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テック 2019.06.11

HoloLens 2の全貌を徹底解説。日本MSのカンファレンスをレポート

日本マイクロソフトは、毎年5月下旬に開発者向けカンファレンス「de:code」を開催しています。マイクロソフト本社が5月上旬に米国で開催している「Build」を受け、日本向けにマイクロソフトの最新情報やマイクロソフト製品の開発に関する知見などが紹介されます。

マイクロソフトは、2019年2月に「HoloLens 2」を発表しました。それを受けて、「de:code 2019」ではHoloLens 2を徹底解説するセッション「ここまで進化した!HoloLens 2 の全貌を徹底解説」が行われています。本記事では、セッションレポートを中心にHoloLens 2の最新情報をお送りします。

セッションで登壇したのは日本マイクロソフト株式会社より、Mixed Reality Marketing プロダクトマネージャーの上田欣典氏です。

2016年にHoloLensが登場して約2年半が経ちました。HoloLensは既に様々な場所で実証実験や実務上での活用が進んでいます。上田氏はHoloLens 2の発売を控えた今、改めてMRとは何か・何に使えるのか、初代のHoloLensと比べてどこまで進化したのか、そしてHoloLensを取り巻くサービスがどう進化したのかについて語りました。

HoloLens 2はどこまで進化したか?

Mogura VRでは、これまで発表されているHoloLens 2に関する情報、およびその体験レポートを公開しています。

セッションではHoloLens 2の特徴が、快適性、没入感、時間価値創造の3つに分けて紹介されました。

快適性

HoloLens 2では、「旧型に比べて快適性が3倍になった」と紹介されています。これは「連続して装着して不快に感じるまでの時間」が3倍に伸びたことを受けて使われている数字です。

旧型のHoloLens(以下HoloLens 1)とは異なり、HoloLens 2ではバッテリーを後頭部に配置したことで、重量バランスがデバイス中央に寄っています。これによって、重さは10g程度しか変わらっていないにも関わらず、つけ心地が大きく改善しています。

さらにはHoloLens 2では、頭部の前後にクッションが付いていることで、さながら帽子を被るような感覚で装着することができるようになっています。デバイスを頭に乗せて締めるだけという簡単さで装着が完了するのです。また上田氏は、HoloLens 1で問題点として取り上げられていた「装着を続けると鼻が痛くなる」点も大きく改善されたと強調しています。

そしてHoloLens 2の装着の快適性に貢献している新たな機能は、「フリップアップバイザー」です。レンズは透明のグラスではなく少し色がついているので、裸眼で直視したい時、人と目を見て話したい時などにデバイスをずらすことで視界が良好になります。また開発者は装着したままコーディングをすることも。この機能は、特に日本からのフィードバックが多かったために反映されたそうです。

没入感 – 1.視野角

続いて没入感の変化について。まずHoloLens 2では「解像度をHoloLens 1から落とすことなく、視野角が2倍」とされています。片目あたり2Kの解像度、1度あたりのピクセル数は23から47へ増えています。表示領域の縦横比はHoloLens 1が16:9に近かったのに対して、HoloLens 2では4:3に近くなっており、特に縦方向に視野が拡大したことがわかります。

ただ、この2倍という数字は、厳密には視野角ではなく、映像が表示される領域の大きさであるようです。HoloLensの生みの親と称される開発者アレックス・キップマン氏は、Twitterで次のように述べています。

実際、HoloLens 1では対角に約34度(垂直17.5度、水平30度程度)、HoloLens 2では対角に約52度(垂直28.5度、水平43度)の視野角となっています。

没入感 – 2.光学系

いずれにせよ、デバイスの大きさや重さをほとんど変えることなく、視野角を大幅に広げたのは事実です。通常ならばディスプレイを大きくするにはハードウェアの大型化、重量化、それに伴う消費電力の増加が付きものです。しかしHoloLens 2では、マイクロソフトが独自開発したMEMSレーザースキャニングディスプレイによってこうした問題をクリア。MEMSミラーが高速に微細な振動を行い、毎秒54,000回の速さでレーザーが走査するとのこと。

HoloLens 2の光学系に関しては、次の動画で語られています(英語)。


(微細な振動を行うMEMSミラー)

