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VIVE 2019.07.10

VIVE Pro Eye&VIVE Focus Plus体験レポート。視線追跡は業務でもポッキーゲームでも役に立つ!?

アイトラッキング技術搭載のPC向けVRヘッドセットVIVE Pro Eyeと、スタンドアローンVRヘッドセットVIVE Focus Plus。2つのVRデバイスのエンタープライズ向け販売が、日本でも6月28日(金)より開始されました。

Mogura VR News / MoguLive編集部は、発売に先駆けてこれらのデバイスを体験。その使用感を詳細にレポートします。

「VIVE Pro Eye」とは

VIVE Pro Eye」は、PC接続型のプロフェッショナル向けVRヘッドセット「VIVE Pro」に視線追跡(アイトラッキング)機能を搭載したモデルです。ヘッドセット内部のレンズの周囲にアイトラッキング用のセンサーが配置されており、体験者の眼球の動きや瞬きを認識します。


(「VIVE Pro Eye」。フロントカメラの周囲が水色に縁取られている以外、VIVE Proと同じような外見だが……)


(内側を覗き込むと、レンズの周辺にはアイトラッキング用の赤外線センサーがついている。眼球だけではなく目の周りの動きも検知し、目とまぶたの位置をトラッキングする仕組みだ)

このアイトラッキングを用いることで、「VIVE Pro Eye」ではIPD(瞳孔間距離)のキャリブレーションサポート機能がついています。

ここで、どれくらい「VIVE Pro Eye」でアイトラッキングができるのか、体験動画をご覧ください。

眼球の運動。これくらいはっきりと動きます!

眼球だけでなくまぶたの動きも取れるので、またたきやウインクもできます(ウインクの動きがぎこちないのは記者のせい)。

こちらは視線を合わせると電球が光るデモ。点いたり消えたりしているのは顔ではなく眼球運動で視線を動かしているため。眼球運動だけで視線を制御するのは難しいけれど、顔を動かしてこれから見ようと(点けようと)したライトがすでに点いてたというのは眼球運動を加味しているからで、確かに便利でした。

アイトラッキングで実現できること

メディア向けの体験会では、高精度なアイトラッキングにより、以下のような事が実現できるとの説明が。

・コントローラーに視線を追加することによる、より直感的な操作
・中心窩(ちゅうしんか)レンダリング
・ユーザーの視線行動分析
・目の動きやまたたきのアバターへの反映

視線による直感的な操作

この事例については、キーボード入力支援やVR空間上での3Dデザイン操作についてプレゼンテーションがありました。

先述の通り、眼球運動だけで操作をするのは難しいのですが、コントローラーと頭の向きに目の動きも加えることで、繊細に、あるいは少ない動きで操作ができそうです。
ドローイングソフトやゲームエンジンでもVR上で3D空間を操作する事がありますが、そういう作業に、地味だけど効率性の向上に大きく関与しそうな気がします。

中心窩(ちゅうしんか)レンダリング

中心窩レンダリング(フォービエイテッド・レンダリング)とは、体験者の視野の中心ほど高解像度にレンダリングし、視野の外側ほどレンダリングは低解像度にすることで、PCの描画処理の負担を下げ、パフォーマンスをあげる技術です。

参考:フォービエイテッド・レンダリング(Foveated Rendering)

現在は、NVIDIAのTuringアーキテクチャGPU搭載のグラフィックボードが必要です(Unity開発者向けにFoveated Rendering Unity Pluginが提供されており、それを利用する場合、上記のグラフィックボードが必要とのこと)

ユーザーの視線行動分析

視線が取得できるということは当然そのログも取れる……という事で、デザインや研究、教育やトレーニングの現場にてユーザーの視線行動分析に活用できるとHTCは提案しています。

VR会議やVR講義でうたたねしてたら怒られる日もくる……というのはともかく、工業デザインやマーケティングの場でも活躍しそうです。

目の動きやまたたきのアバターへの反映

このトピックスがピンと来る読者の方も多いかもしれません。これまでバーチャルアバターの目を開けたり閉じたりする表現、あるいは瞬きについては、コントローラーで操作するか、あるいはランダムで表現されていました。

アイトラッキング機能を使う事で、VR体験者の眼やまぶたの動きをそのまま再現することができます。コントローラーを使わずに動かす事ができるので、VTuberの配信やライブなどでもより豊かな表現が可能になります。

今回の「VIVE Pro Eye」の日本での販売開始にあわせて、VRライブ・コミュニケーションサービスの「バーチャルキャスト」で、アイトラッキング機能対応が開始されています。

今回、バーチャルキャスト社のあねえるたんさんの案内でバーチャルキャストを体験することができました。

アイトラッキングによる自然な表情のおかげで彼女とのコミュニケーションを満喫してしまった記者ですが、そんな中でも特に印象的な出来事がひとつ。バーチャルキャスト内で使えるアイテムの中に「ポッキー」があるのですが、ひとつのポッキーを両端からあねえるたんさんとから食べ合うというシチュエーションがありました。「ポッキーゲーム」ってやつですね。

両端から食べていくということは当然お互いの顔が近づいていくのですが、ちょっとこれは近いんじゃないか……というところであねるたんさんの顔を見たら、なんと彼女、ちゃんと目を閉じていました!それだけでドキドキしてしまいました、いやマジで!そして、それにあわせて記者も目を閉じれば、当然記者のアバターも目を閉じます!

