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開発 2024.04.18

XRの標準規格「OpenXR」がバージョン1.1にアップデート。コア機能の拡充・強化でより開発しやすく

4月15日、標準規格策定を行う非営利団体クロノス・グループは、XRハードウェア・ソフトウェアの標準規格「OpenXR」のバージョン1.1を公開しました。複数の拡張機能のコア機能への昇格、コア機能の改良や改善などが含まれています。

独自規格乱立を防ぐために策定、公開から今年で5年目に

「OpenXR」は、XRハードウェアや各種ソフトウェア向けの共通規格です。VRヘッドセットやプラットフォーム、そして独自規格が乱立していた2017年にアナウンスされ、2019年に正式公開。2024年現在では、Meta等を含む各種企業が採用しています。また、OpenXRを策定しているクロノス・グループは、「OpenGL」や「Vulkan」「WebGL」「gITDF」など、世界的に使用されている標準規格の策定を行っています。


(左がOpenXR以前、右がOpenXR以後のイメージ。当初はXR系のアプリケーションが複数のエンジンや各社の独自APIを通して作られていたため、開発・移植が非常に大変だった。OpenXRを仕様することで、異なるハードウェアやソフトウェアプラットフォームへの移植を容易にする)

OpenXRの策定の支援には、既に150以上の団体・組織が参画しています。MetaやPICO、ソニー、HTC、Valve、VarjoといったVRヘッドセットメーカーに加え、グラス型デバイスメーカーのXREALやRokid、MRヘッドセットを開発するマイクロソフトやMagic Leap、キヤノン、また半導体メーカーのArmやIntel、AMD、NVIDIA、クアルコム、そしてエレクトロニクス全般を取り扱うサムスンやLG、ゲームエンジンのUnityやEpic Games、さらにはGoogleやMozillaなど、テック業界企業が——Appleのような独自規格路線の企業を除いて——揃い踏みです。


(OpenXRがサポートしている代表的なプラットフォームの一例。ソニーの空間再現ディスプレイ「ELF-SR」シリーズや、Acerの立体視ディスプレイシステム「Spatial Labs」、クアルコムのXRプラットフォーム「Snapdragon Spaces」なども並ぶ)

拡張機能の昇格やコア機能強化等を実施

OpenXRのバージョン1.1では、複数の新機能や既存機能強化が発表されています。具体的には、以下のような内容が紹介されています。

拡張機能のコア仕様への統合

拡張機能「XR_EXT_local_floor」「XR_VARJO_quad_views」「XR_EXT_palm_pose」「XR_EXT_uuid」「XR_KHR_locate_spaces」が、それぞれ「ローカルフロア(Local Floor)」「フォービエイテッド・レンダリングを用いたステレオレンダリング(Stereo with Foveated Rendering)」「グリップサーフェス(Grip Surface)」「XrUuid」「xrLocateSpaces」としてコア機能に統合されました。

これらの機能は複数の開発者やベンダーが独自に開発・提供してきたものであり、コア機能へと統合することで、コードの柔軟性や開発上の利便性を高めます。


(「XR_EXT_local_floor」として提供されてきたOpenXRの拡張機能のイメージ。ユーザーによる設定に基づき、床の高さを固定する「STAGE」と、アプリケーションごとに独立しており、床の高さを考慮しない動的な「LOCAL」の2つの空間設定が存在する。このままではSTAGEとLOCALの詳細な位置合わせが必要だが、「XR_EXT_local_floor」を用いることで、ボタン1つで位置合わせや高さ調整を可能にしていた。今後は「ローカルフロア(Local Floor)」としてOpenXRのコア機能に統合される)

インタラクションプロファイルの改善

OpenXRのバージョン1.1では、その多くがベンター個別の拡張機能から発展した13種類のインタラクション・プロファイルの追加、標準識別子として「thumb_resting_surfaces」「stylus」「trigger_curl」「trigger_slide」の追加、標準コンポーネントとして「proximity」の追加、出力パスとして「haptic_trigger」と「haptic_thumb」の追加が行われています。これにより、ユーザーの指の状態やセンサーとの距離、振動の設定等が容易になります。

コア機能の改良

また、コア機能である「XrDuration」における負の持続時間の明確化、「イベント・ポーリング(Event Polling)」に関するランタイムやアプリ動作の明確化、「Two-Call Idiom」のバッファサイズの明確化、そして新しい構造体としてXrColor3f、XrExtent3Df、XrSpheref、XrBoxf、XrFrustmが追加されています。これらのアップデートにより、開発者はアプリケーションのパフォーマンス向上を実現できます。

(参考)クロノス・グループ


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