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VALVE INDEX 2019.07.06

大注目のVRヘッドセット「Valve Index」体験レポ。徹底的なこだわりが生む“至高のVR体験”

2016年にOculus RiftやHTC VIVE、PSVRなど、多数のVRヘッドセットが発売されて約3年が経ちました。2019年はOculus QuestやVIVE COSMOSなど、2016年並に多くの新型VRヘッドセットが登場しています。

中でも3月に電撃発表が行われたValveのIndex(インデックス)は、大きな注目を集めています。Valve社は世界最大のPC向けゲーム配信プラットフォームSteamの開発・運営で広く知られており、同社が直々に世に送り出すVRヘッドセットがIndexです。


(Valveの「Index」。Valve社によるこのハイエンドVRヘッドセットは、ユーザーや開発者から非常に高い注目を集めている。)

今回、Mogura VR News / MoguLiveでは米国シアトル近郊ベルビューにあるValve本社にて、Indexを体験する機会を得ました。本記事では、この「Index」の体験レポートをお送りします。

なぜIndexが注目を集めているのか?

Indexが注目を集めている理由は、その経緯性能にあります。

2016年、ValveはHTCと共同開発したVRヘッドセット・HTC VIVEを世に送り出しました。HTC VIVEはOculus Riftと並んでPC向けVRヘッドセットの代名詞的存在であり、この2種類がPC向けシェアの大半を占めています。

そしてValveはHTC VIVE向けに「SteamVR」として、トラッキングを始めとする各種基盤システムを提供。さらにSteamでは多数のVRゲームが配信されており、コンテンツ配信プラットフォームとしてHTC VIVEを支えていた存在であるとも言えます。しかし3年が経った今、Valveは自社でVRヘッドセットの提供に踏み切った、というわけです。

さらにIndexは両目で2880×1600の解像度、最大144Hzのリフレッシュレートを持ち、現存するPC向けVRヘッドセットの中でも最高レベルの性能を誇ります。そして、付属するコントローラーは5本指の動きをトラッキング可能となっており、ユーザーや開発者の注目を集めています。

Indexは2019年6月28日から出荷を開始していますが、生産数が絞られているのか、すでに9月頃まで予約が埋まっています――そして、本記事の執筆時点では、日本は出荷対象国に含まれていません。


(Valve社のオフィスの廊下に並べられているこれまでのプロトタイプ)


(HTCと共同開発を始める以前、SteamVRのトラッキングシステムを研究開発していた際のヘッドセット。ヘッドセットもトラッキング用のベースステーションも巨大だ)

“全部載せ”に近い設計のIndex

Indexは、VRヘッドセットでありがちな“一長一短”の短所を限りなくつぶしている、“全部載せ”デバイスであるように感じられます。

実際のところ、Valve社の担当者もValve自身がVRヘッドセットを提供し始めた理由を「ゲーマーが最高のVRを体験できるデバイスを提供したいから」と話していました。その設計思想に則り、ゲーマーが欲しいと思う機能をこれでもかと搭載しています。

Indexの前面はツルッとした外見です。頭部への装着も、後頭部でノズルを締めて固定するオーソドックスな形式。頭へのフィット感は良好です。IPD(瞳孔間距離)調整やヘッドセットを前後に動かすピント調整の機構は、ともにハードウェア側で操作できるようになっています。


(IPD調整のレバー)


(ピント調整はヘッドセット右部のダイヤルを回転させる)

ヘッドセット内部はHTCのVIVE Proよりは狭いものの、眼鏡も問題なく入りました。装着感はVIVE Proよりも軽く、Oculus Rift Sに近いレベルに仕上がっています。また、顔が直接触れるフェイスパッドの部分は防水材質ですが、フレームごと取り外すこともできました。


ハードウェアの設計として唯一気になったのは、有線であることでしょうか。Index自体は長時間のプレイも苦にならず、ケーブルの存在以外はパーフェクトと言える出来でした。

美しい画質と自然な表現

筆者が体験したデモはSteamで無料配信されている「Apature Lab」です。このデモはOculus Rift Sにも対応しているため、両者の画質の比較ができました。Oculus Rift Sで採用されているのは2560×1440のLCDパネルですが、Indexはこれよりも一回り解像度の高いパネルが採用されている分、美しい映像表現が実現しています。

滑らかさを示すリフレッシュレートは60、72、90、120、144と多くのバリエーションに対応しています。筆者が体験した際はHTC VIVEと変わらない90Hzで駆動していましたが、Valveの担当者によると「PCの性能によって変化する」とのこと。グラフィック性能が高いほど滑らかで自然なVRを体験できることになります。このあたりもハイスペックなPCを持っているゲーマー向けの設定と言えるでしょう。

