HTCがアメリカ・ラスベガスで開催されたエレクトロニクス展示会「CES2019」にて、次世代VRセッドセットとして発表した「VIVE Cosmos」。PC接続型でありながら外部センサーを使わずにVR体験ができるデバイスとして注目されています。発表当初からスペック情報などが徐々に公開され、ついに10月11日に発売が決定しました。
本記事では「VIVE Cosmos」はどういったVRデバイスなのか、何ができるのか、他のVIVE系列とは何が違うのか、価格、スペック、そして周辺機器などを紹介します。
目次
VIVE Cosmosとは?
VIVE Cosmosで何ができるの?
価格や発売日、購入方法
解像度や重さなどのスペック
後方互換性もあり
VIVE Cosmosは“買い”か?
VIVE Cosmosとは?
VIVE CosmosはPC接続型のVRヘッドセットです。「Oculus Rift S」や「Windows Mixed Reality(WinMR)ヘッドセット」同様、ヘッドセットに搭載されたカメラにより、外部センサーを使わず6DoF(※)の位置トラッキング・ハンドトラッキングが可能。ヘッドセットには、トラッキング用カメラが前面に2基、左右に1基ずつ、上下に1基ずつと計6基のカメラが搭載されています。
(※3DoF:回転だけを認識。6DoF:上下左右前後の動きを認識)
また、新たなユーザーインターフェース「VIVE Reality System」では、VRアプリを起動するのではなく、VR世界をまたぐような感覚でプレイできるように設計されているとのこと。
2019年1月にMogura VR NewsがHTCのレイモンド・パオ(鮑永哲)氏に行ったインタビューにおいて、同氏は「VIVE Cosmosはコンシューマー市場をターゲットにしたデバイスです」と話しています。
既存のVIVEシリーズとの違い:外部機器が不要、高解像度に
VIVE CosmosはPC接続型であるため、これまでのHTC VIVEと同系統の位置付けです。しかし、HTC VIVEでVRを体験する際に必要なトラッキング用センサーである「ベースステーション」の設置が不要。手軽にVR環境を整えられるようになります。
VIVE Cosmosではコントローラーも新たなデザインに変更されており、コントローラーが発する光をヘッドセットのカメラが検出することで位置をトラッキングします。
内蔵ディスプレイも異なります。内蔵ディスプレイは HTC VIVEおよびVIVE ProがOLED(有機EL)だったのに対し、VIVE CosmosはLCD(液晶ディスプレイ)が採用されており、解像度は2880×1700(左右のディスプレイの合計)です。この解像度はHTC VIVEの2160×1200と比較して大きく向上しており、高解像度がウリであるVIVE Proよりも高い数値です。
HTC VIVE |
VIVE Pro |
VIVE Cosmos |
|
ディスプレイ |
対角3.6インチ 有機EL×2枚 |
対角3.5インチ 有機EL×2枚 |
対角3.4インチ、LCD(フルRGB) |
解像度(左右の合計) |
2160×1200 |
2880×1600 |
2880×1700 |
リフレッシュレート |
90Hz |
90Hz |
90Hz |
視野角 |
110度 |
110度 |
110度 |
その他、これまでのVIVEシリーズではVR体験を中断する際、頭からヘッドセットを完全に取り外す必要がありましたが、VIVE Cosmosではヘッドセット部分のみを上に持ち上げることができるフリップアップ機能を搭載しています。
VIVE Cosmosで何ができるの?
