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業界動向 2022.01.26

メタバース構築目指せ HIKKY、65億円調達の舞台裏

メタバースへの投資で急拡大する市場。そんな中、株式会社HIKKYは2021年11月に65億円と国内の関連スタートアップとしては巨額の資金調達を行いました。同社は世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット」(Vket)や、VRコンテンツ開発エンジン「Vket Cloud(ブイケット クラウド)」を提供しています。

この記事は調達の経緯や、プラットフォーム同士で相互運用できるオープンメタバースを視野に入れた、サービス展開の狙いについて、HIKKYのCEO舟越靖氏に話を聞きました。

舟越靖 / 株式会社HIKKY CEO
大手通信会社退職、通信系インフラ開発・運用事業の会社を設立。
その後、⾃⾝の夢だったクリエイティブ分野へ進出。
数多くのクリエイターを組織化し、PC・家電などのハードウェアからゲーム・アニメ・映画などに至るまで、様々なコンテンツ制作・PR・新規事業開発などを行う会社を複数社立ち上げた。2018年、VR事業に特化した「株式会社HIKKY」を設立、世界中から100万人以上の来場者を誇りギネス記録を持つVRイベント「バーチャルマーケット」が誕生。ブラウザ専用VRコンテンツ開発エンジン「Vket Cloud」の提供も行う。メタバースにおける、新時代のビジネスの可能性を切り開き、社会的課題を解決する先駆者である。

目次

1.大型調達を実現した舞台裏
2.NTTドコモに続き、NEXT調達も進行中
3.調達の先へ。HIKKYは何をし、どこを目指すのか?
4.誰でも入って作れる! 障壁なきオープンメタバースへ
5.ブラウザベースにこだわる理由とは?
6.競合とともに創造。理想のプラットフォームの形
7.ユーザー・クリエイター・企業とカルチャーを築く

自分たちの価値を高めるために原点に立ち戻り需要を探った

久保田瞬(以下、すんくぼ):

今回の調達の話はいつ頃から進められていたのでしょうか?

舟越靖氏(以下、舟越):

資金調達そのものは実は2020年前半からです。国内の大手企業から「資金調達はどうするのか?」という話があって検討し始めました。当時、我々はそれなりに実績をあげていましたが、評価額が納得のいくものではなかったので、自走すればよいと一旦中断していたんです。

僕は事業家としては、自己資本で事業を行ったことはたくさんありますが、資金調達をしたことはなかったんですね。初めて資金調達というものを経験し、スタートアップだからという括りで判断され、いくら価値を証明してもなかなか分かっていただけないことが多かったんです。浅い知識の中ではありましたが、資金調達の市場自体の常識がズレているというか、本当の企業の価値から乖離しているものが多いと感じていました。

話を色々聴いて回った結果、原則に従えば良いのではないかと考えました。自分たちの評価額がわからない市場で、自分たちの価値を証明するために、出資したいという需要が多くあれば価値が高まるのではないか、と。

そこで証券会社に相談し、我々の名前は公開せずに、事実と提示額だけを書いたものを事業会社700社ほどに展開し、「我々に興味があるか」、「出資したいか」を探りました。

僕たちの提示額は相当なものだったのですが、複数社から反応がありました。事実や実績ベースであれば、興味を持つ企業があることがわかったのです。

その後、本格的な資金調達の検討が始まり、半年から1年程をかけて、企業を選定しながら、条件の合うところを選んでいきました。

NTTドコモに続き、NEXT調達も進行中

すんくぼ:

結果的に今回の調達では筆頭でNTTドコモ(以下ドコモ)にしたと。

舟越:

最後まで残ってくださったということですね。

我々にはかなりわがままな要望がありました。クリエイターやクリエイティブファーストを掲げていると、定量的に結果を示せないことも多い。自由にやらせてほしいというのを前提に、事業運営に介入されないようにしたかったのです。株式も我々の自由がきくような形で、各社に打診していき、その中でドコモが一番良い条件を提示してくださいました。

