マイクロソフトは、PCやワークステーションに搭載されるOS(オペレーションシステム)の「Windows」、ビジネスソフト「Microsoft Office」、さらにはゲームコンソール「Xbox」など、さまざまな製品を擁しています。
そのマイクロソフトが近年手がけている次世代デバイス、それが「HoloLens」(ホロレンズ)です。本記事ではHoloLensとは何か、どんなことができるのかなどをあらためて紹介・解説していきます。
マイクロソフトのMRデバイス「HoloLens」とは?
HoloLensはマイクロソフトが開発・販売する、頭に装着するタイプのコンピューティングデバイス。ディスプレイに表示されるCGなどの情報を、ディスプレイ越しに見える現実世界に重ね合わせるMR(Mixed Reality、複合現実)を実現します。
初代HoloLensは2016年3月に米国で発売がスタート(日本では2017年1月発売)。また、後継機となるHoloLens 2が2019年11月から日本を含む世界各国で販売中です。なお、HoloLensは主にビジネスでの利用が想定されており、2021年6月時点では開発者・法人向けのみの販売で、個人向けの販売は行われていません。
HoloLens 2の性能は?
現在販売中のHoloLens 2は、初代HoloLensから大幅に性能アップしています。
(初代HoloLensから大幅にパワーアップしたHoloLens 2。本体デザインも変更され、重量バランスも改善)
SoCがIntelのIntel Atom x5-Z8100からQualcomm Snapdragon 850に変更されたほか、HPU (Holographic processing unit、ホログラフィック処理装置)も初代の1.0からHoloLens 2では第2世代(HPU 2.0)にバージョンアップしています。
ディスプレイ解像度は初代の2536×720(片目1268×720)から4096×1080(片目2048×1080)に、視野角(Field of View、FOV)も初代の対角34度から対角52度まで拡張。HoloLens 2では全体として初代HoloLensの2倍以上の視野を持ちます。
また、HoloLens 2では新たにアイトラッキング機能が搭載されたほか、音声操作機能も追加。その他、重量バランスの改善や装着性の向上など、デバイスそのものの設計も見直されています。
■HoloLens/HoloLens 2 基本スペック比較
HoloLens(2016) |
HoloLens 2(2019) |
|
SoC |
Intel Atom x5-Z8100 |
Qualcomm Snapdragon 850 |
解像度 |
2536×720(片目1268×720) |
4096×1080(片目2048×1080) |
視野角(FOV) |
約34度(対角) |
約52度(対角) |
自由度(DoF) |
6DoF |
6DoF |
トラッキング |
ハンドトラッキング |
ハンドトラッキング/アイトラッキング |
重量 |
579g |
566g |
「HoloLens 2」でできることは?
HoloLens 2では、本体に内蔵したカメラやセンサーで現実空間をスキャンし、ディスプレイに表示させたCGなどのデジタル情報を現実世界の上に重ね合わせることができます。表示されたCGは、トラッキングした手や目の動き、あるいは音声などで拡大縮小や移動させたりもできます。
(HoloLens 2のハンドトラッキング機能を使い、仮想空間上に表示したオブジェクトを触ったり操作したりできる)
こうした特長を活かし、例えば現実世界のオブジェクトの上にCGを重畳表示させ、オブジェクトの操作や修理の際のガイドにすることなどが可能です。また、マイクロソフトのクラウドサービス「Dynamics 365 Remote Assist」「Dynamics 365 Remote Guides」などと組み合わせることで、遠隔地にいる別の人間とリアルタイムで状況を共有しながら作業を進めることもできます。
HoloLens 2の概要や利用方法について、日本マイクロソフトは同社の公式YouTubeチャンネルで「ほぼ10分でサクッとわかる HoloLens 2!」というシリーズ動画を公開しています(全5回)。HoloLens 2の機能についてよりくわしく知りたい人はぜひチェックしてみてください。
(「ほぼ10分でサクッとわかる HoloLens 2!」では、HoloLens 2について動画でわかりやすく解説している)
HoloLens 2の価格、ビジネス導入事例は?
(株式会社インフォマティクスの「GyroEye Holo(ジャイロアイ ホロ)」。建設・土木、エンジニアリング、製造などの作業現場で活用できる)
主にビジネス向けに展開しているHoloLensですが、企業での活用事例がすでにいくつもあります。採用業界も建設・製造・医療・教育など多岐にわたっており、作業効率の向上やコスト削減など、ROI(Return On Investment、投資利益率・費用対効果)も実証されています。
日本国内の事例としては、トヨタ自動車が全国各地にある同社の活動拠点「GR Garage」にHoloLens 2を導入。自動車整備作業の効率化やトレーニング目的で活用しています。
その他、日本マイクロソフトはHoloLens 2の導入効果や活用事例をまとめた「Mixed Reality パートナー ソリューション カタログ」を公開しています。
なお、HoloLens 2はマイクロソフトのクラウドサービスAzure Mixed Realityとも連携しており、同サービスを通じてさまざまな機能やアプリケーションの開発も可能。HoloLens 2をスムーズに現場導入することができます。
HoloLens 2の価格と購入方法は?
HoloLens 2はマイクロソフトストア法人窓口、およびマイクロソフト認定リセラーから購入することができます。2021年6月時点では開発者および法人向けのみの販売となっており、個人向けの販売は行っていません。また、初代HoloLensはすでに販売を終了しています。
(「HoloLens 2 Development Edition」はHoloLens 2本体に加え、500米ドル分のMicrosoft Azureクレジットなどがセットになっている)
(HoloLens 2とヘルメット、さらに骨伝導ヘッドセットを組み合わせた施工現場用デバイス「Trimble XR10」)
HoloLens 2の製品群にはHoloLens 2単体や開発者向けの「Development Edition」(ともに税込42万2,180円)のほか、ヘルメットと一体化した「Trimble XR10」(税込71万2,800円)、クリーンルームでの使用も可能な「Industrial Edition」(税込59万7,080円)など複数のバリエーションがあります。また、マイクロソフトストアでは頭部ストラップやキャリーケースなど、HoloLens 2用のアクセサリも販売しています。
その他、一般には流通していませんが、米国陸軍では軍事用カスタムモデルの導入も進んでいます。
HoloLens 2のエディション一覧
エディション |
想定用途 |
価格(税込) |
HoloLens 2(単体) |
法人業務 |
42万2,180円 |
HoloLens 2 Development Edition |
アプリ・サービス開発 |
42万2,180円 |
HoloLens 2 Industrial Edition |
クリーンルームや危険環境での業務 |
59万7,080円 |
Trimble XR10 with HoloLens 2 |
土木・建設現場での業務 |
71万2,800円 |
HoloLens 2についてもっと知りたい人は
着実にビジネス導入が進み、また、連携サービスも日々充実しているHoloLens 2。
2020年12月にマイクロソフトが主催したオンラインカンファレンス「Mixed Reality Dev Days Japan」では、HoloLens 2およびAzure Mixed Realityについて紹介・解説するセッションが多数行われています。セッション動画も公開されているので、HoloLens 2に興味がある・具体的にビジネス導入を考えているという人は、こちらも合わせてチェックすることをおすすめします。