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メタバース 2023.01.17

「好き」を見つけられるフェスにしたい――「SANRIO Virtual Festival 2023」制作陣インタビュー

2023年1月13日(金)から1月22日(日)にかけて開催される「SANRIO Virtual Festival 2023 in Sanrio Puroland」。

サンリオが主催するメタバースイベントであり、ジャンルの垣根を越えて多彩なアーティストが出演する一大音楽フェスです。舞台となるのは、VRChatの特設ワールド「バーチャルサンリオピューロランド」。地下に出現した特設ステージで、総勢56組ものアーティストの歌とパフォーマンスを楽しめます。

2021年12月にも開催された本イベントですが、今回はさらにパワーアップ。アーティストのステージを見られる最後の2日間以外にも、期間中は複数のイベントが開催されます。サンリオキャラクターが登場するパレードやミニライブに加えて、VRChatのユーザーコミュニティとのコラボレーションも。前回が大好評だったことで、開催前から並々ならぬ注目を集めています。

Moguliveでは今回、SANRIO Virtual Festivalの運営・制作に携わるコアメンバー4人にインタビューを実施。前回の反響と手応えを振り返りつつ、第2回開催となる今回のイベントの見どころをうかがいました。


(左から順に、サンリオエンターテインメントの佐藤哲さん、同じくサンリオの町田雄史さん、Gugenka代表の三上昌史さん、異次元TOKYOの篠田利隆さん。Gugenkaはワールドをはじめとする制作全般を、篠田さんは総合演出をそれぞれ担当)

※前回開催時のインタビューはこちら。

今回のテーマは「コミュニケーション」

――本日はよろしくお願いいたします。改めて「SANRIO Virtual Festival 2023 in Sanrio Puroland」のイベントの概要をお聞かせいただけますか?

町田雄史(以下、町田):
一言で説明するなら、「サンリオが手掛けるリアルとバーチャルが融合した音楽フェス」です。我々は「“新感覚メタバース”イベント」とも謳(うた)っていますが、ありがたいことに前回ご盛況いただいたこともありまして、今回は開催期間と内容をさらに拡大してお届けします。

今回のテーマは「コミュニケーション」。チームメンバーのあいだでも、「参加者同士のコミュニケーションにより意識を置いた設計をしていこう」とよく話しています。

というのも、バーチャル空間における「楽しさ」を分解すると、「コミュニケーション」が大きな要素としてあると、僕自身が感じておりまして。ライブを開催する我々も、周囲の人たちと同じ「好き」を追いかけて、共感しつつ、観客のみなさんに楽しんでもらう。参加者同士のコミュニケーションをひとつの楽しみとして捉えて、今回は特に焦点を当てています。

町田:
メインの音楽ライブは1月21日(土)と22日(日)の2日間にわたって行われますが、それ以前の13日(金)から複数のイベントを開催します。

世界初となるキャラクターによるVRパレードをはじめ、クリエイターさんやチームのみなさんのお力を全面にお借りした「VRCラジオ体操/Questラジオ体操部」と「私立VRC学園」のコミュニティイベントなど、友達作りのきっかけとなりそうなコミュニティのイベントを開催します。バーチャルの世界とサンリオの世界、そして音楽ライブを、イベント期間を通して友達と一緒に楽しめる音楽フェスになっています。

全体としては「サンリオピューロランドの地下に巨大なエンターテイメント空間が広がっていた」という前回のコンセプトを引き継いでいますが、それだけではありません。現実世界のピューロランドのメインフロア「ピューロビレッジ」から着想を得た、「VIRTUAL PURO VILLAGE」が新たに加わりました。ですので、バーチャルサンリオピューロランドの空間自体も前回以上に楽しんでいただけると思います。

――今回イベント制作に関わっているコアメンバーの方々に集まっていただきましたが、それぞれの現場での担当をお聞かせください。

町田:
まず弊社の佐藤は、制作周りを取りまとめているリーダーです。キャスティングの取りまとめなども佐藤が中心に行なっているほか、制作進行も担当しています。

異次元TOKYOの篠田さんには、昨年に引き続きフェス全体の総合演出をお願いしています。制作は三上さんをリーダーとして、Gugenkaさんに全面的に担当していただいています。もちろん、関わっていただいてる企業やチーム、クリエイターさんはもっとたくさんいますが、この面々がコアメンバーです。

期待以上の手応えがあった2021年と2022年

――2021年のサンリオバーチャルフェス開催時には、イベント全体としても大きな反響があったのではないかと思います。

町田:
一番大きかったのは、多くのメディアさんに取り上げていただき、ありがたいことに、みなさんから賞賛いただいたことですね。我々チームとしても期待以上の反響を得られた実感があります。

