フェイスブックは9月25日から開催された「Oculus Connect 6(OC6)」にて、一体型VRヘッドセット「Oculus Quest(オキュラス クエスト)」のアップデートを複数発表をしました。なかでも、PCと接続可能な「Oculus Link」や新たな操作方法である「ハンドトラッキング」などの新機能に注目が集まっています。
本記事では、Oculus Connect 6で発表されたアップデート情報の詳細や、会場での体験レポート、ストアでの売れ行きなど、Oculus Questの最新情報をまとめて紹介します。
目次
1. Oculus Questとは
2. Oculus Connect 6で発表された新機能
2-1. Oculus Link
2-2. ハンドトラッキング
2-3. パススルー+の追加
2-4. Goのアプリも遊べるようになる
未実装の機能の今後は? 3.Oculus Questの勢い
4 Oculus Questの価格や購入方法やおすすめアプリなど
Oculus Questとは
Oculus Quest(オキュラス クエスト)は、フェイスブック(Oculus)から2019年5月に発売された一体型のVRヘッドセットです。VRを体験するためにPCやケーブル、スマートフォンが不要なため、遊びたいと思ったときにヘッドセットをかぶることで、すぐにVRを体験できます。
VR内では身体や手を自由に動かせるトラッキングに対応し、PC向けヘッドセットのようなリッチなVR体験が可能です。Questの対応コンテンツは、他プラットフォームで人気・名作のVRゲームが多数移植されています。
Oculus Connect 6で発表された新機能
続いては、2019年9月末に発表された、Oculus Questの新機能をそれぞれご紹介します。いずれもVR体験がより快適になったり、遊べるVRゲームやアプリが増えたり、といった内容になっています。
Oculus Link
「Oculus Link」は、QuestとPC(VR対応)をUSB Type-Cケーブルで接続すると、PC向けのVRヘッドセット「Oculus Rift」「Oculus Rift S」対応のVRコンテンツが遊べる機能です。Riftに対応しているコンテンツは、Quest対応コンテンツよりも圧倒的に多く配信されており、グラフィックなども優れているため、よりリッチなVR体験が可能になります。
接続はヘッドセット側にUSB Type-Cケーブルを挿し、PC側のUSBポートに繋ぎます(PCのGPUへの接続はせず、直接USB3.0端子に接続する形になります)。ただし、PCとQuestを繋ぐUSBケーブルは高品質なものが必要とのことで、OculusはOculus Link用の特別なケーブルを販売する予定です。
Oculus Linkのベータ版は、2019年11月に実装予定となっています。
現地でのデモ体験レポと技術セッションを踏まえた解説記事も
MoguLiveでは「Oculus Link」をデモ体験。技術的な面もあわせて徹底解説しています。現地で体験した記者は「Oculus LinkによるVR体験は違和感がなく、とても満足のいくものでした」と話しており、「Rift Sとの違いに関しても大きな違いは感じられません」としています。
OC6のセッションでは、Oculus Linkで違和感が出ないようにする技術的な仕組みについて解説しています。Oculus Linkでは、「見た目には分からない解像度の工夫」「遅延を抑えるためのエンコードとデコードの工夫」「使うUSBケーブルの工夫」という3つのポイントで技術的な工夫を行ったとのこと。それぞれの詳細はこちらの記事で読むことができます。
Oculus Linkの無線化構想が進行中か
OculusのCTO、ジョン・カーマック氏は、OC6の壇上で「もちろん、我々はこの機能(Oculus Link)をWi-Fiで動作するようにしたいと考えています」と発言。そして、ワイヤレス化の実現にあたり、いくつかの技術的な課題点を説明しました。
その1つがレイテンシ(データ転送に伴う遅延時間)問題ですが、カーマック氏は改善可能としています。詳細は以下の記事から。
ハンドトラッキング
Questの操作にはコントローラーを使用しますが、コントローラーを使用せず手の動きでメニューやアプリを操作できる「ハンドトラッキング機能」が2020年初旬に実装予定とのことです。フェイスブックは、光学カメラを使いながらも高精度のハンドトラッキングが実現していると主張しています。
また、OC6の講演では「ハンドトラッキングによるバッテリー消費追加はわずか7分」と、ハンドトラッキングがバッテリー消費に大きな影響を与えないことが明らかになりました。講演ではハンドトラッキング機能は既存のコントローラーと同時使用はできないこと、従来のコントローラーであればバッテリー消費増加はないことが語られています。
パススルー+の追加
Questには、ヘッドセットを装着したまま現実を見ることができる「パススルー」機能が搭載されています。主に安全のためにプレイエリアを設定するための機能で、かなり歪みがあるものでした。
フェイスブックは、このパススルー機能を強化し、Rift Sにも搭載されている「パススルー+」にアップデートすることを発表しました。機能のアップデートにより、歪みが軽減され、自然に周囲を見ることができるようになります。実装後はプレイ中にOculusボタンを2回押すことで周囲の環境とVRを切り替えることも可能です。
(※パススルー+は、2019年10月2日のアップデートにて実装されました。なお、Oculusボタンを2回押して起動する機能は未実装です。)
Goのアプリも遊べるようになる
OC6では、同じくフェイスブックの一体型VRヘッドセット「Oculus Go(以下、Go)」向けアプリが、Questに対応することも発表されました。また、Go版とQuest版が存在する同名のタイトルに関して、Go版を所持しているユーザーはQuest版を無料で購入でき、アップグレードが可能です。
2019年9月26日時点、Go向けアプリでQuestに対応する66タイトルとGo版を持っていたらQuest版が無料で手に入る21タイトルが発表されています。対応タイトルはこちらの記事で紹介しています。
未実装の機能の今後は?
