VR/AR/MR/VTuberともに多くの動きや盛り上がりを見せた2018年も、残りあとわずかとなりました。本記事では、リリース済・開発中問わず、2018年に注目を集めた「ゲームを中心とするVRコンテンツ」を振り返ります。
「Beat Saber」の快進撃
5月1日にSteamへ配信されたVRリズムゲーム「Beat Saber」。本作は発売からわずか1ヶ月で10万本を販売、Steam内のレビュー評価でも97%が好評(2018年12月現在)と、全体で見ても非常に高い評価を保ち続けています。
その後はPlayStation VR(プレイステーションVR・PSVR)版のリリースやアーケード版の登場、世界トーナメントの開催など、今や「Beat Saber」はVRゲームの代名詞とも呼べるタイトルとなりました。楽曲数の増加やDLCでのさらなる楽曲追加、新モード、難易度追加も予定されており、2019年に入ってからの動向も期待されます。
Mogura VRでは2018年6月、「Beat Saber」を制作するBeat GamesのCEO・Jaroslav Beck氏にインタビュー。本タイトルの開発秘話やその舞台裏に迫りました。
The Game Awards受賞、各メディアからも高評価のPSVR「ASTRO BOT」
2018年に配信されたVRゲームで話題となったのは「Beat Saber」だけではありません。「ASTRO BOT:RESCUE MISSION(アストロボット レスキューミッション)」にも触れるべきでしょう。「ASTRO BOT」は1人でじっくり遊べるVRアクションゲーム。プレイヤーは主人公の「ASTRO(アストロ)」と共に、迷子になってしまった仲間の「BOT」(ボット)たちを助け出すために冒険するタイトルです。
「ASTRO BOT」はPSVR向けに、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)から2018年10月4日に発売。映画・ゲームなどのレビューを行っているMetacriticによれば、本作はこれまでにリリースされたPSVR向けゲームの評価1位に。PS4向けに発売されたタイトル全体でも、「モンスターハンター:ワールド」や「ショベルナイト」等と並ぶメタスコア90点にランクインしています(2018年12月時点。また、2018年中にリリースされたタイトルとしては、「レッド・デッド・リデンプション2」に続き2位)。
その他にも、英米ではPSVR向けタイトルの10月売上ランキング1位、ゲームに関する著名な賞「The Game Awards」における2018年の「BEST VR/AR GAME」受賞など、高い評価を獲得しました。本作はVRゲームを専門的に遊ぶプレイヤーのみならず、幅広いプレイヤー層からの支持を受けていることも大きな特徴です。より間口を広げ、様々なプレイヤーにVRゲームの楽しさを知ってもらうきっかけとなったのではないでしょうか。
多くのプレイヤーが集い、イベントで賑わう「VRChat」
2018年1月ごろからブームとなり、2月には300万ダウンロードを達成したソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」。ユーザー自身が制作した3Dアバターやワールドをアップロード・共有し、他のユーザーと一緒に楽しめます。
統計サイトであるSteamSpyやSteamChartsによれば、最大同時接続者数は1月のピークから減少したものの、ここ半年ほどは8000から9000人前後と高水準で推移。継続率も高く、数多くのユーザーが「VRChat」を楽しんでいることが分かります。
また、「VRChat」では3Dアバター・3Dモデルの展示即売会である「バーチャルマーケット」や、パーティクルシステムを活用したVRライブ・音楽フェスなど、創意工夫を重ねたユーザー主導のイベントが日々開催されていることも大きな特徴。こうしたイベントが継続して開催予定となっていることからも、2019年も「VRChat」から魅力的なコンテンツや体験が続々と生まれることでしょう。
PSVRでリリースされた美しい2作「TETRIS EFFECT」「Déraciné(デラシネ)」
PSVRの発売から2年が経過し、2018年7月には累計販売台数が300万台を突破。VR専用/対応ソフトも「大規模なスタジオも小規模チームも、みな手探りで作る時期」を終えつつあり、より深いゲーム体験を備えたVRソフトが続々とリリースされています。
2018年11月に発売された「TETRIS EFFECT(テトリス エフェクト)」は、発表当初こそ「VR対応のテトリス」というフレーズにとまどいも見られたものの、蓋を開けてみれば「これまでに体験したことのない、美しいテトリス」とも呼ぶべき作品に。国内外でも、多くのプレイヤーやメディアが高評価をつけています。
同じく11月にリリースされた「Déraciné(デラシネ)」。「ダークソウル」や「Bloodborne」「アーマードコア」シリーズなどで知られるフロム・ソフトウェアと、SIE JAPANスタジオによるVRアドベンチャーゲームです。こちらも発表当初は意外性と驚きをもって受け止められましたが、プレイヤーを引き込む物語の展開やインタラクション、そして全編に通底して流れる、どこか哀しげで静謐な雰囲気が評価されています。
