Home » スナップチャット、インスタグラム……「顔のAR」は市場を変える?


業界動向 2019.10.08

スナップチャット、インスタグラム……「顔のAR」は市場を変える?

AR体験の代表例として、ユーザーの顔や体の写真、動画にエフェクトを重ねるものがあります。写真共有アプリ「Snapchat(スナップチャット)」等が提供するこの“Face AR”技術は、AR市場にどのようなインパクトを与えるのでしょうか。

2018年のモバイルAR市場は30億ドル

AR/VRやモバイル分野を中心に調査・投資を行うDigi-Capitalによれば、2018年のモバイルARの売上規模は30億ドル(約3,200億円)超。大半をアプリ売上、広告、Eコマースが占めます。

またAR関連の分析を行うAR Insiderは「2022年、ARを体験できるデバイスはインストールベースで34億台に到達する」「月間アクティブユーザー数は約10億」と予測。市場拡大のポテンシャルは大きいものと見られています。

「Face AR」関連スタートアップの見解

そして2019年、”Face AR”に大きな動きがありました——InstagramとSnapchatが、それぞれ独自のARフィルターやツールをリリースしたのです。Instagramの「Spark AR」、Snapchatの「Lens Studio」共に、オリジナルのARフィルターを作り、ユーザー同士でシェアできます。

メディアTech Trendsは、これらのツールがAR利用のターニングポイントになると論じています。

以下、同メディアがベラルーシのARスタートアップBanuba社のCEO、Dmitry Ogievich氏に行ったインタビューの要約を紹介します。

Tech Trends:Face ARの現状について教えてください。

Ogievich氏:

(前略)Face ARは、ユーザーがセルフィーや投稿でのパーソナリティを編集、装飾、表現するツールです。本当に伝えたいメッセージを発信する手助けでもあります。

必然的に、Face ARの技術はソーシャルメディアのユーザーに大変人気を集め、企業、個人双方から日々利用されています。小売業界は、特にこの技術活用に関心を寄せている産業です。消費者が“バーチャルに”衣服やアクセサリーを試着し、眼鏡、ジュエリー、帽子、コスメといったものがどのように見えるかを確認する、という使い方をします。

Tech Trends:Face ARの次の展開はどのようなものでしょう?

Ogievich氏:

まずはFace AR技術の質、出来ばえ、正確さを改善する動きがあります。しかし、次のイノベーションへのアイディアが求められているのも事実です。それが、「FaceApp」にあるような“Neural face transformation filter(ニューラル顔変換フィルター)”で、多くの企業がこの動きに追従すると考えられます。この技術は個々のユーザーの顔を元に非常に緻密なARフィルターを作り出します。(中略)ただし一方で、モバイル機器のバッテリー寿命に影響するほどの処理能力を必要とします。したがって、スマートフォンの能力が向上するのに伴い、このAR技術も実現性が高まると言えそうです。

Tech Trends:ソーシャルメディア企業はどのように市場を変えていますか?

Ogievich氏:

Spark ARとLens Studioは、Face ARをまったく新しいユーザー、デベロッパーに開放しました。誰もがツールを手に入れ、次のインフルエンサーとなりうる機会を得たのです。(中略)Spark ARとLens Studioにより、ユーザーが独自のFace ARを作り、使ってみるためのツールが広く普及したと言えます。内容はベーシックなものですが、(Face ARの)開発プロセスが皆の手に渡り、より広範囲に利用される機会が拡大したのです。(後略)

Tech Trends:将来Face ARはどうなりますか?

Ogievich氏:

Face ARのイノベーションは続きます。より複雑なフィルターの登場とともに、個人や組織にとって有用なデジタルコミュニケーションツールとして確立していくでしょう。(中略)Face ARはまだ初期の段階であり、今後人気が高まることが期待できます。私達が会話し、交流する上で、いっそう大きな役割を占めていくと考えます。

Tech Trends:Face ARは、ARのより広範囲での導入を加速しますか?

Ogievich氏:

Face ARの人気は、AR技術採用を加速する上で重要な役目を持つでしょう。(中略)人々が毎日Face ARを使うことに慣れていけば、AR導入が広がるのはごく自然なことです。

しかしAR技術が広く支持を集めるには、ユーザー体験を補足するだけでなく、体験を高めるものだ、と捉えられなければなりません。Face ARがすでに大きな人気を得ている理由は、他のデジタルコミュニケーションでは得られない、ユニークで没入感のある体験を実現するためです。同様にARも、ユーザーにとって必須となる理由が必要です。(後略)

ARフィルターに関するニュースはこちらの記事でも紹介しています。

(参考)Tech Trends


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード