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開発 2018.08.24

開発者必読! VIVEトラッカーやベースステーション2.0をうまく使うコツ【CEDEC2018】

この記事は2018年8月22日から24日まで開催される、日本国内最大のゲーム開発者カンファレンス、CEDEC2018でHTC NipponのVIVE事業日本責任者、西川美優氏によって行われた「VIVE関連製品の中~上級者向け利用方法(2018年版)」のレポートとなります。

本セッションでは2017年秋以降に発売された製品の紹介がなされたほか、問い合わせなどで溜まった知見を共有、「最高のVR体験を日本に広めること」を目的としたセッションです。

このセッションは、2017年に同じく西川氏が行ったセッションの内容を踏まえた上でのものとなります。昨年のセッションはこちらです。

VIVEトラッカーの状態やTipsなど

全身につける方法は「想定外だった」

VR開発に欠かせないVIVEトラッカー(2018)。発売当初はロケーションベースVRに向けて、様々なガジェットやデバイス、コントローラーに装着するものを想定して開発されていましたが、実際はトラッカーを7個使い全身のモーションキャプチャーとして使用する使い方が広まっています。これはHTC本社でトラッカーを開発した人も想定していなかったとのこと。


(発売時の想定はラケットや銃型コントローラーに装着、プレイヤーの動きを部分的にトラッキングすることを想定していた。実際は複数のトラッカーを複数個所に装着し、全身モーションキャプチャーとして使っているケースが多くなった)

同時に使えるのは16デバイスまで

このVIVEトラッカーが最大何台まで利用可能かという質問に対し、西川氏は「SteamVRの1システムにつき、16デバイスまで認識可能」とのこと。ただし、これはベースステーションやHMD(HTC VIVEやVIVE Pro)を含めたデバイス数。例えば、ベースステーションが増えればその分デバイス認識数が減ることになります。

例えば、ベースステーション×2+HMD×1+コントローラー×2であればトラッカーは11台認識でき、ここからコントローラーを使用しなければトラッカーは13台まで認識することができます。これはトラッカーのデベロッパーガイドラインにも記載されています。

参考資料:VIVEトラッカー(2018)の開発者ガイドライン(PDF)

トラッキングが不安定、そんなときのトラブルシューティング

また、利用中にトラッカーのトラッキングが不安定になる場合、まずSteamVR(ベータ版推奨)、VIVEデバイスのファームウェア、そしてGPUドライバを最新版にすることを推奨。特にVIVE Proを使っている場合、GPUドライバが古いとうまく動かないことが多いとのこと。WIndowsのアップデートなどは基本としているため、このリストからは除かれています。

更新を行っても症状が改善されない場合は「ベースステーションの赤外線トラッキングシステムの干渉を疑うべき」とのこと。特に全身トラッキングなどを行う際は「お腹にトラッカーが置かれていると、装着者がかがんだ際に隠れがちなので、背中につけると良い」と話しました。

それら以外には、他のデバイスなどとの干渉が考えられます。干渉要因として次のようなものが挙げられています。

・他の赤外線デバイスとの干渉
・反射の材料
・直射日光
・3つ以上のベースステーション(ベースステーション1.0の場合)

ベースステーション2.0はVICONと相性が悪いほか、白熱灯などの赤外が出る光源をオフにすると改善される可能性があります。床も反射があると干渉するため、チェックする個所はなかなか多くなりそうです。

また、ベースステーションにカバーを被せて赤外線の照射範囲を絞る解決方法もあります、この絞るためのカバーですが、赤外線を透過しない厚く黒い紙を使用しているとのことです。このカバーは「型紙が台湾にあるので、欲しい人は連絡してください」と西川氏。

さらに、ベースステーション側の赤外線干渉の問題がなく、以下の症状が起きる場合には2.4Ghz帯の干渉が疑われます。

・VR内でトラッカーが小刻みに震える。
・トラッカーが勝手に移動する。
・SteamVR上でトラッカーのアイコンが点滅し、VR内で表示されない。

2.4Ghz帯での干渉が疑われる場合にはキーボードやマウスを有線に変更、Bluetooth機器やWifiをオフにする、などの方法で対策します。

ドングル同士も干渉の要因となるため、ドングル同士またはドングルとPCは離して利用してほしいとのことでした。およそ10cm~15cmほど離すとよいとのことで、例として段ボールに穴をあけて距離をとり運用するなどの方法が挙げられています。

