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テック 2018.08.30

他人と筋肉を共有、水を用いたCG投影……イノベーティブなAR/VR関連技術採択

一般財団法人デジタルコンテンツ協会は、同協会が行う事業「Innovative Technologies 2018」において、VR/ARに関するものを含む11件の技術を採択したことを発表しました。本事業はイノベーションによりコンテンツ産業の発展に大きく貢献するであろう技術を発信・発掘するものであり、採択された技術はデジタルコンテンツ EXPO 2018にて展示・表彰が行われます。

Innovative Technologiesとは?

「Innovative Technologies」では、「先進性・革新性を有する」「表現としての新規性を有する」「産業化・市場創出の可能性を有する」のいずれかに該当することを条件に、有識者による委員会が審査を行っています。

また、世界的なコンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術の国際会議「SIGGRAPH(シーグラフ)」の委員会によって選考された技術には、「ACM SIGGRAPH Special Prize」の贈呈、および翌年に米国で開催されるカンファレンス・SIGGRAPHの「Emerging Technologies」に出展する権利を獲得します。

VR/AR関連コンテンツについて

今回採択された11の技術のうち、VR/ARに関連するものを紹介します。

Musiarm : 義手のエンターテイメント性の拡張を目指した義手楽器

「Musiarm」は義手を楽器と融合させた技術で、義手のエンターテインメント性の拡張と義手利用者の楽器演奏のモチベーション向上を目的としています。健常者の欠損障害当事者への考え方は、健常者の身体ベースに考えられてしまいがちです。本技術は前腕欠損の当事者や義肢装具士との対話を行いながら開発を行っています。身体表現と音楽表現の融合により、義手による表現の拡張をねらいます。

(参考論文)
http://embodiedmedia.org/wp-content/uploads/2018/07/IPSJ-AAC18006025.pdf

FairLift : 水面反射を用いた空中像とのインタラクション


(2018年のSIGGRAPHにおけるデモ展示)

「FairLift」は、水に映ったCGに対し、手を使ったジェスチャーをすることでインタラクションが起こる技術です。水に映った妖精を手招きをすると妖精が移動したり、水ごと妖精を掬い上げることができます。この技術は、CGと物理世界を繋ぐディスプレイの手法として“水”を提案するものです。超音波を利用したセンサーで推移を測定、光源の位置を制御しています。

(参考論文)
https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3214919

TwinCam Go : 全天球立体映像と回転制御椅子による搭乗感覚のリアルタイム共有

「TwinCam Go」は全天球リアルタイム立体視テレプレゼンス(カメラやディスプレイなどを用いることで、遠隔地にあたかも自分がいるかのように感じさせる技術)システムの「TwinCam」をもとに作られた技術です。TwinCamでは2台の360度カメラを使うことで、ブレの少ないテレプレゼンスシステムを可能としました。

今回の「TwinCam Go」ではカメラを電動車椅子に乗せ、それに合わせて動く椅子を開発したことで、遠隔であるにもかかわらず、実際に電動車椅子に乗ってるような感覚を提示します。

VRを活用したアングルシフト~他者の一人称体験によりダイバーシティ・インクルージョンへ~

「VRを活用したアングルシフト~他者の一人称体験によりダイバーシティ・インクルージョンへ~」は認知症やLGBTなど、現代社会の中でマイノリティや社会的弱者とされている人々の存在そのものを、一人称視点で感じる体験です。とりわけ、VRで認知症を体験した約9割の人が理解が進んだという報告書もあります。

(参考)
株式会社シルバーウッドHP ダイバーシティ×VR

bioSync : 筋活動共有に基づく人々の共感を支援する身体同調技術

「bioSync」は他者の筋活動をジャックする、またはジャックされることを可能にする技術です。運動感覚を相互で共有することで、リハビリテーションや、運動機能疾患などをもつ患者と介助者の間の相互理解を促進します。また、デザイナーとパーキンソン病でみられる手の震えを抱える人が共有することで、手が揺れても使いやすい道具の開発を行うことができます。

(参考論文)
https://www.researchgate.net/profile/Jun_Nishida3/publication/313823733_bioSync_rennoyundongjuetiyanworonghesuruuearaburudebaisu_Trans_of_VRSJ/links/58e1e9dba6fdcc41bf945198/bioSync-rennoyundongjuetiyanworonghesuruuearaburudebaisu-Trans-of-VRSJ.pdf

AffectiveHMD : 組み込み型光センサを用いた頭部装着型ディスプレイ内での表情認識技術

「AffectiveHMD」はHMD装着時に顔の表情を認識し、認識した表情をバーチャルなアバターに再現させる技術です。表情はHMD内に小型・軽量の光センサーを入れることで認識しています。人間の顔とアバターでは骨格が異なるので、はじめにアバターで再現した表情を人間が真似ることで表情を対応させています。

(参考論文)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tvrsj/22/3/22_379/_pdf/-char/ja

(参考)一般財団法人デジタルコンテンツ協会 プレスリリース


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