Questには2018年9月に製品が発表されたときに紹介されたもののまだ実装されていない機能が存在します。それがMRモードです。MRモードは、Questのカメラで外の様子を見ながら、キーボードを打つなどの仕事を行い、そのまま席を立ってリビングルームにいくと目の前には実際のリビングルームと同じ机や椅子が置かれているというもの。
MRモードの詳細はこちら
2019年9月開催されたOculus Connect6(OC6)のプレス向ラウンドテーブルにて、FacebookのAndrew Bosworth氏はMRモードとアリーナスケールについてMogura VRの記者に対して見解を示しました。
MRモードに関しては「リコンストラクション(※)ではないが、パススルー+で限定的に導入している」としています。また、OC6で発表されたLiveMapsという技術がMRモードにつながるものであると言及。LiveMapsは、現実空間をカメラでスキャンし構造を把握するものです。
※リコンストラクション:現実空間と同様の3次元CG空間を再現する技術。Facebookが長年研究開発を続けている。
OC6の基調講演でBosworth氏は自身が出演している動画を披露しました。リコンストラクションされたVR内の実家のリビングルームでBosworth氏とその父親がスポーツ観戦を楽しむというもの。プロフェッショナル向けのカメラを使ってリコンストラクションを行ったとのことですが、今後長期的にはヘッドセット単体でMRモードを可能にしていきたい、と話しました。すぐに実装されるというものではないということを強調しており、QuestによるMRモードの実現はまだ先になりそうです。
Oculus Questの勢い
Questの登場からわずか約5ヶ月ほどですが、既にQuest向けVRコンテンツが他プラットフォームを圧倒する売れ行きを見せています。Facebookによれば、Quest向けコンテンツの総売上は約2,000万ドル(約22億円)を突破しています。
海外メディアの取材により、各ゲーム・アプリのQuestでの勢いが明らかになっています。
例えば、VRで高所体験ができる「Richie’s Plank Experience」のToast VRは「Quest版は発売1週間で、Oculus Rift向けの2年間の総売上を超えています」とコメントしています。グラフについて、Questは他プラットフォーム向け発売を吹き飛ばすほどの売れ行きであると説明しています。
(プラットフォームごとの発売1ヶ月で「Richie’s Plank Experience」の売上を比較したグラフ。左からOculus StoreのRift向け版、Steam版、PSVR版、そしてOculus Quest版の販売本数)
ホラーアドベンチャーゲーム「The Exorcist: Legion VR」のFun Trainも、Questの勢いを実感。「『The Exorcist: Legion VR』のOculus Quest版リリースは、我々の期待を超えるものでした。そして発売数カ月後もなお、その勢いに驚かされています。PlayStationのような既存プラットフォームに迫る勢いです」と話しています。
VRゲーム「Angry Birds VR: Isle of Pigs」や「Bait!」を手掛けたスウェーデンのゲームスタジオResolution Gamesは、Quest向けにVRパーティーゲーム「Acron: Attack of the Squirrels」をリリースしています。Quest版の売れ行きに関して「『Angry Birds VR』、『Acron』ともに最大のダウンロード数を記録しています」と答えています。
Questは日本での売り上げが好調
9月に開催された「TGSフォーラム2019」にて、Oculusのコンテンツエコシステム ディレクターのクリス・プルエット氏は、Questに関するプレゼンテーションを行いました。その中で、日本の小売店ではまだ販売が行われていないにも関わらず「Questは日本での売り上げがすごく良い」と話しています。この売れ行きを見たOculusでは、同社の戦略にとって「日本は無視してはいけない国だ」と考えているとのことです。
Oculus Questの価格や購入方法やおすすめアプリなど
Oculus Questの購入方法やその他情報まとめ、オススメVRゲーム・アプリ等は以下の記事から読むことができます。