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その他VRヘッドセット 2019.12.29

【徹底比較】2019年末の今が買いどき! VRヘッドセットの本命は?(前編)

Oculus QuestやVIVE Cosmos、そしてVALVE INDEXなどのVRヘッドセットが発売された2019年。“今買うべき”オススメVRヘッドセットやその理由、そして今後のVRデバイスの展望について、Mogura VR News / MoguLive編集長の久保田瞬(すんくぼ)と、編集部の水原由紀が語ります。

目次

1.一体型はOculus Quest一強。Oculus Linkでさらに使いやすく
2.「スマホVR」は終焉へ向かう
3.激戦のPC向けVR、今選ぶならどれ?
4.VALVE INDEXついに日本上陸

一体型はOculus Quest一強。Oculus Linkでさらに使いやすく

水原:

2019年5月にOculus Quest(Quest)が発売されてから半年が経ちました。当時は一体型VRヘッドセットではQuestが圧倒的にオススメ、対抗馬がほぼないという状況でしたが、現状はどうでしょうか。

すんくぼ:

引き続きQuestが一強で間違いないと思うね。一体型の選択肢は前より多少増えたけど、それでもクオリティや満足度の高さでQuestが選ばれている。コンシューマー向けで自由に身体が動かせる、となるとQuest一択、みたいな状態。

水原:

Amazonなどでたびたび在庫切れになったり、実際に売れていますよね。さらにPC向けVRやOculus Goと比較して継続率も高い。Oculus前CTOのカーマック氏も「OculusのVRヘッドセットの中では、Questは最も定着率が高い」と話していました。

すんくぼ:

ヘッドセットをかぶればすぐスタートできる手軽さもあるし、今までのVRデバイスと比べて繰り返し使う人が多くなったね。「Beat Saber」なんかは自分の最高スコアを友達に抜かれると通知が来たりするし、やり続ける、再開するきっかけがたくさん用意されている印象。

水原:

継続してもらう取り組みが多い一方、Questでは「コンテンツの数」が問題になりがち、という話がありましたが、こちらについては改善されましたね。

すんくぼ:

発売当初はコンテンツ数がそこまで多くなく、いろいろなVRゲームを遊びたいときにちょっと不便だったんだよね。クオリティは高いものが揃っていたけれど、数という点ではSteamが圧倒的だから。今はVRコンテンツが毎週1〜3本くらいリリースされるような状況になっていて、PCやPlayStation VR(PSVR)向けの作品がQuestに移植される流れが続いている。半年前と比べてコンテンツの幅はだいぶ広がったね。

実際にVRゲーム開発者の人たちと話しても、「Quest対応の準備をしているところなんだ」って言われることが多いので、コンテンツが足りなくなることはしばらくなさそう。難を言うならば、リズムゲームが多くジャンルが全体的に偏っていたり、日本語対応していないものがある点かな。とはいえ「現時点でどれを買ったらいいの?」と言われたらQuestをおすすめする、というのは変わらない。

水原:

コンテンツだけでなく、Quest本体のアップデートなどの更新が続いているのもいいですね。Questはデバイスの性質上、これまではOculus Goみたいに「寝転がって動画を見る」といった使い方ができなかったんですよね。以前のアップデートでOculus Goのような状態にできるモード(3DoFモード)が追加され、使い方の幅も広がりました。


(一体型VRヘッドセットOculus Go)

すんくぼ:

QuestはAmazonのPrime VideoやNetflix、YouTube、DMMと映像系コンテンツもかなり充実してきたからね。VRでゲームをやるにしても映像を見るにしてもQuestが最強、みたいな話になってきた。

水原:

アップデートに伴い、仕様上Oculus GoオンリーだったアプリのQuest版も出てきています。機能面も含め、今後はQuestに一本化されていくのかもしれませんね。

すんくぼ:

PCと接続することで、PC向けVRコンテンツをQuestで体験できるOculus Linkも出たね。先述のアップデートで、「Oculus Goでできたことが、Questでもできる」ようになったけど、これで「Oculus Rift S(Rift S)でできたことが、Questでもできる」ようになる。Oculusが「Questに力を注ぐ」と明言している通り。

水原:

Questはシステム面のアップデートも続いていて、使いやすさに関しても改善されてるのが嬉しいですね。例えば音声アシスタントや設定オプションが追加されています。地味に改良がされている、という意味でもQuestは強いですね。

Gear VRは終息へ

水原:

その他、一体型かつ6DoFのデバイスでは、VIVE Focus Plusは相変わらずエンタープライズ(=商用・業務利用)向けの位置づけに変化はないですし、GoogleのDaydreamを搭載したLenovoの「Mirage Solo(ミラージュ・ソロ)」は……Daydream自体がほぼ終了、という形ですね。

すんくぼ:

Daydreamは「完全に終了」と宣言はされていないので難しいところだけど、事実上の終了と言って差し支えないと思う。Oculusとサムスンが共同開発した「Gear VR」も最新のスマホがサポート対象外になっていたり、今年9月のOculus Connect6でOculus CTOのカーマック氏がGearVRの追悼スピーチをやっていて、こっちも「実質終了」という状態だね。

