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なぜVRChatのクラブワールド「GHOSTCLUB」は世界中のユーザーを引きつけるのか?

VRChatには2018年から継続的に運営されている「GHOSTCLUB」というクラブワールドがある。毎週火曜と土曜の深夜にだけオープンされ、世界中のさまざまな場所からユーザーたちが集まっている。

「GHOSTCLUB」へのアクセスは少し特殊だ。誰もが参加できるPublicワールドとしては公開されていない。公式サイトに記載されているDiscordサーバーに入場し、注意事項に同意後、とあるVRChatアカウントにフレンド申請を送信する必要がある。その後、Discordのスレッドでスケジュールを確認し、イベント中にのみ入場可能。ワールドに入る直前にも注意事項への同意確認があり、それに同意後アクセスできる。

中に入ると、目の前にボックス型の公衆電話が現れる。着信音が鳴り響いていて、近づいて受話器を握る。一瞬、空間が歪んだかのような錯覚が現れるが、間もなく雨がふり続ける暗い夜の街に1人立っていることに気づく。

ぼんやりと光る高層ビルの灯り、どこを照らすでもなく置きっぱなしの撮影用ライト、目にしたことのないカップ麺の自販機、そして目の前にそびえる廃墟のようなマンション……。現実の光景ではないはずなのに、一度訪れたことのあるかのような不思議な既視感があって、はじめのうちは困惑するはずだ。

内側に入ると雨音は遠のき、静かな広場に着く。床の緑は雨露で濡れ、コンクリートの壁面に蛍光灯の光が冷たく落ちる。見上げれば、この建物が外見以上に高いことに気づくはずだ。ひと目みて、この空間をクラブワールドだと判定できる者は誰もいないだろう。

建物の中を巡っているうちに、あることに気づいて戸惑った。この空間には矢印や看板といった導線と呼べるようなものがどこにも見当たらないのだ。最初はエレベーターに入って移動できることも気づかず、一階ごとに階段をのぼっていくことになったのだ。

振り返ってみれば、自分がよく入るようなバーチャル空間の会場では、導線が(丁寧すぎるほど)はっきりしていることが多かった。もちろんユーザーにとっては「バーチャル空間でどこへ行けばいいのか分からない」という不安はストレスになるだろうし、親切に越したことはないはずだ。

しかしGHOSTCLUBの場合、導線の不在がかえって空間の魅力を引き立てているように感じた。この方が、廊下や階段などの細かな部分に目を向けながら散策を楽しめる。「通路そのものの魅力」に気づきやすくなっているのだ。

改めて細部に意識を傾けてみれば、この建物が実在を感じさせるような作りをしていることが分かる。例えば、ビルに張り巡らされた電線は、元をたどっていけば屋上にあるソーラーパネルに接続していたり、屋上の鉄扉の表面にサビが浮かんでいたりといったところからも、リアリティを出すための凝りようがうかがえる。

不思議なことだが、この空間にいる間は、得も言われぬ落ち着きを感じられた。それは急な土砂降りで近くのビルに逃れて雨が収まるのを待っているときの時間のような。あるいは友人と知らない駅で待ち合わせをしているときの、何もすることなくその場で立っているときのような、そんな感覚だ。

実際、クラブイベントがはじまったあとも、建物の外でぼんやりと立っているだけの人や、広場のあたりでフレンドと静かに談笑している人が少なくなかった。これは一般的なバーチャル音楽会場と比較すれば、相当特殊なことだろう。もちろん、ユーザーの主目的はクラブイベントへの参加なのは間違いない。しかし「GHOSTCLUBにいる」ということ自体に価値を感じている人はかなり多いのではないだろうか。

幽霊になって、音楽を聴く

クラブハウスの中に入る。空間の中はすでに多くの人が集まっていた。流れている音楽に合わせて踊る人やただ前を向いて聞き入っている人、後方で周囲を見回している人など、それぞれだ。入場時にマイクを切っている人がほとんどなので、話し声などは聞こえてこない。前方では、その日のゲストDJがパフォーマンスしながら音楽を次々とかけていく。ライティングも音楽に合わせて変化するようになっていて、会場一体は色鮮やかだ。