すんくぼ:

傍から見ているとHIKKYは資金調達を行うタイプの会社ではなさそうでしたが、今回一気に調達をされましたよね。何か変化はあったのでしょうか。

舟越:

自走していくことも十分可能だったとは思います。メタ(旧フェイスブック)が社名変更を行ってからの流れはあまりにも偶然でしたが、今の自己資金や売上だけを前提とした展開だと、どうしても出遅れてしまう懸念がありました。

VRChatなど既存のプラットフォームで「バーチャルマーケット」を展開してきましたが、僕らはVket CloudというVRコンテンツ開発エンジンを展開し始めています。

僕らの一番の理想は『バーチャルマーケットが展開できること。クリエイターが発表の場も含め、展開できること』。プラットフォームを持たないことで横串でやっていけると思っていましたが、プラットフォーム企業の利益が優先されるような場面も出てくるかもしれません。どうやったら、ユーザー企業がプラットフォーム企業の意向に関係なくメタバースを展開できるようになるのかと思い、インターネットのように使えるバーチャル空間というのを考えたわけなんです。それがVket Cloudのスタートになりました。

VRChatclusterに及ぶような高いクオリティには現時点では及びませんが、少なくとも、既存のブラウザ上で体験できるメタバースの中では、一番よい表現ができるものを作っています。

現在は対企業向けに展開しておりますが、いずれ個人でも扱えるサービスにしていきたいと考えています。それぞれのユニバース(宇宙)をそれぞれが持って、それらを繋ぎ合わせていく。そんなメタバースというものが存在するのであれば、我々もその一つになりたいと考えて展開しています。

Vket Cloudで一つ技術的なアップデートを出すだけで、ユーザーサポートなどあらゆるコストがかかってきます。それらを今の僕らの体制だけでやっていくのは限界があると思ったのも、資金調達に踏み切った理由の一つです。

すんくぼ:

ドコモから出資と合わせて資本業務提携も10月に結んだということですが、具体的にどんなことを進めていくのですか?

舟越:

ドコモ自身も数年前からXRの事業を展開しています。その中で、僕らのようなユーザーベースで勢いのある会社と直接やりとりをしていかないと、スピードが追いついていかない、よりユーザーやクリエイターに沿った展開の一つなのではないかとドコモが考えてくださいました。

今後、ドコモが展開するサービスの技術、クリエイティブなどを我々がフルサポートする体制になります。

すんくぼ:

なるほど。ドコモ自身もメタバースのサービスを展開する可能性がありそうですね。それから、調達はファーストクローズと書かれていたり、舟越さんのFacebookの投稿でも、「ただファーストなんで」という投稿を見ましたが、同じタイミングで次の投資、セカンドクローズがあるということですか?

舟越:

その通りです。まさに最大の出資者であるリードインベスターが決まりましたが、リードになれない企業もあります。絶対に関わりたいという企業が数百社の中にありましたので、フォロワー投資という形で検討しています。

すんくぼ:

まだまだ終わってないのですね。まとまり次第、アナウンスされていくと。

舟越:

冒頭でお話しした企業名を明かさず手を上げてもらうやり方がかなりプラスに働いてますね。内容によってはということで進めていて、まとまり次第2022年内には発表できると思います。


(HIKKYがバーチャルマーケットで築き上げた、クリエイティブファーストなカルチャー。投資企業にも理解を促す)

すんくぼ:

資金調達をしたことで、HIKKYとしてはイグジット(※)を目指していくことになるのでしょうか?

※イグジット:エクイティでの資金調達を繰り返すスタートアップが目指す通過点。出資者への還元を行えるようになる。株式上場かM&Aの2種類の方法がある。

舟越:

そうですね。イグジットについても僕らはわがままな部分があって。投資してくださった方にお返しをするためにイグジットを目指しますが、いつというのは資金調達の時点で定めておらず、努力目標です。

市場が高まっていくことは間違いないですし、今後の展開によって、これから伸びていきます。その流れで上場などは決める予定です。

すんくぼ:

投資家のみなさんは、わがままな部分を踏まえて投資されたいという心意気の方なんですね。

舟越:

かなり本気で向き合ってくださっています。僕らがこだわりを失った場合、そもそも存在する価値が、なくなってしまうんですよね。ちゃんと説明して、ご理解いただいています。

調達の先へ。HIKKYは何をし、どこを目指すのか?