一般ユーザーさんからのアンケートの感想もですが、実際にワールドでお話した方からも、「来年も絶対に来るよ」「僕にも手伝わせてほしい」といった、本当に熱いコメントをたくさんいただきまして。我々としても、2021年末のイベントが終わって年が明けた1〜2月には、「絶対に次をやらなければ」という気持ちになっていました。

また企業目線の話ですが、このフェスを通して業界の方からたくさんの問い合わせをいただくようにもなりました。実際に仕事の間口も増えましたし、そういった意味でも手応えを強く実感したフェスだったと思っています。

佐藤哲(以下、佐藤):
大枠としては、町田と同じような手応えと感想を持っています。初回開催だったにも関わらず、バーチャル空間でもみなさんにサンリオキャラクターを受け入れていただけたことが嬉しかったですし、その点も非常に手応えを感じたところのひとつです。

三上昌史(以下、三上):
僕からは技術的な側面として、「リアルのアーティストさんがバーチャル空間に出現するライブをする」という取り組みはかなり斬新なものだったと思います。

また、VRデバイスを持っていない方たちに向けてSPWNさんでも配信をしたのですが、そちらでも新しい試みをいくつかやらせていただきました。リアルタイムでカメラのスイッチングをしつつ、バーチャル空間上で行われているライブを、お客さんが移り込んでいる状態でライブ配信する――といった部分ですね。

篠田利隆(以下、篠田):
僕は全体の演出を担当するにあたって、まずは「VRならではの見て驚きがあるものになったらいいな」と思っていました。あとは自分が普段からVRChatをめちゃくちゃ遊んでいたので、そこで知り合った人達に出演して貰うことで、VRをやっている人達が馴染みを感じて貰えて楽しんでもらえたのは嬉しかったですね。


(前回イベントのB5フロア「ALT3」。ピューロランドの最深部に現れたクラブフロアにはオープンするやいなや大勢のVRChatユーザーが押しかけ、ほぼ常に満員状態だった)

――前回のサンリオバーチャルフェスがVRChatのコアユーザーにも好評だったのは、篠田さんの影響が大きいように感じていました。

篠田:
サンリオさんといえばメジャーな存在ですし、イベントには有名なアーティストもたくさん出ているので、当初はこういう座組でやっていくんだろうなと思っていました。

一方で自分はVRChatのディープなカルチャーが好きで楽しんでいたので、せっかくそこで音楽フェスを開催するなら、VRChatで活躍されている人たちとも一緒にやれたら幸せなんじゃないかなと。そう考えて、実際にみなさんと話合いながら、メジャーとディープが良いバランスで交じり合ったのは良かったなと思います。

――今回の第2回開催につながるコンテンツとして、2022年夏には「Nakayoku Connect」がスタートしました。リアルのピューロランドとバーチャルのピューロランドで同時に行われるレギュラーショーとして現在も開催中ですが、この施策の手ごたえはいかがでしょうか?

佐藤:
以前お話したように、Nakayoku Connectは「離れていてもひとつになる」「音楽と光とダンスでひとつになる」「垣根を超えてひとつになる」といったことをコンセプトとして掲げています。世の中の情勢はあまり良くない状況ではありますが、世界中の人とリアルタイムにひとつになりたい。そのような思いで、Nakayoku Connectを制作しました。

スタートしてからもうしばらく経ちますが、リアルもバーチャルも関係なく、引き続き大勢のお客さんに楽しんでいただけています。ありがたいことに楽曲も好評をいただいており、ピューロランドとしては初の楽曲配信も行いました。リアルではなかなか会えなくても、音楽を聴きながら、気持ちだけでもひとつになってもらえているのではないのかなと。たくさん聴いていただけているようなので、Nakayoku Connectにも手応えを感じていますね。



(2022年7月にスタートした「Nakayoku Connect」。現実世界のサンリオピューロランドでレギュラーショーとして開催されており、ショーが始まる同時刻にはバーチャルサンリオピューロランドでもショーがスタート。リアルとバーチャルが“コネクト”する演出がある)

篠田:
Nakayoku Connectに関しては、個人的に印象的に残っている出来事がありまして。ショーが始まる初日にVRChat側の会場に入ったところ、監督を務めているキヌさんが同じインスタンスに入ってきてくれて、一緒に見させていただいたんです。

そのショーが終わった後に――どのように言われたのか、はっきりとは覚えていないのですが――キヌさんから「ここから先は篠田さんにお渡しします」と言われたんです。Nakayoku Connectのショーが開催されている空間は、今回のVIRTUAL PURO VILLAGEと同じ場所なんですね。「Nakayoku Connectでは工事中だった場所をキヌさんたちから引き継いで、今度は僕らで建築していくんだな」と思って、背筋の伸びる思いでショーを見た記憶があります。ちょっとした小話ですけれど(笑)。

