第80回ヴェネチア国際映画祭のエクステンデッドリアリティ(XR)部門「Venice Immersive」に、伊東ケイスケ監督のVRアニメーション「Sen」と、大宮エリー監督のVR映画「周波数」がノミネートされました。
毎年8月末から9月初旬に開催されるヴェネツィア国際映画祭は、世界三大映画祭のひとつで、本年で80回を迎える世界最古の歴史を持つ映画祭です。本映画祭のXR部門「Venice Immersive」は、2017年にスタートし、今年で7回目の開催となります。
なお、伊東ケイスケ監督は4年連続でのノミネート、大宮エリー監督は初挑戦のVR映画でのノミネートです。
VR映画「Sen」
「Sen」は、「千利休の所持した樂長次郎 黒樂茶碗『万代屋黒』をモデルにしたお茶碗型の触覚デバイス」を用いて、VR空間で複数人同時に日本のお茶の世界を体験でき、日本伝統の茶道の世界を通して生命と宇宙の繋がりを体験する作品となっています。
【伊東ケイスケ監督コメント】
私は日本の伝統文化である「茶道」をベースに、XRを通して自己を深く見つめる体験を作りたいと考えました。
Senとは、とても大きな数、無限を表しています。
私は、私たち地球上の生命体は、無限の宇宙に溶ける粒子のような淡い存在であり、心臓の鼓動を与えられて存在しているのではないかと考えるようになりました。
この物語で体験者は、両手で持ったChawan Deviceからこの世に生まれ落ちた、お茶の化身「Sen」と出会います。
彼は生まれてはじめて、自然や他者に出会い、関わり合います。
生きる楽しみ、そして多くの苦しみを味わいます。
そんな彼の「生」は、わたしたちとなにもかわりはありません。
彼はあなた自身です。
両手から伝わるChawanのあたたかな感触と鼓動のぬくもりとともに、他者との繋がりを体験してください。
そして、深い闇の中で、あなた自身の「生」を見つめてください。
VR映画「周波数」
「周波数」は、アーティスト大宮エリーの自伝的作品です。生きにくい日常の中、世界に存在するあらゆる固有の周波数を知ることで、世界の見え方が変わっていく様子を主人公のアンと一緒に体験していく全く新しい体験型のVR映画作品です。
【大宮エリー監督 コメント】
今、という時代は、コロナによる精神的分断、戦争による未来への不安のなか希望を見つけなけばいけない時代なんだと感じています。この時代による心への影響は実は大きいんじゃないかと思うのです。この世の中で生きていくのが辛いなと思っている人に、あなたはこの宇宙でひとつの大切な役割があり、あなたがいること自体、存在自体が、愛なんだ、ということを伝えたい。
また、周波数をモチーフにしました。生きている、生きていないに関わらず、全ての物に固有の周波数がある、という物理の定理を使い、ひとりひとりの存在の尊さ、違うことの素晴らしさを表現しました。またパスカルの人間は考える葦であるという一節もそれを後押しします。人物や葦などは、全て絵画でできていて、ペラペラの紙ですが、絵が魂を吹き込まれたように、その動きは、実際のパントマイムのパフォーマーが演技をしているので、手触りのある優しい世界観を可能にしました。物には全て固有の周波数があることを音でも表現するため、ヒーリングや、波動治療に使われる治療用の音叉を使用しました。また物語の初めに、名前を書いてもらいますが、主人公との旅をした最後に、もう一度書いてもらうのですが、それがあるものに変化して、とある場所にそれがおさまることで、多様性の素晴らしさを一瞬で体感することができます。
VR映画「Sen」概要
作品名 | Sen |
製作年 | 2023年 |
製作 | 株式会社Psychic VR Lab/株式会社CinemaLeap |
作品尺 | 15 分 |
ジャンル | アニメーション |
あらすじ | この作品は日本の伝統文化である「茶道」をベースにしています。 体験者は、日本の茶室に身を置き、黒樂茶碗『万代屋黒』を両手に持って日本の伝統世界を体験します。 体験者は薄暗い茶室の中、自分の手の中の茶碗から生まれるお茶の精霊”Sen“を通して、 自分と世界との関わりを知ります。最初は恐る恐る世界を知っていく“Sen“ですが、 様々な存在に関わることによって、自分が存在することの喜びを知ります。 美しい世界が目まぐるしく変わる中、“Sen“は自分たち以外に、 同じような存在がこの世界に存在していることに気づきます。 他の存在との繋がりや、関わりが心地よく、自己中心的に目の前の存在と関わることばかりを考えるようになります。 そんなある日、突然自分の心地の良い世界が大火によって全て消失してしまいます。 何もかも失ってしまった”Sen”は茶碗の中に落ち、自分の存在が宇宙の中で粒子となり溶けてしまいます。 “Sen”と体験者は、この世界の生きとし生きるものあらゆる存在と自分は共にあるということに気づいた時、 自分の存在が、茶室に戻っていることに気づきます。そしてまた何気ない日常が始まります。 |
作品紹介ページ | https://keisukeitoh.com |
VR映画「周波数」概要
作品名 | 周波数 (英題: Frequency) |
製作年 | 2023年 |
製作 | 大宮エリー事務所/株式会社CinemaLeap |
作品尺 | 25分 |
ジャンル | アニメーション |
あらすじ | 作品は主人公アンから手渡されたペンであなたが、自分の名前を書くことで物語が始まります。 あなたは絵画の作品の中に入ったような感覚で、アンが画家になるまでの不思議な物語をアンと一緒に旅をします。 旅の途中、アンは生きるヒントを見つけます。あなたはアンの人生を通して世界にはあらゆる周波数があることを知ります。 周波数の存在を知った時、アンとあなたは世界の見え方が変わっていることに気づきます。 アンは絵を通して、世界に存在する周波数を描きます。アンが描く周波数を感じた時、あなたはどんな気分になるでしょうか? そして最後、あなたはこの世界でどのような周波数を描くでしょうか? |