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(RGBのレーザー光で作り出した光のパルスを、MEMSミラーの反射によって全ピクセルに届ける)


(MEMSレーザースキャニングディスプレイの構造。Fast Scanと書かれた部分は水平方向、Slow Scanの方は垂直方向の走査を担っているとのこと)


(光学系が変わったことで、HoloLens 1と比べて高いコントラスト表現も可能になっています)

没入感 – 3.ハンドトラッキング

HoloLens 2では光学系が大幅に改善されただけでなく、ハンドトラッキング機能も追加されました。片手あたり25点を取得し、両手全ての指も認識することが可能に。これによって、これまで「エアータップ」と呼ばれていたクリックのようなジェスチャー以外にも、ホログラム(HoloLens 2が提示するCG)と多様なインタラクションが可能になります。


(摘む、掴む、握るなど大きさに応じた持ち方や、3Dオブジェクトの移動、回転、拡大縮小なども直感的に行えます)


(様々な種類のボタンを押すことができ、スライドバーやスクリーンを指で操作することも)


(遠くのオブジェクトを操作するときは、手からレイ(光線)が飛び、物理的に手の届かない距離のものにもインタラクションができるようになっています)


(ハミングバードのデモは、空中に手のひらを差し出すとその上に青い鳥が飛んできて、手の動きに合わせて付いてくるというもの)

没入感 – 4.その他のセンサー

HoloLens 2には、ハンドトラッキング以外にも深度センサーや視線センサーが搭載されています。深度センサーは「Azure Kinect」と同じものです。Azure Kinectは、2017年に生産終了したKinectが改良されて復活したもの。クラウドサービスであるAzureとの連携に最適化されています。


(深度センサーとそれが可能にする空間マッピング。現実に比べればまだまだ荒いが、そこにどんな形のものが存在するかは十分判別可能であることが分かる)

そしてHoloLens 2では、鼻の部分に視線追跡モジュールが搭載されています。これによって「Windows Hello」と連携して虹彩認証も可能に。これは例えば、一台を複数人で使い回す際に、被るだけで使い分けるなどのことが可能になります。

HoloLens 2の分解

上田氏は講演で、HoloLens 2の分解写真を公開しました。

(HoloLens 2の分解写真。前頭部のクッションが外せるようになってる)

テクノロジー全体も進化したの?

HoloLensはこれまで、企業の仕事現場を中心に活用が進んでいます。しかし、「HoloLensを買ったけれど、すぐに使えるアプリがない」「自社用のアプリが欲しいが、開発するパートナーがいない」など、HoloLensを活かすまでのハードルが高いという問題点がありました。

そこでマイクロソフトはこれまで、大型機器を実際に配置する前にCGでレイアウトを確認する「Layout」や、遠隔地にいる人同士で、視界を共有しながら共同作業を行う「Remote Assistant」などをリリースしてきました。

https://www.youtube.com/watch?v=rK7l6Gq16WA 
https://www.youtube.com/watch?v=UpmolMrf5HQ

これらに加えてマイクロソフトはこの度、機械の使い方などを学習するための「3次元の説明書」を作成できるアプリ「Guides」をリリースしました。

マイクロソフト公式以外でも、マイクロソフトが認定しているMixed Realityパートナープログラムのパートナーも、近年ではその数も充実しており、各社独自のアプリを開発しています。

HoloLens 2はプレオーダーを受付中!

マイクロソフトの提唱するWindows Mixed Realityの実現を担う重要なハードウェア「HoloLens 2」。それを活かすためのサービス(Azureクラウドとの連携)やアプリケーション(マイクロソフトが提供するERP/CRM「Dynamics 365」に登場したMRアプリ)の整備も既に進んでいます。

しかし、肝心の発売情報についてはまだ公開されておらず、HoloLens 2の日本語ページから電話によるプレオーダーのみ可能となっています。また、HoloLens 2にはその用途に合わせて複数のエディションが用意されてされていますが、日本で全てのエディションが発売されるかどうかは未定とのこと。

Mogura VRでは、HoloLens 2に関する最新情報を随時お届けします。発売は年内を予定しているとのことなので、続報に期待しましょう!


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