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話題 2020.11.29

勝間和代はなぜVRにハマっているのか? Mogura VRと考えるVR普及への条件

安価で高性能なデバイスも登場し、VRはだんだんと手軽なものになりつつあります。改めて考えてみたいのが、VRデバイスは私たちの生活をどのように変えていくのか、という点。今後ますますVRが普及していくためには、どういった条件が必要なのかも気になるポイントです。

今回は経済評論家・著述家の勝間和代さんをMogura VRのスタジオに招待しました。勝間さんは近年YouTubeチャンネルでVRヘッドセットの紹介を積極的に行っており、最新の著書「勝間式 超スローライフ」(KADOKAWA)でも、VRの実践的な活用法をまとめています。今回はMogura VR編集長・久保田瞬と、VRの今後について話し合いました。

一番のきっかけは「友人がやっていたから」

――勝間さんには対談前にOculus Quest 2を体験していただきました。

勝間:

楽しかったです。全体的に色感が自然になっていますね。初代Questのようなチープな感じが無くなり、よりPCVRに近づいたようです。トラッキングも精確ですし、始めてVRに触れる方には良いと思います。一方、ヘッドセット本体自体はファブリック部分の省略やスポンジの素材変更など、諸々の部分がコストダウンされていると分かります。装着してみると、若干前方に重量があるので、私としてはカウンターウェイトが欲しいですね。

――体験中に「Beat Saber」の最高難易度を軽々とクリアされているので驚きました。


(プレイの感想を語りながら、expertとexpert+の2つの難易度を難なくクリア)

勝間:

一応「Beat Saber」のキャンペーンモード(※)は2回ほどクリアしていますね。特に「手を動かすな」という課題が一番難しかったですね…

(※キャンペーンモード:様々な課題に挑戦できるモード。「ミスなし」「コンボ300以上」などの縛りがあり、後半は難易度が高い)

久保田:

本当にやり込んでいらっしゃる…。

勝間:

私は普段テレビを観たりお酒を飲んだりしない人間なので、その分VRをやり込む時間があったんだと思います。YouTubeに最高難易度にチャレンジした動画も投稿しています。


(Oculus Quest 2…2020年10月に発売されたVRヘッドセット。詳細はこちら

久保田:

勝間さん、最近だいぶVRを推してらっしゃいますよね。僕も10年ほど前の就活前後から思考法などの著書を読んでいたのですが、VRにハマってらっしゃるのを知って本当にびっくりしました。そこで、まず、お聞きしたいのは、勝間さんが最初にVRに触れたきっかけです。


(Oculus Go…3DoFトラッキングのVRヘッドセットで2020年6月に販売終了)

勝間:

Oculus Goが発売された頃(2018年5月)ですね。当時、私の周りのオタクな方々がやたらOculus Goを購入していたんです。そこで私も「Goを買わないと、いけないんじゃないか!」と思ってしまって(笑)。カタンのVRゲーム版を友だちとプレイしていたのを覚えています。最初期はあまり遊べるソフトも無かったので、瞑想やコミュニケーションツールとして利用していましたね。

久保田:

みんなでバーチャル空間に集まれるという利点は大きいですね。

勝間:

だから私は「友人がやっている」というのがVRにハマる一番のきっかけだと思います。友だちがいれば、使い方や遊び方などの情報共有がすぐに行えるので物事がスムーズに運ぶんですよね。今のところ、どうしても個人プレイのVRゲームが主流の状態ですが、もう少しコミュニケーションを気軽に行えるアプリが登場してくると良いと思っています。

久保田:

著書で、VRChatへの言及が多いことにも驚きました。普段から頻繁に利用されているのでしょうか?


(VRChat…バーチャル空間で世界中のユーザーと交流できる大型プラットフォーム)

勝間:

VRChatはVR酔いしてしまうので長時間滞在することは無いのですが、それでも友人たちと待ち合わせて交流しています。ちょっと面白い話があって、私の主催している「勝間塾」でもVRを利用している人たちがいるのですが、その中の40代の女性の方が、VRChatで男性と知り合って、現在同棲しているんですよ。

久保田:

おお……。そこまでいってる方が(笑)

勝間:

その女性はオタクではなかったので、私がいなければVRをはじめなかったのではと思います。「やけにVRChatにハマってるな…」と見ていたんですが、まさかこうなるとは(笑)。かつてはインターネットで知り合ったのをきっかけに結婚したケースは多くあったので、それがVRChatに移り変わったということなんでしょうね。

