マイクロソフト「MRヘッドセット」徹底解説

マイクロソフトはMR(Mixed Reality)ヘッドセットを続々と公開・発表しています。
2017年8月現在、マイクロソフト社は複数のメーカーと提携し、PC向けのMRヘッドセット(没入型MRヘッドセット)を2017年10月17日から発売します。これらのMRヘッドセットは299ドルから(日本での価格は4万円から)と、手頃な価格帯で登場することが見込まれており、期待が集まっています。

今回は、そもそもの「MRヘッドセットとは何か」という説明から、その特徴、そして現在発表されているMRヘッドセットを一挙紹介します。

1.MRとは?
2.MRヘッドセットの特徴
 2-1.HoloLensと異なる「没入型」デバイスでVR体験
 2-2.センサー不要で動ける
 2-3.ハンドコントローラーは詳細待ち
 2-4.MRヘッドセットの価格
 2-5.PC側の必要スペック
 2-6.対応プラットフォームは「Windows Mixed Reality」
3.各種MRヘッドセットの紹介と国内での取扱
 3-1.Acer
 3-2.HP
 3-3.ASUS
 3-4.DELL
 3-5.Lenovo
 3-6.3Glasses

MRとは?

MRヘッドセットは、MR(Mixed Reality)を体験することのできるヘッドセットです。
MRは「複合現実」または「複合現実感」と訳されることの多い単語です。マイクロソフト社によれば、これはAR(拡張現実/Augmented Reality)やいわゆるVR(Virtual Reality)といったものを広く包含する概念・言葉であり、「ARとVRとMRが個別に違うものとしてあるのではなく、それらはMRをいろいろな角度から見ているにすぎない」としています。

(参考記事・リンク)
・「日本が最もMRに取り組んでいる」HoloLens生みの親が語る次世代のコンピューティングと来日の理由
・用語集 – MR(複合現実感)

MRヘッドセットの特徴

HoloLensと異なる「没入型」デバイスでVR体験

マイクロソフトはこのMRヘッドセットを、没入型MRヘッドセットと呼称しています。
同社が発売しているMRデバイスに「HoloLens」がありますが、HoloLensは「透過型のレンズを通して現実の世界を認識する」タイプのものであり、AR(拡張現実/Augmented Reality)を実現するデバイスです。
つまり、HoloLensは現実の上に3DCGの情報を重ねて、それを見る」デバイスです。PCに接続する必要もなく、デバイス単独で使用できることも特徴です。

他方、MRヘッドセットは「視界全てを覆い、取り付けられたディスプレイに情報を表示してそれを見る」タイプなので、HoloLensとは異なり、現実のモノや人が一切見えない状態になります。誤解されやすいポイントですが、MRヘッドセットにはフロントカメラがついているものの、そのカメラを通して現実の世界を見ることはできません。MRヘッドセットでは、Oculus RiftやHTC Vive等と同じく、PCに繋いでのVR体験が可能です。

先述のとおり、マイクロソフトが提唱するMRにはARやVRも含まれる(ARとVRの区別がなく、それらすべてがMRである)ため、ARに近いHoloLensとVRに近いヘッドセットを両翼で展開していると考えられます。

マイクロソフトは「将来的には、透過型のHoloLensのようなデバイスや没入型のヘッドセットの双方が、同じように現実とバーチャルな情報が混ざっている世界を体験できることこそがMRである」とも説明しています。


(画像:The Verge)

センサー不要で動ける

MRヘッドセットは、同じような機能のPC向けVRヘッドセットであるOculus RiftやHTC Viveと比較して、グラフィック性能などで遜色のないスペックを誇ります。

また、「インサイドアウト方式」という位置トラッキングを採用していることで、外部センサー不要でVRの中を動き回ることができます。インサイドアウト方式とは、ヘッドセット前面に搭載されたカメラでHMDを装着した人の位置を特定し、VR内で動くことを可能にする技術です。

 

Oculus Rift

HTC Vive

Acer MR, HP MR

画面解像度

有機EL
1080×1200 2枚

有機EL
1080×1200 2枚

液晶
1440×1440 2枚

リフレッシュレート

90Hz

90Hz

90Hz

視野角

110度

110度

95度

位置トラッキング

アウトサイドイン方式(付属の赤外線カメラを使用)

アウトサイドイン方式(付属のベースステーションを使用)