すんくぼ:

資金調達の用途で、Vket Cloudをはじめとしたメタバースの開発など、いろいろ書かれていたんですが、実際には採用を強化していくイメージなんでしょうか?

舟越:

まさに人ですね。また、海外からの需要が高いのですが、僕らはまだ十分に応えられていないんです。その対応も含めて、海外展開もしたいですね。

他にも僕らはバーチャルとリアルの連動を掲げています。様々な企業と実験的な取り組みをしながら進めているのですが、バーチャルマーケットで試してみてもその後になかなか続かないこともあります。設備投資もして真面目にやろうとすると別事業になると思うんですよね。これからは本気で推進したいので、そこには僕ら側も予算がかかるかなと思っています。人だけではなく、設備投資にもかかるかもしれません。

すんくぼ:

バーチャルとリアルの連動というと、舟越さんが「パラリアル」と言っている概念ですよね。今回の調達を見ても、昨今のトレンドも踏まえて、メタバースだと言っていて、もう一つの世界というかバーチャル空間の話をイメージすると思うのですが、パラリアルの実現も引き続きやっていくと?

舟越:

そうですね。僕らの勝手な考えですけど、さっきのユニバースでいうところの、現実も一つのユニバースだと思っていて。「現実と接続しなくて、何がメタバースなんだ」と。メタバースをやるためには、現実にも侵食していかなければならないんです。まだそこまで実感がない人たちは何をしていいかわからないと思うので、僕らがまず事例づくりから本気でやっていかないとないと思っているところです。

すんくぼ:

海外展開もできるようにしていくとは、国内人材だけでなく、海外人材も採っていくということですか?

舟越:

まさにそれをやっていきます。特に各国のネイティブだったり、文化もわかった人たちだったりを採っていかなければいけないと感じています。

実はすでにうちの会社で動いてくれている皆さんの3割ぐらいは日本人ではないんです。あまり国籍や現住居など関係なく採用していたら、結果的に海外人材も増えてきたんですよね。今後はその中でもある程度リーダークラスを採用したいとも考えています。

誰でも入って作れる!障壁なきオープンメタバースへ


(メタバースのコンテンツ開発を後押しするVket Cloud。オープンメタバースの基盤を作る)

すんくぼ:

Vket Cloud自体は今後はどんな風になっていくのでしょうか?ユーザーが個人や中小企業の話や、機能だったり、むしろ小さなプレイヤーでも使えるようにする、というのは具体的にどんな姿になっていくのでしょうか?

舟越:

元々の発想から話すと、バーチャルマーケットを作っていく中で、うちのCVO(Chief Virtual Officer)のフィオから、バーチャルマーケットのようなものを今後誰でも展開できるようにしていかないと、そもそも「バーチャルを豊かに」という理念の実現が難しい、という話になって。

ほぼ何もない市場を整えていくと考えた時に、うちのCTOの妹尾を筆頭に開発しているブラウザのエンジン(Vket Cloud)があるので、そのエンジンを使ってインターネットのように使えるVRのサービスを作っていこうと。

まずは企業からの案件を受けて形にしていくところから始めています。年内には閉じたプラットフォームとして展開されるものから、誰でも入れるサービスまで、複数立ち上がる予定です。

その中で、買い物機能など普通のWebサービスなら当然あるような基本的な機能が備わっていきます。

こうした機能が整ってくると、一般のサービスとして展開できるかと思うんですが、まだまだ我々の開発状況もあって、一般のサービスの開始時期は言えません。ただ今後は整い次第、ユーザーがなんらかの自分のアカウントを持ち、お客さんとして買った物などを自分のアカウントに登録して、物自体をプラットフォームの垣根を越えて持ち越せる、少なくともVket Cloudで展開しているサービス間は持ち越せるようにしたいですね。

