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テック 2020.09.17

「Oculus Quest 2」製品版先行レビュー。性能とコスパからFacebookの本気を感じろ!

Facebookの一体型VRヘッドセット「Oculus Quest」がバージョンアップし、「Oculus Quest 2(オキュラス クエスト 2)」になる。9月16日10時(※アメリカ太平洋時間)に開催された「Facebook Connect」で発表されたものだが、今回、事前にデバイスを体験する機会に恵まれたので、取り急ぎレビューをお届けする。


(Oculus Quest 2。予約は米国時間9月16日より開始、発売は同時間で10月13日)

一言で言うなら「この価格でこの性能はヤバい」。正直、これ以外の言葉が見つからない。ではどう“ヤバい”のかを見ていくことにしよう。

白く、小さく、ちょっと軽く

以前から「Oculus Questの次が準備中」との噂は流れていた。「廉価版である」「小型版である」「白くなる」など複数の説があったが、要はぜんぶ正しかったわけだ。初代Quest(以下、Quest 1とする)はブラックだったが、Quest 2は白くなった。素材も、ファブリックから白いプラスチックになっている。それだけでなく、ボディは多少コンパクト化した。


(Quest 2の箱。横長で意外と大きめだが、Quest 1よりは小さくなった)


(パッケージには本体とハンドコントローラー、ACアダプタとケーブルの箱が入っている)


(奥がQuest 1で、手前がQuest 2。ファブリックとプラスチックという質感の違いが目を惹く。サイズ的にも少々2の方が小さい)

ただ、ボディそのもののコンパクト化よりも、ヘッドバンドの変更の方が、「小さくなった」という印象を抱かせる要因としては大きい。樹脂から帯状の布を面ファスナーで止める、「Oculus Go」に近いものに変更されている。よりコンパクトに持ち運べるようになった、というのも美点だ。重量は571gから503gへと軽くなっているが、これもヘッドバンドの変更の影響が大きそうだ。


(ヘッドバンドの素材が軟質プラスチックから布に変わったので、奥行きがずいぶんコンパクトになったように感じる。持ち運びや片付けにも便利だ)


(頭への固定は面ファスナーで調整する)

布製に変わるとずれやすくなるのでは……という懸念を抱くが、実際にはそうでもなかった。少なくとも、「Beat Saber」でひとしきり動いた後でもズレはない。

とはいうものの、Quest 1のヘッドバンドは良いものだった。より固定の強い方が好み、という人向けには、オプションとして「Quest 2 Eliteストラップ」(税別6,200円)を購入すれば、Quest1とは異なるが樹脂製のヘッドバンドに交換できる。また、それに外部バッテリーをセットにした「Quest 2 Eliteストラップバッテリー」も。こちらには携帯用のケースもつく(税別1万6,000円)。とはいえ、これらのヘッドストラップは今回のレビュー用には貸し出されていないため、現時点では交換方法や使い勝手などは不明だ。

残る外観的な違いとして大きいのは、IPD調整用のレバーがなくなり、「レンズを直接動かす形式」になったことだろうか。大胆にHMDの中へと手を突っ込み、レンズをグイッと動かすやり方なので、少しドキドキする。調整幅は58mm・63mm・68mmの3段階。バチピタに合わせるのは難しいが、多くの人がこの調整幅の中で対応できるだろう。


(IPDの調節方法は、バンドを止めるパッケージに記載されている)


(レンズ部。レンズ自体の構造も多少変わっているようだ。IPD調節はここを持って直接動かす)

ハンドコントローラーも、地味にデザインが変わっている。Quest 1のものに比べ、ボタンやタッチパッドが配置された部分が広くなっている。これは、「どこにも触らずに指を休ませやすくする」改良らしい。ちなみに、電源はQuest 1と同じく、単3電池を1本ずつ使う。


(本体など。白いプラスチックになって印象がかなり変わったが、基本的なデザインは同じ。コントローラーのデザインには微調整が加えられている)

なお、USB Type-CのケーブルとACアダプターがついてくるが、ケーブルの長さは短め。このケーブルをつけたままプレイする性質のものではなく、純粋に「充電用」だ。


(付属のACアダプターとUSB Type-Cケーブル。出力は18W)

見慣れた体験が「解像度向上」で大幅刷新

とはいえ、Quest 2は、外観がガラッと変わったわけでも、コントローラーがガラッと変わったわけでもない。インサイドアウトでの位置認識に使うカメラの数や位置も同じ。先に答えてしまうが、アプリもQuest 1と互換性を持っている。