なかにはGHOSTCLUBに合わせて専用の衣装を身にまとった人の姿も見られた。この場所に来ること自体に価値を感じている人が多い証拠と言えるだろう。クラブの中で会話をすることは無かったが、一緒に音楽を聞いているだけで不思議な一体感があった。ここに来るまでは、正直急に話しかけられないかとビクビクしていたが、そういった心配は無かった。ただ流れている音楽に合わせて身体を揺らしていれば良く、リラックスできていたと思う。

時間が経つほどに、自分がこのクラブに「実際にいる」感覚が強くなっていくようだった。それは、現実のコロナ禍で長らく人が密集する空間にいなかったこともあって、知らず知らずに人寂しさを溜め込んでいたせいかもしれない。ただ、同じ場所に人がいるという感覚があり、それぞれの聞いている音楽が自分と同じものであるというだけで、確かな繋がりを感じられたのだ。

それでいて、ふとした瞬間に何もかもが幻となって消えてしまいそうな雰囲気もあり、まさしく自分が幽霊になったかのようだった。自分が幽霊になった状態で聴く音楽はとても楽しいものである。

ここを訪れた様々なユーザーが口々にGHOSTCLUBを特別な場所だと話す気持ちが分かる。あやしげな世界に迷い込んでしまったかのようなのに居心地が良く、多くの人が集まっているのに存分にリラックスできる。そうしたアンバランスな魅力が、さまざまな人の心を惹きつけているのだろう。

常連ユーザーから見た「GHOSTCLUB」は?

上記の感想はライターのものだが、「GHOSTCLUB」をよく訪れている参加者にはどのように見えているのだろうか? このワールドによく通われているというBlue_copperさんにも話をうかがった。

――これまで何度「GHOSTCLUB」を訪れていますか?

Blue_copper:

正確な回数は覚えていないのですが、2020年の6月13日からほぼ毎週行っていますね。ですから50回は超えていると思います。

――最初にこのワールドを知ったきっかけはどういったものでしたか?

Blue_copper:

GHOSTCLUBを知ったきっかけはTwitterですね。私のフォロワーのリツイートで、(ワールド代表の)0b4k3さんのクラブ告知動画が流れてきて、その場所の美しさに目を奪われました。

体験する前の印象は綺麗だけど、ルールとかが厳格そうだし、雰囲気も相まって「怖そうな場所だな」と思っていました。それと、今は誰でも入場可能ですが、私が初めて入ったときは、0b3k4さんにポエムを送って承認してもらわないと入場できなかったんですよね。だからどっちかというと「怖いな~」という感じのマイナス方面の印象でした。

――初めて訪れたときは、どういった感想を持たれましたか?

Blue_copper:

「やっべ~すっげ~~めちゃくちゃ良い~、楽しい~!もっと行きたい!!」でした。

――このバーチャル空間の魅力はどういうところだと思いますか?

Blue_copper:

まずワールドの作りこみですね。ビジュアルの美しさに惹かれると思います。何十回来ても飽きず、いまだにこのワールドの写真を撮りまくっています。ワールドにスポーンしてからフロアにたどり着くまでの道中も、クラブに没入させてくれます。

ワールドに入って注意書きを読んだら、まず路上に放り出されて、近くの建物を探索して、
フロアに行きついて、音楽を楽しんで、それからフロアを出てゆったりしてって感じで、フロアまでのヒントはあれど、道案内はないので自分で探索して見つけるしかないんですよね。

その探索の行程でワールドの細かいディテールとか、雨音によって世界に引き込まれていく感じがします。それと、ワールドの作りこみという点でもう一つ、フロアの音響と光が素晴らしいところも魅力です。

自分の手元すら見えない暗がりの中で音と光を浴びて音楽にのめり込むのが、毎週の楽しみです。喋りたいひとは屋外でしゃべっていて、フロアは音楽を楽しんでいる人や踊っている人しかいないので、純粋に音楽に没入できるその雰囲気が好きです。

――どういった目的で訪れることが多いでしょうか?