例えばA社とB社がプラットフォームを作っても、両社がよければその機能は使える。それにより買う価値が上がり物が買われやすくなると思います。そういった機能をある程度充足していったところで、一般の方にも使えるサービスに展開しようとしています。

すんくぼ:

エンジンとしてのVket Cloudを使った、ユニバースが今後いくつも立ち上がっていって、そのユニバース間を例えば共通のアカウントを使って、相互に行き来できるようにしていくイメージですね。

舟越:

そうですね。僕らは1つのプラットフォームとしての括りを作るということをやらないようにしています。むしろバーチャルマーケットに関しても、今後はVket Cloudで何かしらのサービスをやる予定です。僕らに有利だからといった理由でははなく、フェアにみんなで展開できるような物を作っていきたいと思っています。

すんくぼ:

HIKKYというと、今はバーチャルマーケットの会社というイメージです。今後は、Vket Cloudを中心とした、メタバースの旗艦システム提供をメインにするとなるとビジネスモデルも変わっていくのでしょうか。

舟越:

バーチャルマーケットは僕らのブランドだと思っていて、バーチャルマーケットに来たことがきっかけで物が作りたくなったというクリエイターもいるんですよね。すごく嬉しいことですし、一番大事にしていることです。僕らはバーチャルマーケットを僕らの手で続けていきたいと思っています。

ただ、バーチャルマーケットを今の時点で収益化していこうとすると、手数料などでも歪みが出てしまいます。他企業との競合感が強くなったりと、非常にバランスが難しいです。本当は何でも受け入れて展開しなきゃいけないのがバーチャルマーケットだと思っています。これからもどんどん拡大していくでしょう。

そして、Vket Cloudを主幹事業として伸ばしていきたいのですが、売上比率は半々になっていくんじゃないかなと思っています。その後に、別のサービスやリアルと連動させるビジネスをバランスよく伸ばしていきたいですね。

すんくぼ:

今Vket Cloudのビジネスモデルは、プラットフォームの利用料と制作費でしょうか?

舟越:

今はそうですね。ただ順調に各パートナーの売上が上がり始めているんですよ。それが結構「えっ」ていう金額なんですね。それで売上から少しばかりレベニューをもらってと。そういうレベニューシェアのモデルもむしろ求められていますので、取り入れていきたいですね。

制作費については、2〜3年後はほぼ自動で制作できるようになると思うので、その頃には、使用料やレベニューシェアのお金で展開していくようになるんじゃないかな。

すんくぼ:

ワールド制作が自動になっていく見立てはあるんでしょうか?

舟越:

2つの方法に分かれていくと思っています。自動化されることで個人でも使えるようになっていくということ。ただやっぱりハンドメイドでやったものには敵わないので。どちらも両立させていかなければと思います。

ブラウザベースにこだわる理由とは?

すんくぼ:

続いてオープンメタバースについて伺います。基本はVket Cloudはブラウザベースで動いていますし、いろいろとステートメントを書かれています。ブラウザベースにこだわっている理由はどういうところにあるんでしょうか。

舟越:

今はブラウザを中心にやっていますね。僕らがジャニーズさんやLDHさんなどのコンテンツの展開をした時、みなさんVRに入りたがるのに、結果難しくて入れない、VR機材がないので入れないとか、多々あったんですよ。これはまずいなと思って。

ブラウザで誰でも入れるとなると、URLクリックでのアクセスが速いわけです。アプリダウンロードすらも鬱陶しくなるので。まだまだ課題はあるんですけど、押した瞬間今盛り上がっているところに飛べるのは、一番インターネットに近いですよね。