――確かに、アバターを介した婚活成功例は出てきていますね。

勝間:

最近、知人から聞いて面白いと思ったのは、現実で普段から「男らしさ」を強要されている男性が、VRChatで女性アバターになってすごく楽になったという話です。そういった「男性の鎧を脱ぎたい」という発想は興味深いですね。また友人のひとりは、バーチャルのホストクラブにハマっていました。

久保田:

それだけバーチャル空間で人と交流できるメリットはかなり大きいものになってきているということでしょうね。

勝間:

コロナウイルス拡大による「ステイホーム」の時期にも、VRChatで友人たちと交流していました。私は周りに勝間和代だとバレないように、周りには呼び名を変えてもらっています(笑)

VRヘッドセットの購入はゴルフクラブの選択と一緒

久保田:

勝間さんの場合、Oculus Goをきっかけに「Oculus Quest」や「
VIVE Cosmos Elite」など、実にさまざまなVRヘッドセットを購入されていますよね。


(初代Oculus Quest…2019年5月に発売された一体型VRヘッドセット、現在販売終了)

勝間:

私にとってVRヘッドセットの購入は「ゴルフクラブ一本を購入するより安い」という気分なんですよね。ゴルフの経験のある方なら分かると思いますが、ゴルフクラブってどれも高価なので、それぞれを比較して買い換えて、自分の好みのものを絞っていく必要があります。消耗品でもあるから、VRヘッドセットと共通しているところは結構あると思います。

勝間さんがこれまでプライベートで使用したVRヘッドセット
・Oculus Go
・Oculus Quest
・Oculus Rift S
・VIVE Cosmos Elite
・PlayStation VR
・Valve Index
・Pimax 8K Plus

久保田:

それでVRヘッドセットも一通り買って、自分に合うものを選択していると。

勝間:

人からはよく「頭は一つしかないんだぞ!」って言われますね(笑)

久保田:

(スタジオにずらりと並ぶヘッドセットを見ながら)私たちもそのツッコミは笑えないものがあります(笑)

勝間:

Oculus Questも発売後まもなく購入した記憶がありますね。当時はOculus Goと比べて衝撃的でした。それで、もっと軽量のOculus Rift S(※編集注:PC向けVRヘッドセット、2019年発売)にまで手を伸ばし、合わせてPCも新調することに。すると、PCのスペックが上がってRiftだけではイマイチになってくると。そこで「VIVE Cosmos Elite」を購入して…といった流れでしたね。


(VIVE Cosmos Elite…2020年3月に登場したVRヘッドセット、高精度なトラッキング性能が特徴)

――初代のOculus Questはどういったところが衝撃的でしたか?

勝間:

やはり臨場感ですね。私はもともとゲーマーなので、ゲーム空間の中にトリップするような感覚のものが好きなんですよ。それこそ私が会社を辞めて、まずやったのって、ジョイポリスの年間パスポートを買うことだったんです。だからOculus Questを買ったときは「これで家にいながらでもゲームセンターみたいに遊べるぞ!」って感じでした。

――勝間さんにとってはコミュニケーションとゲームの両面で期待していたということですね。

勝間:

そうですね。だから「より臨場感のあるデバイスはどれだろう?」と探して、色んなVRヘッドセットを入手した感じでしたね。だから「Pimax 8K Plus」にも期待していました。有線接続が必要で、画面端の歪みが個人的に気になったので、愛用はしていませんでしたが、4Kより8Kの方が見栄えはいいのは間違いないだろうと思っていました。


(Pimax 8K Plus…両目8K(片目4K)という圧倒的な高解像度が特徴)

久保田:

勝間さんにはPCにQuest 2を接続する「Oculus Link」も試していただきたいですね。今回、かなりその性能が向上していると感じたので。

勝間:

解像度がぐっと向上するのはたしかに魅力的ですね。今はValve Indexが買えたので、もっぱら愛用しています。

日本でVRヘッドセットが普及するためには?

