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テック 2015.12.13

VR酔い防止に向けて。これまで登場したVRでの酔わない移動方法のアイデアまとめ。

VRコンテンツを作っている開発者の間で、VRの中での移動は大きな課題です。

現実には自分は動いていないのに、VRの中では移動している、それが体験者にとっては不自然な視覚誘導性自己運動感覚(ベクション)を引き起こし、酔いを引き起こします。

移動による酔いを引きおこさない一番簡単な方法は、「移動しないこと」。Gear VR向けのゲームでは、Mogura VRでもオススメしている『GUNJACK』のようにプレイヤーが「移動しない」ゲームが多くあります。

しかし、せっかくその世界にいるような実在感が実現するVRで、移動できないことは不自然そのものです。しかし移動しようとすると感覚的には不一致が生じて酔ってしまう。どうにかしてVRの中で酔わずに移動する方法がないか、世界中でその解決策が模索されています。

既にその解決策の案は様々なものが登場しています。これまで工夫されてきたVRの中での移動方法についてまとめてみました。

酔いの仕組みや解決方法についてはOculusが公開しているベストプラクティスガイド(日本語版)にもまとめられているので、デバイスを問わず参考になります。

Blink

HTC Vive向けのアドベンチャーゲーム『The gallery』を制作しているカナダのCloudhead Gamesが考案した移動方法。「Blink」とは、瞬きの意味。頭を動かして移動先を決め、瞬きをするようにフェードアウトとフェードインでテレポートします。

説明は英語ですが、合間に実際のプレイヤーの動きと移動している様子がデモされます。

関連記事:Cloudhead Games、VRゲー
https://www.youtube.com/watch?v=fOFgAfuTtyoムで酔いにくい移動を実現するノウハウ「Blink」を公開

この「Blink」を参考にOculus Rift DK2でも体験できるようにした『Playpit』はOculus Shareで公開されています。
ダウンロードはこちら

Oculus Touch向けデモ『Bullet Train』はOculus Touchを使って、手を伸ばし移動先を決定し、テレポートするというもの。「Blink」とも共通しています。Oculus Touchを使うことで、頭の動きとは別に自分で移動先をコントロールできるという点で、激しいアクションシーンでも移動することでき、優れています。

等速直線運動、カメラを揺らさない。

等速直線運動は、酔いを完全に防止できるわけではありませんが、実装もしやすく、既にGear VR向け『Land’s End』などで採用されています。加速をせず等速でなおかつゆっくり、そしてどこに向かっているのかがわかりやすい直線運動にすることで酔いはかなり防げます。逆に、加減速を繰り返しながら、高速で、しかもどこに向かうかわからず動きも蛇行してる、そんな動きをした場合、プレイヤーはすぐに酔ってしまいます。

また、いわゆる一人称視点のFPSでよく見られるようなカメラの揺れも酔いの原因となります。

image2『Land’s End』では移動先が点で表示されており、注視するとそちらに等速で向かう

関連記事:【Gear VR有料ゲーム】ついに配信された注目のパズルアドベンチャー『Land’s End』

視界に固定物を表示

Oculus Rift向けSTG『EVE:Valkyrie』などで採用されている方法。コクピットや運転席、自分の体の一部など固定されたものが表示されているとベクションが発生しなくなります。

『EVE:Valkyrie』の最新プレイ動画。かなり激しい動きですがあまり酔いません。

Tunneling

上記の応用。移動する際に画面の中央部分のみを繰り抜き、周辺部分は固定したまま中央部分を見ながら移動するというものです。

Oculus Shareにて技術デモが配信されています。
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Holosphere

Oculus Rift向けデモ『Sightline:The Chair』などを開発したTomáš ‘Frooxius’ Mariančík氏が考案した移動方法。移動時に三角形を基本とする立体的な格子を表示させ、背景をぼかすというもの。確かに背景の解像度を下げしまうことで酔いは防止できるかもしれません。

