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PlayStation VR 2019.05.12

PSVRの新型“PSVR2”はどうなる?これまでの報道や特許を振り返る

2019年4月中旬、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)は、次世代ゲーム機の開発状況を明らかにしました。

この発表は米メディアWIREDの取材に対して行われたもの。取材中、PlayStation VR(PSVR)に関しては多くの言及はなかったものの、現行のPSVRが次世代機にも対応することが判明しました。これらの情報から、現行PSVRのモデルチェンジや次期モデル(いわゆる“PSVR2”)ではどのようなシステムや仕様になるか、注目が集まっています。

本記事では、SIEが過去に出願・取得したPSVR関連の特許についての情報や、同社のVRに関する報道を、過去に掲載したニュースをもとに振り返ります。

目次

ワイヤレス化も視野か
コントローラーはどうなる?
次世代のPSVRではVR酔いへの対策も?
周囲の人がVR内を覗き込むセカンドスクリーン
VR内でeスポーツ観戦も
プレステ次世代機に現行PSVRが対応
視線追跡機能付きメガネ型デバイスを特許出願

ワイヤレス化も視野か

2019年になると、ワイヤレス接続方式のVRヘッドセットに関する特許の出願も報道されています。特許名は「ヘッドマウントディスプレイ、制御方法及びプログラム」という名称で出願されおり、特許の仕様書の画像からは、PSVRと思われるVRヘッドセットにワイヤレス技術が導入されているのが確認できます。

VRヘッドセットは、「ケーブルが体や足に絡まる」「VR体験中に引っ張られる感覚を受ける」といった問題がありますが、解決策として各社でワイヤレス化の検討がされています。本特許によりSIEも検討を重ねていることが考えられます。

コントローラーはどうなる?

SIEは過去にPSVR向けのグローブ型コントローラーと思われる特許を取得していたことが判明しています。

PC用VRヘッドセット向けには、ユーザーの手の動きをVR内に再現する様々なグローブ型コントローラーの開発が進められています。こうしたデバイスでは手の動きを正確に再現でき、またボタンではない直感的な入力で操作ができるという魅力があります。

PSVRで現在用いられているPS Moveコントローラーは従来からある製品の流用ということもあり、VR用のインターフェースとして最適化されていないことが課題とされています。

SIEのグローブ型コントローラーでは、関節の曲げ具合を検出する「曲げセンサー」を用いてユーザーが指で形作ったジェスチャーを読み取ることを可能にしています。様々な仕草でゲームへの入力や制御が可能となったり、下図のように特定のジェスチャーで特定のアイテムを呼び出すといったアクションができるようになります。

米メディアUploadVRは、SIEは2017年のはじめにPSVR向けのグローブ型コントローラーを検討したが、最終的に保留にしていると報じています。このデバイスが直接製品化する可能性は現時点では不明ですが、SIEがPSVR向けのコントローラーを模索していることが推測されます。

次世代のPSVRではVR酔いへの対策も?

また、2017年にはVRヘッドセットのディスプレイに関する特許の内容が明らかになっています。公開された内容からは、複数のバイオメトリクスセンサーを用いた「VR酔い」対策を見て取ることができます。VRヘッドセットに採用されているのは、温度計やアイトラッキング用のカメラ、湿度計、外部定位センサーといった様々なパーツです。

SIEによれば、VRヘッドセットはこれらのセンサー類を用いて「健康の閾値」を設定。VR体験がユーザーにとって刺激が多すぎると判断した時、適切な対応を取るとしています。ヘッドセットにはマイクまで備えられており、ユーザーの「ネガティブな」発言や音を聞き分け、プレイ体験が不快なものか判断するというものです。

