2019年5月、VRヘッドセット「Oculus Quest(オキュラス クエスト)」と「Oculus Rift S(オキュラス リフト エス)」がフェイスブック(Oculus)から発売されました。また、フェイスブックは2018年5月にも一体型VRヘッドセット「Oculus Go(オキュラス ゴー)」を発売しており、およそ1年の間に同じブランドから3機種が発売されたことになります。
本記事では「Oculus Quest」「Oculus Rift S」「Oculus Go」の3機種について紹介。それぞれのデバイスでどのようなVR体験ができるのか、各種デバイスの価格や解像度・スペックなどを比較します。
目次
1.「Oculus Quest」「Oculus Rift S」「Oculus Go」できることの違い
2. Quest、Rift S、Goの価格を比較
3. スペック比較:解像度やコントローラーが異なる
4. 遊べるVRゲームや体験できるVRアプリの違い
5. QuestとRiftSとGo、目的別のオススメはこれだ!
「Oculus Quest」「Oculus Rift S」「Oculus Go」できることの違い
「Oculus Quest」と「Oculus Rift S」、そして「Oculus Go」は、それぞれのデバイスでできるVR体験が明確に異なります。この3つのVRヘッドセットの違いは多数ありますが、大きく分けると「ハイスペックなパソコン(PC)が必要 / PCが不要」「VRを自由に歩いたり移動したりできる / できない」の2つです。
これらの要素を表にすると、以下のようになります。
PCが必要かどうか |
VR内を自由に移動できるか |
|
Quest |
PCが不要 |
移動できる |
Rift S |
PCが必要 |
移動できる |
Go |
PCが不要 |
移動できない |
次の項目では、この「PCが必要かどうか」「VR内を自由に移動できるかどうか」について、詳細を見ていきましょう。
(※以下、「Oculus Quest」は「Quest」、「Oculus Rift S」は「Rift S」、「Oculus Go」は「Go」と表記)
PCが必要かどうか:QuestとGoは不要、Rift Sは必要
QuestとGoは「一体型VRヘッドセット」と呼ばれるタイプで、VRヘッドセット単体で動作します。したがって、PCやスマホとの接続は不要です(※買った直後のセットアップにはスマホを使います)。
(画像左:Oculus Quest、画像右:Oculus Go。どちらもPCとは接続しないタイプなので、ケーブルはついていない)
一方、Rift SはPCとの接続が必要です。VRゲームや動画、その他アプリ等をPCで動かし、VRヘッドセットで描画する、という仕組みです。
(Oculus Rift S。こちらはPCと接続するためのケーブルが取りつけられている)
一体型はこれらの処理をヘッドセット単体で行うため、QuestとGoはPCが不要、手軽にVR体験ができます。しかしPCと比較した場合、どうしても処理性能が劣ってしまいます。
したがって、ハイクオリティな映像をVRで見たい、高画質のVRゲームをプレイしたい場合はPC接続型のRift Sに軍配が上がります。ただし一定以上のスペックのPCが必要になるため、費用面ではRift Sの方が高くかかります。購入の際は、予算や自分のやりたいVR体験と相談して決めるのがよいでしょう。
VR内を自由に移動できるか:QuestとRift Sは移動できる、Goは移動できない
続けて「VRの中で自由に移動できるか」については、QuestとRift Sは自由に移動できますが、Goは移動ができません。Goでは周りを見回すようにして360度動画の視聴や、座ったまま/寝ころんだままのVR体験ができ、QuestとRift Sでは体や手を大きく動かすようなVR体験ができます。
これにはVRヘッドセット(のトラッキング方式)が関係しています。VRヘッドセットのトラッキングには大きく分けて「3DoF」と「6DoF」の2種類があります。「3DoF」は頭の前後左右への傾きと首の振りをVRでも反映し、「6DoF」は、3DoFの動きに加えて、体の上下左右の動きをVRに反映します。
(画像左:3DoFのイメージ図。VRヘッドセットをつけた頭の回転だけを反映する。 画像右:6DoFのイメージ図。3DoFの回転に加え、上下左右前後に自由に動くことができる)
Quest、Rift S、Goのトラッキングは「QuestとRift Sは6DoF」「Goは3DoF」です。トラッキングの違いは「VRで何ができるかの違い」とも言えるので、自分の周囲を見渡せるだけの3DoFよりも、実際の体の動きが反映される6DoFの方が、より質の高いVR体験を可能にします。
またQuestとRift Sは同じ6DoFですが、トラッキングシステムの性質上、Rift Sの方がトラッキング範囲は広くなっており、より快適なVR体験を実現しています。
メガネやIPD調整は? 見落としがちな重要ポイント
Quest、Rift S、GoはいずれもメガネをつけたままVR体験が可能です。MoguLive編集部で試したところ、一般的なフレームのメガネであれば問題なくそのままVRを楽しめます。
また、重要なポイントとしてIPD(瞳孔間距離)の調整機能も挙げられます。IPDは「両目の瞳孔がどれくらい離れているか」を示す数字であり、これがズレていると疲れやVR酔いなどの原因になることがあります。
(Oculus Questをひっくり返したところ。左にあるツマミでレンズの間の距離をある程度調整できる)
Questにはスライド式のIPD調整機能が搭載されており、物理的にこれを動かすことでレンズの間の距離を調整、自分に合った状態での体験ができます。Rift Sは物理的な調整機能を備えていませんが、ソフトウェア側で補整をかける仕組みになっています。
