VR体験施設などでは、手足や道具など様々なものをVRに“持ち込む”ことで、VR内で現実との感覚が同期するコンテンツが出てきています。このような分野で主に使用されているのは、HTC社が販売を行っているVRヘッドセット「HTC Vive」用の周辺機器「Vive Tracker」(Viveトラッカー)です。
今回はこの「Viveトラッカー」について、具体的な使用例を含めて紹介します。
目次
1.Viveトラッカーとは?
2.Viveトラッカーでできること
3.Viveトラッカーの価格・購入方法は?
4.Viveトラッカーを使った具体例4選
5.実際に筆者が使用した例
Vive トラッカーとは?
「Vive Tracker」(以下、トラッカー)は、PC向けVRヘッドセットの「HTC Vive」向けアクセサリーです。さまざまな物体に取り付けることができ、装着した物体の位置を正確にトラッキングすることができます。これにより、例えば棒やモデルガンの先端に取り付けることで、VR内でそれらの位置を割り出し、現実での動きとVR内での動きを同期させることができます。
(放水ホースの先端にトラッカーを装着し、VRで消防訓練を行っている様子。現実とVR内で消防ホースの位置を同期することで、よりリアルな訓練が可能)
トラッキング可能な角度は下部を除く約270度。範囲外になるとトラッキングできなくなってしまうので注意が必要です。また、トラッカーには下部にスプリングタイプのPogo Pin(ポゴピン)が6個備え付けられており、ピンを使用することで電源供給やボタンの押下といった入力、振動やLED点灯といった出力も可能となっています。
Vive トラッカーでできること
上記の通り、トラッカーを使用することで、現実世界にあるアイテムを、モーショントラッキングされたオブジェクトやコントローラーとしてVR空間内に取り込むことができます。
例えば手や足にトラッカーをつけることで、コントローラーを握らないようなコンテンツであっても手、足の位置をトラッキングすることができ、また銃のような形状のデバイスに取り付けることでより没入感の高いVR体験ができるようになります。
(HTC Viveで使うことができるガンコントローラー。Viveトラッカーに対応している)
HTC NIPPON株式会社は、「HTC Vive」向けのアクセサリーとして新たに「汎用ラケット・卓球ラケット」を追加しています(ただし、トラッカーは別売りとなっているため注意が必要)。
このアクセサリーを使用することで、テニスや卓球といったVRコンテンツも、より高い没入感で体験することができるようになります。
Viveトラッカーの価格・購入方法は?
トラッカーはHTC Viveの公式サイトから購入することができます。販売価格は12,500円(税込)となっており、同梱品としてUSBケーブル、2.4GHzドングル、ドングルクレードルなどが付属。完全充電時には約6時間動作します。
ただし、トラッカーは2018年2月現在では在庫切れが続いており、入手が困難となっています。メーカーであるHTC NIPPONに問い合わせたところ「供給回復は3月中旬~下旬」を見込んでいるとのこと。安定して手に入れるには、少し待つ必要がありそうです。
(参考記事)
Vive トラッカーを使った具体例4選
『ドラゴンボールVR 秘伝かめはめ波』
新宿にあるVR体験施設、VR ZONE SHINJUKUの『ドラゴンボールVR 秘伝かめはめ波』では、ドラゴンボールの「かめはめ波」を撃つためにトラッカーが使用されています。
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Viveトラッカーが付いたグローブとサンダル、そしてベルトを装着。これにより手足や腰の位置をトラッキングし、かめはめ波の「両腕を腰に当てて”気”を溜め、身体をひねって両手を右の腰に持っていき、叫びながら両手を突き出す」という動作を認識、VR内でかめはめ波が出せるという仕組みになっています。
(参考記事)
『マリオカート アーケードグランプリ VR』
『ドラゴンボールVR 秘伝かめはめ波』と同じくVR体験施設VR ZONE SHINJUKUで体験できる『マリオカート アーケードグランプリ VR』でもトラッカーが使用されています。