Blue_copper:

音楽を楽しむために来ることが多いですね。写真を撮るためにとか、友達に会うために来るのも含まれてます。イベントの時、盛り上がりまくってDJと観客とで一体になる感じがとても好きなんです。

それと、GHOSTCLUBにとても好きなスポットがあって、外側にある階段の踊り場なんですけど、ここから身を乗り出すと、裏路地だったり、マンションの入り口だったり、高架とかの外の景色が一望できるんですよね。上手く言語化ができないんですけどとても落ち着くので、ここでゆったりしたり会話するのがとても好きなんです。

――ここをきっかけに交流する人は増えましたか? またDiscordのサーバーなども利用されていますか?

Blue_copper:

交流する人はかなり増えました。ここがきっかけで交流した人たちと仲良くなって一緒に遊んだりすることもあります。Discordのサーバーは主にGHOSTCLUBの開催の日程とかを確認するために使ってます。

――今後「GHOSTCLUB」に期待することはどういったことでしょうか?

Blue_copper:

 0b4k3さんのやりたいように、楽しいことをやっていってくれたらいいなという感じですね。

GHOSTCLUB代表者インタビュー

これまで紹介してきたGHOSTCLUBは、一体どういった意図や思想のもと運営されている場所なのだろうか。ワールド代表の0b4k3氏に話をうかがった。


(撮影 Dracogriff)

現実とフィクションをうまく掛け合わせる

――当日の取材ご協力まことにありがとうございました。途中から取材なことを忘れて非常に良い時間を過ごさせていただきました。

0b4k3氏:

いえいえ、それは良かったです。楽しんでいただけて何よりです。

――ワールドにいる間、自分が特別な時間のなかにいることを実感させられました。電話ボックスの中からはじまり、気がつくと見知らぬビルの前にいるという、まるで物語の中に入り込んだかのような感覚が新鮮でした。

0b4k3氏:

電話の受話器からワールドに入るという流れは、映画『マトリックス』を参考にしましたね。映画では、受話器をとると現実世界に戻るわけですが(笑)。

――ワールドを制作するにあたっては、どういったものを参考にされたのでしょうか?

0b4k3氏:

僕が過去に通ったことのある日本のクラブや、実際に現地に行ったわけではないですが、ドイツの「Berghain」という老舗のクラブなどの建物は参考にしました。とは言っても、僕自身がクラブカルチャーにどっぷりと浸かっていた人間では無いので、あくまでディティールに凝る際に参考にしたという程度です。

正直このワールドを制作するのには、映画やアニメなどの影響の方が大きいと思います。押井守監督の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』やリドリー・スコット監督の『ブレードランナー』、あとはタルコフスキー監督の作品などが好きで、そういった作品の空気感やディテールをワールドに取り入れています。

現実の良いところと映画やアニメ等のフィクションの良いところを上手く掛け合わせることができるのが、ワールド制作の面白いところなんです。

――現実感もあるのに非日常感もあるという不思議な感覚は、現実と映画の掛け合わせから生まれている効果なのかもしれませんね。

0b4k3氏:

そうですね。以前、僕の知人が「GHOSTCLUB」を「超現実的な場所だ」と言ってくれたことがあって、それが嬉しかったのを覚えています。一般的にVR空間のワールドというと、抽象的で現実離れした場所というイメージを持たれがちです。かといって現実に寄せていけばいくほど、参加者のアバターくらいしかVRっぽい要素が無くなってしまいます。もちろん、どちらかに振り切って表現するのも良いと思うのですが、僕の場合は、現実とフィクションの両方を重ね合わせた方が面白いんじゃないだろうかと考えたんです。その方が、参加者にとっても体験として特別なものになるのではないかと。

バーチャルのワールドも変化していくもの

――そもそも「GHOSTCLUB」はどういった経緯から立ち上がったのでしょうか?

0b4k3氏:

「GHOSTCLUB」は2018年の1月からスタートしました。僕がVRChatを利用するようになったのが2017年12月頃で、それから半月ほどで「(ワールドを)作ろう」と思いつきました。ただ当時は具体的にどんなワールドを作るかはまだボンヤリとしていましたね。

あるとき、DJ SHARPNELさんというVR界隈でも早い時期にDJとして活動されていた方がいるのですが、彼の周辺でバーチャルクラブを作ろうという話が話題になっていたんですね。それを見て、「そうか、VRで人が集まれるなら、クラブが成立するんだ」「じゃあ、自分も試しに作ってみよう」と思ったんです。もともとダンスミュージックは好きでしたし、過去に音楽制作をしていた経験を活かして何かできないかなと考えていたのもあります。それで慣れないBlenderやUnityを触りながら「まず、箱だけでも作ってみよう」と。

