フランスのスタートアップPixium Vision社は、ARデバイスを使って目の疾患を治療するシステムを開発しました。
加齢黄斑変性は人の視力を奪う疾患の一つです。網膜にある黄斑部が変性を起こし、失明に至ることもあります。Pixium VisionはARグラスと「Primaシステム」と呼ばれるインプラントを組み合わせた治療法を開発しました。臨床試験の結果、被験者の過半数で文字を認識するまでに視力が回復したということです。
網膜下にチップを埋め込み
Primaシステムには、ARグラスと小型でワイヤレスの光電池式網膜下インプラントを使用します。378の電極を持つチップを網膜下に埋め込み、光を電気に変換して動作します。
Pixium Vision社CEOのLloyd Diamond氏は「チップを視細胞の位置に直接埋め込むことで、電気信号が網膜神経節細胞に到達する前に、網膜下刺激は(網膜)双極細胞に向かいます。我々は、より正確な生理学的信号の処理を目指しています」と同社の技術について述べています。
そしてこのシステムで重要な役割を果たすもう1つのものが、ARグラスです。
カメラとプロジェクターの役割
Pixiumのチームによれば、ARグラスの役目は以下のように説明されます。「2ミリメートル四方、厚さ30ミクロンの光電池式チップには、378の電極が組み込まれています。網膜下に埋め込まれたチップは、ちょうどパルス状の近赤外光を動力源とする小さなソーラーパネルのように機能します。この近赤外光は、ミニカメラで捕えた映像を投影するミニチュアのプロジェクターから投影されています。ミニカメラとプロジェクターを合わせた技術が、ARグラスで実現しているのです」
さらにチップの光電池が視覚情報を電気的刺激に変換、「網膜内層の双極神経細胞を刺激」して脳に見たものを認識させるということです。
過半数で視力向上、副作用なし
5名の加齢性黄斑変性症患者を対象にした臨床試験の結果では、実際にその効果が証明されました。システムを用いた12ヶ月間のリハビリの末、視力0.05以下の被験者の過半数が、文字や文字列を識別できるようになったのです。また、そのスピードは次第に向上したといいます。さらに、デバイスの使用に伴う副作用も認められませんでした。
欧米でのリリース目指す
同社はPrimaシステムのアップグレードに関するテストを欧州と北米で並行して実施中です。治療法としての申請に向けた試験を、2020年上半期に開始するとしています。
中期的な目標として、欧州及び北米市場でのリリースを目指しています。