今振り返ってみると、キヌさんはいろいろ考えてモノを作られる方なので、実はそこまで計算していたんじゃないかな、という気もしています。実際のところはわかりませんが。

(※キヌ:音と言葉が大好きな野生のカイコ。VTuber。作品に「バーチャルYouTuberのいのち」など。前回のサンリオバーチャルフェスでは無料で入場できるB4フロアに出演し、空間をまるごとハックするようなパーティクルライブで大きな話題となった

佐藤:
Nakayoku Connectの空間は「ピューロフロンティア」という名前でキヌさんに担当していただいたのですが、当時「第2回をやる」ということはもちろん明確にはお伝えしてはいなかったと思います。

ただ、意識的に「未開の地」という感じに設定してくれたので、「徐々にピューロビレッジができていくんだろうな」といった構想は、おそらくキヌさんは持っていたのではないでしょうか。僕にも同様の思いがあったので。知っているにせよ知らないにせよ、気持ち的にはクロスオーバーしていた――というか、まさに“コネクト”していたのかもしれません(笑)。

https://www.moguravr.com/nakayoku-connect/

「作品の世界に入り込む」ような体験ができるパレード

――2021年の第1回からNakayoku Connectを経て、まもなく開催されるSANRIO Virtual Festival 2023 in Sanrio Puroland。今回はどのようなプログラムが新しく加わったのか、改めて紹介していただいてもよろしいでしょうか。

町田:
細かい変更は結構たくさんありますが、メインはパレードですね。パレードの紹介は誰がしましょうか?

篠田:
誰でも大丈夫ですよ。

町田:
じゃあ佐藤さんいきますか?

佐藤:
えっと、パレードに関しては、一番最初の言い出しっぺは……町田です。

篠田:
そうそう(笑)。

佐藤:
ちょうど去年の第1回が終わった後、打ち上げの時にそんなことをポツリと言っていたのですが、当の町田本人は忘れていて。篠田さんが「町田さん、それ(パレード)やりたいって言ってませんでした?」って思い出してくれたんですよね(笑)。

町田:
すみません(小声)。

篠田:
「パレードとかどうですか? ピューロランドらしいじゃないですか!」みたいなことを町田さんが言っていて。

佐藤:
そうです、そうです。それを篠田さんが拾い上げてくれて、今回はパレードを作ることになりました。それが一番最初のきっかけです。

パレードは篠田さんがプロットにつながるようなものを作ってくださって、そこから僕が全体の構成を作りました。サンリオバーチャルフェスが「音楽フェス」を軸にしているイベントなので、パレードも「音楽」に通ずるショー構成になっています。

背景には、サンリオが掲げる「One World, Connecting Smiles.」を引き続きどのように伝えていくのか、という思いがあります。パレードの中でサンリオらしさを出していきたいなと思いつつ、でも一方では多様性もあわせて伝えていきたい。そのような思いを盛り込んで、パレード全体のメッセージにしているつもりです。

この「多様性」については、音楽フェスのキャスティングに際しても意識しているポイントです。今回もさまざまなジャンルのアーティストの方にご出演いただいていて、特に1月22日のB2フロア「LUNA STAGE」のラインナップには注目していただけたら嬉しいですね。多様性をかなり意識したラインナップになっているはずですので。


https://v-fes.sanrio.co.jp/#artist

――「多様性」を全体のテーマとして、そこから新たにプログラムを充実させていっているわけですね。

三上:
今回のパレードは物語仕立てになっていて、「作品の世界に入り込む」ような体験をしていただけるようになっています。VRChatに限らず、VR空間で3DCGのストーリーを追うようなアニメーションはまだまだ少ない印象がありますが、これまでに体験したことのない内容になっているのではないでしょうか。

篠田:
パレードについては、僕は「総合演出」として関わっています。企画やプロットなど、ベースの構築を佐藤さんと一緒にやらせていただきました。

本業が映像監督なので最初は自分で監督しようか少し悩んだのですが、それよりもVR空間の特性をしっかりと把握していて、その魅力を引き出して演出できる人がやったほうがおもしろくなるだろうなと思いまして。そこで0b4k3さんに監督をお願いして、0b4k3さんのチームとGugenkaさんのチームで組んで、制作してもらいました。

(※0b4k3(おばけ):VRクラブ「GHOST CLUB」を主催するクリエイター。2021年のサンリオバーチャルフェスでは、地下5階のクラブフロア「ALT3」のプロデュースを手掛けた。今回もALT3にてDJとして出演するほか、パレードのメイン演出も担当している)