水原:

段ボール製のスマホ向けVRゴーグル(Google Cardboard)の設計図はこれまでも公開されていましたが、いよいよ11月上旬にGoogle CardboardのSDK(開発者キット)がオープンソース化されたりしてますね。

すんくぼ:

スマホをガチャッとヘッドセットにつけて簡単にVRができる、というトレンドがそろそろ終わりを迎えそう、ってところだね。Oculus Questみたいな一体型と比べたとき、世の中に浸透するものではなかった。

これからも最も簡単な入り口としてCardboard的な紙製のVRゴーグルはなくならないし、動画を観るなどの需要に答えていくことになるとは思う。とはいえ、時代が変わる、ということなんじゃないかな。

水原:

カーマック氏も「Gear VRに労力を注いできたことは、Oculus GoやQuestのような一体型の基盤にもなっている」と評価していましたが、「GearVRはユーザーへの定着率が低かった」と話していましたね。一部の市場調査によればスマホ向けVRゴーグルの出荷数自体も減っていて、ビジネスとしても今後盛り上がることはあまりなさそうです。一体型やPCを使ったハイエンド側にどんどん寄っていくんでしょうね。

激戦のPC向けハイエンド、今選ぶなら?

すんくぼ:

続いてハイエンド、つまりPC向けVRヘッドセットだけど……動きが活発。今年も各社がデバイスを出してる。例えばOculusは「Oculus Rift S」、HTCからは「VIVE Cosmos」。あとSteamのValveから「VALVE INDEX]、マイクロソフトが各社メーカーと提携して作るWindowsMRの新型として、HPが出した「Reverb」。引き続き選択肢がだいぶ豊富だね。


(日本HPの販売する「Reverb」。価格は税別63,500円、片目2Kの高解像度が特徴)

水原:

昨年や一昨年から継続して販売されているデバイスも考慮すると、かなり選択肢が多いですね……。「PC向けVRヘッドセットを選ぶなら、結局どれがいいの?」と迷う人はかなりいそうです。

すんくぼ:

ここで話がもう一段階ややこしくなるんだけど、一体型のOculus Questが「一体型の手軽さを持ちつつPCVRもできるデバイス」になったんだよね。

水原:

Oculus Linkですね。

すんくぼ:

とはいえ、Oculus Linkを使ったQuestとRift Sではクオリティがちょっと違う。「ハイエンドなVR体験にこだわる人は、PC向けデバイスを買う」ということになるかな。

水原:

最近のハイエンドデバイスのトレンド、主流といえば、いわゆる「インサイドアウトトラッキング」系ですね。外部センサーを使わないで、PCと接続してちょっとセットアップすれば使える、という。Rift SやCosmos、Reverbなどがそれにあたります。

すんくぼ:

そうだね。Questなんかは一体型としての良さ、つまり手軽さを推す意味もあってインサイドアウトだけど、ハイエンドもインサイドアウトが主流になりつつある。最初に遊ぶまでが楽だし、片付けたりしてからもう一度出すときも手間がかからないし。

水原:

個別の話にいくと、HTCのVIVE Cosmosは、2019年10月下旬発売。インサイドアウト形式ですね。特徴としてはVIVE Pro以上の高解像度と、外部パーツ「Mod(モッド)」を使ってさまざまなカスタマイズ・機能追加できます。価格は89,882 円(税別)。皆さんご存じHTCは、OculusとPC向けVR分野を二分している企業ですね。


(HTCの最新VRヘッドセット「VIVE Cosmos」)

すんくぼ:

VIVE Cosmosはディスプレイもちょっと違うんだよね。フルRGBの液晶なので画面がキレイ。数値通りの解像度をこだわって再現してる。HTCの「プレミアム路線で、ハイスペックなものを出していく」という方針が反映されているね。

水原:

VIVE Cosmosの価格はRift Sより高い(Cosmosは税別89,882円=税込97,072円、Rift Sは税込49,800円)ですね。QuestやRift Sがポジションを取っている「手軽で安めのライン」で戦わない選択肢をとってますね。


(Oculus Rift S)

すんくぼ:

ただ、VIVE Cosmosはコントローラーが重いのが気になるかな。 あとRift Sと比べると価格が倍近く違うけれど、それだけのプレミアムな価値があるかどうかは人次第。ModもModでお金がかかるわけだし。解像度だけで見たらReverbの方が高いわけだしね。

水原:

現時点でVIVE Cosmos“だけ”抜き出すと、価格で見たときにRift SやReverbと比較すると、コスト面で厳しめに感じます。価格面で以前のフルセットのVIVEより高いですし……。一方でHTC VIVEのような外部トラッキングを実現するためのModや、MR用Mod、ハンドトラッキング用のModもリリースするそうなので、差別化していく方針になりそうですね。これがどれだけ効いてくるかで変わってきそうです。

