近年では「AR(拡張現実)」という言葉を目にする機会が増えて来ました。AR技術を活用したアプリ「ポケモンGO」は、2016年にリリースされ、世界中のユーザーが体験しています。その累計売上は18億ドル(約1,980億円) 超にのぼるとされており、現在も人気を集めています。その他にも、国内外で製造業を中心とする様々な業務でARの活用が進められているなど、注目度の高いトピックとなっています。
本記事では「ポケモンGO」以外にも、改めて「AR」の意味から、ARデバイスやスマートフォン向けのアプリなどの最新情報や活用事例を紹介します。
目次
「AR」とは?
ARで何ができるのか:業務活用や道案内、キャラクター活用も
ARデバイスの紹介
スマホを利用したAR
ビジネスでのARの活用事例
エンタメ・生活でのAR活用事例
ARの最新事情を知るには?
「AR」とは?
ARとは、Augmented Reality(オーグメンテッド・リアリティ/拡張現実)の略であり、よく見かけるARの事例としては「現実の上にデジタルな情報を表示する」ものがあります。「ポケモンGO」などはこのARを一部機能で使用しており、カメラを通してリアルな世界に、デジタルなポケモンが画面に重なって表示されています。
ARに関するより詳しい解説はこちらです。
「VR」・「MR」との違いは?
ARと近い領域で使われる言葉として、「VR(Virtual Reality/バーチャル・リアリティ)」や「MR(Mixed Reality/複合現実)」があります。一言で表すと、VRは「物理的には存在しないものを、感覚的には本物と同等の本質を感じさせる技術」ことを指し、MRは「現実世界とバーチャル世界を融合する」という概念です。各用語のより詳しい解説・定義は、下記の記事に掲載しています。
・Mogura VR用語集:VR
https://www.moguravr.com/terms/index-h/vr/
・Mogura VR用語集:MR
https://www.moguravr.com/terms/index-a/mr/
ARで何ができるのか:業務活用や道案内、キャラクター活用も
ARでの業務サポート
ARの活用の一例として、東芝デジタルソリューションズ株式会社は、現場作業をARで支援するソリューション「Meister AR Suite」の提供を行っています。同ソリューションは、設備のオペレーションやメンテナンスなど、現場作業で課題となっている業務の効率化や、熟練作業者の技術継承などをAR技術で支援します。
そのほか、株式会社カヤックと株式会社小松製作所(コマツ)は、ARを活用したサービス「Kom Eye AR(コムアイエーアール)」を開発。建設機械の「目」と言えるステレオカメラで撮影した映像と連動し、現場の安全、生産性の向上を目的としています。また、東京地下鉄株式会社(東京メトロ)は、トンネルなどの土木構造物の検査業務にAR技術を活用したiPad向け教育用アプリケーションを開発しています。
そのほか、業務でのAR活用事例はこちら
道案内にも活用
ヤフー株式会社は、スマートフォンアプリ「Yahoo! MAP」のiOS版において、ARを活用したナビゲーションサポート機能「ARモード」を試験的に導入する取り組みも行っています。通常の道案内に加え、カメラで写した実際の風景に、「ルート」や「看板」などのナビゲーション要素をデジタル情報として画面に重ねることで、目的地までの方向や距離などを立体的に確認できます。
現実にキャラクターを表示
株式会社シーエスレポーターズのアニメVR/ARブランドGugenkaは、ARアプリ「HoloModels」を展開しています。人気のライトノベル・アニメ作品「Re:ゼロから始まる異世界生活(リゼロ)」とのコラボレーションARフィギュアの販売も行っています。
HoloModelsは、アップルのARプラットフォーム「ARKit」を使用して、3DCGのキャラクターをフィギュアのように現実に飾ることができるアプリです。ARフィギュアはサイズやポーズ、表情を自由に変更させたり、持ち物を持たせたり、空間に貼ることができるシールなどを組み合わせることが可能です。
キャラクターを現実世界に映し出す試みは、鉄道を擬人化したPC向けアドベンチャーゲーム「まいてつ」の登場キャラクターを呼ぶ「まいてつカメラ」や、バーチャルYouTuber(VTuber)・エルミナなどを召喚するARアプリ「エルミナAR」などもあります。
ARゲームで映画の世界を体験、魔法を操るスポーツも
https://www.youtube.com/watch?v=e__9IUpdj8Q
レノボ・ジャパン株式会社は、映画「スター・ウォーズ」の世界を現実で体験できるARゲーム「STAR WARS/ジェダイ・チャレンジ」を国内展開しています。レノボのARヘッドセット「Mirage(ミラージュ)」と、ライトセーバー型・コントローラー、トラッキング・ビーコンが同梱されており、価格は19,980円(税込)。
「STAR WARS/ジェダイ・チャレンジ」は、ジェダイの騎士が武器とするライトセーバーを手に銀河系のダークサイドと戦うゲーム「ライトセーバー・バトル」や、ホログラフィックのエイリアンたちを使ったボードゲーム「ホロチェス」など3つのARゲームが搭載。最新のアップデートでは、2台でプレーヤー同士の対戦ができる「対戦モード」が追加されています。
また、現実でビームや魔法を撃って対戦できるARスポーツ「HADO」は、世界大会が開催されるなど国内外で展開されています。頭にスマートフォン用ヘッドマウントディスプレイと、腕にアームセンサーを装着し、攻撃の「エナジーボール」や防御の「シールド」などを駆使して体を動かしながら遊びます。試合は3対3のチーム戦となり、試合時間80秒間で相手と点数を取り合って戦います。
https://www.youtube.com/watch?v=nZTUhX2w1f4