――0b4k3さんといえば前回のフェスでもALT3をプロデュースされていましたが、今回「0b4k3さんがパレードを担当する」と聞いて驚きがありました。

篠田:
そうですよね。0b4k3さんのイメージって、やっぱりこう……湿度の高いダークな雰囲気がありますので(笑)。ただ、前回のALT3以降、一緒に仕事をするなかで、ますます実感するようになったのですが、0b4k3さんはアーティスティックな存在であると同時に、クリエイティブな部分も持ち合わせていらっしゃるんですよね。

僕らが考えた企画やアイデアの狙いを、しっかり理解しつつ噛み砕いて作って下さる。きっと色々なジャンルで活躍できるクリエイターさんなんじゃないかなと勝手に思ってます。僕自身、広告やミュージックビデオのクリエイターとして活動するなかで、いろいろな方とやり取りをすることがありますが、0b4k3さんは純粋にクリエイターとして優秀な方だという印象があります。

今まさに制作中のパレード自体も……うん、とてつもない内容なので(笑)。「サンリオさんのパレード」と聞くと、いわゆるリアルのピューロランドの「パレード」をみなさん想像すると思いますが。

――そもそもストーリー仕立てのパレードという点も気になるところです。

篠田:
今回の件を0b4k3さんにお話したときに、最初「……パレード?」みたいな感じでした(笑)。ただ、佐藤さんと一緒に組み立てたプロットやコンテを見せたら、「えっ! こんなことするんですか……!」と。作業をするには期間が短くて大変な部分もあるのですが、内容を見て「こんな内容をサンリオでやるならやってみたい」と乗っていただけた感じです。

――実に挑戦的なことをされていると。

町田:
これを無料で見られるというんですから、恐ろしいですよ!(笑)

Quest対応パーティクルライブにコミュニティイベント、ピューロのフェアリーランドシアターも登場!?

――パレード以外に関しては、今回どのような部分が新しくなったのでしょうか?

篠田:
まず、B4フロア「CHILL PARK」のラインナップが挙げられます。前回はキヌさんのパーティクルライブが人気だったこともあり、今回は他にもパーティクルライブもされている方に参加していただいていて、Quest(Meta Quest 2)だけで見られるパーティクルライブもあります。



(前回のサンリオバーチャルフェスで大きな話題となった、キヌさんのパフォーマンス)

篠田:
それとB5フロアの「ALT3」は今回、フロアを1つ増やしました。ALT3は比較的VRChatに慣れた人向けのフロアだったのですが、オープンした途端に満員になってしまっていたので。あとは町田さんたちが動いている、VRChatカルチャーの中でできあがったコミュニティとのコラボレーションも新しい要素になりますよね。

町田:
メインで見ていただきたいのは21、22日の音楽フェスですが、それを「友達と一緒に見てもらう」流れを作ろうと思っていくつかプログラムを新設しています。パレードもそうですが、キャラクターのミニライブをやったり、VRChatのコミュニティとコラボしたり(VRCラジオ体操/Questラジオ体操部、私立VRC学園)。

そういったイベントを開催することが事前にわかっていれば、「ちょっと見に行こうかな」と来てくれた人同士でコミュニケーションが生まれるかもしれない。「たまたま一緒のインスタンスに入った人が、次の日も入ってみたらまた同じ所にいた」とかそういうきっかけで友達になって、「21、22日のライブ、一緒に行きます?」みたいな流れが生まれたらいいなと思っています。

――Questで見られるパーティクルライブのお話がありましたが、Gugenkaとしては現場レベルで追加した新要素は他にありますか?

三上:
B2フロアのリアルアーティストさんのステージ演出ですね。前回はクロマキーを使って現実からバーチャルに出演していただいていましたが、今回はちょっと違う手法になっています。

リアルのピューロランドにあるステージと中継をつないで……言葉で説明するのが難しいのですが、「バーチャルとリアルが地続きにつながっている」ような体験ができるようになっております。




(ワールド全体の雰囲気はそのままに、前方のステージ部分に変更が見られたB2フロア「LUNA STAGE」。リアルのピューロランドに行ったことのある人なら、見覚えがあるかも……?)

