リサーチ会社のIDCが有料オンライン・データベース「世界のAR・VR支出ガイド(Worldwide Augmented and Virtual Reality Spending Guide)」をアップデートしました。2026年までの成長予測に加え、34の法人事例を追加するなど、前回発表(2019年)以降の関連調査を反映しています。
調査を統括したラモン T. リャマス氏(モバイルデバイスおよびAR/VR担当リサーチディレクター)は、今回の推計結果をもとにAR/VR市場は「成長準備が整った成熟市場(a maturing market ready to thrive)」だと結論しました。
世界支出は500億ドル超に増え、過半数は米国・中国
公式発表をもとにハイライトすると、世界のAR/VR関連支出は2022年に138億ドル(約1.8兆円)に達し、2026年には509億ドル(約6.9兆円)に増加すると推計しています。このうち、消費者向けと法人向けの比率はほぼ均等ですが、VR関連が全支出の70%以上を占めるとの予測です。
分類別にみると、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)が支出全体の3分の1以上、ソフトウェアが4分の1以上に成長すると推計しています。また、消費者向けゲームが全支出の25%に成長するとしました。地域別にみると、米国が支出全体の3分の1以上、2位の中国が4分の1近くに達すると推計しました。
HMDが支出牽引も、平均成長率は落ち着くか
2026年までの年間平均成長率(CAGR, compound annual growth rates)は全体で32.3%との予測です。分類別にみると、ホストデバイス(HMD)が59.5%、テザリングデバイス(HMD)が57.5%、ソフトウェアは41.3%と推計されました。
IDCは前回発表で、2018年から2023年のCAGRを78.3%と予測していました。新型コロナウイルス感染症の蔓延やウクライナ危機、世界的な景気後退懸念を受け、市場成長は緩やかになると見られます。軍需産業はこの調査に含まれないことにも注意が必要です。
GDP上位2国で安全・教育支出が増えそう
事例別に支出予測をみると、AR関連支出のほぼ3分の1が産業メンテナンスとトレーニング。VR関連支出の44%がトレーニングとコラボレーションと推計されています。
事例別の成長率は、エマージェンシー・レスポンス(緊急対応)(82.9%)、ARゲーム(57.8%)、インターナル・ビデオグラフィ(社内映像撮影)(47.8%)、コラボレーション(42.7%)と推計され、他の16事例でも30%以上が見込まれています。従業員向けのコンテンツ・サービス支出がさらに拡大するとの見方ができそうです。
世界9地域の80事例をカバー
このデータベースには以下のような調査結果が収録されていて、ピボットテーブルまたはカスタムクエリツールで任意のデータを切り出せます。
- ハードウェア、ソフトウェア、サービスの3分類12区分(デバイス、アプリ開発、コンサルティングなど)
- 80の事例(教育、建築、ゲーム、映画、製造保守、物流、小売など)
- 20の業種(金融、製造、卸・小売、接客サービス、ヘルスケア、行政、ユーティリティなど)
- 9の地理的範囲(アメリカ、カナダ、日本、西欧および中欧、中央東アフリカ、ラテンアメリカ、中国、アジア太平洋)
参考:IDC