モーションキャプチャー技術を手掛けるViconは、バンクーバーで開催中のSIGGRAPHにてロケーションベース(施設型)VR向けのシステム「Origin」を発表しました。展開が広がりつつある施設型VRでの使いやすさを追求しています。
複数のプレイヤーをキャプチャ可能
「Origin」は、カメラ、手足に装着するトラッカー、ワイヤレストランスミッター、そしてUnityやUnreal Engine 4に対応したソフトウェアがセットになったモーションキャプチャーシステムです。
開発に当たっては、施設型VR向けのコンテンツを開発中のDreamscape Immersive社と提携しました。
カメラは「Viper」という名称で、有効画素数2.2メガピクセル。フレームレートは240fpsです。またカメラからストロボを外し、代わりにLEDを搭載しています。このため、より周囲の光に耐えられるようになったとのこと。
ViconのプロダクトマネージャーのTim Doubleday氏は次のように説明しています。「これまでモーションキャプチャーを行う際、窓などから自然光が入ってくると、カメラはその光を捕えてしまいました。これを防ぐためには光の部分を覆う必要があり、結果、窓の前ではモーションキャプチャーを行うマーカーが認識されませんでした。今回ストロボの代わりにLEDを使うことで、カメラが捕えるのはLEDの光だけになります」
また、モーションの情報を取得するトラッカーは「Pulser」という名称。半球状のマーカーから50以上の異なる方向へ赤外線LEDを発しており、ヘッドセットと両手足、背面のバックパックの5箇所に装着。カメラを使って一度に複数人の動きを同時にトラッキングすることが可能です。
Doubleday氏によると「どの角度からもプレイヤーをキャプチャできる」とのこと。「プレイヤーが1人であれば6~8台のカメラ、2人であれば16台程度を使う」としています。
SIGGRAPHを取材中のMogura VRの記者によれば、16台程度のカメラで3人が同時に4m×2m程度の空間を自由に動き回るVR体験をすることができました。Dreamscape Immersiveが開発した「手に松明(棒状のデバイス)を持って、色々な世界を旅する体験」ができた、とのこと。
体験会の会場におけるトラッキングの品質は「違和感がなく良好」だったとのこと。もともとViconが手がけるモーションキャプチャシステムは高額ですが、「Origin」の価格については明かされませんでした。
VRアーケードでの利用を想定したポイント
今回Viconがターゲットとする施設型VRは成長が期待されており、2022年の市場規模は80億ドルという予測もあります。その中でも人気を集めているのは、実際に歩き回るフリーロームと呼ばれるジャンルです。スターウォーズをテーマにした「Star Wars: Secrets of the Empire」や、日本でも「ドラゴンクエストVR」、「Zero Latency」など多くのタイトルが登場しています。
Doubleday氏はOriginについて、セットアップの容易さを追求していると説明。なぜならデバイスを設定するVRアーケードのスタッフが、モーションキャプチャーに慣れていないという懸念があるためです。
「最大の課題は使いやすさです。これまでエレクトロニック・アーツやUbisoftを使ってモーションキャプチャーを行う際は、技術に慣れた人がスタジオにおり、システムを動かしてくれました」とDoubleday氏は話しています。そして、「しかし施設型VRでは、数週間のトレーニングしかしていないスタッフにオペレーションが任されます。このため、使いやすさが重要になってきます」と述べています。
また導入しやすさもポイントです。Originでプレイヤーが装着するトラッカーは、最小限なら僅か6個。両手にグローブをはめ、両足の靴にクリップで止めれば、残りはヘッドセットとバックパックだけです。
アニメーション製作にも活用が期待
Originは施設型VRをターゲットとしていますが、一方でモーションキャプチャーはゲームのアニメーション製作にも活用できます。このためViconは、インディーデベロッパーにもツールとして利用してほしいと考えています。
Doubleday氏は、「モーションキャプチャーに通じていないデベロッパーでも、簡単にキャラクターを動かすことが出来ます。Unreal EngineやUnityにも対応しているため、大量のアニメーションを短時間で製作可能です」とその魅力を語っています。
(参考)Venture Beat