篠田:
自分としてはここが一番大変でした。「去年のB2フロアよりもさらにリアルアーティストを良く見せるにはどうすればいいか」を考えたときに、なかなか良いアイデアが思いつかなかったのですが……。三上さんと佐藤さんが「アイデアがある」と仰るので聞いてみたら、「えー、そんなの絶対に馴染まないよー?」「なに言ってんの、この人たち!?」って最初は思いまして(笑)。

佐藤:
ネガティブでしたものね(笑)。

篠田:
ネガティブというか、もう不安で! 実写で撮る絵と、VRChatの3Dは馴染まないでしょうと。Gugenkaのキラさんというクリエイターの方と一緒に、「馴染むかなー?」「馴染まないかもー」とか言いながら2人でテストしていました(笑)。

佐藤:
「バーチャル」ってリアルの代替的なイメージがいまだにあるように感じているのですが、でも実はそうじゃない。リアルとはまた違った体験価値を生み出せるエンタメだと僕自身は感じていて、「その魅力をどうやって伝えたらいいんだろう」「リアルとバーチャルの境界線をなくしていくために何ができるだろう」と考えていました。

そういった観点からも、B2フロアはアップデートする必要があると思いまして。三上さんとGugenkaのキラさんに相談しつつ、リアルのピューロランドにあるフェアリーランドシアターと、バーチャルのLUNA STAGEをマージして、前回とは違う見せ方にしています。

リアルのフェアリーランドを訪れたことのある人はまた違った体験ができるはずですし、バーチャル空間で初めてフェアリーランドを体験した人がリアルのピューロランドに行った際には、よりおもしろい体験ができると思っていて。リアルとバーチャルのそれぞれに違った体験価値がと楽しみ方があり、2つは共存できると考えています。


三上:
「3Dモデルで再現されたバーチャル空間のフェアリーランドシアターの上に、リアルのピューロランドのフェアリーランドシアターの映像を乗せる」ようなイメージですね。ですので、アーティストのみなさんにはリアルのフェアリーランドシアターのステージに立っていただく形になります。

でも多分、技術的にもそうですが、アイデアとしても今後のベンチマークになる良い表現であると感じています。技術だけでカバーできることではなくて、演出によってうまく見せている部分なので……本当に、実際に見てもらわないとわからない(笑)。

町田:
他の人に説明するときは、三上さんが仰っていた「地続き」という言葉を僕は使っています。実際、本当に地続きに見えると思うんですよね。ちなみに篠田さん、その結果、満足いくところまではいけたんですか?

篠田:
今日もライブのリハーサルを見ていたのですが、すごくうまくいっているんじゃないかな、とは思っています。Gugenkaのみなさんが本当にがんばってくださって……Gugenkaのみなさんにはご迷惑をおかけしました(笑)。

「ステージ上にスクリーンを映し出すだけの、ライブビューイングのような感じにはしたくなかった」というのは、みんなが共通で感じていたことなんじゃないかと思います。それをどのように自然にするか悩みつつ、繰り返しテストを重ねながら、みんなで徐々に徐々に詰めていった感じですね。

現実のピューロランドを知っている人は、見たら結構びっくりするんじゃないかな。「なんでこれ、ここにあるの!?」みたいな(笑)。

前回の映像を見たら物足りなくなる

――リハーサルを拝見して、各ステージの演出もパワーアップしている印象を受けました。ステージ演出の技術的な部分に関しては、どのようなところが変わったのでしょうか?

三上:
今回は産業技術総合研究所さんのTextAliveという技術を使わせていただいておりまして、歌詞が動くような演出をふんだんに入れることができています。

この産総研さんは国も絡んでいる研究機関なのですが、TextAliveのサービス自体はあまり知られていないんですよ。ブラウザ上で歌詞に合わせた映像演出を作れるとても良いサービスなので、ライブをきっかけに「こういうサービスもあるんだ!」なんて知ってもらえたらいいなと思います。

あとは、これも会場で見ていただきたいのですが、透過されている演出が筒状になって現れるライブの演出がありまして。これこそまさに「現実では絶対にできないんじゃないか」と感じるような演出なので、ぜひライブの中で注目して見ていただけたらと思います。

(※TextAlive:産業技術総合研究所メディアインタラクション研究グループが研究開発する、ブラウザ上で歌詞アニメーションを作成できるサービス。11月に開催されたGugenka主催イベント「コードギアス 反逆のルルーシュ×FLOW バーチャルライブ」でも同技術が使われている)


(この日行われていたAMOKAのリハーサルにて撮影)

篠田:
各フロアのパーティクルの演出についても、Gugenkaさんが前回以上に素敵なパーティクルを作って入れてくれています。前回は細かく話しながら進めていたのですが、今回は特に言うこともないなと。Gugenkaのみなさんが、音に合わせてキメキメのパーティクル演出を入れてくれたので。

――非常に気になります。

三上:
ワールド自体はB2フロアもB3フロアも大きくは変わっていないのですが、演出がものすごいパワーアップしてることによって、何もかもが変わったようにも見えるんですよね。

町田:
最近思うんですけど、前回のライブを見ると多分……物足りなくなっちゃいますよね、これ。

三上:
そうだと思いますね。





(同じく道明寺ここあ松永依織のリハーサルにて撮影)

篠田:
それと今回、B2フロアは見せ方が変わったので、アーティストの「寄り」を見せるためのモニターを作ったり、アーティストが映るモニター自体の数も増やしたりしています。アナログな部分ではありますが、「ライブとしての見やすさ」もいろいろと調整しています。

