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VR動画 2022.01.08

【VR映画ガイド第82回】1人の男性の誕生から人生の終わりまでを追ったアニメーション

Baobab Studiosによる質の高いアニメーション

質の高いアニメーションで、多くの映画祭で数々の受賞歴のあるBaobab Studiosの「Namoo」を今回は紹介します。Baobab Studiosの作品についてはこの連載でも以下のものを取り上げています。

「Namoo」は韓国語で「木」を意味し、1本の木を軸に、1人の男性の誕生から人生の終わりまで追っていくアニメーションです。体験者の目の前にある1本の木が男性の人生の物語を視覚的に表現するメタファーとして機能し、誕生、喜び、喪失、死などによって姿形を変えていきます。

監督であるErick Oh監督は、ピクサー・アニメーション・スタジオでのアニメーターを経て、トンコハウスで「PIG : The Dam Keeper Poems」を制作し、アヌシー・アニメーション・フェスティバル2018でクリスタル賞を受賞しています。そのほかアカデミー賞、アニー賞、ザグレブ映画祭など、数多くの映画祭でノミネート・受賞。「Namoo」は彼の祖父の死から着想を得て描かれた作品だとインタビューで語っています。

オススメのポイント

1. Quillを使用した手描きの美しいアニメーション

「Namoo」はハートフルなストーリー・メッセージを実現するためにオーガニックでハンドメイド感のあるものにしたかったとErick Oh監督は語っています。それをVRで実現するためにQuillを使用することにしたそうです。

QuillはOculusによって開発されたVRペイントツールで、「Goodbye Mister Octopus」など多くのアニメーション作品がQuillを用いて作られています。2021年10月にオープンソース化しました。この連載でもQuillを用いて作られている作品をいくつか紹介しています。

「Namoo」はQuillを用い、手描きの線を使うことに成功し、3D空間の中にユニークで温かみのある表現を作り出しています。

2. 言葉はなくてもわかるストーリー

VRのアニメーションは言葉がなくてもわかるように作られているものが多いような気がします。VRの場合、字幕がつけにくいという問題もあると思いますが、言葉で説明するのではなく、そのアニメーションが作り出す世界を体感してもらうということに重点をおいているものが多いのかもしれません。

この連載でも紹介した「Tales from Soda Island」シリーズなどもストーリーをわかりやすくし、世界観を感じてもらう感じのアニメーションでした。

「Namoo」も言葉は一切なく物語は進行していきます。見てわかるというのももちろんありますが、解釈は受け取った人・体感した人に任せることによってある程度幅を持たせることにより、物語的な膨らみも出てきているのではないかと思います。

3. 木に近づきたくなる

男性の誕生から成長に合わせて、おしゃぶりやぬいぐるみ、本、壊れた眼鏡、絵筆など、様々なものが木にくくりつけられていくのですが、木の下に行って、もっと近くで可愛らしく描かれているそれらのものを見てみたくなりました。そして、6Dofなので実際に行って近くで見ることができるのです。

この作品は体験者の目の前にある木の周辺でしか物語は進行しません。なので、周囲を見回すということはしなくても問題ありません。それは見回すことができるというVRの利点を大きく使っていないかもしれませんが、近づいて見に行くことができるのもVRの大きな利点であるのだなと考えました。

作品データ

タイトル

Namoo

ジャンル

アニメーション

監督

Erick Oh

制作年

2021年

制作国

アメリカ

本編尺

約13分

視聴が可能な場所

Oculus TV

Teaser

この連載では取り上げてほしいVR映画作品を募集しております。
自薦他薦は問いません。オススメ作品がありましたら下記問い合わせ先まで送ってください。よろしくお願いします。
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