久保田:

勝間さんはYouTube上でもVRヘッドセットの魅力を伝える動画を複数投稿されていますね。

勝間:

私にとってYouTubeはブログと一緒の感覚なんです。単純に「こういう楽しいものが登場したなら紹介してみよう」といった感じで継続しています。今はYouTubeの方が閲覧数も良いですし、手間暇もそんなにかけていないので、ブログよりも投稿頻度が多くなっています。

――YouTubeチャンネルを見ると「勝間さんのレビューをみて、VRヘッドセットを購入しました」といったコメントが多く寄せられています。

勝間:

とくに私はOculus Quest 2などに詳しくないセグメントと繋がっているので、そういう影響が大きいんだと思います。プライベートではゲーマーやIT好きな方々とよく親交しているんですけど。

久保田:

ところで……。一日にどれくらいVRに触れているのでしょうか。

勝間:

ステイホームが呼びかけられはじめた頃は1日に2時間から3時間くらい利用していましたね。今はそこまでではありませんが、1日に30分から1時間は必ず運動をしたいと思っているので「Pistol Whip」などをプレイしています。


(「Pistol Whip」…銃で敵を撃ちまくるリズムゲーム。アクション映画の主人公になった気分を体験できる)

――VRは身体の運動に効果があると実感されていますか?

勝間:

そうですね先ほどの例えと同じですが、ゴルフ場に通うのとVRフィットネスを利用するのとは、私にとってほとんど一緒のものです。「ちょっと身体を動かしたいな」という時に通える場所というイメージですね。

久保田:

「ゴルフ場に通う」くらいの気分で、VRヘッドセットを使う、という人はこれからも増えそうですね。

勝間:

特に、現在海外で展開中の「Super Natural」の場合、ゲームファンではなく、「フィットネスをやりたい方」にターゲットを絞った設計になっているので、非常に良いと思います。


(「Super Natural」…Within社が提供しているVRフィットネス専用アプリ。月額制でサービスを受けられる)

久保田:

「Beat Saber」のリリース以降、VRのリズムゲームは外に出ずとも身体を動かせる魅力が前面に押し出されています。ちなみに今後、Oculus Questでは、VRゲームで遊んだ時間や運動量などを計測して、データとして表示する機能が実装されるらしいです。

勝間:

おもしろいですね。スマートウォッチが爆発的にヒットしたのって、身体のデータを計測できたからでしたね。私も左右両方の腕に装着しています(笑)


(「Pistol Whip」で前方から押し寄せる敵を次々と銃で撃ち倒していく勝間さん)

勝間:

例えば「Pistol Whip」ってスクワットしたり銃弾を避けたりといった運動もできるし、何よりゲーム性が異常なほど面白い。「どうして皆これにハマらないんだろう?」って印象ですね。とにかく人気コンテンツが英語ばかりなのをどうにかしないと、日本での普及は難しいでしょうね…。

久保田:

Oculus Quest 2は、日本でもPRに力を入れるそうです。それに合わせて、英語のみだったコンテンツが日本語に対応しはじめるようになってきています。「面白そうなゲームはあるけど、まだ自分好みのものは少なさそうだし、もう少しラインナップが増えないかな」といった具合が現状なのかと。

勝間:

問題なのは一般ユーザーの方の時間の余裕の無さです(笑)。結局、英語を勉強したり、操作を学んだりするよりは、直感的に分かりやすいコンテンツばかり楽しんでしまう傾向はあると思います。「Beat Saber」の場合、英語が分からずとも遊べるくらいデザインがシンプルだから、ここまで人気なんでしょうね。コンテンツの量は十分ですが、ゲームのデザイン面でもプレイスタイルの面でも、日本人向けに設計されたものがあまりにも少ないのではないかと。

――たしかに既存のVRゲームでは、日本で人気のRPG作品のような雰囲気のものは少なく、いわゆる“洋ゲー”的な作品が多いように感じてしまいます。

勝間:

まだまだ日本のゲームスタジオで本腰を入れている企業が少ないというのが原因でしょうね。

久保田:

PSVRの発売当初には「バイオハザード7」など本格の作品が登場しましたが、その後思うように振るわず、大型タイトルが登場しなくなりました。

勝間:

日本で売れないから作らない、作らないからVR自体も注目されないという悪循環が生まれているのかもしれませんね。個人的には「Beat Saber」並みのキラーコンテンツが、あと2、3本あると良いんだと思います。

久保田:

まだまだファミコン以前なんですよね。実際ユーザー側で色々と調整をしないと、快適かつ面白くならないことも多いのではないかと思っています。

勝間:

工夫が気にならない人には苦にならないでしょうが、面倒くさい人にとっては手に取りづらいでしょうね。まだまだ「VRでやらないといけない」というものが、一般の方にないので。例えば、私は一時期「dtv」を契約してVRのブラウザでコンサートを視聴したり、ヨガのVR動画を流した状態でレッスンしたりといった使い方をしていましたが、そういった楽しみ方が世の中に浸透していけば、また変わってくるのかなと。

――お手軽なホームシアターを体験できるという点ではリーズナブルですよね。

勝間:

新幹線の移動中などにもVRヘッドセットをかぶって映画を見たり、カタンをプレイしたりしていましたけれど、問題なのは新幹線が移動するにしたがって、トラッキングが大きくずれてしまうという(笑)。ただ移動中の暇な時間こそVRがあれば楽しい時間を過ごせるなとは思います。本当は飛行機の内部に常設されていると理想的なのですが。

――それは本当に便利ですね。

勝間:

今はたまたまゲームが流行っているから、ゲームコンテンツが多いですが、3Dのディスプレイで映像が見られるという観点から言えば、もっと自由な活用法があると思います。

VRのブレイクスルーはいつ起こるのか?

――Oculus Quest 2が多くの量販店で比較的リーズナブルな値段で販売されました。勝間さんから見て、VRヘッドセットはそろそろ日本で流行する可能性はあるでしょうか?

勝間:

あると思いますよ。私のコンサルタントとしての経験上、この手のデバイスが発売されたときに重要となるのは、「(デバイスの)開発陣側が思いつかなかったような用途を誰かが発見する」ことです。それが世に広まったときに、大きなブレイクが起きて、一般層にも届いていくものになるので。今はちょうど端末がばらまかれた状態だから、これから誰かが面白い使い道を発見する可能性はあると思います。

――お話を聞いていると、VRの用途を見つけることが重要なポイントと言えそうですね。

勝間:

その通りです。機器を購入してから用途を見つけるのではなく、最初から用途があるから機器を購入したいという方向にユーザーが向かうようにしなければいけませんね。VRChatの場合でも一度体験してみると、初代Questだけでは役不足と分かって、PCVRを購入して、トラッキング機器や高性能PCを導入するという流れになります。

――VRChatでは、いわゆるクリエイター的な活躍のされ方をしている方も多く見られます。

勝間:

先日、知人からblenderを少しだけ習って、(ロボット掃除機の)ルンバみたいなアバターを作ってアップしたのですが、そういったクリエイティブな分野に進出する人がもっと増えていくと良いですね。私の友人はVRChatで映画を作ったりしているのですが、すごいと思いました。現実のセットよりも安価で背景が作れますし、俳優さんもアバターが演じるので、現実の容姿が美男美女である必要はない。「血糊」の役をやる人までいましたから(笑)。

久保田:

VRChatでクリエイティビティを発揮しようとすると、相応の労力が必要ではあるのですが、自由度の高さが魅力ですね。

勝間:

多面体を制作するハードルは非常に高いですね。お絵かきソフトレベルまで簡単になると良いのですが。私はテトラポッドのようなアバターを作ってみたら、3mほどの巨大なものになってしまいました(笑)。結局のところ、重要なのは「基本的な操作や面白い技術を教えてくれる人が周りにいること」、「膨大な時間をかけずとも制作できること」の2つです。

久保田:

Mogura VRを立ち上げて以来、ずっとVRを広げようと情報発信していて思うのが、(VRは)何かひとつの出来事で爆発的にブームになるというより、周りの人たちが「これ面白いから」といって繋がっていくことが大切だなってことです。

勝間:

私もそう思います。

プロジェクターの一般普及から分かるVRの今後

――他にVRヘッドセットが生活の中に浸透するのに必要な要素は何でしょうか?

