VRペイントアプリ「Quill」を使った挑戦的なVRアニメーション
最近、VRペイントアプリ「Quill」を使った様々なVR映画が発表されています。Oculus Store内にある「Quill Theater」ではQuillを使ってVR空間で描かれたVRアニメーションなどのVR映画を体験できます。
現在、ざっと見ただけでも100近い作品が公開されており、以前この連載でも紹介した「Goodbye Mister Octopus」のようなヴェネツィア国際映画祭にノミネートされた作品もラインナップされています。
今回紹介する「Rebels」も、Quillを使って制作された6DoFの挑戦的なVRアニメーション映画です。「Rebels」は、動物たちだけが暮らす世界が舞台です。この世界で暮らす動物たちは個人の表現が禁止された種族固有の条例「ダーウィンコード」に従うことを義務付けられています。そして、このダーウィンコードに逆らうと軍人ドロイドによって厳しく罰せられます。しかし、この状況に抵抗する反乱軍が現れ、物語は進んでいきます。
今まで6DoFのアニメーション作品はUnityやUnrealエンジンなどのゲームエンジンを使わないと制作できないと思われていましたが、今後もこの「Rebels」のようなQuillを使った魅力的な6DoF作品が次々と誕生する予感がします。
オススメのポイント
1. VR映画制作用に最適化されたシステム
QuillがVRヘッドセットを被って、空間を感じながらアニメーションや漫画を描けるツールなので、360度空間を使った作品を描くのに最適な方法だと思います。
他のツールで制作されたVRアニメーション作品より「Rebels」はより立体感があり、空間を感じられました。しかも何重にも奥行きの層があるように思えるのです。
PCなどのフレームでVRアニメーションを制作するよりも、VRヘッドセットを被って制作した方が、体験者に近い視点で制作できるので、より没入感のある作品が制作できるのかもしれません。
2. 新たなVR演出に果敢に挑戦
Quillはアニメクリエイターにとって、VRアニメーションを制作するためにすごく使いやすいようです。そのためか、Quillを使った作品は積極的に様々な演出に挑戦しているものが多いように感じます。
「Rebels」もフレームとして切り取っても絵になるような表現をしたかと思うと、VRとして空間を感じさせる表現をしてみたり、またゲーム的な俯瞰表現を取り入れたり、主人公をアップで見せたりと、今までVRの演出では避けられていた表現が積極的に使われています。
フレーム表現の延長線上にあるVR表現を試したいアニメクリエイターにとっては、新たな可能性を切り開くアプリになるのかもしれません。
3. VR映画の新たなカテゴリーになる予感
「Rebels」を体験した後、Quillの可能性と共に今までのVRアニメーションとは違う表現の広がりを感じました。QuillというツールがVR用のアニメーションを描けるということだけでなく、VRでアニメーションや漫画などを描くクリエイターのコミュニティにもなっているように感じます。
すでにクリエイターは、制作した作品をQuill Theaterで発表し、空間やキャラクターの紹介、制作過程などを共有し合っていて、次々と新しい作品を生み出しています。
今後Quillで制作されたVRアニメーションの新しい表現に期待すると共に、Quillを用いた制作が主流になっていくのではないかと感じました。
作品データ
タイトル |
Rebels |
ジャンル |
アニメーション |
監督 |
Federico Moreno Breser |
制作年 |
2021年 |
制作国 |
アメリカ |
本編尺 |
約10分 |
視聴が可能な場所 |
Oculus Store:https://www.oculus.com/experiences/quest/2515021945210953/ |
Trailer
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