「ああ、Questでお馴染みの体験ね」

そんな風に思ってセットアップしていくと……驚く。Quest 1から圧倒的に進化した、解像感の高い世界が広がっているからだ。

比較してみると、Quest 2は1に比べ、発色が改善し、スクリーンドア・エフェクトも小さくなった。ゲームでわかりやすいのはもちろんだが、文字表示などもかなり違う。今見ると、Quest 1は「文字をちょっと無理して読んでいる」感じがしたが、Quest 2ではまったく苦もなく読める。以下写真で比較してみたが、実際にQuest 2をかぶり、目で見る方が違いがずっとわかりやすい。

(Quest 1でウェブを表示中に、レンズ部にカメラを接写して撮影。モアレの出方や文字の眠さが気になる)

(Quest 2でウェブを表示中に撮影。文字の自然さと白の発色に注目。ここがQuest 2との明確な差だ)

Quest 2が使っているディスプレイパネルは、片眼あたり1832×1920ドットの液晶。Quest 1は片眼あたり1440×1600ドットの有機ELだった。解像度がシンプルに上がっているわけだが、それだけでなく、画素構造による密度感の改善や、レンズの光学的性質の改善による干渉縞の減少など、「見え方」の変化が著しい。

よく見てみると、ウェブブラウザーの「手前からの描画距離」などが、Quest 1より遠くなっていたり、表示横幅が広がっていたりといった変化もある。これもまた最適化だろう。

すでに述べたように、Quest 2はQuest 1と互換性を持っている。というか、機能面での差異は「画質」に集中している、といっていい。同じゲームをプレイしても、一番手前までモデルが突き出された時の滑らかさが違う。

それも当然だ。Quest 2では、Qualcommの「XR向けSoC」である「Snapdragon XR2」が採用されている。クロック周波数などは未公開だが、メインメモリーは6GBだ。Quest 1のSoCは、スマホやタブレット向けの「Snapdragon 835」だった。Qualcommの説明によれば、Snapdragon XR2は835に比べ、CPU・GPUともに2倍以上速くなっているという。多少解像度が上がっていても、それを補って余りある。「Quest 2専用タイトル」の登場が待ち遠しい。

Oculus Linkの品質もアップ、Rift Sの存在意義がこんどこそ揺らぐ

ここまで来たら……ということで、ゲーミングPCにつないでPC用HMD代わりにする「Oculus Link」も試してみた。Quest 1向けにOculus Linkが出た時、「これはもうPC接続専用HMDはいらないのでは」という話になった。ただそれでも、「専用であるRift Sの方が体験がいい」という人は多くいた。

だが、である。

Quest 2のOculus Linkを体験すると、「あれ、今度こそ、真面目に、専用機はいらないのでは?」という気分になってくる。

そのくらい解像度が高く、鮮明で快適な体験だからだ。編集部の全員に試してもらったが、「Quest 2のOculus Linkは、すでにRift S以上の体験ではないか」という意見で一致した。反応をさばくのに十分な性能と解像度の高いディスプレイを備えているためだ。


(Oculus Linkを使用し、Quest 1でInsomniac Gamesの「Stormland」をプレイ)


(Quest 2でのOculus Link。発色が良くなりすっきりした見栄えに)


(左がQuest 1、右がQuest 2)

なお、スペック上、Rift Sのディスプレイは片眼で1280×1440ドットの液晶。Quest 2との差は、Quest 1以上に大きい。

圧倒的性能向上、なのに価格は3割以上ダウン! Facebookは本気だ

ほぼベタ褒め状態だが、実際よく出来ている。しかもこれで、価格が安い。Oculus Rift SもQuest 1も、税抜価格は4万9800円からだった(Quest 1の場合に64GBモデルの場合)。

だが、Quest 2の税抜価格は3万3800円。256GBモデルを選んでも4万4800円で、まだ両者より安い。これだけの性能アップを果たしつつ、ガッツリと価格を3割以上下げてきたところが、Quest 2最大の価値だ。コントローラーの電池蓋の構造からヘッドバンドまで、「安くしつつ価値はあまり下げない」工夫があり、Facebookの本気が垣間見える。

あえてマイナス点を挙げるとすれば、スペックが上がり画質が向上した一方で、「VRとしての体験」はQuest 1のものとほとんど変わらないところくらいだろうか。だが、そこはソフトウエアの進化によって変化できる部分であり、Quest 2にはその余地が十分にある。実際Questも、初期OSと今のOSで実現できている機能はずいぶん違う。

別記事でも解説したが、Quest 2は日本での店頭販売も開始され、デモに触れる機会も増えるだろう。「もう一回Oculusにお金を払うべきか……」といった迷いを感じたら、ぜひ店頭体験でのお勧めする。解像度の進化で「目が良くなった体験」ができること請け合いだ。

 
 

<参考>

Mogura VR編集長すんくぼによるOculus Quest 2開封動画はこちら


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