インサイドアウト方式(外部センサー不要)

ハンドコントローラーは詳細待ち

MRヘッドセット用のコントローラーは、デフォルトではXbox Oneのゲームコントローラーが対応しています。

また、手を動かすためのハンドコントローラーもすでに発表されており、OculusTouchやHTC Viveのコントローラーに近い形状をしています。接続はBluetoothにて行うとのこと。


このハンドコントローラーでは6自由度(6DoF)をトラッキングするため、持った状態で手を自由に動かすことが可能です。ただし、位置トラッキングはヘッドセットに埋め込まれたセンサーで行うため、視野の中にコントローラーを置くことが使用条件となります。
また、手のトラッキング範囲を広げるための追加センサー技術も予定されています。

マイクロソフトは、コントローラーを同梱するかどうかは各メーカーに委ねています。例として、AcerのMRヘッドセットは単体価格に+100ドルすることでハンドコントローラーが同梱しています。また、コントローラー単体で購入する場合は1ペア99ドル(約1.09万円)を予定しています。

さらに、各メーカーがこのコントローラーのスペックをベースとしたOEM製品を製造可能とも発表されています。

MRヘッドセットの価格

マイクロソフトのMRヘッドセットは、従来の没入型VRHMDと比較して、価格が安いことも特徴のひとつです代表的なVRHMDでは、Oculus Riftは本体とコントローラーのセットが50,000円(期間限定/2017年サマーセール中のみ、定価70,000円)、HTC Viveは本体に加えてコントローラー等の周辺機器が付属して84,110円(税込)となっています。

一方、MRヘッドセットは各社により価格が違うものの、最低299ドルからとなっており、比較的安価で購入できます。すでにAcerの開発者版は299ドルで登場しており、日本では4万円で販売が開始。日本マイクロソフトによると、開発者版と変わらない価格を目指すとのことで、MRヘッドセットの製品版の日本での価格は、4万円程度からになると考えられます。

 

Oculus Rift
(コントローラー込)

HTC Vive

Acer MR

HP MR

Dell Visor

Lenovo Explorer

国内価格(税込)

50,000円(サマーセール)

※サマーセール後の国内価格は未定

84,110円

40,000円(開発者版)

53,784円(開発者版)

不明

不明

国外価格

399ドル(サマーセール)
499ドル(サマーセール後)

599ドル

299ドル

329ドル

349ドル

349ドル

 

ハンドコントローラーの有無

同梱

同梱

無し

同梱版は399ドルとの予告

無し

無し

同梱版は449ドルとの予告

無し

同梱版は449ドルとの予告

しかし、MRヘッドセットはいずれもPCに接続して使用するため、単体では動作しないことに留意する必要があります。

PC側の必要スペック

MRヘッドセットと接続する際に必要なPC側の最小スペックですが、Oculus RiftやHTC Vive等のVRHMDと比較するとかなり低めに設定されています。

ただし、最小構成では表示フレームレートが60Hzになるほか、グラフィッククオリティが下がります

またパフォーマンスを維持するため、同時に起動できるアプリケーション数が3つに制限されています。たとえば、MRヘッドセットを装着した環境では、通常のWindowsのアプリケーションであるMicrosoft Edge、Word、Netflixを実行することができますが、4つ目のアプリケーションを起動するときは、3つのうちの1つを最初に終了する必要があります。ゲーミングPC等のGPUを搭載しているPCであれば、90Hzでの動作やグラフィッククオリティの向上が可能です。

(参考記事)

・Windows MRヘッドセット、2種類のPC動作要件が判明 ゲーミングPCでなくても動作

最小スペックは下表の通りとなっています。

 

Oculus Rift

HTC Vive

MRヘッドセット

OS

Windows 7 SP1 以降

Windows 7 SP1 以降

Windows 10(RS3)Fall Creators Update以降

プロセッサー

Intel Core i5-4590 以上

Intel Core i5-4590、またはAMD FX 8350以上

Intel Core i5(第7世代)デュアルコア(ハイパースレッディング対応)