三上:
バーチャルイベントは「バーチャル」なので、「会場を作って、全部ぶっ壊して、全部作り直す」みたいなこともできるんですよね。できるからこそ、そうしてしまうこともありますが、壊さないことで「1年前の会場にまた戻ってきた」と感じてもらえる。「帰ってきた」という感動もありながら、そこで待っている新しい体験を楽しんでもらえたらと思います。

宝探しのようなフェスティバル

――音楽ライブに関しては、前回に増してバリエーション豊かなキャスティングとなっている印象を受けました。出演アーティストはどのような基準で選出されたのでしょうか。

佐藤:
B2・B3フロアに関しては、基本的に自分とメロディフェアさんでキャスティングをしています。B4フロアは篠田さんや三上さんにお話をうかがいながら決めつつ、B5フロアのALT3は0b4k3さんにキャスティングをお願いしました。

キャスティングのポイントとしては、今回で言うと「意外性」と「VRChatならでは」を意識しています。やはりVRChatをメインプラットフォームとして開催するイベントですので、そこで普段から活動されているアーティストの方に多く出演いただけたらいいなと思いまして。

また、先ほど篠田さんからもお話がありましたが、前回話題になったキヌさんのパフォーマンスを受けて、パーティクルライブのラインナップを強化しています。初めてイベントに参加する人やVRユーザーの目線でも、パーティクルライブは非常にニーズのあるものだと思いますので。

全体的にはごちゃごちゃ感がありつつも、どこかで「サンリオバーチャルフェスっぽい!」と感じられるようなラインナップになっていたらいいなと。もし今後も開催していくとしたら、良い意味で期待を裏切るようなキャスティングができたらいいなと個人的には考えてます。

――AMOKAやキヌさんは前回に続いての出演となりますが、今回はYSSをはじめとして、今まさにVRChatの音楽シーンで活躍されているアーティストさんたちを選出されていて、「これは現場の感覚がわかっている方が選んでいるな」と感じていました。

佐藤:
もちろんその辺は、篠田さんたちのキャスティングですね。

篠田:
僕ともう1人、異次元TOKYOで一緒に活動している芋けんぴとも相談して決めています。彼は僕以上にVRChatに“住んでいる”というか(笑)。みんなで「この人おもしろそうだよねー」とか相談しながら、出演をお願いしに行っていた感じですね。

――他にはB2フロアの面々も、佐藤さんも仰っていたようにすごいラインナップになっていますよね。B2フロアに出演されるピーナッツくんの名前が、B4フロアのほうにもあったことも驚きでした。

佐藤:
これは言ってしまっていいのかわかりませんが、ピーナッツくんと話をした際、当初は「B4だけが良い」っていう話だったんですよ。でも、僕のほうで「いやいや! B4だけじゃダメだから!」って話をして(笑)。「両方出ましょう!」ということになりました。

篠田:
逆にTORIENAさんのようなケースもありますね。TORIENAさんと言えば電子音楽やFuture Bassの分野で活躍されているミュージシャンですが、自分で自分のアバターをフルスクラッチで作成するなど、VRChatにもすごくハマられています。

彼女からは「パーティクルライブやりたい!」と強い要望があったので、「じゃあ佐藤さんに相談してみます」と(笑)。それでパーティクルライブをすることが決まって、三日坊主さんたちに演出をお願いしつつも、一方でモデリングなどは自分でやったとも話されていました。

少し話が逸れますが、そういう「やりたいことをやる」気持ちってすごく大切というか、イベント全体のコンセプトとも通じている気がしています。というのも「VIRTUAL PURO VILLAGE」の裏コンセプト的なものとして、実はそういった気持ちを込めている部分がありまして。


(実際のサンリオピューロランドに存在する「ピューロビレッジ」から着想を得て、今回新たに登場したフロア「VIRTUAL PURO VILLAGE」。パレードはここで行われるそう)

篠田:
リアルのピューロランドにある「知恵の木」のワールドを作る、というお話をいただいたときに、改めて「知恵の木」の諸説を調べたんです。「知恵」って、人類にとっての宝じゃないですか。それで思ったのが、そういう知恵だったり音楽だったり文化だったり、「自分の好きな『宝』を探せるフェスティバル」になったらいいんじゃないかなと。

それで、もともとはリアルのピューロランドにある「知恵の木」のワールドをそのままバーチャルに作る予定だったのですが、みなさんと相談して、リアルのピューロビレッジとは少し異なる世界観にしました。

