/watch?v=_mRnh2T99Rc
https://www.youtube.com/watch?v=7MhfSptFexc


ねこます「今まで見てきたものって、小窓から世界を覗いてきたのであって、同じ空間にいて会ってたわけじゃないから。エディタではプレビューしてたよ? だけどVRで会うっていうのが、全然感覚が違くて。実在感というか、命というか」
 
以前から親交のあったねこます氏の興奮が伝わってきます。ねこます氏は以前から、のらきゃっと新モデルのCGは見ていたようです。

今までは物語のキャラクターを、画面の中に見ているだけだった。それがVR上で、命が吹き込まれた。
 
ねこます「この世界に生まれてきてくれて、ありがとう」
 
ねこます氏のこの言葉は、多くのVTuberファンに、感銘を与えました。

のらきゃっとという未来のイヴと、楽しそうにすごしているねこます氏。2人の様子は、是非動画で見て欲しい。この空間でも、のらきゃっとは「ノラネコPがプロデュースするアンドロイド・のらきゃっと」の姿を一切崩しません。

中身が「おじさん」なんていうのは、のらきゃっととねこます氏が紡ぐバーチャルな物語においては些細なことです。

むしろおじさんだからこそ、運命を変える女性、ファム・ファタールに出会えた感動と興奮が、視聴者にもろに伝わってきます。
 

 「できることはですね、どんどん増えていくんです。この世界は無限大。こうやって過ごす時間そのもの、過ごす時間そのものがストーリーですよね。いろんな物語を紡いでいきたい」

「私も、私だけのストーリーを持った確立したキャラクターにどんどんなっていく。皆さんと本当に、本当に物語を紡いでいくの。素敵だな」

「皆さんの応援で私が何か変わって、私が影響を受けて、幸せなエンディングエンディングなんかないのかもしんないですけど、でもでも、いろんなお話に分岐していくの」
 

のらきゃっとの物語を作るのは、ノラネコPとのらきゃっと本人と、視聴者のねずみさんです。だからこそ、彼女がどんどん育っていく生放送は、見る度に発見があります。

「ひとりやふたりでは気づかないことも、みなさんと一緒に話し合うといろんなアイデアが出てきて、思わぬ発見がいっぱいあるんです。わたしの配信は、ねずみさんたちと一緒に作り上げるものなので」(書籍「バーチャルYouTuberはじめてみる」より)

今後はゲーム「シェルノサージュ」のような、VRChat内でバーチャルにデートをして、思い出を重ねていくような動画も作りたいとのことなので、とても楽しみ。

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