7月10日、ソフトウェアエンジニアのMark Lucovsky氏がGoogleを退社しました。Lucovsky氏はGoogleのVR/ARに関するOS、およびソフトウェアプラットフォーム開発の責任者を務めていました。今年2月にはXR事業責任者のClay Bavor氏も退社しており、GoogleのXR事業は大きな転換期を迎えているものと思われます。
「Windows NT」に携わったベテランエンジニア
Lucovsky氏は、様々な基盤OSやプラットフォームの開発にエンジニアとして携わってきました。90年代には、マイクロソフトで「Windows XP」以降の基盤OSとなった「Windows NT」開発に貢献し、2017年にはMeta(旧Facebook)でARグラス用のOS開発に着手。しかし、2021年のFrances Haugen氏の内部告発をきっかけに、同社を退社しています。
その後Lucovsky氏はGoogleに籍を移し、VR/ARデバイスのOS、およびソフトウェアプラットフォーム開発の責任者として、エンジニアリング担当シニアディレクターを務めてきました。
GoogleのXR事業は転換期か?
Lucovsky氏は退社の理由として、「最近のARにおけるGoogleのリーダーシップの変化と、コミットメントとビジョンが不安定であること」を挙げています。
I have decided to step away from my role at Google, where I was Senior Director of Engineering, responsible for OS and Software Platform for AR and XR devices. The recent changes in AR leadership and Google’s unstable commitment and vision have weighed heavily on my decision.
— mark lucovsky (@marklucovsky) July 10, 2023
この“ARにおけるGoogleのリーダーシップの変化”は、2023年2月にGoogleのVR/AR事業責任者だったClay Bavor氏が退社したことを指していると、複数の海外メディアが指摘。同社はXR部門を含む1万人規模のレイオフも実施しており、Lucovsky氏はGoogleのVR/AR事業への姿勢に懸念を抱いていたと考えられています。
また、Business Inseiderは先日、「Googleは『Project Iris』と呼ばれるメガネ型ARデバイス開発プロジェクトを中止した模様だ」と報じました。この新デバイスのOS開発はLucovsky氏が主導していたとみられています。
今後はソフトウェア開発に注力?
一方、GoogleはVR/AR関連分野への取り組みを完全に中止したわけではありません。2023年2月にサムスンとクアルコムとの3社協業を発表し、新型XRデバイス開発を目指しています。サムスンはハードウェア開発の実績を有しており、クアルコムはモバイルデバイスやXRデバイスにおける半導体シェア大手です。この協業を受けて、Googleは今後Android向けのXRソフトウェア開発に注力するのではないかとの見方が強まっています。
協業の詳細は、2023年後半にGoogle I/Oで発表される予定です。
(参考)UploadVR
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