ハンドルとペダルがあるゲームセンターで使用されているものと同じ筐体に乗り込みますが、両手には手の位置をトラッキングするためのトラッカーを装着します。
カートの操作はハンドルとペダルで行います。では、トラッカーが何に使用されているかというと、コースの数か所に設置されているアイテム補給地点でのアイテムをキャッチする際に使用します。
アイテムはみどりコウラやバナナなどおなじみのものですが、それぞれ手を動かして使う必要があります。コウラは狙いを定めて(後ろを含む)投げたい方向に投げつけたり、ハンマーは振り回して隣のプレイヤーを攻撃したり。実際に手を動かしてアイテムを使用します。
(参考記事)
「Project Orion」
英国に拠点を置くモーションキャプチャ専門スタジオのIKinemaは、2台のベースステーションと6つのトラッカーで全身のポーズを再現できるモーションキャプチャシステム「Project Orion」のデモを公開しています。
公開されたデモでは、頭・両手・両足・腰背面の6点に備えたトラッカーをHTC Viveのベースステーション2台でトラッキングしており、歩く、しゃがむ、腰をひねるなどの動きをVRで再現しています。
「Project Orion」は6点のトラッキングポイント間の空白を補完するために「逆運動学」(骨格構造を考慮して現実的な動きを解釈するシステム)を利用していると考えられています。
昨今ではソーシャルVRサービスである「VRChat」でもヘッドセット・両手のコントローラーに加えて、腰と両足にトラッカーを装着し、全身をトラッキングした状態でVR内の世界を楽しむことも可能となっています。
(参考記事)
『SPRAY PAINTING』
子供向けのAR/VRなどを体験できるテーマパーク「リトルプラネット」(株式会社プレースホルダ)が、2017年10月26日から2018年2月25日まで東京・ららぽーと立川立飛で開催されています。
2018年2月現在、VRHMDは子供への装着を推奨していないケースが多く見られます。
しかし、「リトルプラネット」で公開されていた『SPRAY PAINTING』ではVRHMDを使用せず、トラッカーのみを使用するコンテンツとなっています。
『SPRAY PAINTING』は白い壁にスプレーで落書きができる体験となっています。
壁の前に立ち、スプレーを壁に向けて指で押すと、「シュー」という音と共にスプレーから塗料が噴き出したかのように、壁には色がつきます。
スプレーは上下に振るごとに色が変化し、壁に近いところで吹きかければ細い線となり、離れたところから吹きかけると広い面に色がつきます。
『SPRAY PAINTING』で使用されているスプレーには何も入っておらず、スプレーの底には位置を認識するトラッカーが付いています。天井にはプロジェクターと一緒にヘッドマウントディスプレイHTC Viveが置かれています。VRヘッドマウントディスプレイをつけずに、現実にいながらVR内で描いた絵をプロジェクターで壁に投影することで、真っ白な壁に自由に落書きする」ことを実現しています。
(参考記事)
実際に筆者が使用した例
『Castle Vicinity Repel -みをていしてまもる-』
2018年1月13日・14日の2日間で開催されたVR体験会「JapanVR Fest 2018」では、筆者がトラッカーを使用して開発を行ったコンテンツ『Castle Vicinity Repel -みをていしてまもる-』の展示も行っていました。
このコンテンツでは、プレイヤーは巨人となってボクセル(四角いブロック)でできた世界に入り、背後にある姫と城を敵から守るという内容になっています。
トラッカーを装着したプレイ用のシューズに履き替えてトラッキングを行い、手や足を使ってわらわらと押し寄せてくる敵の軍勢を薙ぎ払っていくという爽快感のあるコンテンツです。
トラッカーを使用することで、従来のモーションキャプチャーと比較して低コストでありながら、低コストのモーションキャプチャーの問題点であった精度も比較的高く、敵を蹴る、踏むといったアクションを可能にしています。
(参考)
HTC公式サイト
https://www.vive.com/jp/vive-tracker/