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活用事例 2019.09.20

若いころの思い出を……認知症高齢者向けVRセラピーが効果を上げる

イギリスの国民保健サービス(National Health Service、NHS)は、認知症患者のケアにVR活用を試みています。認知症の高齢者がVRで過去を追体験し、生活の質を向上させる取組です。

バーチャル回想療法で生活に刺激を


「Marvelous(とても素晴らしい).」

VR体験の感想を聞かれたある高齢者はこう答えました。彼が体験したのは、若い日に好んで出かけたロックのコンサート会場です。バンドの演奏だけでなく、後ろを振り返れば人々が踊る様子も見えます。当時を思い出したというこの男性は、ヘッドセットを外してからも笑顔でステップを踏んで見せました。

このVRセラピーは、オックスフォードの高齢者ケア施設で導入されています。施設での生活はともすると単調なものになってしまう恐れがありますが、この「Virtual Reminiscene Therapy(バーチャル回想療法)」ともいうべきプロジェクトは、高齢者に良い刺激を与えることを目指しています。

冒頭の男性の他にも、故郷の様子を映した360度画像を見て昔を思い出したり、自分の家の場所まで正確に説明できるなど、VRに刺激を受ける様子が見られました。

回想による悪影響、課題は

一方で、過去を振り返ることでネガティブなことを思い出したり、体験者が混乱してしまうのではないか、という懸念もあります。例えば第二次世界大戦の映像は、人によってはトラウマになっているかもしれません。これについてプロジェクトを進めるVirtue HealthのAfra Refman氏は、個人に合わせた体験を作ることの重要性を強調します。

「認知症の高齢者向けに没入体験を作るときには、一人ひとりのニーズに合わせて制作することが非常に重要です。例えば我々は、一般に販売されているコンテンツは使いません。高齢者のケアをするチームと密に連携します。そしてユーザー第一で、体験者を混乱させるのではなく安心させる体験を作れているか、NHSと確認していきます」

VRによるケアを導入したこの施設では、バーチャルセラピーを体験した認知症高齢者の過半数で、認知力やコミュニケーション力の改善が見られたということです。

認知症へのVRケア事例

認知症のケアにVRを活用する事例は、下記の記事でも紹介しています。

(参考)BBC News


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