Home » イチオシはどれ? MRヘッドセットをかけ比べて比較してみた


業界動向 2018.01.08

イチオシはどれ? MRヘッドセットをかけ比べて比較してみた

2017年秋から年末にかけて、マイクロソフト社の提供する「Windows Mixed Reality(MR)」対応のヘッドマウントディスプレイ(MRヘッドセット)が多数発売されました。日本エイサーおよび日本HPからは10月17日、富士通からは11月30日、Dellからは12月9日、Lenovoからは12月20日に発売されており、国内では5つのMRヘッドセットから選ぶことができます。

本記事では、Mogura VR編集部で編集長のすんくぼとライターの水原の2人でMRヘッドセットをあれこれ比較、デバイスの付け心地やケーブルの位置までチェックした「MRヘッドセット比較座談会」をお送りします。


Mogura VR編集部にあるMRヘッドセットをずらりと並べてみたところ。色・形状ともにそれぞれ個性があることがわかる

ディスプレイなどのスペックは横並び

水原:
はじめに各社メーカーの仕様を見てみると、ディスプレイと解像度、センサーはほぼ同一のことが書かれていますね。視野角はメーカーごとにまちまちですが、米国のマイクロソフトストアでは、LenovoやDell、Acer、HPのヘッドセットは全て「最大105°の水平視野(”Up to 105 degrees horizontal field of view”)」と記載されています。会社ごとに測り方や定義が違うのかもしれません。

【日本で販売されているMRヘッドセット5種のディスプレイスペック一覧】

メーカー

富士通

Lenovo

Dell

Acer

HP

ディスプレイサイズ

対角2.89インチ液晶×2枚

対角2.89インチ液晶×2枚

対角2.89インチ液晶×2枚

対角2.89インチ液晶×2枚

対角2.89インチ液晶×2枚

解像度

2880×1440
(片目1440×1440)

2880×1440
(片目1440×1440)

2880×1440
(片目1440×1440)

2880×1440
(片目1440×1440)

2880×1440
(片目1440×1440)

視野角
(各メーカーサイトより引用)

90度または100度以上

110度

110度

95度

水平100度(最大)

すんくぼ:
ディスプレイまわりのカタログスペックはどれも同じだね。実際にかぶってみても、解像度や発色もあまり変わらなかった。視野角はHTC ViveやOculus Riftより狭い感じ。レンズもパッと見た限りでは大きい違いはわからないという印象。
水原:
同じと言えば、国内で販売されているものは付属してくるコントローラーも同じですね。プリントされているロゴが違うくらいです。


Windows Mixed Realtyコントローラーの画像。スティック部分にはメーカーごとのロゴが入る

唯一の国内MRヘッドセットメーカー、富士通

すんくぼ:
それでは、各社のMRヘッドセットを1つずつ見ていこうか。性能があまり変わらないことから、装着感の比較が主になるよね。富士通のMRヘッドセットはかなり軽かった
水原:
公称値もケーブル含まず415gと、Oculus RiftやHTC Vive(約470g前後)よりも軽いですね。装着感も重量が寄っている感じはあまりなく、軽めでした。

すんくぼ:
富士通の固定用バンドは他のMRヘッドセットと異なっていて、Acerの開発者版と同じでベルト型なんだよね。正直、付け外しの時の手間が大きくて、他のものと同じくダイヤル式の方がよかったかな。
水原:
ベルト型ゆえなのか、後頭部に当たるクッション部分もちょっと薄めですよね。実際つけたらそこまで気になりませんでしたが。フリップアップ(ヘッドセットのディスプレイ部分を上に跳ね上げる機構)はやりやすかったです。


富士通のMRヘッドセットのみ、ベルトで固定するタイプになっている。Acerの開発者版も同様の固定方式をとっていたが、製品版で固定用のリングを引き出すタイプに変更されている。

