3月7日、超高解像度VR/ARヘッドセットを開発するVarjo(ヴァルヨ)は、医療機器メーカーのmachineMDとの業務提携を発表しました。machineMDは脳障害診断装置と、VarjoのVRヘッドセット「Varjo Aero」を組み合わせることで、「人の手に頼らない標準化された神経眼科検査」を実現する見通しです。
(出典:machineMDのYouTube動画より)
高精度アイトラッキングを診断に活用
今回の提携は、machineMDが開発中の脳障害診断装置「Neos」に、Varjoのアイトラッキング技術を活用することを目的としています。
machineMDが取り組む神経眼科は、視覚に影響を与える脳障害に関する臨床分野です。視覚は脳の広い領域に関与しているため、目と瞳孔の動きを調べることで脳障害を検出できます。同社によると、多発性硬化症患者の約25%と脳腫瘍患者の50%が神経眼症状に基づいて診断されている、とのことです。
現在、神経眼科に関する検査の大半が手作業で行われています。時間を要する上に、神経眼科医は数年の専門的なトレーニングを受けなければなりません。一方で、神経眼科の診断はその難しさから誤診断や発見の遅れなどが問題となっており、machineMDは新しい医療機器の開発が診断改善に貢献できる余地があると見込んでいます。
Varjoは独自の高精度アイトラッキング技術を有しています。VRヘッドセット「Varjo Aero」は内蔵の2台の高速カメラと赤外線照明を活用して、ユーザーの目の画像を200ヘルツで撮影可能。瞳孔位置、瞳孔拡張、瞳孔間距離(IPD)、焦点や固視、視線移動パターンなどの情報も測定できます。
Varjoの共同創業者兼最高技術責任者のSeppo Aaltone氏は、「VRベースのアイトラッキング技術と神経眼科の組み合わせは、研究者やより大きな医療コミュニティに重要な新しい道を開くことになります」とコメントしています。
両社は「研究開発はすでに順調に進んでおり、スイス・ベルン大学病院や他の複数のクリニックで研究調査が現在進行中である」としています。
欧州のスタートアップ2社
Varjoはフィンランドの首都ヘルシンキに拠点を構えるスタートアップ企業。産業向けに「人の眼レベルのVR」と呼ばれる超高解像度のVR/ARヘッドセットを開発しています。2021年にはVRヘッドセット「Varjo Aero」を発表。現在はXR向けクラウドストリーミングプラットフォーム「Varjo Reality Cloud」の開発に取り組んでいます。
一方、machineMDは2019年創業のスイスに拠点を置く企業です。VR/AR技術を活用した医療機器を開発しています。2022年9月には、320万スイスフラン(約4.6億円、2023年3月9日時点)のシード資金を調達。2023年末までに脳障害診断装置「Neos」を発売予です。
(参考)Auganix