顔を近づければ目を閉じるというリアル……アイトラッキングの破壊力を一番感じた出来事でした。

6DoFコントローラー対応!VIVE Focus Plusとは

VIVE Focus Plusは、スタンドアローン型VRヘッドセットの「VIVE Focus」の進化系になります。


(「VIVE Focus Plus」のヘッドマウントディスプレイとコントローラー)

6DoFトラッキング対応のコントローラー

今回の「VIVE Focus Plus」の大きな注目ポイントは6DoF(自由度)トラッキングのコントローラーでしょう。コントローラーから発せられる超音波と、ヘッドマウントディスプレイ側のマイクにより、外部センサー無しで6DoFを実現させています。超音波式にすることで、コントローラーを背中の裏に回してもしっかり位置を検知できるようになっているそうです。(他端末のコントローラーを近づけたときの干渉はあるそうです)


(コントローラー前面。メニューボタンとシステムボタンが横並びに)


(側面から見たコントローラー。グリップボタン(画像下)が側部からトリガーボタン(画像上)の下に並ぶ形に。トリガーボタンは感圧センサー式に)


(コントローラーの輪の部分にあるのは超音波発信部分)


(ヘッドマウントディスプレイには超音波を拾うマイクが)

シューティングゲーム「Sureshot: RPO Edition」を体験させてもらいました。確かに腕をぶんぶん回してプレイすることができ、ケーブルレスのスタンドアローンのヘッドセットの組み合わせのお陰で、体験エリアを自由に動く事ができました。

新型レンズと、長時間装着しやすい構造

「VIVE Focus Plus」のレンズはVIVE Focusと比べても鮮明な映像がみえる新型にバージョンアップしています。また、ヘッドセットと頭が触れる部分を大きくし、柔らかく汚れにくい素材に変更し、さらにヘッドセットの重量バランスを見直すことで、ビジネスシーンで求められる長時間の装着にあうように改良されています。

これからのVIVEの片鱗

体験会の後に、HTC NIPPON株式会社 代表取締役社長の児島全克さんにお話を伺いました。まず訊いてみたのは、今回体験した「VIVE Pro Eye」「VIVE Focus Plus」が、両者ともエンタープライズ向けである理由について。

「VIVE Focus Plus」は、一般販売する上では、遊べるコンテンツの配信がまだ揃っていないという理由をあげました。さらに、同社が行ったリサーチによると、VIVEを欲しがっているのは「40代前後の男性、イノベーターでギーク」という層だと思われていたのが、実は「20代から40代の女性、コンサートやスポーツなど臨場感のある映像を見たがっている」層が多かったということで、「映像コンテンツも含めての拡充したタイミングを見計らってコンシューマーユーザーへの展開を行いたい」とのこと。


(HTC NIPPON株式会社 代表取締役社長の児島全克さん)

「VIVE Pro Eye」については、グローバルではやはりプロユースを想定しているようですが、日本ではVTuberというマーケットがあるため特殊であると言います。「目線で語るという言葉があるくらい、目の動きがあるとないとでは全然違う」と強調する児島さん。「アイトラッキングに需要があるのかもしれないと思っています」とも。さらに、開発者向けに口元の動きを取り込むことができるマウストラッキングカメラも出ているという事で、こちらも欲しいという声が集まれば商品化されるかも……?

また、今回の体験会では「VIVE Focus Plus」上で、「AMD Radeon ReLive for VR」を使ってのストリーミング配信でのVR体験をしてきました。これにより、PCで体験するVRをVIVE Focus Plusで体験することができます。

(※「AMD Radeon ReLive for VR」は「VIVE Focus」など他デバイスでも動作可能です)

体験した「theBlu」は深海に潜り前後左右上下を泳ぐ魚たちを眺めるというコンテンツだったのですが、スタンドアローンのデバイスでここまでの美麗な映像がでるのに声を失ってしまいました。そしてVR空間でクジラが近づいてきたときは、つい触ろうと歩き回ってしまいました。また、この仕組みでバーチャルキャストも体験できました。一体型のVRヘッドセットでPC向けのVRが快適に出来てしまうのには驚かされました。

児島さんはそこに、5Gとクラウドが組み合わさった将来について話してくれました。パソコンがなくてもどこにいてもリッチなVR体験ができる、あるいは出張先でVR会議を行う……将来のVRも楽しみです。

VIVE Pro Eye
https://enterprise.vive.com/jp/product/vive-pro-eye/

VIVE Focus Plus
https://enterprise.vive.com/jp/focus-plus/

なお、株式会社Moguraでは、「VIVE Pro Eye」および「VIVE Focus Plus」を、法人向けECサイト「Mogura VR Store」にて販売しています。価格はVIVE Pro Eyeが186,120円(税別)、VIVE Focus Plusが89,750円(税別)です。


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