GPU

NVIDIA GTX970/1060、またはAMD Radeon RX 480/R9 290同等以上

NVIDIA GTX970/1060、またはAMD Radeon RX 480/R9 290同等以上

Intel HD Graphics 620以上のDX12対応GPU

メモリ

8GB 以上

4GB 以上

8GB 以上

ポート

HDMIポート×1
USB3.0ポート×3
USB2.0ポート×1

HDMIポート×1
USB2.0ポート×1

HDMIポート×1
USB3.0ポート×1

対応プラットフォームは「Windows Mixed Reality」とSteam

MRヘッドセットの特徴としてWindows10に標準搭載される「Windows Mixed Reality」と呼ばれるフレームワークを採用していることが挙げられます。これにより、ユーザーはVR専用コンテンツだけでなく、3DのVR空間において、従来のWindowsのアプリも利用することができます。

また、MRヘッドセットに対応したアプリは、MicrosoftストアからのDLが可能なほか、世界最大のPCゲームプラットフォームであるSteamに対応することが発表されています。ただし、Steamへの対応はMRヘッドセットの発売日以降となるようです。

(合わせて読みたい記事)
・Steam、マイクロソフトMRヘッドセット向けVRゲームも配信へ 『Halo』のVRゲームも開発が明らかに

第一陣の発売予定日は10/17

マイクロソフトは、ベルリンで開催されている家電見本市IFAにて、10月17日にWindows 10の大型アップデートを行うことを告知しています。このアップデートは「Fall Creators Update」と呼称されており、本アップデートにはMRヘッドセットへの対応が含まれています。

また、MRヘッドセットのうち、DellのMRヘッドセットは10月17日に発売することを告知しています。加えて、Acer、LenovoのMRヘッドセットについても「今後数週間」で発売されることが明らかになっています。このアップデートと合わせて他のMRヘッドセットが発売される可能性も高くなっています。

日本でのMRヘッドセットの発売日について、製品版に関するものは明らかにされていません。しかし日本マイクロソフトは「世界と同時展開」と明らかにしていますので、日本国内でも10月17日からの発売・展開が行われる可能性が高いと思われます。

(合わせて読みたい記事)
・Windows MRヘッドセット、第一陣は10月17日発売

各種MRヘッドセットの紹介と国内での取扱

それでは、各種MRヘッドセットを紹介していきましょう。現在マイクロソフトと提携してMRヘッドセットを開発しているのはAcer、ASUS、HP、DELL、Lenovo、そして3Glassesの全6社です。

2017年末の発売の対象国には日本も含まれています。Acer、HPに関しては国内での開発者版の予約の機会も設けられており、すでに完売している状況。
また、日本マイクロソフトは未発表のメーカーからの発売も予告しており、今後の続報に期待したいところです。

Acer

まずはAcerのヘッドセット「Acer Windows Mixed Reality Headset」。ゴーグルのディスプレイ部分を縦に回転させ、上に持ち上げることが可能です。この「フリップアップ」が可能であることで、VRを体験中に少し休憩……という際にヘッドセットを外す手間がなくなります。また重量が350gと軽めです。体験したMogura VRの記者によると「これまで被ったVRヘッドセットの中で最軽量のつけ心地」とのこと。

Acer Windows Mixed Reality Headsetは、2017年9月現在、国内では開発者版のみが販売されています。価格は299ドルと比較的安価。しかし5月31日には予想を上回る予約台数を鑑みて予約販売を一時休止、7月27日に予約を再開するも即座に予約定数に達するなど、安定して購入できるのは少し先になるかもしれません。

(合わせて読みたい記事)
・【詳細レビュー】価格299ドル、Acer製マイクロソフトのMRヘッドセットの実力はいかに

HP

続いてはHPの「HP Windows Mixed Reality Headset」です。こちらもPC接続が前提となっています。

こちらもまたAcerやASUSのものと同じく「没入型」のVRヘッドセット。装着した人の視界を覆うことで、没入感を実現する形になっています。

本ヘッドセットもAcerと同様にいわゆる「フリップアップ」型の機構が搭載されており、VR体験中に簡単な作業をするための手間を極力なくすような配慮がされています

「HP Windows Mixed Reality Headset」ですが、販売されているのは開発者版のみ(2017年9月時点)。価格は日本円で49,800円。しかしながら、8月4日に販売が開始されたものの、当日中に初期入荷分は一時取扱停止になっています。こちらもAcerのものと同様、安定して購入・入手できるまで少し待つ必要がありそうです。