すんくぼ:

ゲームをがっつりやるときにどれだけ選択肢に入ってくるかだね。あとフェイスブック=Oculusが代理店を日本に置いていないので、「ちゃんとした経路で買いたい」という人や、VIVE系列の強みである「外部トラッキングを使い、全身をトラッキングする(フルトラッキング)体験をしたい」という点では、Mod込みでVIVE Cosmosが選択肢としてアリなのかな、という気がする。

水原:

価格の安さを考えるならOculus Rift S、高解像度ならReverb、という感じですね。

VALVE INDEXついに日本上陸

水原:

ここからは“黒船”ことVALVE INDEXの話をしましょうか。世界最大級のゲーム配信プラットフォーム、SteamのValveが独自開発したVRヘッドセットです。

すんくぼ:

VALVE INDEXは完全にプレミアム路線で、「最高のコンディションとクオリティでVRゲームを体験してもらうために、妥協せずに作る」という信念が感じられますね。

(世界最大級のゲーム配信プラットフォームSteamで知られるValveは、VRヘッドセットの独自開発に乗り出した)

水原:

例えばVIVE Cosmosの売りである液晶パネルのフルRGBは、VALVE INDEXもほぼ同じなんですよね。若干VIVE Cosmosのほうが解像度は高めですが、なんといってもリフレッシュレートの数値がすごい。最大144Hzで90Hzや120Hzに可変。オーディオが工夫されていて、耳とスピーカーの間を空け、密着させない「オフイヤー」のヘッドフォンで装着感に工夫がされています。

すんくぼ:

それから5本の指を全部使えるコントローラーだね。正式名称は「Index VR Controller」、開発段階では「Knuckles(ナックルズ)」と呼ばれてた。これはすごく面白いんだけど、自分は賛否両論かな、と思ってます。MoguraでもアメリカからVALVE INDEXを輸入して体験会をやったんだけど、意外とコントローラーの評価は高くなかったんだよね。「5本の指を、全部VRでも使える」という夢のような機能だけど、意外と指の認識が難しかったり、手が小さい人には扱いづらい。

そもそも「5本の指を、きちんとVRに反映できる仕組みの入ったゲームやアプリ」がまだ少ないんだよね。現時点ではVIVEやOculus Touchといった質の高いコントローラ向けに作られたソフトがメインなので、今後対応が進んでくれると面白いことになりそう。

水原:

例えばXBoxのコントローラー(いわゆる“箱コン”)やPS4のDUALSHOCKのように、共通規格的なものではなく独自路線を取ったがゆえ、というところですね。以前から「VRで5本指のトラッキングを取り入れたいね」と考えてきたものの、まだ対応しているコンテンツ自体が少ないと。

すんくぼ:

VALVE INDEXは純粋にヘッドセット単体の性能で考えると、VIVE Proあたりを上回っている部分もあるし、コントローラーじゃなくてVALVE INDEXヘッドセット単体で買っちゃうのもアリだよね。

ただし比較する際に忘れてはいけないのは、VALVE INDEXは外部センサーを使うタイプ。初代HTCVIVEやVIVE Proと同じで、必ずベースステーションを使う必要がある。この点はセンサーいらずのCosmosやRift Sと違うね。

水原:

「手間はかかっても最高のVR体験を求める人」に寄せて作っているんでしょうね。コアなゲーマー向けの周辺機器というか、Valveはよりハイエンドなゲーミングデバイスとして位置付けているんでしょう。

すんくぼ:

ゲーマーが欲しいと感じる機能が大体入っているのも強いよね。みんなVALVE INDEXを使うと装着感の良さや音質に驚くし、Rift Sにはない物理でのIPD(瞳孔間距離)調整もついている。2019年末の日本で今買える、最強のゲーミングVRヘッドセットと言ってもいいかもしれない。

水原:

ちなみにVALVE INDEXの価格はフルセットが125,800円(税別)ですね。

すんくぼ:

VIVE Proのフルキットより安いんだよね。確かVIVE Proは162,880円(税別)で、年末年始のみセールで147,880円(税別)になってる。VALVE INDEXはヘッドセット単体販売やコントローラー単体販売もあるので、VIVE系を使っている人がそのまま乗り換えるだけだったら思ったよりも安く済むかもね。

水原:

VALVE INDEXはヘッドセットとコントローラー、双方ともベースステーションの1.0と2.0に両対応してるんですよね。初代HTC VIVEを持っていて、もっといいのに買い替えたい人はヘッドセットだけ買い換える、というのがシンプルでよさそう。

すんくぼ:

VALVE INDEXが発売されると、用途別でPC向けVRヘッドセットを選べるようになるね。手軽さならRift S、こだわるならVALVE INDEX、モジュールを試していくならVIVE Cosmosとか。ユーザーごとに選ぶデバイスが変わる感じかな。

水原:

Quest一強の一体型と違って、PC向けVRは選ぶのにちょっとリテラシーや知識が要りますね。

後編に続く】


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