なお公開された映像では、手を読み取る赤外線センサーLeap Mmotionを使って、視界を掴むようにして移動する方法も示されています。

本Holosphereに関しては、現在テスターを募集中で、デモをダウンロード可能です。(操作はLeap Motion及びXbox360コントローラーのみ)
ダウンロードはこちらから

Ghosting

Ghostingは、3人称視点で自分のキャラクターをまるでGhost(幽霊)のように動かして移動先を決めるというもの。Blinkにも似ていますが、移動中の幽霊の視点を見ることができたりと、じっくりと移動するのに向いているかもしれませんね。この方法はVR内のソーシャル空間『Convrge』の開発チームが、ソーシャル空間で複数のプレイヤーがいるときに他のプレイヤーとの間を確認してテレポートできるために考案したようです。

三人称視点に切り替える

この解決策は、ある意味一人称という要素を諦めるという点で逃げでもありながら、移動をしっかりと残しています。Oculus Riftのローンチタイトルとして明らかになっている『Lucky’s Tale』、『Edge of Nowhere』など多くのタイトルで採用されている方法です。

カメラの揺れは三人称視点でも酔いの原因となります。しかし、『Lucky’s Tale』、『Edge of Nowhere』三人称視点でのアクションゲームはカメラもそれなりに動きます。まだ明らかにはなっていませんが、酔わない法則がいくつかあるようです。

『Lucky’s Tale』

『Edge of Nowhere』

応用例:酔いをゲーム性に取り入れる(要注意)

「三人称視点を切り替える」が酔いに対して食い下がった解決策だとするならば、「酔いをゲーム性に取り入れる」は攻めの解決策だと言えます。

PlayStation VR向けマルチプレイヤーアクション『RIGS』がその例として挙げられます。3VS3のチーム戦で、パワードスーツに乗り、立体的に入り組んだアリーナの中央にある輪っかに先に入って点数を競い合うというもの。視界に固定された自機の腕が映っていますが、とにかく動きが激しいのが特徴です。筆者も東京ゲームショウ2015で体験しましたが、それなりに酔います。しかし、不思議と気持ち悪いというほどまでの酔いではないこと、対人戦ということからプレイにのめり込んだこと、から「嫌な酔い方をした」という感覚はありませんでした。

『RIGS』

この『RIGS』の「心地よい酔い」に関してはゲームライターの佐藤カフジ氏が考察しているので参照してみてください。
PlayStation VR「RIGS」で、ついに人類は“VRFPS”の領域に踏み込む(GAME WATCH)

なお、この方法は開発側も酔い・ベクションを理解した上で、「心地よい酔い」を発生させているというもの。気持ち悪くなってしまう酔いとの瀬戸際でかろうじてバランスを保っているようにも見えるため、むやみに模倣できるものではないということは申し添えておきます。

用途によって使い分けを

VRにおける様々な移動方法を紹介してました。筆者が移動方法について特に注目しているのはmもちろん大目標である「酔わない」ことと同時に「設定としていかに自然な移動方法かどうか」です。たとえ酔わない移動方法だったとしても、せっかくVRに浸っている自分の感覚を「ここは現実じゃなくてVRなんだ」といって興ざめさせてしまうのは、特にゲームや映像作品では本末転倒になります。

その点では「自分は未来世界のエージェントで、テレポート能力がある」と無理やりな設定をプレイヤーに押し付けるが一切の不自然さがない『Bullet Train』のテレポートは秀逸です。

ビジネスなど、用途によっては設定について重視する必要があまりない場面もあるため、コンテンツによって移動方法を考えることも重要です。より自然かつ「酔わない」方法の登場に期待したいですね。holosphere-2

(参考)
Road to VR / ‘Sightline’ Dev Wants Your Feedback on Experimental ‘Holosphere’ Locomotion
http://www.roadtovr.com/sightline-dev-wants-your-feedback-on-experimental-holosphere-locomotion/


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