「HADO」は、マイクロソフトのデバイス「HoloLens」を用いたARカートアトラクション「HADO KART」の展開も行われています。2018年6月に登場した「The Ghost Battle」は、最大8人のプレイヤーが4チームに分かれ、カートに乗りながらARで火の玉を撃ち合う対戦アトラクションです。
「HADO」(2017年8月版)の紹介記事はこちらです。
ARデバイスの紹介
(マイクロソフトの「HoloLens」。単独で動作するのが特徴)
ARデバイスは、顔や頭に装着しAR体験を行う眼鏡型のデバイスなどが存在しています。ARグラス、ARゴーグル、ARヘッドセット、スマートグラスとも呼称されています。AR(MR)デバイス「HoloLens」は、ARメガネの中でも知名度が高く、様々な現場での活用が行われています。
HoloLensの特徴はPCとの接続や、スマホを装着することなく単体で動作する点です。外部のセンサーやケーブル等が不要なほか、自分の手のジェスチャーで操作することができるなど、新たな体験ができるデバイスです。
そのほかのARデバイスの紹介はこちらです。
スマホを利用したAR
スマートフォンを利用したARはアップルやグーグルが力を注いでいます。アップルのARプラットフォーム「ARKit」は、スマートフォンなどのカメラで現実空間を認識し、机の上にデジタルなモノやキャラクターを置くことなどが可能です。2018年4月にはARKit専用アプリが2,000個を突破し、ARKitの登場からわずか6カ月間で世界中から1,300万回以上もARKit専用アプリがダウンロードされたことが明らかになっています。
また、6月開催の開発者イベント「WWDC2018」では、最新ソフトウェア「iOS12」に搭載される「ARKit2.0」が発表。新機能ではARのマルチプレイや、ARオブジェクトの再利用などが可能になるとされています。リリースは今秋に提供される予定です。
iPhoneで体験できるARアプリの紹介記事はこちらです。
一方、グーグルはARプラットフォーム「Tango」を提供していましたが、特別なセンサーを必要とするため対応するデバイスが限られていました。同社は2018年2月23日に新たなARプラットフォーム「ARCore」を公開、これにより多くのAndroidデバイスでARKitと同様に本格的なARが体験できるようになりました(Tangoは2018年3月1日にサポート終了)。
2018年5月に行われた開発者イベント「Google I/O」ではARCoreのアップデートが発表。複数のデバイスから同じAR空間にアクセスできるアプリの開発が可能になるなど、より充実したARアプリの制作機能が追加されています。7月にはARCoreに対応するデバイスリストが更新されました。対応端末は全46機種となり、その中にはなんとiPhoneとiPadも対象になっています。
ビジネスでのARの活用事例
フェイスブック社は、同社が運営するSNS「Facebook(フェイスブック)」の広告にAR広告を導入することを発表しました。ユーザーは広告に掲載された商品を、フィルターを使って自身の画像と重ね、試してみることができます。例えば、フェイスブックがサングラスの広告を掲載したとします。ユーザーはAR機能でサングラスを試し、気に入ればアプリ内で購入することが可能です(テスト段階のため米国のユーザーのみが対象)。
そのほか、ビジネス・プロモーション等でのAR活用事例はこちら
エンタメ・生活でのAR活用事例
エンターテインメント系
ハウステンボス株式会社は、無人島を舞台とした日本初の屋外ウォークスルー型ARシューティングアトラクション「JURASSIC ISLAND(ジュラシックアイランド)」をオープンしています。このアトラクションの舞台はハウステンボスから船で40分ほど、数km離れた無人島。参加者は、iPhoneを装着したライフル銃でを手に、恐竜を倒しながら、財宝を全員で探していきます。
また、映画「ゴーストバスターズ」のアトラクションも登場しています。愛知県のテーマパーク「ラグナシア」は、ARシューティングアトラクション「ゴーストバスターズ ラビリンス」を7月21日にオープン。体験者はゴースト捕獲光線銃「ピコプロトンパック」を使って、制限時間内により多くのゴーストを捕獲することを目指します。
生活系
家の照明や空調といった設備を自動化したり、スマートフォンで操作したりする「スマートホーム」での生活を便利にするARアプリ「Smart AR Home」。システムとアプリを対応させることで、アプリをかざして浮かび上がるバーチャルなスイッチを使って、実際のスイッチに触れなくても照明や空調をコントロールできます。
ARは防災教育への応用も行われています。AR災害疑似体験アプリ「Disaster Scope2」は、“自分が今いる場所が浸水したらどうなるか”を疑似体験できます。アプリは水位設定、1時間後や3時間後といった時間指定の選択、雨量の表現も可能です。
水位設定、1時間後や3時間後といった時間指定の選択、雨量の表現も可能です。自宅や出先といった場所を問わず、「もしも今いる場所で水害に出くわしてしまったら……」という状況を疑似体験できます。また、本アプリでは火災発生によって煙が室内に充満する様子を疑似体験することもできます。紹介記事はこちらです。
また、ドイツの高級車ブランドであるメルセデス・ベンツでは、手軽に車の機能・操作を理解できるARアプリ「Ask Mercedes」をリリースしています。車内でスマートフォンをかざすとカメラが車内をスキャン、画面上にアイコンが出現します。ユーザーは好きなアイコンをタップして、その個所に関するマニュアルビデオを見たり、説明を読んだりすることができます。
そのほかのAR活用事例はこちら
ARの最新事情を知るには?
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