(合わせて読みたい記事)
・マイクロソフトのMRヘッドセット HP製開発者版が8月発売
・日本HP製マイクロソフトのMRヘッドセット 開発者版が発売 現在は一時取扱停止

ASUS

次はASUS(エイスース)のMRヘッドセット。こちらもPCと接続するタイプであり、台北で2017年5月末に開催されたComputex2017において発表・公開されたものとなります。

ASUSのMRヘッドセットは3Dデザインのカバーパネルを搭載。また、マイクロソフトの公式ブログによれば、手で持って使うタイプの“非常に軽い”モーションコントローラーの開発を進行中とのことです。

2017年9月現在、ASUSのMRヘッドセットはデザインのみの公開となっており、スペック等の詳細は不明。本ヘッドセットは、2018年春の発売を目指しているとのことです。

(合わせて読みたい記事)
・DELLとASUSも マイクロソフトのMR(VR)ヘッドセットが続々登場

DELL Visor

DELL(デル)のMRヘッドセット「Dell Visor」は白をベースとしたデザインが印象的。こちらもASUSと同じく、Computexで公開され、その後8月29日に名称や価格、発売時期、スペック等が発表されました。

DELLのMRヘッドセットをデザインしているのは、同社のノートPC「XPS」シリーズやゲーミングPCである「Alienware PC」などを手がけたチームであり、本ヘッドセットでは、頭や顔に接触する部分に装着されたクッションや、頭部へのフィット感などを含めて快適性を重視しているとのこと。ディスプレイは1440×1440のものを2つ搭載しており、外部のセンサーを使用しないトラッキング方法、インサイド・アウト方式を採用しています。

AcerやHPのものと同様に、「フリップアップ」の機能を搭載しており、VRのアプリを一時中断して飲み物を取りに行ったり、人と話したりするのが手間にならないようになっています。

2017年8月中旬時点ではデザインのみが公開されており、価格などは未定でしたが、8月29日に詳細が公開。10月17日にリリース予定となっており、価格は349ドル(約38,000円)を予定しています。また、ヘッドセットの発売と同時期に、マイクロソフトのMRヘッドセット対応コントローラーも発売され、コントローラー同梱版は449ドル(約49,000円)になります。ただし、日本での発売と価格は未定となっています。

(合わせて読みたい記事)

http://www.moguravr.com/dell-visor-mr/・DellのMRヘッドセット『Dell Visor』10月発売 単体で349ドル

・DELLとASUSも マイクロソフトのMR(VR)ヘッドセットが続々登場

Lenovo Explorer

そしてLenovo(レノボ)のMRヘッドセットが「Lenovo Explorer」。2017年8月までは発売に関する詳報がない状況が続いていましたが、9月に入り”今後数週間のうちに”世界中で発売するとの発表がありました。

本ヘッドセットは片目1440×1440の二重OLEDディスプレイを搭載し、Oculus RiftやHTC Viveの片目1080×1200よりも高解像度。
また、ヘッドセットの位置のトラッキングには外部のセンサー等を使用しない「インサイドアウト・トラッキング」機能も搭載されています。

ヘッドセット単体の価格は349ドル。コントローラー同梱版は449ドルを予定しているとのことですが、日本国内での発売の有無や販売価格は未定となっています。

(合わせて読みたい記事)

・MRヘッドセット「Lenovo Explorer」349ドルで発売へ

・LenovoのPC向けヘッドセットはRiftやViveより軽量、高解像度で低価格

3Glasses

最後に取り上げるのは中国のメーカー「3Glasses」のMRヘッドセット「3Glasses S1 Blubur」。3Glassesは2005年に創立し、中国国内でもっとも早くVR産業に参入した企業の一つです。

こちらもPC(Windows 10 64bit)との接続が必要。解像度は1440×1440(片目)と高めになっています。またレンズにはブルーライトカット機能を導入しているとのこと。重量はヘッドセットのみで358gと比較的軽めです。

操作は専用のスティック状コントローラーである「3Wand Controller」を両手に持ち、ポジショナルトラッキングは専用のカメラ「3Wand Camera」で行います。

価格は449ドルです。

(合わせて読みたい記事)
・中国のVRHMDメーカー3Glasses、約10億円の資金調達

 

(更新履歴)

2017/09/05…Dell Visor、Lenovo Explorer、発売日に関する記載、Steam VRへの対応が後になる旨などを更新

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