VIVE CosmosはこれまでのVIVEシリーズ同様、PCに接続して頭に装着することでハイクオリティなVRを体験できます。アクションやシューティングなどのVRゲーム、世界各国の場所に自分がいるような経験、バーチャル空間を用いた制作などさまざまなアプリを体験できます。
対応プラットフォームは、HTCが独自運営するVRコンテンツ配信プラットフォーム「VIVEPORT」とPCゲーム配信プラットフォーム「Steam」です。
また、VIVE Cosmosは「モッド(Mod)」と呼ばれるモジュール式のフェイスプレートを採用しており、機能拡張が可能です。公式のモッドとして「外部トラッキングモッド」が発表されており、VIVEシリーズで利用されているトラッキングシステムである「SteamVR」に対応します(互換性については後述)。そのほか、システムは不明ですがモバイル利用が可能であることが発表されています。
価格や発売日、購入方法
VIVE Cosmosは価格は89,882 円(税抜)、発売日は10月11日です(VRを体験するには別途PCが必要)。国内での予約販売は9月20日より開始しており、予約販売特典として、VRコンテンツの定額配信サービス「VIVEPORTインフィニティ」12ヶ月分とVRコンテンツ「AEON」が付属します。
予約購入はHTC公式オンラインショップおよびVIVE正規取扱販売店から行えます。
解像度や重さなどのスペック
VIVE Cosmosのスペックや仕様は以下の通りです。
・ヘッドセット
解像度 |
2880×1700(片目1440×1700) |
ディスプレイ |
対角3.4インチ、LCD(フルRGB) |
リフレッシュレート |
90Hz |
視野角 |
最大110度 |
重量 |
651g |
トラッキング方式 |
インサイドアウト方式 |
オーディオ |
ステレオヘッドフォン |
入力 |
内蔵マイク、ヘッドセットボタン |
接続 |
拡張モジュール接続用 USB-C 3.0、Display Port 1.2 |
センサー |
Gセンサー、ジャイロセンサー、IPDセンサー |
その他 |
フリップアップ機構搭載、IPD調節可能、ヘッドストラップ |
・コントローラー
センサー |
ジャイロセンサー、Gセンサー、ホールセンサー、タッチセンサー |
入力 |
システムボタン、アプリケーションボタン、トリガー、バンパー、ジョイスティック、グリップボタン |
バッテリー |
単三アルカリ電池×2本 |
・トラッキングエリア要件
起立時・着座時 |
スペース制限なし |
ルームスケール |
最小 2m×1.5m(ルームスケールモードの場合) |
後方互換性もあり
VIVE Cosmosは、VIVEシリーズのベースステーションを使った「アウトサイドイン方式」のトラッキングもサポートしています。フェイスプレート部分を「外部トラッキングモッド」に交換することで、ベースステーション1.0と2.0どちらのバージョンにも対応可能になります。
ただし、フェイスプレートパーツを交換した場合、トラッキングシステムの性質上VIVE Cosmosのコントローラーは使えないとのこと。外部トラッキングをVIVE Cosmosで使う際は、通常のVIVEコントローラーやIndex Contorollers、あるいは他のSteamVR対応コントローラーを使用することとなります。
外部トラッキングモッドは2020年発売予定です。
VIVE Cosmosは“買い”か?
「Oculus Quest」とは完全に別物
2019年には、VRデバイスを開発・展開するフェイスブックから「Oculus Quest」が発売されています。「Oculus Quest」はPCやスマートフォンを必要とせずにデバイス単体でVRを体験できる一体型VRヘッドセットです。
Oculus Questは一体型、VIVE CosmosはPC接続型であり、単純な比較はできません。一体型とPC接続型はVRゲームやアプリの描画処理の方法が異なっており、一体型はヘッドセット単体でアプリ等を処理します。一方PC接続型はPCの方でアプリを動かし、VRヘッドセットで映像を見る、という仕組みです。
両者を比較した場合、ハイクオリティな映像をVRで見たい、高画質のVRゲームをプレイしたい場合は、グラフィックボードを使用しているPC接続型の方が処理能力が優れています(PCの性能によって処理能力は変化します)。一体型は「PCを持っていない」という人でも、手軽にVRゲームなどを遊ぶことができる、というメリットがありますが、ハイスペックなPCに繋いだVRヘッドセットと比べ、画質などは劣ります。
また、価格にもVIVE Cosmos(税込97,072円)Oculus Quest(税込49,800円)と約2倍の差があり(消費税は8%想定)、VIVE Cosmosで体験する場合はVR対応のPCと接続しなくてはなりません。VR対応のPCを持っていない場合、最低動作要件を満たす約90,000~100,000円前後のPCが必要です(※コンテンツによっては最低動作要件で快適に体験できないものもあります)。
VIVE Cosmos |
Oculus Quest |
|
PCが必要かどうか |
PCが必要 |
PCが不要 |
VR内の移動 |
移動もできる(6DoF) |
|
価格(税込) |
97,072円 |
49,800円 |
価格は類似VRヘッドセットと比較すると割高?
記事冒頭で紹介したように、VIVE Cosmosは「Oculus Rift S」や「Windows MRヘッドセット」と同じ分類に入ります。これらヘッドセットを価格で比較した場合、先程と同じくVIVE Cosmosはやや割高な価格設定です。VIVE Cosmoの外部トラッキングモッドの価格はまだ発表されていませんが、ベースステーションやコントローラー等と合わせて購入した際は、VIVE Proのフルセットに近い価格となりそうです。
価格(税込) |
|
Oculus Rift S |
49,800円 |
WinMRヘッドセット(※) |
Dell Visor:49,500 円 |
HTC VIVE |
69,390円(フルセット) |
VIVE Pro |
175,910円(ベースステーション2.0同梱のフルセット) |
VIVE Cosmos |
97,072円 |
(※:それぞれ、Dell、AcerはAmazon、HPは公式ストアのキャンペーン適用前価格を参考とした。価格は記事執筆時点のもの)
モッドによる拡張性に期待
しかし上述の通り、「モッド」の存在により、VIVE CosmosにはOculus Rift SやWinMRヘッドセットにはない拡張性が存在します。VIVE Cosmos単体ではやや割高感のある価格設定になっていることもあり、今後どのようなモッドが発売されるかでオススメ度は大きく変わりそうです。