はじめに
VR系の企業の数は2005年から2015年にかけて、およそ15倍にも膨らんでいます。VR業界への関心は日々、猛烈な勢いで高まっていると言えるでしょう。
今日は、VR業界の様々な統計データを取り扱っているGreenlight VR社のレポートから得たデータを見てみましょう。図やグラフは、グラフィック・デザインの制作を行っているCubicle Ninjas社によって作られたものです。
※なお、本レポートは2015年7月に発表されたものです。現時点までに既に2ヶ月経過していることにご留意ください。
調達した資金総額のトップ20社
ここでは代表として、全20企業の内、TOP10までの簡単な紹介を載せます。
- Oculus 9400万ドル
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)『Oculus Lift』、『Gear VR』(Sumsungとの共同)の開発。現在は開発者向けモデル『DK2』が販売されており、製品版『Oculus Lift』は2016年発売予定。2014年Facebook社により20億ドルで買収済。コンテンツの紹介は関連記事をご覧ください。関連記事「TGS、Oculusブースで体験できるコンテンツまとめ。コロプラ新作や、360度カメラTHETAとの連携も」
- Matterport 5600万ドル
撮影した3D空間をVR、AR、Web上に導入する技術を開発しています。VR空間でモデルルームの中を歩き回るGear VR対応のデモアプリがリリース中。
- Razer 5000万ドル
現在OSVR(Open-Source Virtual Reality)というハード・ソフト全てがオープンソースとなるプラットフォームをプレリリースしています。
- LEAP Motion 4410万ドル
人間の手を感知してVR空間に反映させる『Leap Motion』をリリース。これによってVR空間に、自分の”手”で干渉できるようになりました。また、視野角の広い独自のHMDも開発しています。
- CCP Games 3600万ドル
PC向けのOculus Rift、PS4向けのProject Morpheus、両方のハードに対応しているスペースSTG『EVE:Valkyrie』などを開発しています。(関連記事「ドッグファイトがアツい!VRスペースSTG『EVE: Valkyrie』の新たなプレイ映像が公開」)
- JAUNT 3500万ドル
360度映像を体験できるような実写VRコンテンツの制作、および立体視専用カメラの『NEO』を開発中。JAUNTはつい先日、ディズニーより新たな出資を受けました。関連記事「ディズニー、実写VRコンテンツ制作会社のJauntに6500万ドルを投資」
- zSpace 2700万ドル
3D眼鏡を用いることで、ディスプレイから画像が飛び出し、現実で3Dモデルとして見ることができるタブレット端末の開発。医療や教育の分野でも応用されています。
- IMPROBABLE 2200万ドル
世界をシミュレートする仮想環境の開発。これを用いることで、数百万人の行動や相互のやり取りがシミュレートできます。
- Linden Lab 1900万ドル
2003年サービス開始のMMOメタバースゲーム『Second Life』の開発・運営元。次作となるVRを活用したメタバースを構築していることが明らかになっている。
- NIVAL VR 1800万ドル
脳や細胞などのミクロな世界をVR上で見ることができるアプリを教育目的で開発。それらの仕組みなどを視覚的に理解できます。
ここで紹介した企業も含めて、2015年8月の段階で大規模投資を受けた企業をまとめた記事があります。興味のある方はご参照ください。関連記事「これまで大型投資を受けたVR/AR関連のスタートアップまとめ。総額は7億ドル以上」
VR系企業のある国TOP10
一位は圧倒的にアメリカで、全体の半分以上を占めています。その中でもカリフォルニア州には、アメリカに拠点を置くVR企業の半分があるようです。Oculusが創設されたのもカリフォルニアです。
アメリカに次いで二位はイギリス。それに続いてカナダ、フランス、ドイツ、オーストラリア、スペイン。日本はその次となっています。日本では、海外のようなインディレベルでの活動がほとんど見られず、現在のVR業界においては圧倒的な海外シェアです。
VRへの投資の増加
VR企業に投資した組織が、数にして165増加しました。金額で言えば2010年から2015年までの間に、総額7億4600万ドルの資金がVR企業へ投資されています。
カテゴリー別 投資先の割合
一番大きな部分を占めているのは36.4%で、やはりヘッドマウントディスプレイです。
次いで20.8%を占めているのはゲームなどのコンテンツ分野です。例えば先ほど紹介した10企業で言えば、『EVE: Valkyrie』のCMM Games社や『Second Life』のLinden Labなどがあります。後ほど説明するように、現在のVR業界ではゲーム/エンターテイメント分野での活動が圧倒的に多くなっています。
三番目に続くのは17.7%で、カメラなどのキャプチャ装置です。先のMatterport社やLEAPMotion社なども挙げられるでしょう。最近では『Ricoh THETA』のような360度カメラも話題になっています。関連記事「360度カメラでどう撮る?東京ゲームショウでコンパニオンの皆さんに全天周で自撮り撮影をしてもらった」
15.0%の四番目はProduction toolsですが、これは「Unity」や「Unreal Engine」などのゲームエンジンをはじめとする開発ツールのことを指します。3Dモデリングをはじめとして、VR世界を作るために必要なツールの数々も、現在開発されているということです。
残りは、センサやコントローラーなどの周辺機器(Peripherals)8.5%、そして1.6%部分は、コンテンツを配信するためのプラットフォーム(動画やアプリを配信するサイトのようなものを指す)です。
VR企業が調達した資金総額の増加度合
CAGRとは、Compound Annual Growth Rateで、年平均成長率のことです。売り上げの成長度合いを測るときに用いられます。
このグラフによると、2013から2015年の間に、業界全体で約64%の資金増加がみられたことがわかります。それまで下火だったVR界は、2012年に勢いの片鱗を見せ、2013年以降はもの凄い勢いで分野の開拓が進んでいます。Oculus社が2012年8月にKickstarterに参加したことは、これと無関係ではないでしょう。
この勢いは今なお衰えるどころか加速する勢いで、VR業界への期待は日々高まっていくばかりです。日本でも遅ればせながら注目が集まっており、日のTGS(東京ゲームショウ)でも、VR関係のコンテンツは熱烈な人気を博していました。
用途で見る投資先の内訳外観
先ほどはVR関連のどの領域にどれほど投資されているかを見ました。HMDやその周辺機器は一体何に利用されようとしているのか、というのがこの図です。あるいは投資先のNo2にあたる「コンテンツ」が一体何なのか、と言ってもいいかもしれません。
グラフの通り、ゲーム・エンターテインメント分野が占める割合が圧倒的です。
現在は、開発者サイドでゲームやエンターテインメントのコンテンツ制作に携わっているエンジニアが多く、「自分が好きなものを追及している」という状態なのかもしれません。あるいはVRという言葉自体、virtualという単語自体が既にエンターテインメント性を想起させる力を得ていたのかもしれません。
しかし、ゲーム/エンターテインメントはVRの出発点でしかなく、現在は実に七倍前後の差がある他分野が急速に伸びており、今後その差を徐々に縮めて行くものと思われます。
(参考)
・The Illustrated Guide to the VR Investment Landscape [Infographic] – UPLOAD VR (英語)
http://uploadvr.com/the-illustrated-guide-to-the-vr-investment-landscape-infographic/
※アメリカのVR専門メディアRoad to VR、UploadVRはMogura VRとのパートナーシップを結んでいます。