すんくぼ:
総じて軽くまとまっている、というところだね。唯一の日本国内メーカー製MRヘッドセットであるという点をどれだけ重く見るかで変わってきそう。

最後発&最軽量のLenovo

水原:
LenovoのMRヘッドセット「Lenovo Explororer」は12月20日に発売されたばかりですね。ここにある5種の中では最後発です。これは……すごく軽かったです。

すんくぼ:
そうだね、一番軽かったと思う。
水原:
カタログスペック上もケーブル抜きで380gと、この5つの中で唯一400gを切っていますね。ただ、フリップアップがやりにくいんですよね……。ケーブルが詰まってしまうというか。


Lenovo Explorerのフリップアップ機構を利用し、ディスプレイ部分を跳ね上げたところ。今回試してみたところ、2本のケーブルを通すための帯が少し狭く、フリップアップの際にケーブルが詰まってしまいがちに感じられた。

すんくぼ:
Lenovo Explorerは軽くて、あとサイズも小さめかな。他のものと比べてさらにコンパクトにまとまっていると思う。それから見た目がロボコップっぽい(笑)
水原:
確かに(笑)。
すんくぼ:
それから細かいところなんだけれど、固定用リングの調整ダイヤルが回しやすく感じたね。リング自体に埋め込まれていないからつかみやすい。
水原:
ただリング部分が出っ張っていると、寝転がって仰向けになった時に気になりそうですね。

白基調のデザインが特徴的なDell

水原:
MRヘッドセットの中だと、Dellはかなり重量級ですね。他のMRヘッドセットはおおむね400g台ですが、こちらはケーブルを除外しても590gあります。PSVRと同じくらい。


Dell Visorを装着している様子。Mogura VRのスタッフに装着してもらった。

すんくぼ:
Dellのヘッドセットは大きめな印象があるね。固定用リングを広げたときの横幅がかなり大きい。重心のバランスは上手くとられているから、そこまで重さを強く感じなかった。
水原:
私の場合は横にてのひらが楽に入るくらいのスペースがあって、ちょっとズレやすい感じがします。すんくぼさんの場合は収まりが良かったんでしたっけ?


他のMRヘッドセットと比べると、Dell Visorのリング部分は円形に近いため、個人の頭のサイズによってはこのようにかなり隙間ができてしまうことも。

すんくぼ:
それはクッションの寄与している部分が大きいかもしれないね。Dellのヘッドセットはクッション部分がかなり厚くて柔らかい。
水原:
頭のサイズや直径によって評価は変わりそうですね。人によって合うサイズが違うので、そのあたりで選ぶのも良さそうですね。手に取った時の肌触りもサラサラで、これは他のヘッドセットにはないですね。
すんくぼ:
それとかな。白系のヘッドセットっていうのは珍しい。VR系のヘッドセットは黒ベースのものが多いけど、デザインは結構考えられてると思う。他のMRヘッドセットで締め付けがきついと感じる人には良さそうだね。

Acerは最軽量ならず、青が印象的

すんくぼ:
MRヘッドセットの中でも、Acerは開発者版が最初に出たからか、目に触れる機会が多かったよね。OculusやHTC Viveよりも軽いという評判が多数。
水原:
開発者版は350gと非常に軽いことから話題になりましたね。製品版は固定用のヘッドバンドをベルト式からダイヤル式に変えたせいか、440gと平均的な重さになりました。製品版では変えたことで、「一番軽いMRヘッドセット」とは言えなくなってしまいましたが……。

すんくぼ:
とするとデザインや色で決まりそうだね。あとは……裏から見た時、エアフロー用の穴が一番大きく設定されている。
水原:
あ、本当ですね! 他のデバイスもエアフロー用の穴を作っていますが、長時間使用を考えるとこちらの方がいいのかもしれません。
すんくぼ:
フリップアップは少しかために感じられたかな。