周囲の人がVR内を覗き込むセカンドスクリーン

2018年には、SIEはVRのセカンドスクリーンに関する特許を申請しています。本特許は「Second Screen Virtual Window Into VR Environment」(VR環境を覗き込むセカンドスクリーン・バーチャルウィンドウ)という名称です。この仕組みでは、VRを体験しているプレイヤーに周りの人がスマートフォンのような端末をかざすと、まるでカメラ越しに覗き込んでいるかのようにVR内の様子を見ることができます。

これまで、多くのVRゲームではVRを体験しているプレイヤーは孤独でした。周りでその様子を見ている友人や家族は、テレビに映るプレイヤー目線の映像を共有することで、かろうじてプレイしている様子を見ることができましたが、プレイヤーに干渉することはできません。

特許ではデバイスを手に持った周りの人は「観察者」とされています。観察者は手に持った端末をカメラのようにかざすことで、VRの中にプレイヤーがいる様子を見ることができます。周りを歩いて回ったり、近づいたりすることで、カメラを構えているように視点が変わっていきます。これにより、一人で遊んでいたVRゲームの幅がこれまで以上に広がることが予想されます。

VR内でeスポーツ観戦も

また、PSVR関連ではありませんが、VRでeスポーツイベントを実際の会場にいるかのように楽しめるシステムの特許も公開されています。

ライブ中継される会場の座席には、カメラとマイクが埋め込まれています。近接センサーにより、現実の座席に人がいるかどうかを判別。実際に使用されている座席がVRユーザーには使えないようにします。

またVRユーザーは、ゲーム内に入り込んだ視点も体験できます。観客の視点とゲーム内の視点を切り替える、ハイブリッドモードが楽しめるというものです。

プレステ次世代機に現行PSVRが対応

2019年4月中旬に米メディアWiredによるSIEへの取材で、次世代ゲーム機の開発状況が明らかとなりました。

Wiredの取材に応じたのは、PS4及び次世代PlayStation(名称がPlayStation5、PS5になるのかは不明です)開発のリードアーキテクトを務める、SIEのMark Cerny氏。同氏は次世代機ではCPUとGPUがパワーアップする他、オーディオの改良、SSD採用による処理速度の劇的な高速化が図られると述べました。

そしてPSVRについて質問が及ぶと、次世代PSがPSVRをサポートする点を明確に認めました。「この場で当社のVR戦略の詳細を語ることは出来ません。ただ言えるのは、VRは当社にとって非常に重要であることと、現行のPSVRのヘッドセットは次世代ゲーム機でも使用可能だということです」とコメントしています。

次世代PSの発売時期は未公表ですが、2019年中ではない(2020年以降)と説明されました。

視線追跡機能付きメガネ型デバイスを特許出願

同じく4月には、SIEがVRヘッドセットと組み合わせて使用する、視線追跡(アイトラッキング)機能が実装されたメガネ型デバイスを米国特許商標庁に特許出願していたことが判明しています。この特許は2019年4月2日に公開されました。本デバイスの対応するVRヘッドセット名は記載されていません。

出願が判明した眼鏡型デバイスは「利用者の視線情報(gaze information)を、HMD内に投影されるコンテンツのクオリティ向上のために使用する」ためのものであるとのこと。VRメディアUploadVRは、本デバイスがフォービエイテッド・レンダリング(※)用のデバイスであると推測しています

(※フォービエイテッド・レンダリング:画面をレンダリングする際、人の中心視野ほど高解像度で、そして視野の外側に行くに従って低解像度で描画する手法)

視線追跡機能が既存の製品であるPSVR本体ではなく、メガネ型デバイスに実装された理由は判明していません。現行のPSVRをアップデートするためのデバイスである、あるいは現PSVRと次期モデル(PSVR2)で共通して使用するデバイスであるなど複数の理由が推測できますが、2019月4月時点で詳細は不明です。

なお、2019年4月時点、SIEは、PSVRのモデルチェンジや次期モデル(PSVR2)の開発などについて、公式なコメントを行っていません。現在明らかになっている特許から、どう製品化につながるのか、SIEの今後の動向に注目です。


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