――そこからワールドを制作し、クラブイベントを開催するようになったわけですね。

0b4k3氏:

当時のVRChatは、利用できなかったり、見つかっていなかった機能がとても多くて、リアルタイムに音楽を流すといったことができなかったりしたんですよね。他のクラブもワールド自体は存在していたのですが、特にイベントらしいものは行われていませんでした。海外のDJの方が自分のマイクから直接音楽を流してライブをやるといったことはあったそうですが、本格的なクラブとして運用されているものは少なかったようです。

そんな中で「GHOSTCLUB」は、ちゃんとDJイベントを開催するという点では当時珍しいタイプだったようで、徐々に参加者が集まってくれるようになりました。なかにはプログラミングやモデリングに詳しい方々も来てくれるようになってくれて、徐々にワールド制作に協力してくださるようになったんです。先程話したリアルタイムに音楽を流す方法というのも、その協力してくれた方が発見してくれましたね。

おかげで自分一人ではできないような面白い演出方法というのが徐々に実現できるようになり、今のワールドは「1.0」からバージョンアップして「5.0」なのですが、少しずつ少しずつ地道に改良を重ねて3年目を迎えたという感じです。

――今はどれくらいの参加者がこのワールド制作や運営に関わっているのでしょうか?

0b4k3氏:

固定のメンバーが所属しているということではありませんが、大凡15~20人ぐらいの方々が関わってくださっていますね。ワールド制作関係者とは別に、普段GHOSTCLUBでプレイされているDJの方々もたくさん居ます。

――ワールドの運用面についてもお聞きしたいのですが、GHOSTCLUBの場合、Discordに参加後に特定のアカウントにフレンド申請を送るといった手続きが必要で、とても注意深い運営をされている印象です。こういった仕組みにしたのはなぜでしょうか?

0b4k3氏:

これまでの成功や失敗体験を経て、現在のかたちに落ち着いたという感じですね。最初の頃は、僕とフレンドであれば誰でも参加できるという設定にしていたのですが、VRChatの各インスタンスごとの人数制限が厳しく、希望者全員が参加するといったことが難しくなりました。それで来場者を絞るといった方法(来場者インタビューでも言及されている”ポエム”の申請等)をとったのですが、これもあまり良い結果は得られませんでした。

また人数が増えるにつれ、ユーザーに事前に伝えておくべき情報を掲載する場も必要となってきました。例えば、ワールドの演出で光の点滅が激しいことがあるので、それをあらかじめお知らせしないといけないといったことですね。そもそも、事前にワールドの文脈や前提を知らない状態で入場すると、お互いにとって不幸な出会いが生まれてしまう可能性があります。なので、公式ウェブサイトとDiscordサーバーをつくり、「そもそも、このワールドはどういった雰囲気の場所なのか」ってことを最低限お知らせしたほうが良いだろうという結論に至りました。そういった配慮を重ねていった結果、トラブルなども起きにくくなりましたし、それによって参加者流入が減るといったことも無かったので、現状できるベストがこの方法なのかなと思っています。

――お話を聞いていると、ワールド制作からイベント運営まで、個人で運営するには非常に大変なことをされている印象です。個人的には、非常に高いモチベーションが無ければ継続の難しいことのように思いますが、どういった意思から続けられているのでしょうか?

0b4k3氏:

僕自身にはそんな大きい野心みたいなものは特に無くて、強固な運営精神みたいなものは持たず、ラフにやっているからこそ続けられているというのが正直なところです。あとは単純に楽しいからですよね。楽しくなくなったら辞め時かもしれません。

それから、クラブという場所の都合上、どうしてもコミュニティというものが必要なんですよね。コミュニティの成熟の速度と、ワールド自体の成長速度のバランスについても考えないといけない。あまり急激な変化をしてしまうと、コミュニティの人たちを振り落としてしまうかもしれないし、僕自信も変化の大きさに耐えられない可能性が出てきます。なので、変化や成長をコントロールしつつ、慎重に石橋を叩きながら運営を行っています。

――そういった指針がワールド制作に携わっている方々にも伝わっているからこそ、上手く続いていると。

0b4k3氏:

そうですね。むしろ僕がそういった精神性でやっているからこそ、協力してくれているのかなって思うこともあります。例えば、このワールドが金銭が大きく発生するプロジェクトだと「GHOSTCLUBが好きだから協力している、遊んでいる」という方との関係性が変化して「感情の受け渡し」みたいなものが「金銭のやりとり」に置き換わってしまうんです。だからワールド自体をお金を稼ぐことを目的に運用するといったことはしないようにしています。もちろん、これまで制作や運用でお世話になった方々に、何かしらの恩返しはやっていきたいと思っているので、例えばGHOSTCLUBとは関係のないところで一緒にお仕事をしたりとか、そういったことはあります。

――たしかにコミュニティ自体の価値をお金に変えられるようなものにしてしまうと、持続可能な運用が非常に難しくなる一面はあると思います。自分も、新宿のゴールデン街という飲み屋街でバーテンとして働くことがあるのですが「お金を稼ぐ」といったモチベーションで働くと、お客さんとの関係性がおそらく壊れやすいものになってしまうなと感じています。

0b4k3氏:

参加者とどういったコミュニケーションが生まれるのか、その結果どういった繋がりができるのかといったところを大事にするという点で、(ゴールデン街と)似ているところはあるかもしれませんね。

――取材時にこのワールドから、ゴールデン街に近しい親しみやすさのようなものを感じたのですが、そういった運用スタンスが関わっているのかもしれません。

0b4k3氏:

おそらく2年前のGHOSTCLUBだったら、受ける印象は大きく変わっていたのだろうなと思います(笑)。ワールドそれ自体や運営に僕の精神性が深く関わってしまっているので、年ごとに参加者がGHOSTCLUBから受ける印象はガラッと違うものになっているのかなと思います。バーチャルでもリアルでも場所というのは徐々に人の感情に合わせて変化していくもので、成功や失敗を繰り返しつつ、軌道を修正していくところが、ワールドの運営の面白いところだと思います。

VRChatの人たちに衝撃を与えて、熱を生み出したい

――クラブイベントで音楽を披露しているDJの方々はどういった方々が多いのでしょうか?

0b4k3氏:

VRChatをきっかけに以前趣味だったDJ活動を再開された方や、VRChatをきっかけにDJを始めたという方もいますし、元々現実のクラブで活動されていて、こちらの活動にも興味を持ってVRクラブで演奏されるという方もいます。国内外問わず本当に色々なDJがいます。

――現実のクラブであれば、DJの方を招待するのはなかなか労力が必要なことだと思います。

0b4k3氏:

それがバーチャルなクラブであることの良さだと思いますね。現実なら出演交渉やライブまでの準備などに労力を割かなければいけませんが、VRChatであればやりたいと思ったら、ちょっと準備して自宅からクラブにアクセスしてお客さんの前でプレイできてしまう。やはり、その気軽さがあるからこそ、ブッキングする側も比較的スムーズに行えるのかなと思いますね。

――出演されたDJの方は、GHOSTCLUBをどのような場所と捉えているのでしょうか?

0b4k3氏:

僕が聞いた限りでは「出演できてよかった」といったような好意的な感想が多いですね。リアルのクラブで演奏されているDJの方からも「こっちはこっちで最高じゃん!」という声をいただけたりして嬉しいです。

――個人的には、このワールドでは参加者の方々が、いきなりみんなで輪になって踊るような積極的なコミュニケーションをするタイプではなかったので安心して楽しめました。

0b4k3氏:

バーチャルなクラブでも様々なタイプがありますが、GHOSTCLUBに来場される参加者はそういったコミュニケーションよりも音楽に集中してとにかく没入したい、という方々が多い印象です。イベントの開始前、開始後は談笑していたりするんですが、DJの演奏が始まるとスイッチが切り替わって、一気にあの”空気”になるんですよね。
VRChat内には、会話を主体としたクラブもありますし、機会があれば他のクラブにも足を運んでみると良いと思います。色々なクラブが存在していて、多種多様なコミュニティの形を観測することができて楽しいですよ。

――GHOSTCLUBに来た参加者の方からの感想で印象的だったものなど、何かありますか?