逆にいうとどこでも誘導できるので、そこを目指して、自分たちできっかけを作らないといけないなと。これはVket Cloud初期の構想でもあります。そしてビジュアルも含め、ある程度のことはやらないといけません。クオリティが低いと入ってきた瞬間に興醒めしてしまうので。

すんくぼ:

ブラウザを利用する大きなメリットとして、「プラットフォームの壁を越えて行き交うことができる」という言葉が書いてあったのですが、それは先ほど舟越さんが言っていたVket Cloudのエンジンをバックエンドに使っている、プラットフォームの壁を越えるという意味なのでしょうか。それともブラウザベースで、いろんなメタバースの仕組みが立ち上がり始めている中で、そのあたりの全く別の事業者がやっているメタバースの仕組みとの壁を越えていくイメージですか?

舟越:

スマホのアプリだとアップルのようにプラットフォーム側の規制もありますが、その他のサービスであれば、既存のインターネットサービスとそのままつなげてしまうことができます。

瞬間的に様々なサービスを、垣根なく使える認識を持っています。バーチャルマーケットの先に各企業のサイトで買い物してもいいわけです。

そしてヘッドセットにも対応した、普通のVRサービスもあるでしょう。VRヘッドセットで入った時に、Neosなどと連動して、よりハイエンドな体験をしていただくことはやっていきたいです。

また、例えば何かのユーザーデータが必要なものと連動して、よりユーザーにとって便利に使えるようにすることは、当然やっていきたいですし、受け入れ側がOKならやれると思うんです。

競合とともに創造する、理想のプラットフォームの形

すんくぼ:

「競合同士でどこまで協力するか」という話にもなっていくのでしょうか。HIKKYとしては自分たちが旗を掲げるぐらいの勢いで呼びかけていきたいですか?

舟越:

できたらバーチャルマーケットと同じ形で進められたらいいと思っています。
プラットフォームという仕組みが、どうしても内に囲うという考え方に見えますよね。

そもそもこうした競合という話はユーザーにとっては関係ないわけです。例えば、メディアもよい記事があったら、そっちに行きますし、そこでだけしか読めないのは嫌だと思うんですよ。それと同じようにもっと物や行動の価値をプラットフォーム間で共有することで、ユーザーメリットになります。そういう展開をしたいので、一生懸命呼びかけはしていきたいですね。

すんくぼ:

営利企業がメタバースと言った時に、手を携えて他のプラットフォームもお互い乗り入れさせていくのは結構大きな課題だと思っています。

舟越:

大きな課題ですよね。僕はサービスを便利にするしかないと思っているんです。Amazonってちょっと他より高いけど、他のサービスを利用するのめんどくさいから結果Amazonで買っちゃう。あの便利さは最強クラスだなと思うんですけど、それはB2Bも同じだと思っていて。AWSもそうですけど、「あのサービス使っとくか」みたいな我々もそんな形になっていけたらなと。

B2Bにとっても、ユーザーにとっても便利になり続け、さらに便利なだけだとつまらないので、「最高のクリエイティブだな」となってくれたら、さらに受け入れられやすいと思います。そういう意味でディズニーのような存在になっていきつつ、どことも一緒にやっていくことを目指していきたいです。

すんくぼ:

実現するまで時間のかかる話かなと思うのですが、舟越さんの中では、どれぐらいの時間がかかるイメージですか?

舟越:

段階的だと思うのですが、 Vket Cloudはおそらく、2022年後半になるとかなり汎用性が伴ってきます。一般まではまだいかないかもしれませんが、事業者の展開がより低コストで使いやすくなる流れができ、2023年には一般のユーザーにも使われていくイメージですね。

リアルとの連動も同じく、育てていくことになります。今僕らとやっている企業は、大企業ばかりで、彼らの事業の推進にも絡んでくるので、今から4年構想ぐらいで実現したいです。

すんくぼ:

結構短いですね。5年10年みたいな目線で語られることも多いと思うのですが。

舟越:

バーチャルマーケットが早いサイクルで回っているので、巻きでいくことになっちゃって(笑)。

すんくぼ:

Vket Cloudの汎用性が高まって、一般で使えるようにしていくイメージとしては、clusterのようにワールドを作って、アップロードして、みんな入れるようになる、そんなイメージなんでしょうか?