Mogura VRでは2018年9月、ソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ (SIE WWS)プレジデントの吉田修平氏にインタビュー。吉田氏はインタビューの中で「今はコンテンツを磨く時期」とする旨をコメントしています。
クラウドファンディングで大きな話題と期待を集めた「狼と香辛料VR」「東京クロノス」
2018年7月に発表されたVRアニメ「狼と香辛料VR」にも注目です。わずか2時間でクラウドファンディングの目標を達成、12月末までにおよそ2,700万円を集めました。2019年初頭のリリースを目指しており、またPSVRやOculus Questへの対応も決定しています。
シナリオは原作者の支倉凍砂氏、声優は小清水亜美さん、福山潤さんという原作アニメタッグ。キャラクターデザインは同じく原作を担当した文倉十氏、コンセプトアートはよー清水氏、ロゴデザイン等はサカイマサトシ氏と、「狼と香辛料」シリーズファンを中心に期待が高まっているタイトルです。
同じく日本発、かつクラウドファンディングで資金を集めたタイトルの中でも注目すべきタイトルはVRアドベンチャーゲーム「東京クロノス」(2019年春リリース予定)でしょう。制作には映画「楽園追放」のモーション監督を担当した柏倉晴樹氏、「ソードアート・オンライン」などのプロデューサーとして知られる三木一馬氏、OPテーマにて藍井エイル氏が参加しています。
「狼と香辛料VR」と「東京クロノス」は片やすでに人気を博しているコンテンツのVR化、片や完全新規タイトルと好対照。2019年春のリリースが楽しみなタイトルです。
女性向けVR体験にも盛り上がり、「VRカレシ」「MakeS -おはよう、私のセイ-」
2018年は女性向けVR体験にも大きな盛り上がりが。いずれも常設ではなく、9月末に開催された「東京ゲームショウ2018(TGS2018)」の会場での体験でしたが、「VRカレシ」と「MakeS VR」は会場間もなく数時間待ち・整理券切れとなるほどの人気を見せました。
引き続きARゲームとして大人気の「ポケモンGO」
ナイアンティックと株式会社ポケモンによるスマートフォン向けARゲーム「ポケモンGO」。2016年のリリースから2年以上が経ちましたが、未だなおその人気は根強く、多くのプレイヤーがポケモンを求めて様々な地域を歩く姿が見受けられます。
2018年は謎のポケモン「メルタン」の出現やトレーナーバトルの実装などが大きな話題となりましたが、「AR」という文脈では「ポケモンたちが実際の世界を自然に駆け回るデモ映像」が注目されました。
ナイアンティックは6月にロンドンのテクノロジー企業Matrix Millを買収、ニューラルネットワークや機械学習を用いて、「現実を反映したARゲーム」の実現を目指しています。デモ動画ではポケモンたちが人々や物の合間をぬって駆け回り、物の後ろや人の背後では姿が見えなくなるなど、「ポケモンGO」が今後目指す方向性のひとつを示しています。こうした形でポケモンたちがより活き活きと現実世界に登場するようになる未来も、そう遠くないのかもしれません。
VR動画を着実に伸ばすDMM
国内最大手の有料動画プラットフォームとして知られる「DMM.com」。その「DMM VR動画」が2018年11月に2周年を迎えました。DMM VR動画ではお笑いやミュージカル、アニメ作品、スポーツ、グラビア、そしてデジタルコマース社の提供するアダルトなど、幅広くVR動画を提供しています。
同社はMogura VRが2018年11月に行ったインタビューの中で、売上が1年目の倍となる40億円を超えたことやタイトル数の倍増、1億円を超える売上を記録したタイトルの登場について公表するなど、着実に規模を拡大していることが分かります。
番外編:2019年春に発売の「Oculus Quest」に注目
「VRコンテンツ」に関連するできごととして、2018年9月末に発表されたVRヘッドセット「Oculus Quest(オキュラス クエスト)」についても触れておくべきでしょう。2019年春に発売予定のOculus Questは、PCやスマートフォンを使わずに、身体や手を動かすことのできる没入感の高いVR体験が可能となります。
Oculus Quest最大の特徴は「一体型VRヘッドセットゆえケーブルレス、かつ6DoF」であること。価格も64GBモデル399ドル(米国向け価格)と、比較的購入しやすい価格設定です。2018年9月時点では、VRゲームを中心としたローンチタイトルがおよそ50ほど控えていることも発表されており、手軽に没入感の高いVRコンテンツを楽しめるデバイスとなることが期待されています。
OculusのCTOであるジョン・カーマック氏が「Oculus Questの使用用途は80%がゲームで、20%がメディア(=動画視聴など)を想定している」と述べていることからも、Oculus Questの売れ行きは、2019年の(ゲームを中心とした)VRコンテンツの先行きを占うひとつの指標となりそうです。