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メタバース最新動向 2022.12.05

韓国政府が「メタバース倫理原則」を公表、共同規制で経済成長と権利保護の両立目指す

韓国政府が11月28日に「メタバース倫理原則」を公表しました。公式サイトから全文が閲覧できます。


(出所:「メタバース倫理原則」別添1)

韓国・科学技術情報通信部は11月29日に「メタバース倫理原則」を公表しました。「真正性、自律性、互恵性、プライバシー尊重、公平性、個人情報保護、包括性、未来への責任」の8項目を掲げます。公式サイトから全文が閲覧できます。

背景となる政策動向

韓国政府は2021年に発表した「大韓民国デジタル戦略」で、メタバースをAIや半導体、量子コンピューティングなどと並ぶ重点産業分野に位置づけています。

政策目標として「産業・文化・公共が連携し、メタバース十大分野の先端事業を行う(2022年~)、メタバースのための規制改革実施計画と倫理原則を定める(2022年~)」を掲げ、科学技術情報通信部(MSIT)が公共投資や研究支援を主導してきました(参考:MSIT)。2022年2月には総額2,237億ウォン(約214.5億円)の政策投資を行うと発表しています。

11月23日に行われた「メタバース経済振興のための官民タスクフォースチーム」の第3回会議では、「メタバース倫理原則(메타버스 윤리원칙)」を確定し、「メタバース規制改革実施計画2.0」(草案)の討議を進めていました。

ガイドラインの内容は

「メタバース倫理原則―メタバースエコシステムの創造と革新」と題して、メタバースの開発者・利用者を対象に「真正性、自律性、互恵性、プライバシー尊重、公平性、個人情報保護、包括性、未来への責任」の8項目を掲げます。

文書全体は「背景」「現状と問題点」「検討経過」「主な内容」の4章立て・39ページ。別添1には草案を収録し、別添2で先行する倫理原則(インターネット、人工知能)との概要比較を行うほか、別添3では韓国国内における倫理・哲学の研究例を紹介しています。

韓国中央日報によると、「メタバース倫理原則」は2,626件のアンケート調査や関連データをもとに、12名の専門家によって起草されました。法的拘束力は持たない提案(proposal)ですが、韓国国内における今後の政策根拠のひとつになると見られます。

各国で進む「共同規制」アプローチ

第3回会議の議事録によると、この文書には「先行許容・事後規制(pre-allowance post-regulation)」の理念にもとづき、新興産業における自由な経済活動と、データ主体である個人の権利保護を両立する狙いがあります。

こうした政策アプローチは、「政府が直接規制を行うのではなく、民間企業の自主規制を組み合わせた形でルールを設ける手法」で、日本では「共同規制」とも呼ばれます(参考:総務省)。

コンピュータやネット利用の倫理を扱う「情報倫理」という学問は、1990年代から議論されていますが、メタバースにおける倫理・道徳の問題は、欧州委員会が2023年にメタバース規制に取り組むことを表明するなど、国際的にも議論が始まる新たな分野です。

日本でも、内閣府知的財産戦略本部が「メタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法的課題への対応に関する官民連携会議」を設置するなど、官民で議論が始まっています。同会議の参考資料3「メタバース関連ソフトロー等事例集」には5本のガイドラインやライセンス文書がされており、関連論点を概観できます。

参考:韓国・科学技術情報通信部


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