また、海外メディアでも注目されていたのがヘッドフォンです。Indexでは、耳にスピーカーが密着せず、間隔をあける「オフイヤー・ヘッドフォン」が採用されています。「Apature Lab」では、エレベータのような密閉された小部屋で頭上から誘導の声が聴こえてくるシーンがありますが、Indexで体験したこのシーンはこれまでで最も自然かつ音が立体的に聴こえた瞬間でした。音場に広がりがあるように自然に聴こえたのです。

VR用のヘッドフォンなのだから密閉する、のではなく、あえて音の広がりを重視したと考えられます。音が聞こえていれば周りの環境音ほとんど気にならないレベル。密閉型ほどではありませんが、ある程度の没入感は保たれていました。

5本指を動かせるコントローラーはやはり秀逸

Indexの最大の特長でもあるコントローラーが「Index VR Contoroller」です。HTC VIVEのワンド状のコントローラーでは1〜2本、OculusのTouchコントローラーでは3本の指の動きを限定的に認識していましたが、Index VR Controllerは5本の指の動きを認識します。

Index VR Controllerは通称「Knuckles」と呼ばれていたコントローラーの製品版となります。詳細な体験内容は過去のレポートの通りです。製品版では装着方法がさらに洗練され、一人でも簡単に装着可能になりました。また、手を固定する箇所は布製の素材に。ただし長時間の使用に関しては、握り込むプラスチックの部分が硬いため、気になる人もいるかもしれません。

「Apature Lab」はこのIndex VR Controller用に作られています。眼の前に出てくるロボットアームが示すジェスチャーの通りに指を動かしていくのですが、Oculus Rift Sで体験した際は、指の動きに若干の違和感がありました。Index VR Controllerでは現実で動かした通りにVRで指を動かせるので、非常に自然な動作が可能です。

なお、Index VR Contorollersは、Index以外のSteamVR対応ヘッドセットとも使用可能です。これに対応するVRゲームも30以上存在しますが、このコントローラーは「VRで指を動かしたい」というニーズに応えられるデバイス、というポイントが大きいでしょう。日本ではVTuber用途への応用にも期待できます。

まとめ:Indexは“こだわり派”のVRヘッドセット

ここまで、Valve「Index」のヘッドセットとコントローラーについてレポートしました。残念ながらIndexは日本未発売ですが、今後発売され、新たにIndexがVRヘッドセットの選択肢に加わった場合、PC向けのVRヘッドセットはどれを買うのが一番良いのでしょうか?

Indexは確かに性能が高く、細部まで気が利いている高品質なデバイスであることは間違いありません。しかし、価格がややネックになる可能性があります。

比較対象となるPC向けのVRヘッドセットは、VIVE ProやOculus Rift Sなどが考えられます。しかしVIVE Proはフルセットで1399ドルとなっており、Indexは価格も含めほぼ全ての点でVIVE Proよりも優位となります。一方のRift Sは外部センサーが不要で399ドルと、フルセットでの比較を行うとIndexの半分以下の価格です。性能面・使い勝手の部分ではIndexのほうが上回るため、「コスパがいいのはRift S」「より良いVRを体験したい人はIndex」という位置付けになりそうです。

Valve「Index」の価格表

Indexヘッドセット

Indexコントローラー

ベースステーション

価格

999ドル(フルセット)

749ドル

499ドル

279ドル

149ドル

※Indexヘッドセット、Index VR ControllerともSteamVR1.0(HTC VIVEと同等)、2.0(VIVE Proと同等)両方のトラッキングに対応

また、これまでHTC VIVEやVIVE Proを使ってきたユーザーは、買い替え対象としてIndexが考えられます。特にHTC VIVE(無印VIVE)のユーザーは499ドルのヘッドセット単体でも、性能・使い勝手の面で大幅なアップグレードが見込めるでしょう。

Indexコントローラーは対応ソフトが少ないことから、ゲーム用途で購入した場合、対応ソフトが増えるまでは通常のVIVEのコントローラーのように使うことが想定されます。一方でVTuberなどのモーションキャプチャに使いたいユーザーにとっては、高価なグローブ型コントローラーを使わずに指の表現ができる必見のデバイスではないでしょうか。

日本上陸が待ち遠しいIndex。Valveの担当者も、予約開始後の反響には「売り出すまでどれくらいの反響なのか分からなかったが、出してみて非常にいい反響をもらっている」とのコメント。自前で開発を行ったIndex自体が、Valveにとって大きなチャレンジだったと話していました。また、出荷待ちの列が長くなっていることに対しては、「生産体制は改善を続けている」とし、「日本でも早く発売できるようにしたい」とのこと。早期の国内販売スタートに期待したいところです。


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