勝間:

現代の消費者は「(これを使えば)痩せられる」「美人になる」「頭が良くなる」など「自分にとってどんなメリットがあるか」という自分軸で考えている方が多いと私は考えています。だからこそ、そういった自分軸のニーズに沿ってハードやコンテンツを開発していくとも重要ですね。VRヘッドセットは「身体を動かし、痩せる」というフィットネスの用途で大きく広がる可能性があると思っています。

久保田:

任天堂の「リングフィットアドベンチャー」も、実際にプレイして使えるという口コミが広がって爆発的にヒットした側面もあると考えられるので、VRヘッドセットもその可能性はありますね。

勝間:

私も著書の中で、真面目にVRフィットネスに取り組めば、1ヶ月に2kgは痩せられると紹介しました。ジムに行くより効率的なのではないかと。ただ課題となるのは、日本の一般的な住居で扱うには広さを確保するのが難しいこと、ヘッドホン無しでは騒音トラブルが起きうることですかね。そういった点が「興味はあるけど、手を出しづらい」ものにしていることは間違いないでしょう。

――普及していくためには、物理的な条件を突破していく必要がありますね。

勝間:

それこそ最近のMRグラスやARデバイスのようにメガネサイズまでコンパクトになれば良いんだとは思います。

久保田:

日頃から使っているものと同じ重さや大きさになれば、手に取りやすくなります。

勝間:

携帯電話も200gをオーバーしていた頃はなかなか広まりませんでしたし、人間の自然な身体感覚で許容できる範囲というものがあるんだと思います。VRヘッドセットは現状では残念ながらまだまだその領域に達していないと言えそうです。

――まだまだ日常に浸透するまで時間がかかりそうですね。

勝間:

プロジェクターを見ると、普及するまでの流れをイメージしやすいかもしれません。
最近ようやくプロジェクターが一般家庭にまで普及するようになってきましたが、固定するための取り付けが必要なく、小型のものも多く登場しています。ようやく消費者が「テレビを買うか、プロジェクターを選ぶか」といった選択ができるようになってきたのだなと。そうなるまでに、大体10年くらいだったと思います。

久保田:

VRはスマホレベルに日常化するイメージで語られることも多いのですが、そこまで身近になるというより、テレビやプロジェクターの代替品となっていくとか、そんなイメージかもしれませんね。

勝間:

やはりデバイスがボトルネックになると思います。最近では、新人研修や講習会などビジネスでの利用も増えてきているので、そういった観点でもより便利に使いやすいものが出てくると広まりやすいと思います。

久保田:

企業によるVR機器の活用はかなり成長している分野ですね。例えば自動車製品のデザインなどは、立体的な図を3Dでそのまま共有できるので重用されているという事例があります。その場で色を変更したり、ドアの取り付け位置を確認したりできるのも魅力的だとのことです。

勝間:

私も建築デザイン系の話が進みやすくなったという話を聞きました。もっと3Dスキャンと連動して、現実の物体をバーチャル上で気軽に加工できるようになると、仕事の幅も広がっていくのではないでしょうか。

久保田:

最近はその辺りの地ならしができてきているイメージです。鎌倉の銭洗弁財天を空間ごとスキャンし、VRで視聴できるプラットフォームにアップロードして、誰もがアクセスできるようにしたという試みありましたが、VRヘッドセットを持っていなくてもどのデバイスを使っても見られるようになっていたのは非常に大きいことでした。今後は、2次元でしか表現できなかったものが、3次元でそのまま表現できるようになっていくだろうと思っています。

勝間:

2次元のイメージ図では実感しづらかったモノがより把握しやすくなりますね。そうなってくると、ネット上のショッピングなども随分変わっていくだろうと思います。

――勝間さんが、VRで今後期待しているコンテンツはどういったものでしょうか?

勝間:

アーティストのバーチャル上でのライブですね。コロナ以降、そういった動きは各方面で見られますが、リアルタイムかつフル3Dのコンテンツはまだまだ少ないと思います。

――VRChatでは、memexという音楽ユニットのバーチャルライブが、かなり先進的な試みだとしてファンに評価されていました。

久保田:

まだまだクリエイター兼アーティストの方のような、パフォーマンスと技術の両方をこなせる方が活躍しているイメージですね。ただチームラボのような技術ベースのクリエイティブ集団がVR/ARの領域にも進出しはじめてきています。

勝間:

本人がそれほど努力をしなくても、気軽にコンテンツやパフォーマンスを発表できるくらいに、技術の敷居が下がっていけば良いでしょうね。そして、そういったクリエイティブな活動がきちんとマネタイズできることも重要です。「VRで出せば儲かる」というレベルになって「お金を出してでも体験したい」というレベルになれば良いのですが、その部分はFacebookはじめプラットフォーマーの今後の腕の見せ所ですね(笑)。

――本日は貴重なお話を、ありがとうございました!

執筆&取材:ゆりいか


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