ケーブルの取り外しが可能なHP

水原:
最後はHPですね。
すんくぼ:
HPはなんといってもケーブルが外せるのが大きいかな。取り回しが良いのは嬉しいね。


HPのMRヘッドセットのケーブルを取り外したところ。DisplayPort端子になっており、簡単に取り外すことができる

水原:
単体で収納する時や片付ける時には便利そうですね。それと、装着感で言うと私はHPのものが一番フィットするように感じました。
すんくぼ:
確かに装着感が良かったね。Dellのものと同じでスポンジが分厚いのが影響しているのかも。
水原:
ここまで5つのMRヘッドセットを見てきましたが、ディスプレイ規格は同じでも装着感やデザイン、取り回しの部分でそれぞれ個性がありますね。人によって「これはピッタリ合う」「これはズレやすい」とかありそうですし……。
すんくぼ:
家電量販店なんかでも取り扱いが始まってるし、そういった場所で試してから購入するのが良いかもしれないね。

価格を比較してみる

水原:
装着感も大事ですが、やはり気になるのはお値段です。各社バラツキがありますね。

【日本で販売されているMRヘッドセット5種の価格一覧】

メーカー

富士通

Lenovo

Dell

Acer

HP

価格
(税込)

57,013円

53,460円

48,595円

52,596円

64,584円

それぞれ、富士通、Dell、AcerはAmazon、Lenovoは公式ストアのクーポン適用前、HPは公式ストアであるHP Directplusのキャンペーン適用前価格を参考とした。価格は記事執筆時点のもの

すんくぼ:
価格を見てみると、Dellが最も安く、HPがひとつ抜けてて64,000円台。
水原:
価格は上から下までで行くと1万円前後の違いがありますね。他にも各社がキャンペーンやクーポンなどで割引を行っているので、実際はもう少し安く手に入るヘッドセットもいくつかありそうです。

Mogura VR編集部が選ぶMRヘッドセットは?

すんくぼ:
僕はLenovoかな。重量が400gを切っていて一番軽い。装着感も悪くなかった。
水原:
私は「頭への収まりの良さ(フィット感)」という意味ではHPのものが一番でした。ただ、価格や重量といったポイントを加味すると、同じくLenovoに軍配が上がるかな……と思っています。

すんくぼ:
Mogura VRのライターや編集部のメンバーにもそれぞれ試してもらったんだけど、付け心地はDellのものが一番良いという人もいたし、この辺りはその人の頭のサイズや形にも依存すると思う。
水原:
最初はいずれもスペックは横並びだという印象が強かったんですが、実際に装着したり細かく見てみるとどれも個性がありますね。
すんくぼ:
あとは国内販売されていないサムスンのMRヘッドセット「Samsung Odyssey」次第だね。解像度も違うし、ディスプレイも有機ELでヘッドホンも内蔵されてる。

水原:
サムスンのものだけ特殊というか、プレミアムとでも言うべき仕様ですね。

メーカー

Samsung Odyssey

それ以外のMRヘッドセット

ディスプレイサイズ

対角3.5インチAMOLED×2枚

対角2.89インチ液晶×2枚

解像度

3200×1440
(片目1600×1440)

2880×1440
(片目1440×1440)

すんくぼ:
見え方もキレイだし、価格にもよるけど日本で販売されたらイチオシになってくるかな、と思っている。IPDの調節機構もあったり、Dell以上に重いはずがそこまで重さを感じない重心設計など見え方以外にも他よりも優れている点があるよね。
水原:
ハイエンドなPCでWindows Mixed Realtyを楽しみたい人、高品質な体験がしたい人にとっては非常に良いものになりそうですね。
すんくぼ:
MRヘッドセットも一通り出揃って、2018年はどのように展開していくか楽しみだね。

MRヘッドセット座談会いかがでしたか。購入を迷われている方の一助となれば幸いです。

なお、Mogura VRでは今後も座談会企画を行っていく予定です(今回、機材は全て自腹購入しています)。座談会で取り上げて比べてほしい機材などありましたらぜひリクエストも受け付けています。Twitterや問い合わせフォームなどへお気軽にお待ちしています。


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード