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にじさんじ 2024.04.26

3年連続開催の「にじさんじとJ1のコラボ」は何が凄いのか? JリーグとVTuberのファンが2年間動向を追って思ったこと


にじさんじ×J1のコラボレーション企画が3年連続で開催決定。4月8日に2024年度の企画概要と参加ライバーが発表されると、2022、2023年までの過去2回と異なり、にじさんじのライバーが一新されていることが、にじさんじファン、Jリーグファン双方から注目されていました。


4月15日には今年の担当ライバーや企画内容が発表され、6月16日に国立競技場で開催される試合がコラボレーション対象試合になっていたり、5月1日から昨年同様にオンラインくじの販売があったりと、これまでにじさんじとJリーグが良い関係を築いてきたことが伺える内容になっています。
Jリーグファン目線でいうと、基本的には2年間同じライバーが担当を継続していただけに、8日の時点で今年から違うライバーになってしまうことへの寂しさを募らせるポストが投稿されました。また、クラブ側からも「今までありがとう」といった旨のポストが投稿されるなど、双方が築き上げてきたものが単なるコラボレーションという記号的な関係値を超えた親交に感じられ、温かい気持ちにさせられました。


特に、ライバーとクラブチームのファンの熱量の相乗効果が強かった横浜Fマリノスや湘南ベルマーレのファンらはこれまでの想い出を投稿するなど、担当を変わってもファミリーの一員であるという気持ちを示しています。


かくいう私も長年FC東京を応援しているのですが、担当ライバーの成瀬鳴の配信やポストの話題が家族の間で日常的に出るなど、このコラボをきっかけに、クラブチームの担当ライバーの活動が生活に溶け込んでいたので、彼がもう担当ではないと知った時は強い寂しさを感じました。
にじさんじのファンからすると「毎年やっているようだけど、このコラボでJリーグのファンはどう思っているんだろう?」「自分の推しはこのコラボでJリーグに貢献できているのだろうか?」と感じるかもしれませんが、この記事では、かねてよりVTuberカルチャーに触れてきて、Jリーグファンでもある私から見ても、すごく良いコラボですね! という事を伝えられればと思います。

過去のにじJ1コラボでJリーグのファンはにじさんじをどう見た?

初めてこのコラボが行われた2022年には、クラブごとの担当ライバーが発表になると、Jリーグファン側からそのライバーのファン向けに「自チームの特徴」「サッカーの楽しみ方」などをまとめた投稿がポストされ、それを見たファンから「ありがたい」「行ってみたい」といったポジティブな反応が起きていました。


Jリーグファン側からは「よくわからない流行りとコラボしてる……」のようなネガティブな反応はほとんどないどころか、そもそも「推しが推しを応援してくれるなんて」という反応すらありました。
これには、「むしろ、どんなきっかけであってもファンが増えて欲しい」と思っているファン・サポーターが多かったことが背景にあると思います。実際、自チームに興味を持ってくれること事態が嬉しいという反応が多く、にじJ1コラボをきっかけに試合を観に行ったというポストやブログ記事が投稿されたのを見て、Jリーグ全体から見てもとても良いコラボレーションなのではないかと思わされました。


(にじJ1きっかけサッカー初心者の観戦記(横浜F・マリノスVSアビスパ福岡 5/28))
また、コラボをきっかけに担当ライバーのファンになるJリーグファンもたくさんいました。かくいう私もこのコラボをきっかけに成瀬鳴の配信を見るようになりましたが、Jリーグ側だけが特をするわけではなく、お互いがお互いを好きになるきっかけになったことがいいコラボだと感じています。


「サッカー」「VTuber」という、コラボレーションでもない限り交わることがないように見えるジャンルであっても、「その対象を熱心に応援している」という共通項があるのがファンというもの。そうした熱量がジャンルの垣根を超えてSNSを通じた交流を生み出したのを見て、本当に素晴しいコラボレーションだと思いました。

Jリーグファンが驚いた、これまでのコラボで起きたこと

ライバーたちは自分の担当チームの試合を実際に観に行った様子をXにポストしていました。中には複数回足を運ぶ者もおり、コラボをきっかけに観戦にハマったというライバーも。


当時驚いたのが、清水エスパルス担当の伏見ガクや、横浜Fマリノス担当のレオス・ヴィンセントなどが試合の同時視聴配信を行い、それを楽しむために月額3000円はするDAZNを契約するファンが多くいたこと。Jリーグ以外の試合も見るサッカーファンですら高額だと感じるDAZNの料金を「推しと一緒にサッカーを見たいから」と、払ってしまうことに驚いたのは私だけではないはず。

また、2023年まで広島を担当していた静凛は、(今年は担当ではないにもかかわらず)、つい最近もサンフレッチェ広島の試合の同時視聴配信を行うなど、相当ハマっていることが伺えます。広島ファンにとって、こんなに嬉しいことはないのではないでしょうか。

FC東京を担当する成瀬鳴は元からサッカー好きを公表していたのもあり、FC東京の有名サポーター、所属選手(当時)とコラボ配信を行い、積極的に双方のファンとの交流を生んでいたのが印象的でした。現役Jリーガーとにじさんじライバーが一緒になってサッカーのゲーム「FIFA」をプレイしているのはなかなか興味深いと思わせました。

浦和レッズの渡邊凌磨選手(当時・FC東京所属)はYouTubeチャンネルを持っており、試合後の振り返り配信やゲーム配信を行うなど、今時らしい活動スタイルが注目の選手です。なんと個人的にAPEXの大会にも出ており、APEXマスターの腕前を誇ります。コラボをきっかけに成瀬鳴とAPEXのカスタムマッチに出るなど、ゲームを通じた交流の可能性も見せてくれました。

「にじさんじ」とJ1のコラボの特徴は、一度きりのイベント企画やグッズ展開だけではなく、イベントやグッズ販売の期間が終わってもシーズンを通して関わることで、ライバーとファンが、コラボをきっかけにサッカー文化に足を深く踏み込んでいき、長い期間をかけて応援し続ける点にあると言えます。それによって、サッカーファン全体にも、にじさんじに関する信頼が生まれ、現役選手とのコラボといった流れにまで繋がったのではないかと言えます。

今年はどんな事が起こる?

2024年シーズンのJ1は、新たにJ1初昇格を果たしたFC町田ゼルビア、16年ぶりにJ1の舞台に戻ってきた東京ヴェルディ、2022年に降格したものの1年でJ1復帰を果たしたジュビロ磐田の3チームが加わって、全20チームとなります。
そんなFC町田ゼルビアの担当ライバーは町田ちまに決定。読みは地名の「まちだ」とは異なり「まちた」ですが、同じ名前であることと、メンバーカラーがチームカラーと親和性が高い事から、ファンからは歓迎の声が上がっています。


東京ヴェルディ担当のソフィア・ヴァレンタインは、ヴェルディファンの解説ツイートを引用RPしてヴェルディの公式キャラクター「リヴェルン」のイラストを描くと、ヴェルディファンからかわいいとたくさんの反応がありました。


ジュビロ磐田を担当するヘルエスタ王国の皇女、リゼ・ヘルエスタ。本人は否定するものの、ヘルエスタ王国=静岡説があることから、「絶対にジュビロ磐田さんだと思っていました!」と本人がポストしています。
3名ともにサッカーに詳しくないとのことですが、だからこそファンと一緒に学んでいく配信などを期待してしまいます。


また、川崎フロンターレを担当する長尾景は、柏レイソル担当の海妹四葉をゲストに招き、発表後間もない16日にサッカー初心者講座と題した生配信を実施しました。

ここで長尾からこれは初出しと前置きしてから「実はサッカー家族で、父ちゃんが還暦でもサッカーやってて、創設から知ってる川崎フロンターレ最古参」というフロンターレファンなら嬉しすぎる情報が飛び出しました。
配信ではサッカーのルール説明はもちろん、「試合前にペンライトを振る」「選手のアクスタがある」など、Jリーグの試合でもVTuberまわりと近しいカルチャーがあることを取り上げていたのが印象的でした。
また、6月11日には、コラボ対象試合になっている注目の一戦が行われます。ヴィッセル神戸vs川崎フロンターレ戦です。神戸の担当ライバーは壱百満天原サロメ。普段はVTuberの配信を見ないという方にも知られている彼女ですが、神戸=お嬢様というイメージとともに、ヴィッセル神戸のチームカラーであるクリムゾンレッドとの親和性の高さがイメージにぴったりだと思いました。


前述の町田ちまやリゼ・ヘルエスタ同様に先斗寧が「京都サンガ」を担当していたり、宇佐美リトが宇佐美選手が所属する「ガンバ大阪」を担当するなど、地名などから担当チームが決まったと伺えるライバーもいますが、基本的には色あわせで決まっている印象があります。
周央サンゴ、倉持めるとが担当してきているセレッソ大阪は、まさにチームカラーのピンク、そしてセレッソの試合を楽しむ女性ファンたちが「セレ女」と呼ばれていることもあり、雰囲気がぴったり合っています。


実はサッカーもVTuberのメンバーカラー同様に色がとても重要な要素で、各チームのファンたちが歌う応援歌にもカラーに関する歌詞がたくさん含まれているほど。むしろ「チームカラーと同じ色味のVTuberさんだ!」というのは、サッカーファンからするとそれだけで嬉しいポイントです。
サッカーファンは応援しているチームカラーのものをさりげなく集めたり、ナイトゲームではペンライトを振ったり、アクスタを持ってスタジアムに行ったり……と、聞くと「あれ? それって私たちと似ているのでは?」と思いませんか?

VTuberのファンとJリーグのファンというと遠い文化のように思いがちですが、長尾景が配信で指摘していたように、「応援する」という根っこの部分は似ているのかもしれません。
しかしながら、傍から見ても、全てのチームが同じように盛り上がったかというとそうとは言い切れず、マリノスや湘南といったチームのファンの熱量が突出して凄いものに映ったという点は、確実にあります。この熱量のバラツキを解消し、新たな風を呼び込むという点において、(少し寂しいことですが)今年の担当ライバーの一新の成果は大きく、今後もにじさんじとJ1がいい関係を築いていく一歩と言えるでしょう。
3年間のコラボを通じて生まれたのは、Jリーグファンが担当ライバーを好きになり、担当ライバーがJリーグ文化に親しんでいくという、異なるジャンル同士の交流による相乗効果。その、それぞれの歩み寄りの過程をファンは喜び、楽しんでいると言えます。
サッカーが地域に根付いたスポーツであることや、推し色文化にも通じるチームカラーを重要視することをきっかけにして、「推しが熱心に応援する姿」と「推しを応援してくれる姿」が交わる素敵なコラボだと思います。


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