「インディ・ジョーンズ」ではありませんが、何か宝が隠されていそうな、遺跡のような世界観。フェス全体に関しても――佐藤さんが先ほどから話されていることだと思いますが――イベントを楽しむなかで「宝」が見つけられるような、そういうフェスになるんじゃないかなと。このようなコンセプトはパレードの題材にもなっていて、音楽をベースにしつつストーリーが展開する感じです。


(インタビュー後に見せていただいた、VIRTUAL PURO VILLAGEの入り口部分。詳しくは別の記事でご紹介します)

――痺れるコンセプトですね……! たしかに、このフェスにはジャンルを超えて様々な人たちが集まっている印象がありますし、今回もまた未知との出会いが期待できるわけですね。

篠田:
そうですね。佐藤さんと以前、「FUJI ROCKが音楽ジャンルの垣根を破壊していったよね」という話をしたことがありまして。昔は「メタルが好きな人は絶対にテクノのような電子音は聞かない」とか、「ヒップホップ畑の人はロックを聞かない」とか、少なからずそういう傾向のある時代があったと思うんです。

それが今、またバーチャルとかリアルとかメタバースとかVRとか、いろいろとごちゃごちゃしている……って言うと、誰かに怒られるかもしれませんが(笑)。でも「音楽もVRもリアルもごちゃっとさせながら、音楽を楽しめるようになったらいいな」みたいなことをみんなで悩んで考えていたら、このようなフェスを開催できるようになっていました。

――前回は、キヌさんのパーティクルライブのような「(良い意味での)事件的な出会い」が起こっていたのも印象的でした。今回もあのときのような「事件」が起こることが期待できる選出だと感じています。

篠田:
キヌさんの前回のパフォーマンスは、僕らから出演のお願いをしたにもかかわらず、リハーサルを町田さんと一緒に見てびっくりしちゃったんですよ。すごすぎて。キヌさんの作品はそれまでにも何度も拝見していたのですが、キヌさんの並々ならぬ本気と、B4フロアを乗っ取るような勢いのパフォーマンスに、町田さんと2人で圧倒されちゃって。

でもあの時の衝撃が、前回のフェスに来てくださったみなさんと同じように、僕らも忘れられないというか。そういうものに突き動かされてきた部分は、きっと少なからずあったんじゃないかなと思います。

VRChatクリエイターたちと一緒に作ることで生まれるシナジー

――VRChatの既存コミュニティとのコラボレーションについてもお聞きしたく思います。公式サイトでは「VRCラジオ体操/Questラジオ体操部」「私立VRC学園」の名前が掲載されていますが、こちらはどのような経緯で始まった企画なのでしょうか。

町田:
前提としては、篠田さんも仰っていたように「先駆者の方々の力をお借りできれば」という気持ちがあります。特に今回、「コミュニケーションのきっかけをどのように作るか」を考えたときに、VRChatコミュニティのみなさんの力を借りるのが一番良いのではないかと思いまして。芋けんぴさんにアドバイスをいただきつつ、VRChat上のコミュニティやサークルの方にご協力いただくことになった、という感じです。

これは僕自身の体験から得た実感なのですが、VRChatのコミュニティで活動されている方ってもはや「クリエイター」だと思うんです。前回のイベントを1回やっただけでも、そういった人たちの存在と熱量を身近に感じて、我々チームとしても非常にリスペクトしていまして。そんなクリエイターの方々と一緒に何かを作り上げていくなら、看板まるごと参加していただくのが双方にとって良いんじゃないかなと。企画した意図としては、このような思いがあります。

――実際、既存のVRChatコミュニティには盛り上がっているところも多く、コミュニティやその中で開催されているイベントきっかけでVRChatを始めた人も少なくないと聞きます。そういった意味では、橋渡し的な役割を担っている印象もありますね。

町田:
実際にコミュニティのみなさんとお会いすると、「去年行きましたよ!」と言われることもあって、ファンとして来てくださっている方が多かったんです。その上で「手伝えることが嬉しい」と仰りつつ快諾してくれることも多くて、本当にありがたく感じています。

なので、逆に僕らも何かみなさんに貢献したい気持ちがありまして。そうお話したら、VRC学園さんからは「講演をやっていただけたら!」って言われて、講演をすることになりました(笑)。「そんなのでいいんですか!?」とも思ったのですが、「何かを作っている人の熱量とか、そういうのがいいんですよ」と話してくださって。企業側からすると驚くべき反応だと思いました。

何かを発信したい気持ちや熱量がそこにあって、実際にそこでムーブメントを作られている。そんなクリエイターさんたちの力をお借りすることで、単なるきっかけ作りにとどまらない、非常に良いシナジーが生まれるんじゃないかな、と思っています。

――関わっているクリエイターの方々が「何か自分にできることはないか」と、ポジティブに動いていらっしゃるように感じます。ブランドを一方的に押し付けるのではなく、お互いに手を取り合っていく方法は周囲にも理解されているのではないかと。

町田:
ただ、最初は多数のクリエイターの方のための「箱が用意できれば」という気持ちだったのですが、その一方で「サンリオらしさ」をどこで出すのかが課題であるとも感じていて、今年はそういった意味で「サンリオらしさ」についてこだわっている部分も増えています。独自のコンテンツも徐々に充実させた結果、現状が良い塩梅なのかなと個人的には思っていますね。

初めて参加する人に伝えたい見どころは?