舟越:

ワールド自体というか、サービスを自分でやれるようにして、プラットフォームも自力で起こせるようにしたいです。

結局僕らが考えているのは、一個のホームページやECサイトだと思っていて。それを時代の流れで、Amazonは最強ですけどECサイト開発プラットフォームのShopifyが出てきて揺るがされているじゃないですか? 自分が集客できるレベルが作れるのであれば、自分たちで展開してもいいと思うんですね。同様のものがVR業界にもあってもいいんじゃないかなと。

すんくぼ:

ただ「ワールドが作れますよ」というだけではなく、機能の部分やブランディングも含めてパッケージでまるっと誰でも作れるようにしていくと。

舟越:

それができれば、一番いいんじゃないかなと思っています。

ユーザー・クリエイター・企業とカルチャーを築く

すんくぼ:

さきほどから、クリエイターという言葉がたくさん出ています。HIKKYが目指しているメタバースでは、クリエイター、企業、一般ユーザーと主に3つのプレイヤーがいるのだと思うのですが、それぞれの方々の役割など、どういう状態であって欲しいですか?

舟越:

初期のバーチャルマーケットの営業の際に、各クライアントに言っていたことなんですが、まず「元々ある文化をわかってくれ」という話から始まったんですね。

理由はVRのコンテンツを作る人はまだ確立されていませんけど、専門的に何かやる人ばかりでなく、広くいろいろできる人が重宝されています。もう今までのやり方が通じない。CGの工程でいくとたくさんやらなければいけないものを半分ぐらいすっ飛ばして作ったりするわけなんです。動的に、ビルドしながら修正を加えていくとか。

新しいものづくりへの理解がないと、育っている市場の今の良い文化を潰してしまうので気をつけています。特にクライアントベースだと気をつけないといけません。これからも大事にしていきたいと思っています。

ちなみに、クリエイターファーストというのは、全部クリエイターに寄るということでもありません。逆に企業側の理由もあるわけです。株価に連動してしまうので、情報を勝手に出したらいかんという話だったり。

3者それぞれが分かり合った状態で、市場自体を伸ばしていかなければならないと思っています。

役割という意味では、リアルと変わらないことをそれぞれやっていくと思うんですが、リアルにはない世界というのを、商文化も含めて育てていきたいです。

バーチャルマーケットには、IPが100ぐらい混在しています。今まででは難しかったようなことを実現できているのは、そういう商文化が今のところ許されているからなんですよ。線を引いていくことで、許されなくなるのはもったいない。クリエイター、企業、ユーザー側に理解がある上で、やっていかなければならないですね。今のVR市場を育ててきた文化を大切にしながら、それぞれの役割を見出していきたいです。

すんくぼ:

まだこれからの形になっていくことも多いので、一緒に作っていきましょうということなんですね。

舟越:

まずは僕らがやらないと始まらないですよね。やってみて叩かれたりしながら、進めていこうと。

Vket6の時に、「Vket3の時の感じが戻ってきた」と言われたことがあって、うれしかったんですね。僕らはユーザーのこと全部見てますし、同じように感じてますので。「ズレてきちゃったから戻そうか」とやっています。ちゃんと直してやっていこう、と。

すんくぼ:

クリエイターやユーザーから、風当たりが厳しい時もあると思います。「ユーザーを見ています」というお話がありましたけど、HIKKYとして、ユーザーに対する向き合い方というのはあるんでしょうか。

舟越:

ユーザーに言われてて「そうだよな」ということでも、リソース的に対応できないことがあります。そういったものに対応できるようにしていくためにも、資金調達しました。

向き合い方という意味では、クリエイターとクリエイターになろうとする人たちを最重要視して、それに共感してくれる企業や人たちと一緒に育てていくスタイルです。

すんくぼ:

ありがとうございました。


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