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VRChat 2023.01.22

新たなVRカルチャーは“サンリオ”から生まれる  クリエイター制作のパーティクルライブの衝撃

1月21日(土)から始まった「SANRIO Virtual Festival 2023」のアーティストライブ。各エリアで多くのクリエイターたちがパフォーマンスを披露し、大きな盛り上がりを見せている。その中で、来場者の間で特に話題となっているエリアがある。無料開放エリアの「B4 CHILL PARK」だ。

通常時はフレンドとライブの合間に集って雑談をしたり、グッズと一緒に写真を撮ったりと思い思いに過ごせる空間となっている。このエリアでも(有料エリアとは別に)8組のアーティストが出演し、誰でも気軽に観覧できるのがポイントだ。

本来であれば、他エリアと比べればユルい空気の場所のはずなのだが、今年は様子がまるで違った。多くのユーザーが一斉に集まりすぎるあまり、ひとつのインスタンスが満員になってしまう異例の状態が続いたのである。

その大きな要因となっていたのが「パーティクルライブ」だ。バーチャル空間全体に大きな仕掛けを施した上で上演されるライブのことで、光る粒子や巨大なモノなどを突然表示させたり、VRユーザーの視界をジャックして映像を見せたりといったことができる。何よりの特徴は演出のインパクトの強さ。こればかりは2D映像で観賞しただけでは伝わりにくいもので、VRヘッドセットを装着した状態で体験すると、目の前で次々と起こる非現実的な展開に圧倒される。

そんなパーティクルライブを用意していたクリエイターが初日に6名も登場。一部のVRユーザーは、このパーティクルライブに対して、開催前からかなりの期待を持っていた。「どうやら、今年のチルパークはすごい」といった話が口コミとなって、多くの人が集まっていたようだ(実際、初日の現場ではそういったことを話し合う参加者の会話が漏れ聞こえてきていた)。

今回のパーティクルライブへの期待度の高まりには、もうひとつの要因がある。2021年に行われた前回のサンリオライブに出演した、VTuberキヌさんの影響だ。彼がサンリオで初めて行ったパーティクルライブは、その場にいる全員に衝撃を与えたといっても過言ではない。巨大な文字の渦が高速回転し、エリア全体を白と黒の文字に囲まれた空間へと変容させた際、来場者は度肝を抜かれた。その前評判もあって、今年はより多くの注目を集めたと言えるだろう。

さて、ここまで書いたところで、正直VRヘッドセットを持っている人は1月22日(日)、つまり本日の「SANRIO Virtual Festival 2023」に参加することをおすすめする(チルパークはチケット不要、無料で体験できる)。プログラム自体は1日目と同じものなので、見逃してしまった人も、まだ間に合う。

ひとまず「何も知らない状態で楽しみたい」人は、次の章段の文章は読まずに、VRヘッドセットの準備をしてほしい(本日17時から)。これ以降の文章は、現場で何が起きているのかをもう少しイメージしたい方向けの蛇足的な説明となることをご容赦いただきたい。

公式サイトはこちら。
https://v-fes.sanrio.co.jp/

体験することに意味があるライブ

上記は、アーティストTORIENAさんのパーティクルライブだ。自身のアバターを巨大化させて、派手なエフェクトで周りを驚かせたかと思えば、後半からはモノクロの世界となり、内向的な精神を文章で表現するような演出に。緩急の付け方が巧みで、特に後半は流れる歌にじっくりと聴き入る内容となっていたのが印象的だ。TORIENAさんは前回のキヌさんのライブに衝撃を受けたとSNSで語っており、今回の演出にもキヌさんのリスペクトが感じられた。それでいて、自身のやりたい表現へと昇華されているのも見逃せない。

正直、今回最も驚かされたのは「team:beyond_a_bit with EstyOctober」によるパーティクルライブかもしれない。ひとつの宝箱を起点に、来場者は突如としてチルパークから広大な宇宙に放り出される。それは無重力空間の旅。無数の星々の合間を前にして、こちらはただ口を開けて見上げることしかできない。巨大な光の生物たちの姿には崇高さすら感じられた。ただただ美しいものが見える、それだけが確実に言えることだ。

バーチャルユニットmemexは、音楽演奏と組み合わせたパーティクルライブを展開。歌詞の内容と演出を見事に演出しており、水に潜り込むような感覚を来場者に与えたりと、来場者側に「memexの音楽世界を体感してもらう」ことが強く意識されていた。そのため、突拍子のない驚きが一方的に送られることがなく、ひとつの完成されたショー全体を楽しめる。あたかも、こちらのテンションと変わりゆく景色が同期して連動しているかのようだった。

今回、最もかわいさを発揮していたのは“約束”さんのパーティクルライブだろう。サンリオの音楽プロジェクト「SHOW BY ROCK!!」のキャラクターたちとコラボした内容となっており、「Mashumairesh!!」のデビルミント鬼龍デルミンが登場し「惑星のダンスフロア」を歌うという、ファンであれば一度は夢見たであろう光景をバーチャルで実現してしまっていて、著者は感極まった。空間全体がキュートになっていく様子も必見。また、約束さんのあまりにも丁寧な事前注意や自己紹介も、それ自体がショーになっているのもポイント。最初から最後までこちらを楽しませようという強固な意志があると思えた。

戊屡神ゆゆさんは、サンリオの人気キャラクター「クロミ」の代表曲「Greedy Greedy」を、パーティクルライブで披露。巨大化したクロミがこちらに語りかけてくれるようなパフォーマンスは何より迫力があり、クロミの「気持ちの強い女の子」な部分を強調しているかのように思えた。今回の中で最もサンリオらしさを感じさせるパーティクルライブで、「SANRIO Virtual Festival 2023」でこのライブをやる意義をしっかり感じさせたように思う。小さくて可愛らしいサンリオキャラクターがパーティクルの演出次第で、こんなにもインパクトを残す存在になることに驚かされた。

そして、キヌさんのパーティクルライブ。この原稿を書いている間もこの衝撃についてどのように書くべきか悩んでいる。前半までは2021年版からブラッシュアップされた演出のクオリティの高さに目を奪われていたが、後半はそういった細かなことに気をやっていたことが愚かしく思えてしまうほど圧倒的すぎた。

今回のライブは特にメッセージ性の強いものになっており、「バーチャルYouTuber」「メタバース」といった(良くも悪くも)流動的な言葉をどのように受け止め、自分の伝えたいことを伝えていくのかといった部分に焦点があたっていたように思うが、どうだろう? このライブで何を感じたのかを誰かに聞きたくなってしまう。終わった後、会場にいた全員が沈黙し、しばらく経ってから「はぁ……」と息を漏らしていた様子は忘れられない。まだ、正しく言葉にはできないが、自分も含めてあの会場にいた人たちは、キヌさんから重要なものを受け取っている。

もう良いはずだ。繰り返しになるが「SANRIO Virtual Festival 2023」は、1月22日(日)、つまり本日が最終日だ。今回多くの画像を貼り付けて紹介したが、これらはパーティクルライブの一端でしかない。ここまで「その場で体験すること」が重要となるライブもそうは無いはずだ。できればVRで行って欲しい。体験してみて欲しい。話はそれからだ。

公式サイトはこちら。
https://v-fes.sanrio.co.jp/

写真提供(一部):浅田カズラ


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