また、トラッカーをPCと有線接続すると安定しますが、USB-IF認定のUSB2.0以上のケーブルを使用する必要があるとのことです。西川氏は、リピーターケーブルはアクティブタイプでUSBハブを使用する場合にはAC電源付きのものを使用してほしいと話しました。

また、トラッカーをスリープモードにしたくない場合には、HMD内のセンサーをカバーするかSteamVRの設定値を変更することで対応できるとのことです。

トラッカーをコンテンツ内で特定するにはSteamVR内でDevicesSerialNumberを取得することで変動するインデックス番号を取得できます。

ベースステーション2.0の解説

続いてベースステーション2.0の解説になります。よく「ベースステーション2.0になったことで、ベースステーション1.0よりも精度が上がった」と噂されているとのことですが、精度は上がっておらず同じとのこと。ベースステーション2.0ではトラッキングできる範囲が広がっています。

ベースステーション1.0とベースステーション2.0には次のような違いがあります。

ベースステーション1.0

ベースステーション2.0

製造元

HTC(台湾)製

Valve(アメリカ)製

チャンネル切り替えボタン

有り

無し

シンクケーブル

有効

無効

水平照射角度

120度

150度

垂直照射角度

120度

110度

ベースステーション2.0にはシンクケーブルの端子を接続する穴はあるものの、挿しても効果はないとのこと。

上述の通り、ベースステーション2.0になり広い範囲をトラッキングできるようになりました。4台設置する際には部屋の四隅ではなく、それぞれの辺の中央に置くのが良い、という知見があるそうです。

またベースステーション2.0では従来のVIVE、コントローラー、トラッカーは動作しないため注意が必要です。また開発中の新型コントローラーであるKnucklesはチップが古いため、ベースステーション1.0のみの対応となります。

さらにベースステーション2.0は何台まで設置できるかという質問に対しては、「チャンネル自体は16まで用意されていますが、『4台で10m×10m』が公式にサポートされている最大スケール」とのことでした。

また、ベースステーション2.0のチャンネル番号はSteamVR上で確認できます。ハードウェア上にチャンネルが表示されていませんが、SteamVR上のベースステーションアイコンにマウスオーバーするとチャンネルが表示されます。

もしチャンネル番号が重複しているベースステーションが検知された場合には警告が表示されます。これらの設定を行うにはSteamVR上からBluetoothのタブを選択し、Bluetoothコミュニケーションを有効化します。

その後、Configure Base Station Channelsを選択することで認識しているベースステーションの一覧が表示されます。

基本的にはAutomatic Configurationを押すことで自動的にチャンネルの重複を解決してくれます。展示会などで複数のベースステーション2.0があるときはこれで解決することもできます。また、チャンネルは手動で選ぶことも可能です。

VIVE ProのAR機能は何ができるのか

ハイエンドVRヘッドセットVIVE Proには2つのフロントカメラが取りつけられています。しかしこのカメラはトラッキングには使用せず、AR向けのもの。以下のスライドでは、VGAで2つの映像が出力されています。

AR機能では次のことが可能になっています。これらは会場で実際にデモが行われました。

・Depth(深度)
・静的/動的メッシュ
・バーチャルオブジェクトの合成
・バーチャルオブジェクトの操作

また、VIIVE Proに関しては無線化用キットが日本では発売されないため、Lindy製の5mのケーブルを使用して延長する方法があることを紹介していました。動作確認も取れています。さらに、時期と価格は未定ですが、延長ケーブルを発売する予定はあるとのことです。

また、極まれなケースとして赤外線干渉の原因をすべて取り除いてもVIVE PROのトラッキングが不安定になることが存在します。これは「近くにある出力の高いモーターから発生するノイズで、不安定になることがある」とのこと。業務用など、工場などで利用する際には注意が必要です。

期待されるVIVE Focus

中国向けにリリースされている一体型VRヘッドセット「VIVE Focus」。アップデートでフロントカメラ機能を使用し、装着したまま外の世界を見ることができる機能が追加されています。VIVE Focusの画像をPCにミラーリングするには、Windows10に搭載されている「ミラキャスト」を使用することで可能になります(ChromeCastは非対応)。逆にPCの画像をVIVE FocusへミラーリングするにはVRidgeを使用した動作が確認されています。

VIVE FocusはB2Bなどの法人向けコンテンツ開発向けにリリースする予定で、現在、日本の技適を通過しており、発売日はまだ決まっていないが年内にはリリースできるとのこと。国内での販売価格も決定しているものの、西川氏は「発表はもう少し待ってほしい」と語りました。また、日本のみ他の国に比べて高い値段にする、といったことは行わない、とも話しました。


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