一方でGoにはIPD調整は搭載されていません。したがって、快適なVR体験を求めるならQuestかRift Sを推奨します。
Quest、Rift S、Goの価格を比較
QuestとRift SとGoの価格は、Rift SとQuestが49,800円(Questは64GBモデル)、Goは23,800円(32GBモデル)です。価格ではRift SやQuestはGoの32GBモデルと倍近い差がありますが、上で記載した通り、体験できる内容が大きく異なるため注意しましょう。
機種 |
価格(送料および税込) |
Rift S |
49,800円 |
Quest |
64GB:49,800円 |
Go |
32GB:23,800円 |
価格に関する注意点として、Rift Sで体験する場合はVR対応のPCが必要です。VR対応のPCを持っていない場合、最低動作要件を満たす約90,000~100,000円前後のPCが必要となります(コンテンツによっては最低動作要件で快適に体験できないものもあります)。
スペック比較:解像度やコントローラーが異なる
Quest、Rift S、Goのディスプレイ解像度やリフレッシュレート、CPUスペックは以下の通りです。
機種 |
ディスプレイ解像度 |
リフレッシュレート |
CPU/GPU |
Quest |
1,440×1,600×2枚(2,880×1,600) |
72Hz |
Snapdragon 835 |
Rift S |
1,280×1,440×2枚(2,560×1,440) |
80Hz |
(接続PCのものを使用) |
Go |
2,560×1,440 |
72Hz |
Snapdragon 821 |
解像度の数字だけ見ればQuestが最も高くなっていますが、有機ELと液晶ディスプレイの違いや、グラフィックを描画するCPU/GPUのスペックの違い等により、最もVRゲームや映像をハイクオリティで表示できるのはOculus Rift Sとなります。
QuestとGoはモバイル向けのCPU/GPUを使用している一方、Rift SはPC向けのよりパワーのあるGPUを使用するため、グラフィック処理の性能にはかなりの差が出ます。また、QuestとGoではQuestの方がスペックの高いCPU/GPUを用いているため、Questの方が綺麗に映ります。
コントローラーの違い:QuestとRift Sは共用、Goは移動反映ができない
QuestとRift Sは、共通の「Oculus Touch」コントローラーを使用しています。手で棒を握るようなデザインとなっており、VR内でモノを掴む、引き金を引くといった動作を自然に行うことができます。
(Oculus Touchコントローラー。VR内での回転や移動を全て反映できるうえ、指の操作をある程度VRに反映することも可能だ)
一方、Goは手に持って使うリモコン型コントローラーを使用します。トリガーボタン、タッチパッド、戻るボタン、そしてホームボタンが搭載されています。こちらにはVR内で手を動かす機能はなく、レーザーポインターを動かすようにして操作します。
(Oculus Goのコントローラー。こちらは回転だけが反映されるので、VRで手は動かせない)
遊べるVRゲームや体験できるVRアプリの違い
Quest、Rift S、Goは機種ごとにコンテンツ配信プラットフォームが分かれています。したがって、Questでダウンロード・購入したVRアプリをそのままGoで遊ぶ、といったことはできません。
コンテンツの充実度で言えば、Rift Sは前モデルにあたる「Oculus Rift」向けにリリースされたVRゲームやアプリを遊ぶことができます。また、Goはスマートフォン向けのVRヘッドセット「Gear VR」のストアを引き継いでいるので、1,000以上のVRコンテンツが揃っています。
一方、Questは新たにQuest専用のプラットフォームが設立されています。ローンチタイトルは50前後となっており、Rift SやGoに比べて遊べるタイトルはまだ少ないものの、人気VRゲーム「Beat Saber」やソーシャルVRアプリ「VRChat」などのQuest版も配信されています。Questでは配信するコンテンツの質を厳しく審査しているため、数は少なくとも厳選されたVRコンテンツが販売・配信される予定です。
Rift SとQuestはクロスバイ・クロスプレイ対応
また、Rift SとQuestはクロスバイ(※1)・クロスプレイ(※2)に対応しています。一部のソフトでは、Rift SとQuestのストアで同じタイトルが販売されている場合は、片方のストアで購入すればもう片方でも同じゲームを購入することなく遊ぶことができます。
(※1 クロスバイ……複数のプラットフォームで同一のゲームが配信されている場合、1つのプラットフォームでゲームを購入すれば他のプラットフォームでも同じゲームを購入することなく遊べる方式)
(※2 クロスプレイ……複数プラットフォーム間でのマルチプレイのこと)
QuestとRiftSとGo、目的別のオススメはこれだ!
本記事では、Quest、Rift S、そしてGoでのVR体験やスペックの違いについてを紹介しました。現在Oculusのデバイスの購入を検討している方は、「どんなVRを体験したいか」「どれくらいの予算で購入したいか」を基準に選ぶのがおすすめです。
一例として、「360度動画や動画配信サービスで、ライトにVRを体験したい」場合は「Oculus Go」を、「VRゲームやソーシャルVRで遊びたい、ケーブルレス(無線)で自由に動けるVRを楽しみたい」場合は「Oculus Quest」、そして「ハイエンドPCで、リッチなVR体験をしたい」という場合は「Oculus Rift S」をオススメします。