――では最後に、サンリオバーチャルフェスの見どころを改めてお聞きしてもよろしいでしょうか? 今回初めて体験される方もいらっしゃると思いますので、そういう方々に向けてまずはどこから楽しんでほしいかを教えてください。

町田:
まずは音楽フェスが始まる前の期間中に、パレードを見てほしいですね。パレードを見れば、「こういうコンテンツがあるんだ」「バーチャルならではの表現ってこういうものなんだ」といったことを感じていただけると思うので。

また、これは理想ではありますが、よかったら友達と一緒にパレードやイベントについて話してほしいなと思います。イベントに参加することが会話のきっかけになったら、僕らサンリオとしてもう十分、という感じです。

そもそもサンリオバーチャルフェスは、「新しいエンターテイメントを作っていこう」という考え方のもとで、いわゆる初手として始めた取り組みでした。ですがそれが今、こうして2回目3回目を考えるようになっているのは、ここにコミュニケーションの可能性や、新しいエンターテイメントがあると実感できたからなんです。

だからこそユーザーさんには、イベントの会場に来てコミュニケーションしてもらえたら嬉しいなと。初めて見に来て、「すげー!」って声に出してほしい。篠田さんのお話にもありましたが、キヌさんのライブを初めて見たときの僕らも「すげー!」しか言えなかったので(笑)。

「なんかすげーもんを見た」と思わず声を出してしまうような感動が、きっとアーティストさんそれぞれのステージにあるはずです。そういうものを見て「自分もやってみたい」とか「参加してみたい」とか、そう思っていただけたら嬉しいです。

佐藤:
改めてですが、第1弾も音楽フェスとしてやっているので、やはりまずはさまざまなジャンルの音楽に触れてもらいたい、という気持ちがあります。他にもサンリオが打ち出しているメッセージだったり、参加してくださってるアーティストの方々のカルチャー感だったり、そういったものをイベントを通して体験してほしいなとも思いますね。

あと、これはフェスの醍醐味のひとつだと思うのですが、それまでは興味のなかったアーティストやカルチャーが、すごく好きになっちゃうことってあると思うんです。それはサンリオキャラクターも含めて。前回のフェスやNakayoku Connectもそうですが、そこで何かを「好き」になる瞬間が生まれたら嬉しいですね。

その上で、サンリオピューロランドはバーチャルとリアルの両方にありますので、最終的にはどちらも体験してほしいなと思います。

三上:
前回もでしたが、会場の熱量が本当に直に感じられるイベントなんですよね。「そこに人がいる」というか。これって現実では当たり前のことですが、バーチャルではまだまだ感じるのが難しい。ですが、サンリオバーチャルフェスは本当に「盛り上がっている空間に自分がいる」という体験ができて、バーチャルの可能性を肌で感じられるイベントだと思うんです。

なので、出演されるアーティストのファンではない方たちも、バーチャルにもし少しでも興味があるのなら、絶対に見たほうが良いイベントのひとつだと思います。

篠田:
僕からは2つあります。まずはパレードですね。先ほどもお話したように、パレードが今回のイベントのコンセプトにもなっていますので、ぜひ音楽フェスの前にパレードを見に行ってみてください。その上で、フェス当日はライブを楽しんでもらえたら嬉しいです。

もうひとつは、サンリオキャラクターたちとアーティストとのコラボです。今回、B2フロアの見せ方を変えたことによって、リアルアーティストとサンリオキャラクターが同じステージに立てるようになったんですよ。そのグルーヴ感がすごい。それぞれのキャラクターの個性がアーティストの個性と相まって、サンリオバーチャルフェスならではのおもしろさになっていると思います。

これって、リアルのライブにサンリオキャラクターが出てくるのとはまたちょっと違う感覚があるんですよね。うまく言葉にして説明できないのですが、「バーチャルフェス」ならではのコラボ感を感じることができて、キャラクターがステージに登場したときに独特の興奮があります。それこそ、リアルとバーチャルがごちゃごちゃになっているからこその不思議な体験だと思いますので、そこはぜひ見てもらえたらと思います。

――ありがとうございました。

・公式サイト:https://v-fes.sanrio.co.jp
・公式Twitter:@SANRIO_VFes


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