0b4k3氏:

「やばい」「圧倒された」といったシンプルな反応が多くて印象に残りましたね(笑)。感想とはまた違ったものかもしれませんが、GHOSTCLUBを見て、意識して「こういうものを作りたい!」「負けてられない!」と、モチベーションを上げて、また別の場所でもクオリティの高い作品が増えていってくれることが、感想の形としては何よりも嬉しいことかもしれません。

――たしかにクリエイターの方々に衝撃と影響を与えるようなワールドになっていると思います。

0b4k3氏:

よく仲間内でも話すことなのですが、僕たちは「色んな熱に当てられたい、何か新しいものを生み出したい」という想いが根っこの部分にあるんですよね。だから、僕らにとっても驚くべきようなワールドやコンテンツが生まれてくれると、とても嬉しいです。界隈が活発になることはとても良いことだと思うので。GHOSTCLUBが何らかのきっかけになれば良いですよね。

バーチャル空間に「無駄」をつくることの大切さ

――現バージョンのGHOSTCLUBのなかで、特にこだわったポイントはどういったところでしょうか?

0b4k3氏:

現バージョンになる以前から、サイバーパンク的な意匠を積極的に取り入れるといったことはやっていたのですが、当時は建築的な部分での説得力がまだ足りていませんでした。当時の作り方は「ある視点からみたときにかっこいい」という断片的な部分をつなぎ合わせて、ワールドとして成立させていました。ゲームやイラストであればそれでも良いのかもしれませんが、VRは自分の視点、つまり主観での体験がとても重要になるので、(断片のつなぎ合わせでは)実在感が薄らいでしまいます。

今の「5.0」は、建築それ自体の空間や構造としっかりと向き合って説得力を出すことで体験の良さは増すだろう、という発想からスタートして、まず最初に「5.0」の要であるビルの建築から取り掛かりました。なので、おそらくワールドに入ると、「ビルがある」というシンプルなんですけど強い感覚が得られると思うんです。

――本当に実在するかのようなビルの配管には感動しました。

0b4k3氏:

モデリングを担当した方が建築に関係する色々な”基準”を参考にして作っていたり、「雨水が落ちるならきっとこうだろう」「空気が流れるならこんな感じだろうな」というのをみんなで妄想しながら制作したので、それが説得力や存在の強さに繋がっているのかなと思います。

――ビルを巡って「このビルの電線は屋上のソーラーパネルから発電されているのかもしれない」といった発見ができる点も楽しいところです。

0b4k3氏:

あのワールドはあえて説明していないんですよね。最初の頃は7階にあるメインフロアまでのガイドをちゃんと引いたほうが良いのではないかといった話もあったんですが、そういったことを踏まえて改めてワールドに入ってみたときに「ワールドのディテールそれ自体が十分ガイドとして機能しているから、別にわざわざ“ガイド”をする必要はないのでは?」と思ったんですよね。

おそらく最初に入った人は、エントランスらしき場所から、中庭に入って、ぐるっと囲まれたビルの内壁を見回すと思うんです。それから視線は奥の方の暗くなっている空間に向かって、実際にその空間に向かってみるとエレベーターを発見する。エレベーターに入ってしまえば7階に向かえることを理解できる。そこからクラブのメインフロアまでは電線をたどれば分かるようになっています。あえて迷ってみて、そういったディテールを発見してもらう楽しみを味わってもらえたら良いかなと。

――たしかに、あえて説明されていないことで好奇心が湧き、ワールドの世界にスッと入り込むことができたように思います。

0b4k3氏:

例えば現実の公共施設やお店は、みんなが安全に迅速に目的を達成できる必要があると思うので、ガイドは徹底した方が良いと思うのですが、GHOSTCLUBのような趣味の空間に関してはガイドに「遊び」があっても良いのかなと思っています。

――GHOSTCLUBは、参加者同士のコミュニケーションスペース的な部分が無いという点も興味深いところでした。例えば、一般のイベント会場でそういったスペースを設けられたとしても、そこではどうしても社交的な振る舞いしかできませんが、このワールドでは、初見の人と会話するときも、たまたま同じビルで雨宿りを一緒にすることになった人と雑談するくらいの気安さでいられます。

0b4k3氏:

そういったコミュニケーションの楽しさに自分が気づけたのはバージョン「2.0」の時代からかもしれません。当時はエレベーターのなかでたまたま乗り合わせたお客さんと顔を合わせるといった機会が自然発生していて、そこで短い時間ですけど挨拶をしたりちょっとした会話をしていたり。その一瞬の共有の時間がすごく良くて、以来、自然発生的なコミュニケーションをどうやって生み出すのかということに関しては色々と考えています。結果として、今のGHOSTCLUBは「どこでも会話ができるし、どこでも会話がしにくい」という変な場所になっているんですが。

“良い話”があるんですが、先日とある方が入口付近でぼーっと立っているといったことがあって、声をかけてみたら、「友達と待ち合わせをしているんです」って返してくれて、この空間が「待ち合わせができる場所」になっていることが非常に嬉しかったんです。

――先程話した新宿ゴールデン街も非常に待ち合わせをする人が多い街で、バーにふらっと入って、友達が来るまで知らない人と雑談するといったことがよく起こっています。待ち合わせには「待つ時間自体に価値を見出して楽しめる」という感覚が必要で、そういう感覚になれる場所は、かなり貴重な空間だと思います。

0b4k3氏:

たしかに。自分たちが作った空間がそういった「待ち合わせの時間を楽しむこと」が可能な強度のある空間になっているのは、とても嬉しいですね。

――先程「遊び」という言葉がありましたが、GHOSTCLUBは、空き地のように特に明確な目的のない「遊びの空間」がクラブの外側に広がっている点も魅力と思います。そういった空間があるからこそ、自然発生的なコミュニケーションを楽しむ余裕が生まれるし、居心地よく時間を過ごせるのではないかと。

0b4k3氏:

現実世界と比べると、VR空間って100%人工的なものしかないんですよ。じゃあ「生な部分ってどこにあるのか?」と考えると、人自身の心と存在で、だから参加者がその空間をどう受け止めるかの心の揺れ動きが重要になってきます。

最近は、無駄な部分を省いて、全てに意味や役割を与えていくことが、現実でもVR空間でも善しとされているのかなと勝手に思っているんですが、その価値観だと、GHOSTCLUBの場合、クラブ以外の建物の部分をしっかり建築するというのは、全くの無駄なんですよ(笑)。バーチャルでクラブを作るなら、クラブとして機能させるために必要なスペースだけを作ればいいわけですからね。

では、なぜ無駄な建築をしたのかといえば、意図して「無駄をつくりたかった」わけです。無駄があれば、来場した人が勝手に待ち合わせしたり、勝手に意味を見出して散策してくれたりといったことが生まれる。そして、無駄な部分があるからこそ、無駄ではない部分がしっかりと映えてきます。それに無駄かどうかは当事者が決めることで、その境界線はとてもあやふやで曖昧なものだと思います。100%の人工空間で、どこまで意味のある部分と無意味の部分の塩梅を考えられるか。そういったことがバーチャルでワールドを制作する上では大事なのかなと考えています。

――GHOSTCLUBの場合は、クラブという機能がしっかりあるからこそ、バランスが良いと言えるのかもしれません。

0b4k3氏:

極端なことを言うと、クラブという概念自体が現実の世間的には「無駄なもの」に分類されている印象です。でも、バーチャル空間でも現実でも、それがしっかりと存在しているということは、それを必要としている人が実際にたくさん居るからだと思うんです。無駄だからこそ、楽しくて、面白いものってたくさんあると思うので、そういう文化や場所やものを大切にしていきたいですね。

――ありがとうございました。最後の質問ですが、今後のGHOSTCLUBの方針や予定などがありましたら、お聞かせください。

0b4k3氏:

ちょっとずつ地道にアップデートして、存在としての強度をより高めていければなと思います。また現実のクラブとバーチャルのクラブがどちらもを対等な存在になって、両方のクラブをみんなが自然と楽しめるような空気感をつくっていきたいですね。

また以前にファッションブランドのchlomaさんとバーチャルストアという形式でコラボを行ったんですが、そんな感じで、展示や音楽以外の企画などもやっていけると面白いのではないかなと考えています。色々と巻き込んで愉快な状況にしていきたいですね。

――ありがとうございました。

公式サイト:https://xn--pckjp4dudxftf.xn--tckwe/

撮影:MANE
執筆:ゆりいか


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